コロナ再拡大は安倍の人災
  安倍政権打倒の次は、資本主義制度の廃止だ!


 新型コロナウイルス感染が7月初旬以降、東京・首都圏、大阪などで再び急速に拡大している。7月29日には、一日当たりの全国の新規感染者数が初めて1千人を超え、また大阪府221人をはじめ愛知、福岡、沖縄などでも過去最多数を確認した。この日、関東圏帰りの人の陽性確認によって、岩手もついに「落城」した。
 さらに30日1308人、31日1571人と過去最多を更新し続け、とくに東京都は、31日463人と前々日250人の倍近い数で、感染爆発的な様相となっている。
 3月~4月の感染拡大を「収束」させたとして、安倍政権は、5月25日緊急事態宣言を解除した以降、感染再拡大に備えないまま、6月18日全国往来制限解除、7月22日「GoToトラベル」実施開始の強行と、安易に経済活動の再稼働に転じてきた。その結果がこれである。

 非常時の攻防

 7月16日の参院閉会中審査で、参考人の児玉龍彦東大名誉教授らが、「東京・埼玉型ウイルスの震源地制圧を、今すぐ総力で開始しなければ、2週間後には目をおおう事態になる」と警告していた。しかし安倍首相や小池都知事は馬耳東風で、この警告の通りとなってしまった。
 現在の再拡大は、第2波というより、PCR大量検査なしの見かけだけの第1波「収束」、これが露呈し、人の動き再開とともに再燃しているものとみるべきである。また、東京の特定地域から、全国各地にウイルスが伝播したという特徴がある。再拡大に対策を打たず、逆に感染促進策を政府が取ったのであるから、まさに人災である。安倍政権に、重大な過失責任がある。
 また沖縄県では、首都圏からの伝播だけでなく、在沖米軍からの感染が筒抜けとなった。米軍は日米地位協定によって、フリーパスで最大感染国・米国から往来する。玉城デニー知事は7月15日上京して、米軍の沖縄への移動停止、クラスターが発生したキャンプハンセンおよび普天間基地の閉鎖、感染者の詳細情報の提供などを、米側に求めるよう日本政府に要求した。月末になって日米当局は、来日する将兵全員のPCR検査などで合意したが、実効性は疑われる。
 繰り返すが、現在の再拡大は人災である。にもかかわらず、安倍首相は通常国会が6月に閉会したことをいいことに、国民の前から逃亡し、コロナ再拡大に対処する行政の最高責任を放棄している。立民、共産など国会野党は、当然ながら臨時国会開会を要求しているが、これにも自公は応じない。
 新型コロナ再燃の非常時に、国権の最高機関とされる国会が機能せず、行政府が安倍のような無責任で極右の人物の勝手放題となり、敵基地攻撃能力保有を提言する等の状態となっていることは、コロナ拡大以上に危険な事態である。
 議会制民主主義からいうと、何が言えるのか。コロナ対策に失敗し、かつ責任を取らない安倍首相は直ちに退陣を表明し、与野党は国会を即時開いて、コロナ対処等のための緊急暫定政権を作り、主権者国民の不安に応える必要があると言うべきだ。総選挙は、感染が小康状態になってからでもよい。国会を開くことすらできないというのであれば、それは議会民主制の死であり、我われ国民には革命権を行使する時が来たということになる。
 それはともかく、野党が憲法53条に基づいて臨時国会開会を要求するというのは、2017年6月にもあった。安倍政権・与党はこれを無視しつづけ、同年9月末に開会して冒頭解散し、小池「希望の党」による野党分断を仕組んで、10月総選挙を勝利させた。
 このときは背景に、朝鮮半島危機があった。今回はコロナ危機である。自民党は、コロナ統治に失敗し支持率を下げる安倍政権の下では、議席減は避けられない。安倍首相のまま惰性で、来年9月総裁任期・10月衆院任期が近づくというのが自民党にとって最悪パターンである。延期東京五輪やっぱり中止、この結論が出るであろう以前に、解散・総選挙をやってしまう選択となる。安倍が、コロナ制圧のために緊急事態条項憲法改正!を掲げて、最後の勝負をかけてくることもありうる。
 そこで「大阪維新の会」が、自民減をカバーして与党入りし、自公・維新連立政権をつくる策動となる。自民と維新は、コロナ再燃をむしろ奇貨として、新型コロナ特措法だけでは足らない、やはり緊急事態改憲が必要だとすることで一致している。
 維新はこのように緊急事態改憲論者でもあるが、典型的な新自由主義者であり、その当面の最大眼目は大阪都構想の実現である。都構想の是非を問う再度の大阪市住民投票(11月1日投票予定)が可能となったのは、維新と公明の取引き・手打ちであった。維新の吉村大阪府知事・松井大阪市長は、今秋総選挙となれば、大阪市住民投票を同日選にもってくる。
 このかん吉村知事は、小池東京都知事以上に、コロナ規制緩和で全国各知事の先頭を進んできた。小池は、都独自の休業協力金50万円などで貯金(財政調整基金)をかなり使ってきたが、吉村は、大阪府の貯金を都構想のために温存し、コロナ補償には使わない。松井市長の休業協力金はたった10万円。それで大阪では、維新が牛耳る府市に対して、「都構想再投票を中止し、コロナ対策を!」と求める市民の行動が始まっている。
 東京都知事選(7月5日投票)では、維新推薦の小野泰輔が、熊本県副知事から転じた新人であるにもかかわらず、小池、宇都宮、山本に続く61万票を取り、新自由主義支持層の存在感を示している。コロナ自粛にあきあきした気分を背景に、維新が関西外でも伸びる可能性がある。
 なお、宇都宮健児と山本太郎の合計得票は150万票にとどまり、反安倍・小池、新自由主義反対の陣営の頭打ち状態を示している。総選挙1人区の野党1本化が、そこそこうまくいっても、この程度では厳しい。

 問題は、コロナではなく社会制度

 しかし総選挙よりも、まずは感染爆発を阻止することが先決だ。
 PCR検査等の飛躍的拡大、休業補償・賃金補償を伴った規制強化、全国一律ではなく対象地を特定した対策強化、医療・介護・食料品供給・生活インフラ維持などエッセンシャルワーカーへの危険手当支給など公的支援、すべての労働者の感染防止のための休業権・ストライキ権の保証、これらが必要だ。
 新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言の再発動には、断固反対する。結局、コロナ特措法は、安倍の改憲意図が先行したもので、休業と補償をセットとしない、政府と知事が責任転嫁し合う等の使えない欠陥法であることが明らかとなった。
 感染が続くこと自体が問題なのではない。感染爆発で重症者などへの医療対処が崩壊すること、また、経済規制が失業・廃業として弱者にしわ寄せされる社会的災害が問題なのである。問題は社会制度にある。格差を均して助け合えば、7割程度の縮小経済であっても、充分人間的生活はできる。これを暫く続けると、集団免疫ができて感染は終わる。
 しかし、成長だV字回復だと言って個々の企業が利益を求め、利潤原理で動静が決まる資本主義社会では、「経済再開」と「感染対策」との矛盾は避けられない。コロナ禍によって、資本主義システムの終わりが明瞭となった。新しい社会システムの創造が始まったのである。(記7月31日)