「3・11」十年、原発ゼロへ
  大飯原発設置許可取り消し判決=全原発の審査やり直し

 関西電力は1月15日、定期検査をしていた大飯原発4号機の原子炉を再起動させ、2月中旬頃に営業運転に入る予定を示した。これは、昨年12月4日、大飯原発3・4号機の設置許可取り消しを言い渡した大阪地裁判決に真っ向から敵対する暴挙である。国が年末に控訴し、判決は確定していないとして国と関電が再稼働を強行したのである。
 関電は、機器トラブルで運転再開できない原発が相次ぎ、昨年11月以降稼働ゼロの状態が続いている。この現状を突破すべく、大飯4号機を動かしてきた。これを許さず12・4判決を確定させ、全原発廃炉に向けた大闘争が求められている。

  大阪地裁12・4判決

 福井など11府県約130名の住民が国・原子力規制委員会に対し、大飯原発3・4号機の設置許可取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁(森鍵一裁判長)は12月4日、許可を違法として取り消す判決を言い渡した。
 裁判は、地震規模の計算方法をめぐって主張が対立した。原子力規制委員会は、新規制基準に基づく「審査ガイド」で、原発敷地で起こり得る地震規模の算出方法について、平均値からの「ばらつきも考慮される必要がある」と規定している。
 判決は、①審査ガイドの「ばらつき条項」について、算出される地震規模は平均値であり、実際に起きる地震は平均値より大きくなる可能性を考慮すべきとするものであり、この規定には科学的合理性があり、積極的な意味が込められていると評価し、しかし②規制委員会は、平均値が使われたに過ぎない関電算定の基準地震動(最大の揺れ)について、「地震規模に何らかの上乗せをする必要があるかどうか検討せず」に申請を適合としており、「看過しがたい過誤、欠落がある」と結論づけた。
 関電は、基準地震動を活断層の長さなどから算定し、856ガルとした(ガル=揺れの勢いを示す加速度の単位)。しかし、島崎邦彦東大名誉教授の試算では、その2倍近い数値が示されている。
 国は控訴したが、今後の裁判闘争で住民側勝訴が確定した場合は、大飯3・4号機はより厳格な耐震基準で評価し直し、改めて許可を得るまで再稼働はできない。そして判決の意味するところは、福島第一原発事故後の新規制基準で評価を受け再稼働するなどした5原発9基の原発、また申請中の原発についても、「審査をやり直せ」と問うものである。

  「エネ基本計画」見直し

 菅政権は昨年10月、「2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」とする新たな温暖化対策目標を示した。再生可能エネルギーの拡大とともに、脱炭素化を口実に原発の再稼働を強行しようとしている。
 今年は、政府の「エネルギー基本計画」とその電源構成が見直される。1月27日に経済産業省は、2050年の電源構成案として、原子力発電については20%、10%、0%の諸案を示した。原発20%なら、現在の基本計画20~22%の堅持であり、多数の新増設が前提となる。10%というのも、原発推進路線である。三十年後なら原発ゼロの選択しかありえない、これが国民多数意見であろう。
 しかし菅政権と「原子力ムラ」は、原発20%を本音として、老朽原発を含めて再稼働にやっきとなっている。
 関電は、いずれも40年超の老朽原発である美浜3号機を今年1月中にも、高浜1号機を今年3月に、高浜2号機を今年5月にも再稼働させようとしている。昨年末に、美浜町、高浜町の町議会も同意してしまっている。
 超危険な老朽原発再稼働に反対し、1月24日には大阪市の関電本店前で大集会が行なわれた。3月20日には高浜町文化会館で全国集会、高浜原発ゲート前抗議行動が行なわれる。
 東日本大震災の震源に最も近い東北電力・女川原発も、震災・津波で被害を受けているにもかかわらず、住民投票条例を二度にわたって拒否しながら、地元同意手続きを終えた。安全対策工事が完了見込みの22年度以降の再稼働をねらっている。
 極め付けは、東京電力・柏崎刈羽原発7号機の再稼働である。東電は昨年中に事故対策工事を終えたとし、今年春には核燃料棒を装填せんとしている。福島第一の廃炉資金と賠償費用の確保が理由だと言う。津波対策の業務上過失で大惨事を引き起こした東電が、ぬけぬけと再稼働できたら大変だ。
 地元では、新潟県による福島原発事故の「三つの検証」が今年中に終了する見込みで、再稼働に向けた手続きが一気に進みかねない情勢もある。
 「首都圏原発」と言われる日本原電・東海第二原発も、22年12月安全対策工事完了見込みで再稼働をねらっている。
 今年は、これら再稼働に反対する大衆闘争や法廷闘争がいっそう問われる。「エネルギー基本計画」見直しのパブリックコメントも始まるが、「3・11」から十年めの今年こそ、原発ゼロの国民世論を改めて盛り上げる必要がある。(O)


コロナ拡大の中、1月「19の日」行動
  菅政権不支持45%に

 菅政権の無為無策によって新型コロナによる死者が一日百人を初めて超えるなかの1月19日、東京の国会前では62回目の「19の日」行動が開催された。「いのちとくらしと雇用・営業をまもれ!罰則より補償を!改憲手続き法強行許さない!菅政権を退陣に!1・19国会議員会館前行動」である。
 寒風の中、感染対策も万全に500名の労働者市民が結集した。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委と、安倍9条改憲NO!全国市民アクション。
 前日の18日に菅政権与党は、通常国会をようやく開催した(総がかり実などによる開会日国会前行動は450名)。菅政権はコロナ失政を棚に上げて、新型コロナ特措法と感染症法の改悪を画策し、罰則強化等で臨もうとしている。
 最初に、憲法共同センターの小田川義和さんが主催者挨拶、「菅首相の施政方針演説には、コロナ対策が何もない。あるのは罰則だけ。国民の命を守る気概が感じられない。敵基地攻撃能力の保有には多額の予算をつぎ込むが、医療現場への財政支援こそが大切だ。政権交代に力を尽くそう!」と訴えた。
 政党挨拶では、社民党・福島瑞穂、日本共産党・田村智子、沖縄の風・高良鉄美の各参院議員、立憲民主党・近藤昭一衆院議員が発言。高良さんは、「宮古島の市長選があった(1月17日)。争点はコロナと基地負担軽減、つまり自衛隊ミサイル基地などの建設だ。これに住民は、オール沖縄勢力との共闘で現職候補を破り、NO!を突きつけた。2月は浦添市長選(2月7日)だ。平和とくらしを守るために、これに勝つ!」と決意を述べた。
 連帯アピールでは、はじめに「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委の野平晋作さん。「闘いはまさに正念場だ。埋立て反対で動画サイトを立ち上げる。昨年防衛局は設計変更申請を強行したが、県がこれを不承認にした時は、呼応して辺野古ブルーアクションを実行する。青い服などを身に着け、全国で取り組むつもりだ」と闘争決起を呼びかけた。(東京では、「不承認」が出された翌日の午後6時半に首相官邸前行動)。
 次いで、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の松村真澄さん(ピースボート)さん。「1月22日、いよいよ核兵器禁止条約が発効する。しかし日本政府は、署名も批准もしようとしない。我々は議員ウォッチを立ち上げ、政府が承認に向かうよう働きかけて44名の国会議員の賛同を得た」と報告した。
 また、安保法制違憲訴訟の会・有岡佳次郎弁護士は、相次ぐ門前払いの判決に抗議し、「全力集中で真っ当な判断をさせる」と訴えた。
 最後に、総がかり実の菱山南帆子さんが、「コロナ第3波の拡大は、専門家の警告を無視してGoToキャンペーンを続けたからだ。菅の罪は重い。自公政権の延命は許さない、命がけの闘いだ」と訴えつつ、以下を行動提起。
 1月22日、有楽町のウィメンズアクション。
 2月18日、総がかり情宣行動(午後6時・新宿駅西口)。
 2月19日、「19の日」行動(午後6時・議員会館前)。
 菅政権の支持率は急落を続け、ついに不支持45%で支持33%を上回った(朝日新聞1月23日世論調査)。反動自公政権を打倒しよう。(東京O通信員)