12・6討論会
 東アジアはどう変わるか?
   韓国サンケン労組キム・ウニョンさんも発言

 12月6日、東京の渋谷勤労福祉会館で、「2021年・東アジアはどう変わるのか?12・6討論集会」が開かれ、反戦実行委員会の単独主催で約50人が参加した。
 新型コロナウイルス感染の拡大が続いて、世界資本主義の混迷が深まる中、アメリカではトランプ政権の政治からの転換を掲げるバイデン民主党政権が登場しつつあり、また日本では安倍長期政権がようやく退陣し、その継承を掲げる菅政権となった。いいタイミングでの討論集会であった。
 基調講演を政治学者の纐纈厚さん(明治大学特任教授)が行ない、沖縄からの問題提起を大仲尊さん(沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)、韓国からの問題提起をオンライン参加で、金恩享さん(キム・ウニョン、韓国サンケン労組副支会長)が行なった。
 纐纈さんの講演は、「アジアはどう変わるのか」の演題であったがむしろ、敵基地攻撃論にみられる安倍・菅政権の新安全保障戦略の批判、菅新政権の危険な本質、その現れとしての日本学術会議任命拒否、これらのお話しであった。
 敵基地攻撃論については、「最終的に政府・自民党は、洋上発射の巡航ミサイル攻撃として位置付けようとしており、海自主導の動き」と分析した。
 また学術会議任命拒否問題については、「単に『学問の自由』の侵害という憲法違反の問題のレベルだけに留まらず、日本国家の権力構造が反民主主義・非平和主義の思想や観念で覆われてしまっている事ではないか。任命拒否が解除されれば解決される問題ではない」と指摘した。
 大仲さんは、安倍政権の沖縄政策を仕切ってきたのが菅官房長官であり、その菅政権は沖縄にとって悪夢的存在であるが、これにどう立ち向かっていくか、これを論じた。
 当面、年度末までに予想される設計変更「不承認決定」を支持しての闘いが問われる。そして2022年問題(沖縄振興策の更新時期、名護市長選・県知事選、「復帰」50年)と続く。また、辺野古土砂投入から2年の、12・14首相官邸前行動もよろしく、と訴えた。
 キム・ウニョンさんは、前半で米国大統領選以後の東アジア情勢と闘争について、後半で当事者である韓国サンケン争議の現況と方向について語った。
 集会テーマに生真面目に応えて情勢分析をするウニョンさんが印象的であったが、彼女が「労働者・進歩勢力」の韓日双方での復権を目指していること、これがよく分かる報告であった。争議の報告では、日本で広がる本社・各営業所闘争に感謝の気持ちが述べられた。
 集会は、参加者からの自由討論が続いた後、終了した。
 (東京W通信員)


習志野など3市民が11・7オスプレイ反対集会
  日米一体化の共同訓練NO!

 陸上自衛隊に導入される17機のうち最初のオスプレイ2機が、7月10日・16日に千葉県の木更津駐屯地に配備されてから4カ月、この欠陥機オスプレイが11月以降、千葉県八千代・習志野・船橋3市の上空を飛行する危険性が強まっている。
 迫る危機に、3市民が結集して「オスプレイいらない!習志野・八千代・船橋ネットワーク」を結成、11月7日に市民集会を開催した。
 その集会は、「オスプレイいらない!習志野・八千代・船橋市民集会」。船橋市薬円台公園ステージ広場に、千葉県各地から600名の労働者・市民が結集し、集会とパレードが繰り広げられた。
 9月15日、陸自・習志野演習場で、日米合同のパラシュート降下訓練が実施されている。今後、日米のオスプレイが、習志野で降下訓練を実施する危険性は高い。演習場周辺には、
多くの学校や病院、工場のほか、高津、高根台、習志野台など大型団地が建設され、一度事故があれば大惨事は免れない。
 集会は、オスプレイいらない、「どこの空にもいらない」を合言葉に勝ち取られた。最初に、市民ネットワークの吉沢弘志共同代表が、「事故を繰り返す欠陥機オスプレイをなくすために、市民や政党が手をつないで闘い続けよう」と主催者挨拶。
 次いで各政党が、オスプレイ木更津配備の危険性や、戦争態勢のための日本学術会議任命拒否問題などについて発言。立憲民主党、社民党、日本共産党、新社会党、れいわ新選組、緑の党、市民ネット千葉県などである。
 そして、木更津住民の会の野中晃さん、配備撤回を求める署名千葉県推進委員会の加藤久美さんが連帯の挨拶。
 野中さんは、①オスプレイは、東京・神奈川・埼玉・群馬県など現在飛んでいるヘリコプターCH47と同じルートを飛んで訓練する。②オスプレイは、米軍との一体行動を含めて佐世保の「水陸機動団(日本版海兵隊)」と一緒に活動する。③米軍の指揮下で、オスプレイの整備から実戦(前線での活動)まで一体化が進められるのでは、と発言。木更津駐屯地を一大整備拠点に変貌させ、日米一体化の共同訓練となる危険を指摘した。
 集会終了後、参加者は習志野駐屯地、習志野駅までのデモ行進を貫徹。低周波の騒音、墜落の危険性等を訴え、オスプレイいらないの行動を終了した。
 5月末、北関東防衛局は沖縄米海兵隊の、また横須賀米空母艦載のオスプレイも、陸自機と合わせて整備することを通知し、木更津駐屯地を一大整備拠点に変貌させた。3~4機の整備体制を、その3倍の米軍7機・自衛隊3機の10機整備体制に変換し、二つの新格納庫も整備する。そして、2023年以降の米空母艦載機・海軍CMV22の整備によって、海兵隊型・空軍型(横田)・海軍型オスプレイがすべてそろい、自衛隊17機を含めるとオスプレイの一大拠点が出現する。木更津「暫定」使用を恒久化し、日米共同訓練の拠点とする危険性が高い。
 集会前日の11月6日には、7月10日飛来の1機が木更津駐屯地内で、ホバリングの試験飛行として、7~17mの空中に止まった状態でプロペラを回転させ、計器や油圧のチェック、操縦性の点検を実施した。
 また11月20日には、7月16日飛来のオスプレイが試験飛行を実施し、東京湾南部から相模湾にかけて上空を飛行した。11月下旬以降は、機能確認試験を行なうとしている。
 今後、習志野演習場などでのオスプレイ日米共同訓練が予想される中、12月7日には、米海兵隊MV22オスプレイが参加する日米共同訓練が、陸自関山演習場(新潟県妙高市・上越市)と相馬原演習場(群馬県榛東村)などで開始された。滋賀県あいばの演習場などに続く、オスプレイ共同実動演習である。
 訓練は、離島が敵国の攻撃を受けたとの想定のもと、日米が地上部隊を投入するもので、陸自がヘリコプターなど約400名、米海兵隊がオスプレイ6機など約500名が参加し、18日まで続けられた。
 訓練開始の7日以降、長野県などで相次ぐオスプレイ目撃情報が寄せられ、市街地上空6百mの低空を大音響で飛ぶMV22に、不安と怒りの声が上がっている。
 菅政権は、米国の指揮・統制の下、米国の戦略に貢献する仕方で覇権国家として台頭しようと目論んでいる。米軍と自衛隊のオスプレイが、我が物顔で上空を飛行するのは確実である。「オスプレイいらない!」の闘いを拡大し、菅政権を打倒しよう。(千葉A通信員)


育鵬社版教科書が採択激減
  破綻する歴史修正主義教育

 2021年の春から中学校で使用される歴史・公民の教科書で、育鵬社など「つくる会」系教科書の採択が激減した。
 文部科学省は11月18日、21年度から全国の中学校で使用する教科書の発行者別冊数を公表し、公立や私立等すべての採択数が明らかになった。日本の侵略戦争の歴史などを美化する育鵬社版等「つくる会」系教科書の採択数は、育鵬社・歴史12533冊(占有率1・1%)で、現在の使用数72482冊のおよそ6分の1。公民は4287冊(同0・4%)で、現在の使用数61183冊の約14分の1に激減した。
 また、自由社・公民は277冊で消滅寸前となった。
 日本教科書・道徳は24890冊(0・7%)で、現在の使用数10391冊の2・4倍に増加した。公立で日本教科書を採択したのは、栃木県大田原市、石川県加賀市、千葉県東葛飾東部地区(柏・我孫子・鎌ヶ谷市)で、東葛飾東部の生徒数が多いために占有率が増大した。
 しかし、全体として「つくる会」系教科書の減少傾向は鮮明である。
 20年7月27日、東京都教育委員会は都立中学校教科書の採択を実施、都立中高一貫校10校、特別支援学校10校のすべてで、育鵬社版歴史・公民が不採択になった。
 全国に先駆けた都の不採択を皮切りに、神奈川県藤沢市、愛媛県松山市、全国最大部数の横浜市と続き、名古屋市でも新たな採択が阻止された。
 機関誌も出せないほどに行き詰まった日本教育再生機構(理事長・八木秀次)は、目標の10万部採択に失敗した。今まで以上の援助がなければ、八木らが関与してきた育鵬社・日本教科書の発行を続けることは難しい。
 安倍政権は、2014年の教科書検定基準改定をテコに、学習指導要領や解説書による教育内容への踏み込みを行なってきた。模範になる記述としての「つくる会」系教科書の採択推進は、その姿となった。
 しかし安倍政権の終了とともに、その反動教育推進の重要な柱・教科書改変は、挫折しつつある。歴史修正主義教育は、一つの基盤を喪失しつつある。

  その諸要因

 育鵬社版教科書の激減は第一に、闘いによって勝ち取られたものである。多くの市民・教育労働者が、より良い教科書を子どもたちに届けるために育鵬社教科書の反動的内容をひろく明らかにし、教育委員会採択の制度下でも、採択のための教育委員会会議の公開性・透明性の徹底化に取り組んできた。これら闘いの蓄積が、中学校教科書の採択で育鵬社激減の結果を生み出した。
 名古屋市では、8月7日の教科書採択会議に80名の傍聴者が駆けつけ、53の労働組合・市民団体および361名の個人からの要望書を集中して、育鵬社歴史教科書の採択を阻止した。歴史修正主義の側に立つ河村たかし市長の意を受けた教育長の就任も、市民の闘いの前に無力だった。
 二つめの要因は、安倍首相の退陣表明(8月28日)に至る政権側の動揺によって、上からの政治的思惑による教科書採択の策動ができなくなったことだ。安倍という支えを失い、教育委員や首長がリーダーシップを持って採択を推進しにくくなったのではないか。
 さらに女性差別、ヘイトスピーチなど差別を許さない運動が、米国のBLM運動の高揚と連動して日本でも拡大し、また安倍9条改憲が頓挫したことによって、日本会議など右派の活動が弱まり、教科書展示会や教育委員会請願・傍聴に参加する意欲を削ぐことになった。これが三つめの要因である。
 また、現場では、育鵬社の教科書は使いにくいとの評価が圧倒的で、この批判の反映が採択に大きく影響したことも事実だろう。
 以上のように、闘いを主因として、「つくる会」系教科書を激減に追い込むことができた。しかし油断は許されない。闘争を拡大し、壊滅に追い込む必要がある。他社の教科書には、日本の侵略戦争や植民地支配を公然と美化し、日本国憲法の基本原則を軽視してその改悪を打ち出すような極右性は見られない。しかし、このかんの教育基本法改悪、学習指導要領と教科書検定基準の改悪によって、検定教科書が全体として右傾化していることも事実である。反動勢力が、これらの改悪された法・施策をテコに、巻き返してくることも充分予想される。
 教育委員会採択の透明性と公開性、資料や会議録の公開を要求し、教育現場の意見を尊重した採択を実現させる闘いを、今後も継続・発展させる必要がある。
 安倍政治の継承を掲げる菅政権は、国家権力による教育内容統制という前政権の教育政策の基調を引き継いでいくことになる。菅政権の教育政策と闘い、子どもたちがより良い教科書で学べるよう奮闘することが求められる。共に闘わん!(O)