菅打倒の政権交代へ
   アベ「官邸独裁」政治も継承では、先はなし

 9月16日、安倍政治の継承を掲げる菅義偉首相の自民・公明連立政権が発足した。8月28日には、安倍首相が新型コロナ対策をはじめとした内外政策で行き詰まり、また世論の批判と安倍打倒の共同行動に追い詰められて辞任を表明していた。続く自民党総裁選の報道一色で国民をたぶらかしつつ、第二次安倍政権で官房長官をずっとやっていた菅が、新首相に横滑ったものである。
 菅政権の性格をどうみるか。菅は16日の就任会見で、「安倍政権の取り組みをしっかり継承していく」と基本姿勢を再表明しつつ、新しい文言として「目指す社会像は自助、共助、公助、そして絆だ」と述べた。また、「規制改革を、政権のど真ん中に置いている」とも述べた。
 「自助、共助、公助」は社会生活でどれも欠かせないが、国の予算を決定・執行するのが仕事である政府閣僚や国会議員は、まず「公助」を第一に掲げ、課題としなければ失格である。しかし菅は、「自助」を筆頭に掲げて、コロナ禍で苦しむ国民に自分で何とかしろと突き離し、「規制改革」で営利企業を野放しにしたいとしている。これでは、安倍以上に露骨な新自由主義政権である。
 安倍政権の特徴であった「官邸独裁」は、菅政権で変わるのか。菅自身が、内閣人事局による官僚人事支配の要であったし、また、森友「公文書改ざん」事件主犯の佐川理財局長を国税庁長官に栄転させて「適材適所」と言い続けたヤカラである。菅は就任会見で、森友問題は「結論が出ている」と繰り返して犯罪究明を拒否し、桜を見る会問題では、安倍による中止策を継承するのみで、安倍の選挙区買収事件であることを隠し続けている。
 首相補佐官とか秘書官とか呼ばれる「官邸官僚」はどうなったか。不評のアベノマスクを進言した佐伯耕三は経産省に帰されたが、全国一斉休校という教育不当介入を推進した今井尚哉は菅官邸に残った。菅とともに、その側近として辺野古埋立て強行を担ってきた和泉洋人も残っている。和泉は、加計学園事件で安倍の手先ともなった。
 閣僚人事でも、財務相再任の麻生、官房長官になった改憲派筆頭の加藤勝信など多くが継続である。
 安倍は9月11日、「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」についての談話なるものを発表して、今年末までに新方針を出すとし、辞める人間が勝手にレールを引いた。これは、敵基地攻撃能力の保有という先制攻撃可能な憲法違反の軍事態勢を構築しようとするものであるが、菅政権はこれも継承する。そこで安倍の実弟・岸信夫が、防衛相で初入閣した。
 結局、安倍から菅への移行は、周到に用意されたものと考えられる。国民運動の力によって安倍を打倒したと見るならば、現在の力関係を見誤ることになる。しかし、安倍を続けていれば自民党の執権が不利になっていくばかりであるという状況を作ったのは、このかんの安倍打倒の継続した共同行動であると言うこともできる。とくに、昨年参院選で改憲派3分の2を割らせたことを始め、「安倍9条改憲」をついに破綻させたことは闘いの大きな成果である。
 こうした微妙な力関係の中で、総選挙が近づいている。直面する「政権交代」は、資本主義と日米同盟の枠内での政権交代であるほかはない。ならば、日本・世界の根本的変革をめざす我々にとって、この政権交代はどうでもよいことなのか。
 決してそうではない。この当面の政治転換を舞台として、我々が味方を増やし、友を獲得し、「第3極」政治勢力の地歩を拡げることができるのかどうか、これが試されているのである。(了)