大阪・釜ヶ崎
 新型コロナ感染拡大防止へ闘い進む
  地域ぐるみで緊急対応

 新型コロナウイルスの感染拡大が、大阪・釜ヶ崎を直撃している。
 釜ヶ崎は結核罹患率において、全国に比べて31倍にも及ぶ。劣悪な健康・栄養状態、住宅環境等、感染症に対して最もリスクの高い地域である。ホームレス状態で生活する高齢者や不安定就労者が集中し、人口の密集する釜ヶ崎での、感染拡大防止のための対応が迫られている。

  特別清掃
 新型コロナ感染の全国的拡大の事態の中でも釜ヶ崎では特に、命綱として生活の糧となる「特別清掃」事業と、住居のない人のためのシェルター、居場所が問題となる。NPO釜ヶ崎支援機構では、労働安全衛生法に基づく安全衛生委員会を中心に、2月段階から「感染予防対策」の基本計画が検討されてきた。生活確保のための特掃事業の堅持と、住居を持たない人のシェルターの確保を守り切ることである。
 現場には、地域で協力するクリニックの医師により、「新型コロナ対策シリーズ」という分かりやすい解説と予防や健康維持のためのチラシが5版まで作られ、特掃やシェルターの利用者が読めるよう配布された。
 対策の中心は、発熱者に対する対応と、いわゆる三密状態の防止である。特掃、シェルター、居場所で利用者の検温の実施が始められた。発熱者は排除するのではなく、特掃では当日は待機の措置にするとともに、大阪社会医療センターとの協力で発熱者対応を確保し、診療終了後の療養にはシェルターで緊急の宿泊スペースが確保された。また対応のための宿舎の確保も、自前で用意された。
 特掃では、就労用の車両での感染を防ぐため、地域外の作業員のピストン輸送や一部の他の仕事への振り分けが行なわれた。就労など利用時はマスクの着用が義務付けられたが、配布数にも限界がある中で、地域の就労支援NPOの縫製作業所で布マスクの作成が行なわれ、緊急配布がなされた。地域では、「あいりん手作りマスクプロジェクト」が立ち上げられ、多くのボランティアの手でマスクが作られ、現場で配布の支援が行なわれている。

  シェルター
 シェルターは、定員532名のところ、現在260名ほどの利用実態である。シェルターは、98年あいりんセンターの夜間開放闘争などを基礎に、2000年4月に三角公園脇に600名の定員でつくられた。さらに釜ヶ崎反失業連絡会の自主運営のシェルターを基礎に、現在の萩之茶屋に440名の第2棟が建てられ、計1040名のシェルターで多くの野宿者が命を維持してきた。16年からは現在のシェルターに統合、新築された。
 闘いの成果としてあるシェルターではあるが、2段ベットの施設状態では、ソーシャル・デイスタンスを保ちつつ利用できることにはならない。適切な利用人数は、150~180名ほどであろうか。
 このため支援機構、反失連等では、生活保護の積極的な活用、施設入所をできるだけ避ける、住宅扶助の単独支給、扶養照会を行なわないなどの緊急要請、また簡易宿泊所の借り上げなどの要望を、大阪市に対して再三提出してきた。4月15日、27日、5月1日と代表団が要望提出行動を行なっている。少数ながら宿舎は確保され始めているが(発熱者にドヤ・ホテル50室、シェルター拡張で簡宿36室)、まだリスクを抱えてのシェルター運営が続いている。

 新たなつながりへ
 「緊急事態宣言」以降、ネットカフェへの休業要請などがあり、多くの人々が宿を追われた。解雇、雇止めなどで、多くの困窮者が生まれている。この中で、新しい支援活動が模索されている。
 ビックイシューでは、外出自粛の中での販売減に対して、3ヵ月の緊急の通信販売が4月9日から呼びかけられている。
 4月18・19日には、「コロナホットライン」が全国の法律家を中心に行なわれ、70回線に4千件余りの問い合わせ、相談が寄せられた。
 大阪ではNPO釜ヶ崎、NPOホームドア、NPOビックイシュー基金を中心に15団体で、「新型コロナ、住まいとくらし緊急サポートプロジェクト」が立ち上げられた。クラウドファンディングとして基金の呼びかけが行なわれている。
 4月23・24日には釜ヶ崎を会場として、「新型コロナ・くらしとしごと緊急相談会」が行なわれた。この2日間、大阪市内の夜回りが行なわれ、相談会には36名が訪れた。その年齢は20代から80代にまんべんなく及び、当日名古屋から来た人もおり、知人宅、野宿など前日の宿は多様であり、不安な状態がうかがえた。相談会では、総合・仕事・住まい・法律等のブースが設けられた。このような取り組みは、連休中の5月6日にも予定され、さらに市内他所でも予定されている。
 さらに、住民票によって手続がとられる「特別給付金」については、ホームレス状態にある人に不安があり、このための緊急相談会も予定されている。
 新型コロナは生活困窮者に直撃する。自粛だけでは感染拡大を予防できないし、その社会的災害から人々を防衛できない。地域で新たなつながりを作ることも目指し、取り組みが必要であろう。釜ヶ崎での取り組みは続く。(関西S通信員)


コロナ禍の5・1「第51回釜ヶ崎メーデー」
 全ての野宿者に「10万円給付」を

 大阪・西成では5月1日・午前10時から、「第51回釜ヶ崎メーデー」が三角公園で行なわれ、約200名が参加した。
 メーデー集会は、新型コロナ感染防止のため密集しない形で行なわれ、1970年来の釜メーデーの意義を確認しつつ、コロナ災禍での現下の闘いを意志一致した。恒例のカンパイを行ない、弁当が配布されて昼前に閉会。メーデーデモは今回に限って中止された。
 釜ヶ崎日雇労組も参加する釜ヶ崎反失業連絡会はこの日、コロナ対策、特定給付金、センター建替えの3課題で、8項目の要望書を大阪市に提出した。
 特掃、シェルターなどでの緊急要求とともに、「10万円給付金」についても、それが野宿の仲間すべてに行き渡るようにさせなければならない。厚生労働省社会援護局の4・28連絡「ホームレス等の実情を踏まえた支援」の文言を守らせ、自治体窓口にしっかりと実行させねばならない。(釜ヶ崎S)

 東京では5月1日、全労協などによる「第91回日比谷メーデー」、また全労連などによる「第91回中央メーデー」が行なわれた。しかし、それぞれ日比谷野音、代々木公園施設が東京都の新型コロナ対策により閉鎖されている等の理由で、会場変更・大幅縮小・デモ中止・ネット配信の形での開催となった。
 「なくせ貧困・格差、8時間働いて暮らせる社会を!」を筆頭に掲げる日比谷メーデーは、全水道会館にて各労組代表1名の参加で行なわれ、その後、水道橋駅頭でアピール行動を行なった。
 全労連メーデーは、「雇用・営業を守るメーデー」と位置づけられ、全労連会館にて実行委員等のみで行われた。
 なお4・29の連合中央メーデーは、「メーデー100年」と銘打ったが(日本でのメーデー行動は1920年に始まる)、集会も無く、ネットアピールだけであった。(編集部)


辺野古工事
 埋立て設計変更申請を4・21強行
 「いのち」より「軍事基地」の安倍独裁たおせ!

 政府・沖縄防衛局は4月22日、沖縄県に対し、大浦湾地盤改良工事の追加を始めとする辺野古工事の設計変更申請を強行した。
 この暴挙に対し、東京では翌23日の夕刻、市ヶ谷の防衛省正門前にて、緊急抗議行動が行なわれた。主催は、辺野古の海を土砂で埋めるな!首都圏連絡会で、約80名が結集した。
 沖縄でも23日午後、嘉手納町の沖縄防衛局前で、平和市民連絡会ら約100名が抗議行動。「暴挙!『設計概要変更申請』、直ちに撤回せよ!」の大横断幕が掲げられた。
 新型コロナ感染対策が沖縄でも全国でも、第一の課題となっているこの時期に、安倍政権が沖縄に軍事基地を押し付けることを第一として、この申請を強行したことは、党派を超えて沖縄県民の大きな怒りを買っている。しかし「本土」では、この暴挙のニュースが、コロナ一色の報道の隅に追いやられた扱いになっている。
 コロナ感染は、4月中旬の沖縄県で早い倍化時間で拡大し、4月20日には沖縄県が県独自の緊急事態宣言を出した最中の申請であった。その前の16日には、辺野古埋立て作業員に感染者が明らかとなり、玉城デニー知事が菅官房長官に工事中止を要請していた。菅はこれを拒否し、辺野古、安和、塩川で作業が続いたが、沖縄防衛局は20日になって、期間不明の「当面中断」と発表した。
 反対運動側のオール沖縄は、感染拡大防止のため、シュワブゲート前座り込みを4月15日から5月6日まで停止とした。安和、塩川を含め監視行動は続けられる。機動隊のごぼう抜きで「三密」となるのだから、防衛局はもっと早く中断すべきだった。
 デニー知事は21日、記者会見で「新型コロナ対策に一丸となって取り組む時だ。その中での申請はスケジュールありきで、断じて容認できない」と厳しく批判した。安倍政権は、3・26の最高裁忖度判決を得て、また6月7日投票の沖縄県議選の直前は避ける意図で、申請を強行したとみられる。しかし、これは裏目に出る。今、申請を出しても、大浦湾の工事は何も進まない。申請強行は、安倍政権の暴走から迷走への転落、このかんのコロナ統治失政の一部となるだろう。
 連休明け後、どうなるか。コロナ終息まで工事は再開させない、これが沖縄の民意である。
 さて、東京の4・23防衛省前行動は、新型コロナ感染拡大防止を考慮しつつ、一時間に渡って断固として貫徹された。
 沖縄からは、山城博治さん(平和運動センター)が携帯を通じてアピール、「コロナで懸命な時に、背後から爆弾を投げつけるような申請です。課題は一つ、独裁政治を倒すこと、民主主義を取り戻すことです!」と訴えた。他に、辺野古埋立反対国会包囲実行委、辺野古土砂全協・首都圏などが発言。
 最後に、主催の「埋めるな!連」、沖縄一坪反戦地主会関東ブロックなど3団体から、抗議申入れ書が読み上げられた。
 沖縄県は申請を受理し、「審査を行なう」としている。県職員の出勤は半滅しており、標準処理期間44日以内では審査は終了しないともいわれる。デニー知事の「不承認」が、県議選投票の前に出ることを期待したい。
 3月26日、最高裁判所第一小法廷(深山卓也裁判長)は、沖縄県が、辺野古埋立承認撤回を国土交通省が取り消したことは手続上違法であるとして上告していた訴訟について、上告棄却の不当判決を出した。
 これに対し翌27日の午後6時半、最高裁西門前で緊急抗議集会が行なわれ、辺野古埋立反対国会包囲実行委、総がかり行動実など広い枠組みで110名が参加した。コロナ感染防止のため大衆行動も自粛傾向にある中、よく集まったと言える。
 都道府県の行政処分を国が是正したい場合、いろいろな方法があるにも関わらず、この件では、国(防衛省沖縄防衛局)が行政不服審査法を乱用して、同じ国(国交省)に不服審査請求を行ない、国交省がこれを受理し裁決している。この手続きの不当性が、この裁判では問われた。行政不服審査法は、私人・法人を行政権の乱用から守るための法律であり、国の機関は審査請求できないと明記されている。今回の最高裁判断での、同法「固有の資格」の解釈をめぐる屁理屈は何ら説得力がない。
 安倍政権は、この確定判決を口実に、4月22日に辺野古埋立ての「設計変更申請」を強行した。
 しかし、もう一つの裁判、県が埋立撤回の正当性を主張して国交省の裁決取り消しを求めている裁判が、高裁那覇支部で進行中である。辺野古工事の、内容そのものを問う裁判である。少なくとも、この裁判の係争中に、工事の変更申請を出すこと自体がおかしい。沖縄県は、違法工事の申請を受理する必要もない。(W)