東海第二原発  8・14東海村一日行動
 再稼働前提の工事やめろ

 「首都圏壊滅への道・東海第二原発」、その再稼働阻止の闘いは正念場にある。
 東京駅から116キロの「首都圏原発」、東海第二原発では、昨年から防潮堤の準備工事が始まり、今春から本格化している。再稼働を前提とした工事であるが、地元説明会も行なわれていない。首都圏の市民によって、工事を止めるよう昨年11・27、今年4・1と、事業者・日本原電の本店に署名提出行動が行なわれた。会社は署名を受け取ってはいるが、要求を無視している。
 この情勢下の8月14日、「26年目の《六ヶ所ピースサイクル》in東海村行動」は打ち抜かれた。行動には20名近くの労働者・市民が参加。東海村役場申し入れ、東海第二原発抗議など一日行動が展開された。主催は、ピースサイクル2020全国ネットワーク常磐線ルート。
 この行動での東海村の発言や、日本原電東海第二の回答書などから、現況を報告したい。
 行動に先立つ6月23日には、茨城県議会が本会議で、「東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例案」を反対多数で否決した。議長を除く議員58名のうち、原発産業を抱える日立グループ労組の支援を受けた国民民主系会派、公明・自民を合わせて53名が反対し、賛成は共産、立憲民主など5名のみであった。条例案は、住民団体が法定必要数の1・78倍に当たる8万6703筆もの署名を集めて直接請求され、知事がそれを受けて8日に県議会に提出したもの。再稼働推進勢力は、住民・県民の願いを無視し、全力で葬り去った。

 東海村の回答

 東海村行動は、JR常磐線東海駅前でのミニ集会で幕を開けた。
 地元の支援者は、県民投票条例案否決をめぐって発言。「知事は意見表明をせず、情況を見ているようだ」と感想を述べた。そして、2022年12月までに安全性向上対策等の工事に係わる検査が終了する、という方向で再稼働が進められている旨報告した。
 自転車隊から出発の決意表明がなされ、「市民と東海第二原発の再稼働を阻止する」決意が述べられ、また北海道寿都(すっつ)町の応募検討に関連して、「町が2分されるにちがいない。反対する住民と結合して最終処分場決定を必ず阻止する」と発言した。(高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた政府の文献調査に、寿都町・片岡町長が8月13日、応募を検討していることを表明した。調査受け入れで「20億円の交付金」をもとに政府は、人口減少や財政難の自治体に揺さぶりをかけている。)
 集会終了後、自転車隊は拍手に送られて青森県六ヶ所村に向けて出発、闘いは第二ステージへ。
 東海村役場申し入れ行動では、日本原電による安全対策費用3千億円の資金調達状況、安全対策工事の取り組み、東海村による避難計画など10項目の質問がなされ回答を得た。
 安全対策工事と再稼働との関係については、東海村は、「安全性向上対策工事に係る使用前検査については」2020年「4月17日に原子力規制委員会へ申請書が提出されていますが」、「五号検査である『発電用原子炉の出力運転時における発電用原子炉施設の総合的な性能を確認する検査』及び『その他工事の完了を確認するために必要な検査』の実施に伴う原子炉の起動については未定」と回答した。そして、質問書の「2022年12月までに検査を終える」との期日については全く触れず、肯定も否定もしなかった。初耳の「五号検査」。6市村向けの煙幕なのか。
 再稼働時期については、日本原電東海第二の回答書と同様に、「使用前検査の申請書における『原子炉施設の使用開始の予定時期』等については」、「届け出た発電用原子炉施設の工事計画における工事の終了手続上の整合を図ったものであり、確定したものでは」ないとし、「使用前検査の申請及び受検対応は」「発電所の稼働及び延長運転に直結するものでは」ないと回答した。
 村は、原電の見解をそのまま伝えているだけで、主導権は事業者にあるとの危惧を持った。
 安全対策とその費用について村は、防潮堤等の浸水対策工事、耐震補強工事、難燃ケーブルへの取り換え・防火シート設置等の火災防護対策工事等を上げ、工事費用は1740億円と従来と同じ回答をした。そして、「防潮堤設置場所周辺の干渉物撤去や地盤改良、埋設ケーブル等の干渉物移設、主排気筒の耐震補強…等を行なっている状況」と説明した。
 質疑では、「難燃ケーブルへの取り換えも百%はできない。事故の危険性は常にある。6市村との新協定では、事前の了解を得ることを明記している。村が、積極的にこの茨城方式を活用し、徹底して村民の安全を守る姿勢を示さなければ、再稼働は強行されてしまう」との参加者の発言があった。
 しかし村は、「安全に係わる工事は再稼働には直結しないので、反対する内容ではない。」「今は再稼働について判断していない」、従って「工事は再稼働に関連するものではないと判断している」などと答えた。
 また、コロナ禍の避難計画について村は、「責任を放棄するわけにはいかない。努力したい」と発言。昨年は、訓練を通して検討を重ねていけば計画は作れるとの自信のある姿勢を示していたが、今年は控えめな表現に大きく変わっている。

 日本原電の回答

 昼食後、闘いは第三ステージに突入、東海第二原子力発電所申し入れ行動が取り組まれた。昨年に続いて原電は会見を拒否、回答書の受け取り行動となった。
 原電との会話では、原発は脱炭素化に重要との発言があった。回答書にも、原発は「脱炭素化の選択肢として位置付けられ」、「安定供給・経済性・環境+安全の観点から」「バランスが優れる原子力発電の役割は大きく、将来に亘って」「一定規模確保することが必要」と記述されている。
 原電が環境問題も口実にして東海第二の再稼働を強行し、企業の生き残りをかけてくるのは確実だ。一日行動は、原電への闘争をもって終了、再稼働阻止の決意をあらたに解散した。(首都圏O通信員)


六ヶ所再処理工場が7・29適合
 なぜ再処理稼働
  に固執するのか


 7月29日、原子力規制委員会は、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ヶ所村)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定した。工場は、正式に審査を通ったことになる。
 再処理工場は、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、燃料として繰り返し使う国策「核燃料サイクル」の中核施設で、審査適合は本格稼働に向けた一歩になる。しかし、プルトニウムを利用する高速増殖炉の原型炉もんじゅ(福井県)はすでに廃炉決定となり、高速増殖炉開発は頓挫している。取り出したプルトニウムをウランと混ぜてMOX燃料とし、これを利用するプルサーマル発電も計画通りに進んでいない。核燃サイクルはすでに破たんしている。
 それでも政府が、再処理工場を稼働させようとしているのはなぜか。一つは、各原発から出る使用済み核燃料を少しでも処理し、各所で満杯になりつつある保管プールに少しでも空きを作ろうということだ。
 しかし、フクシマ事態後、原発稼働はひどく低下し、プルサーマル発電はその一部という状態では、使用済み核燃料の処理は進まない。日本のプルトニウム保有量を今以上増やすこともできず、MOX燃料化も進まないとすれば、再処理工場の稼働率は低迷し、日本原燃の採算は成り立たない。超危険なフルMOX燃料の大間原発(青森県)、この建設強行は日本原燃のためなのかという話になる。
 もう一つの狙いは、日本の核武装能力の保持ということだ。日本は、日米原子力協定によって、核拡散防止条約で言う「非核兵器国」の中ででプルトニウム抽出が公然とできる唯一の国である。歴代政府は、核武装能力の保持が抑止力になると言ってきたが、東アジアの軍拡・核軍拡の抑止に全然役立たず、逆である。再処理工場稼働は、東アジア軍拡競争の促進要因となる。
 もっとも再処理工場は、適合後も詳細な工事計画の審査等が続行され、2021年上半期とされる完成は困難であり、稼働時期も見通せない。工場の着工は1993年、トラブル続きで完成時期が24回も延期され、総事業費は13兆9千億円超に及んでいる。破綻した計画に莫大な無駄な費用、即刻中止すべきだ。(A)