韓国サンケン労組支援!本社闘争を全国へ
  解散撤回・解雇阻止が山場

 韓国サンケン労組の企業閉鎖撤回を求める闘争について、日本での支援闘争を中心に現況を報告する。前回の報告(本紙9月1号)は、7月9日突然のサンケン電気本社取締役会による韓国サンケン解散決定から、9月3日の東京での「韓国サンケン労組を支援する会」の結成までの報告であった。
 その後、この「支援する会」再結成集会で確認された、毎週木曜日の①サンケン電気本社(埼玉県新座市)に対する社前早朝行動、②本社最寄駅の東武東上線志木駅での駅前情宣、そして③昼休み時の東京事務所(池袋)への申入れ・抗議行動が、9月10日以降、天候にかかわりなく毎週行なわれている。
 毎週木曜の早朝7時に、志木駅南口(こちらは新座市になる)に集合し、サンケン電気本社までは徒歩15分ほど、そこには「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」の先発隊が準備活動を終了し、抗議活動にすぐに入ることができる。
 社前には、韓国民主労総金属労働組合慶南支部韓国サンケン支会の横断幕、のぼり旗が張られ、「支援する会」「埼玉市民の会」ののぼり旗、そして日本の全労協と加盟労組ののぼり旗が立ち、参加する人々に、韓国サンケン労組潰しのための会社解散・清算を許さないとの熱気がみなぎる。毎週の参加者は、全労協系の労働者、解雇撤回などを闘う争団連系の労働者、日韓民衆連帯運動の関係者、そして何よりも新座を中心とする埼玉市民の人びと。
 これら参加者は、「支援する会ニュース」を通勤途上のサンケン労働者や周辺住民に配布し、また終始、抗議のボードを掲げている。
 サンケン電気本社側は、担当者が一切出てこず、ガードマンの対応だけであるのは、3~4年前の解雇撤回争議の時と同じである。当時との違いは、当該韓国サンケン労組の遠征団がそこには来れず、日本人支援者のみという状態であること。これが、コロナ禍での渡航制限を利用して攻撃しかけてきた、本社側の姑息な策動の結果といえるだろう。
 しかしながら、オンラインの映像と音声によって、キム・ウニョンさんをはじめ韓国サンケン労組のメンバーの怒りと生の声を、本社に叩きつけることができている。これは、志木駅南においても、東京事務所前においても、同様の措置が実現している。本社前行動は、支援各団体からの連帯アピールを交え、出社時間を過ぎる8時半頃には、全員で本社にシュプレヒコールをあげて終了する。
 続く志木駅前では、本社前と同様の行動ばかりではなく、近隣在住のシンガーであるジョニーHさんが加わって怒りの替え歌が歌われたり、4年前も参加していた所沢労音の方々による獅子舞なども披露されるなど、多様な市民宣伝が行なわれている。ビラの受け取りも大変よく、話しかけてくる人も多々見受けられる。
 池袋の東京事務所は、以前と違い池袋駅南口に移転しているが、当初入り口を固く締め、不誠実な対応に終始していたが、10月22日からは、4年前に対応していた総務の人が出てきて、支援側代表との面談が可能となった。しかし、話を聞くだけという不誠実さは変わりがない。
 このかんの諸行動には、常に三~四十名が参加し、闘いの熱意があふれている。
 10月18日には、和田節・サンケン電気社長宅(西東京市田無)に要請行動が行なわれた。社長不在とのことで(隠れていたのかもしれないが)、要請文を読み上げ、抗議のシュプレを上げた。このあと田無駅前で情宣活動。
 このほかには、10月11日の池袋集会(2面参照)では、韓国サンケン闘争の紹介と当該アピールなどが行なわれ、10月30日の東京全労協による東京総行動では、その一環としてサンケン東京事務所への抗議行動が取り組まれた。
 韓国では、日本遠征が困難な中、韓国でできるあらゆる行動が取り組まれている。韓国サンケン社前での毎朝行動、馬山自由貿易地域の行政要請や、日本の釜山領事館・ソウル大使館への要請行動、韓国国会闘争などである。
 10月7日には、金属労組が国会前闘争で記者会見を開き、コロナ危機に便乗して解雇・廃業・労組破壊を行なう事業所への国政監査を要求した。
 以上のように現在のコロナ禍においても、韓国サンケン労組支援の国際連帯は進展しているが、サンケン電気は内外に工場・国内各地に営業所を持つグローバル企業であり、その全体に対して、本社の卑劣な不法行為を正すための圧力を強めることが求められている。
 来年1月20日が、韓国サンケンの雇用契約期限とされている。会社清算手続きが進めば、この日に全員解雇となってしまう。不当解雇阻止が、まさに緊急の課題となっており、日韓労働者連帯・民衆連帯の真価が問われている現況だ。サンケン電気への闘いを全国で進めよう。(東京Ku通信員)


最高裁
10・13メトロコマース・大阪医科大非正規裁判で不当判決
10・15郵政非正規裁判で勝利判決

  
問われる非正規賃金差別の本丸

 最高裁判所第三小法廷は10月13日、正社員と非正規社員の待遇格差をめぐる2件の上告審について何れも、退職金や賞与が有る無しの格差は、労働契約法20条(今年4月以降のパートタイム・有期雇用法8条)に違反しないとする不当判決を出した。非正規労働者の待遇改善、また最低賃金改善を求める時代の要請に、まさに逆行した驚くべき判断である。
 この内、東京メトロ子会社メトロコマースの契約社員が、退職金の支給を求めていた件では、非正規は何十年勤続しても退職金ゼロでよいとする判決となった。判決は、「業務の内容をみると、正社員とおおむね共通する」と言いながら、「職務内容や配置変更に一定の違いがある」と決めつけて主な理由とし、また「正社員登用制度があった」からと別な話も持ち出して、「契約社員に退職金を出さないという労働条件の違いは、不合理とは認められない」としている。
 この最裁判決は、4分の1の退職金支給を認めた東京高裁判決すら否定してしまった。
 また、大阪医科薬科大学のアルバイト職員が、賞与の支給を求めていた件では、6割の賞与支給を認めた大阪高裁判決を否定し、ボーナスゼロに逆行している。判決は、「同大の賞与は、正職員として職務を遂行しうる人材の確保やその定着を図るなどの目的から支給する」ものであるとして、経営者の賞与支給目的を主な理由とし、また、研究室秘書の「原告の業務は相当に軽易である」などと決めつけ、「アルバイトに賞与を支給しないという労働条件の違いは、不合理とは認められない」としている。
 他方、最高裁判所第一小法廷は10月15日、日本郵便の正社員と契約社員との待遇格差をめぐる3件について、諸手当などの格差を労契法20条に反する不合理なものとする正当な判決を出した。「扶養手当」「年末年始勤務手当」「年始祝日の賃金割増」、また「病気休暇」「夏期冬期休暇」の5項目について、格差是正を命じた。「相応に継続的な勤務」であれば、主要な諸手当・休暇については差別を認めない判決である。
 この郵政非正規裁判は、「住宅手当」を含め、このかん各地の地裁・高裁で勝利判決を重ねていた。非正規の最大職場である日本郵政で、今回の最裁判決が確定し実行されるならば、その意義は大きい。アルバイトなど契約社員以外の郵政非正規労働者の待遇改善はもちろん、2100万人といわれる日本の非正規労働者全体に好影響する。
 原告側労組の郵政ユニオンは、このかんの裁判闘争方針として、非正規格差の本丸としての「基本給、賞与、退職金」にはあえて触れず、諸手当の格差是正を突破口として臨んできた。それが効を奏した。労契法などが言う「均衡待遇」を利用し、「均等待遇」に一歩近づいたのである。
 結局、非正規をめぐる連続した最高裁判決では、「賞与、退職金」と「手当」での対照性が際立つこととなった。
 メトロコマース事件と大阪医科大事件の2つの最裁判決でも、「労契法20条は、労働契約が有期であることによる不合理な格差を禁止したもの」であるから、「賞与や退職金についても不合理と認められる場合はあり得る」としている。賞与・退職金ゼロが判例として定着するわけではない。判決の要所は、「その判断については、賞与や退職金の性質や支給目的などを考慮するべきである」として、個々の経営者の裁量に委ねた点にある。
 裁判官の判決補足意見では、「労使交渉などで、均衡のとれた処遇を図ることは、法律の理念に沿う。在職期間に応じて一定の退職慰労金を支給することも考えられる」と述べつつ、しかし「退職金制度は、社会経済情勢や使用者の経営状況にも左右され、使用者の裁量を尊重する余地は比較的大きい」としている。
 宇賀克也裁判官は反対意見。4分の1支給の高裁判決を是認し、「退職金は継続的な勤務への功労報償という性質を含み、契約社員にも当てはまる」と主張した。
 つまり最裁判決の裁判官の法論理は、退職金や賞与は賃金の一部分ではなく、賃金とは別の性質・目的があるとする点で共通し、裁判官多数派は、したがって経営者の裁量が尊重されるとするものである。
 しかし、「賞与、退職金」は賃金の一部分である。夏冬賞与は、半年間の賃金の一部分を後払いするものであり、退職金は、一定勤続年数の間の賃金の一部分を後払いするものである。「基本給プラス手当」のみが賃金なのではない。
 日本でここ三十年ほどの間に広がった非正規雇用は、この「賞与、退職金」という後払い賃金を消滅させ、総賃金を大幅に縮減させることを主たる目的の一つとしている。この結果、年間賃金と生涯賃金でひどい格差が生まれ、日本の6千万賃金労働者は、正規と非正規の2つの「階級」に分断されてしまった。
 非正規雇用が広がる以前は、日雇雇用・季節雇用などを除き、「賞与、退職金」は戦後日本の賃金制度として、大企業から中小企業まで(その額には極端な格差があったが)常識化されていた。「賞与、退職金」は、最裁判決が言う「正社員の人材確保や定着を図る」目的から始まった(だから非正規には支給されない場合もある)のではなく、ほとんどの労働者が直接雇用の正社員だった時代から存在していた賃金制度である。
 したがって、今後のあるべき労働政策としては、①「賞与、退職金」を、「功労報償」等として恣意的に扱うのではなく、支払わなければならない賃金の一部分として法的に明確に位置づけること、②したがって「賞与、退職金」支給を、個々の経営者による職務評価や裁量に任せることなく、非正規労働者に支給される単純明快な規準(勤続期間、正規と比べた支給割合などの最低基準)を法的に定めることが必要である。この法に基づく労使交渉が推奨される。そして③時給労働者の最低賃金は、「賞与、退職金」が年間賃金・生涯賃金の一部であることを考慮に入れる面からも、大幅にアップされるべきである。
 政府は、今年4月のパート・有期雇用法施行に先立ち、非正規「均衡処遇」のガイドラインを出した。「合理的な格差」と「不合理な格差」を振り分け、非正規労働者の要求を統制しようとするものである。10・13最裁判決のゼロ回答には呆れたが、今後の司法判断と政府の政策は、この「格差」振り分け策で来るはずである。
 賃金差別の「本丸」を崩すことを視野に入れて、非正規運動は長期戦に入った。(W)