中央最賃審議会、7・22「据え置き」答申の暴挙
  審議会委員は最賃で暮らしてみろ!

 7月22日、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、今年の最低賃金の改定について、「現行水準の維持」を打ち出した。
 中央審議会の答申は、地方最賃審議会の答申の目安を出すもので、最終的には各都道府県ごとの地方審議会が、それぞれ地方の最賃改定の答申をして決定される。しかし現在まで、地方審議会は中央審議会の出した目安にほとんど従った答申しか出していない。
 「現行水準維持」ということであれば、全国加重平均で時給901円だ。実際はこれを上回るのは7都府県だけで、他の40道県はこれより低い。現行では東京都の1013円が最高で、鹿児島県など15県が最低ランクの761円となっており、近年は地方間の格差拡大が続いている。
 時給901円で計算しても、1日8時間、月20日働くとして、月収にしたら14万5千円弱だ。税金や年金などを差し引いたら、月13万円程の収入しかない。とても生活できないので、多くの人が過重な残業や、二つの仕事をかけもつダブルジョブをしなければならなくなっている。文化的な生活どころか、一度病気にでもかかったら、そのまま生活破壊に陥ってしまうのが現状だ。
 いま、私たちの生活を支えている生活インフラの仕事、例えば物流を担うトラックの運転手、スーパーのレジ・在庫管理者、介護施設のヘルパーさんたちの多くが、時給で働いている非正規の労働者だ。皆、最低賃金を目安として時給が決められている人たちだ。
 中央審議会は、今年は新型コロナウイルスの影響で最低賃金を「現行水準」に据え置くと言っているが、時給で働き最低賃金に影響されている労働者の多くが、新型コロナ感染の危険に最もさらされた状況で働く以外にない人たちだ。新型コロナの影響を言うならば、時給で働き、新型コロナ感染の危険にさらされながらも生活インフラを支えている、これらの人びとに、最低賃金引き上げで報いる必要がある。
 最低賃金は、社会の貧困の問題だ。人は当たり前の生活をするのに、いま月25万円は必要だ。年収にすれば300万円だが、これ以下の生活の人びとを貧困層という。時給にすれば1500円だ。最低賃金1500円は、日本から貧困をなくす必須の課題だ。
 最低賃金審議会の委員は、労働・経営・公益の三者構成であるが、中央も地方も、最低賃金レベルの給料で働いている人はいない。労働者側の委員にもいない。経営者側委員には、労働者を最低賃金ぎりぎりで働かせている人たちが、たくさんいる。これでは審議会に臨む労働者側と経営者側の気合いが、圧倒的に異なる。最賃審議会が経営者側優位で運営されるのは、目に見えているのである。
 最賃審議会の労働者側委員を、時給で働く非正規労働者を代表する委員に入れかえることが必要だ。「最賃審議会委員は、最賃で暮らしてみろ!」と言いたい。
 (ユニオン組合員S)
 
  アフター・コロナの社会改革と連動

 上記Sさんは、最賃審議会委員に最賃レベルで働く当事者を入れろ、と指摘している。これは、最賃決定における「当事者主義」原則の適用といえるだろう。
 この要求を含めた、最賃大幅引き上げを求める署名運動が、このかん行なわれていた。2月から5月末まで展開されていた、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークによる「今すぐ1000円以上、速やかに1500円」の最賃署名運動である。
 その要求は、中央最賃審議会会長に対し、①最低賃金を今すぐ全国どこでも時給1000円以上、速やかに1500円との答申を行なうこと。②中央、地方最低賃金審議会の審議をすべて公開するとともに、低賃金で働く当事者を委員に入れること。③最低賃金のスムーズな引き上げを実現するため、中小零細企業に対して特別な支援を行なうなど、答申に盛り込むこと。以上3項目であった。
 この署名運動は、コロナ禍の困難もあったが12都府県で展開され、6月22日に7806筆の署名が提出された。
 しかし中央最賃審は、今回の答申によって、この署名要求をことごとく拒否した。新型コロナ情勢を口実に「引き上げ額の目安を示すことは困難」と言いつつ、あえて「現行水準を維持することが適当」としてゼロ目安を示したのである。
 今後の地方最賃審議会による都道府県ごとの最賃決定は、8月中旬までにはすべて決まるだろう。地方最賃審を包囲し、1円でも2円でもゼロ目安を突破させる闘いが問われている。新型コロナ感染の影響は全国一様ではなく、また中小企業への影響が深刻な地方であっても、コロナは現状の低すぎる最賃を維持する根拠にはならない。
 むしろ、このかんのコロナ対策としての中小企業支援・休業賃金補償・個人直接給付を拡充させることと連動して、最賃改善対策としての新政策(中小企業の社会保険料負担減免、最賃引き上げ分の国庫補助など)を実施させることが必要だ。コロナ対策と最賃対策との連動で、社会的富の再分配、アフターコロナの公正社会を展望すべきである。
 最賃審議会の制度改革も問われる。厚労省も本審の公開は通知している。しかし小委員会も公開されねば意味がないと批判されている。そして当事者委員の新設は、今後の大きな課題である。
 また、地方間格差が拡大するなか最賃決定の大きな制度改革として、現在の地方別最賃制を廃止し、全国一律最賃制に改めることを求める世論も大きくなっている。
 全国一律制導入のためには、最低賃金法改正が必要である。この運動はこのかん、全労連を中心に行なわれ、来年通常国会に改正案提出(22年に成立、5年の経過措置を経て全国一律制へ移行)を目標とする。自民党の中にも、地方の雇用環境改善と中小企業支援、東京一極集中是正の観点から、全国一律制を求める流れがある。与野党の合意が成れば、法改正へ進む可能性がある。
 また日本弁護士連合会も2月20日、全国一律制を求める意見書を発表した。日弁連会長も6月3日、今年の最賃審議に向けて、最賃引き上げと全国一律制実施の検討を求める会長声明を出した。
 これに対しても、中央最賃審は答申で無視した。あとは地方最賃審で決められてしまうだけなのか、しかし今年の最賃をめぐる論議はここで終わらない。それは、コロナ禍の現情勢においては、最賃制度を含めたトータルな社会改革論議に発展する可能性がある。(W)


放射能汚染水を海に流すな7・22緊急行動
  福島原発汚染水の海洋投棄反対!
  六ケ所再処理施設の稼働反対!

 
各地で原発再稼働阻止の闘いが続くなか、再稼働以外で重大事案となっているのが、一つは福島第一原発の汚染水海洋放出問題であり、また一つは、六ヶ所再処理施設の稼働問題である。
 福島事故処理で発生し溜り続ける放射能汚染水について、経産省小委員会が2月に「海洋放出が最も現実的」とする報告書を出し、これを受けて東京電力は3月24日、汚染水を海水で薄め、トリチウム濃度を1500ベクレル/リットルにし、三十年かけて海洋放出するとの素案を出した。漁業者や地元内外の反対を無視して、8月以降、経産省と東電は海洋投棄を決定しかねない。
 また、原子力規制委員会が5月13日、六ヶ所再処理工場の審査書案を了承し、稼働にゴーサインを出した。意見公募後の7月29日、新規制基準適合を決定した。核燃サイクルは、「もんじゅ」が廃炉になって、プルトニウム高速増殖計画としては破綻した。しかし、プルトニウムとウランを混ぜてMOX燃料を作り、それを原発に使うという面においては、いぜん撤回されていない。
 7月22日、東京都内で「放射能汚染水を海に流すな7・22緊急行動」が、再稼働阻止全国ネットワークの呼びかけ、賛同55団体で行なわれた。「トリチウムなどの海洋投棄反対!」「六ヶ所再処理施設の稼働反対!」の2課題を掲げて、院内ヒアリング集会と、東京電力本店・日本原燃㈱東京支社・経済産業省への抗議申入れ行動が展開された。
 午後1時から衆院第一議員会館で行なわれた院内ヒアリング集会では、経産省や原子力規制庁などに対して、山田清彦さん(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団事務局長)、黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)などが、再処理工場稼働の危険、放射能汚染水海洋投棄の無謀を問いただした。「これ以上海を汚すな!市民会議」の大河原さきさんは、経産省に文書提出も行なった。
 午後5時からは、まず東京電力本店前で、50人ほどが参加して抗議申入れ行動。福島第一原発事故加害企業・東電の小早川社長に対し、①「ALPS処理水は海洋放出しない」の約束を守ってください、②「薄めれば安全」キャンペーンをやめ、陸上保管の検討を行なってください、と申し入れた。
 次に、六ヶ所核燃料再処理工場の事業者である日本原燃株式会社への行動。増田社長宛てに、「放射能で海と大気を汚染する再処理工場の稼働はやめてください」と申し入れた。申入れ書は、「核燃サイクルの低コストは絵空事、危険性には見合いません」と批判するとともに、再処理工場がフル稼働したら、「福島第一原発由来の汚染水860兆ベクレルの十倍以上、年間9700兆ベクレルのトリチウムを毎年毎年、海に空に不法に流し続ける」ことになると指摘している。
 最後に、経産省への行動。経産省大臣・梶山弘志に対し、①福島原発事故で発生したトリチウム汚染水の海洋投棄は実施しないこと、②六ヶ所再処理施設の操業は中止とし、核燃料サイクル計画は撤回してください、と申し入れた。
 ところで、増え続ける汚染水はどうすればよいのか。廃炉になった福島第二に半永久的な貯蔵施設を作る、という案も民間からは出ている。トリチウム放射能については、百年でほぼ消えるという。海洋投棄は外交的にも愚策だ。知恵を集めれば、良策はあるはずだ。(A)


とめよう!戦争の道、めざそう!アジアの平和
     2020関西のつどい7・12
 
望月記者、民主主義の危機を語る

 関西恒例の「とめよう!戦争の道 めざそう!アジアの平和2020関西のつどい」は、はじめ3月22日にもたれる予定だったが、新型コロナウイルス感染が広がって延期され、7月12日開催のはこびとなった。場所も変わり、エル大阪からヴィアーレ大阪(御堂筋線本町駅)となり、感染対策で定員も規制し、200名規模で開催された。
 午後3時に集会が始まり、主催者挨拶は中北龍太郎さん(しないさせない戦争協力関西ネットワーク共同代表)が行ない、このかんの自衛隊中東派兵、辺野古埋立て強行、コロナ禍での改憲策動など安倍政権の戦争政策を批判する報告がなされ、民衆運動の力で安倍政権を早期に打倒しようと訴えられた。
 なお主催団体は、上記しないさせない関西ネットのほか、大阪平和人権センター、戦争をさせない1000人委員会・大阪の3団体。
 続いて講演に入り、望月衣塑子さん(東京新聞・社会部記者)が、「民主主義を守るために―安倍政権とメディア」の演題で、報道界の在り方も含め、このかんの様々な問題を語った。黒川検事長定年延長、小中高一斉休校、経産省と電通の癒着、F35購入147機6・2兆円など米国製兵器購入と日米軍事一体化、広島選挙区の河井夫婦逮捕事件、そして未解決なままの森友事件(大阪・豊中市)、その真相解明につながるであろう自死した近畿財務局職員・赤木俊夫さんが遺した「赤木ファイル」――と多方面に具体的な報告であった。
 最後に、平和人権センターから閉会挨拶、全日建連帯近畿地本・垣沼委員長からスローガン確認が行なわれて、集会を終えた。(関西S通信員)