「新しい左派政治勢力」の登場へ

 1月20日に始まった通常国会では、日韓関係悪化の是正や、辺野古埋立て問題の解決という持越しの課題を忘れたかのように、「桜を見る会」、カジノ法、新型コロナウィルス対策などに論戦が集中している。国会諸野党は、今夏・東京五輪後の総選挙を意識し、長期腐敗の安倍政権の末期症状を突くことに汲々として、かえって国と社会の基本課題を分かりにくくしている現況にある。
 問われているのは、韓国敵視政治など安倍政権の逆流を正して、東アジアにおける日本の新しいあり方を拓くことであり、また、アベノミクスに代表される格差拡大・環境危機の資本主義、これに代わる新しい社会への展望を示すことである。そういう意味から、政権交代をめざす「野党・市民」共闘に、我々が注文を付ける必要もあるだろう。
 しかし、我々左翼の闘いの基本線は、そこにあるのではない。闘いの道筋は、韓国・沖縄民衆との連帯をはじめ、国境を超えた民衆勢力の自立的発展であり、また、非正規労働者・青年世代の新しい台頭にある。
 そうした労働者民衆の運動を基礎としながら、「新しい左派政治勢力」の具体的で大きな団結が現れてくる。本紙は、それを期待し、支援するものである。(編集部)


  自衛隊中東派兵撤回
     米トランプ政権はイラン圧迫やめろ!

 安倍政権は昨年12月27日、臨時国会を9日に閉会させたうえで、オマーン湾など中東海域への自衛隊派兵の閣議決定を強行した。その直後から米・イラン関係が一時交戦状態に入り、その後も緊張状態が続いているにも関わらず、閣議決定を撤回せず、河野太郎防衛相は1月11日、那覇自衛隊基地から海上自衛隊のP3C哨戒機2機を出動させた。
 2月2日には、横須賀から海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」の出動を強行した。
 今回の自衛隊中東派兵の最大の問題は、米トランプ政権のでたらめな中東政策に引きずられた派兵であること、また2015年安保法制(戦争法)制定後、初の日米連携型の海外派兵であることだ。(16年の南スーダンPKO交代部隊の派兵も、戦争法の一つ「改定PKO法」によって自衛隊の武力行使という危険があったが、現地での米軍との連携は無かった)。
 閣議決定によると、派遣自衛隊の任務は、防衛省設置法第4条1項18にもとづく「情報収集活動」であるが、「不測の事態への対応」では、自衛隊法第82条にもとづく「海上警備行動を発令」し、「具体的な状況に応じて」強制措置(武力行使)も可能としている。アメリカとイランが交戦状態に再び突入するような不測の事態では、派遣自衛隊が望まなくても、参戦状態に入ってしまう危険がある。
 ようやく始まった通常国会質疑では、「海上警備行動は、イラン革命防衛隊から攻撃があった時に、できるのか」(1月29日参院、国民民主・森ゆう子)との質問に、安倍は、「そういう事態になることは想定していない」などと答え、無責任ぶりを露呈した。
 中東の原油シーレーンで戦争が起きると、戦争法の一つ「重要影響事態法」が発動されかねない。それによって中東でも、自衛隊による米軍等への後方支援実戦行動が可能となる。その以前でも、自衛隊法第95条の「武器等防護」を発動すれば、米艦などを守っての戦闘が可能となる。
 米トランプ政権の一方的なイラン核合意脱退(18年5月)や、極端な親イスラエル路線によって、その対イラン政策は国際的に孤立している。対イラン有志連合は英・豪・サウジなど、わずか7ヵ国の参加にすぎない。これを無視できず、またイランとの関係維持のために、今回安倍政権は「独自」派遣の体裁をとった。また活動海域から、イランに面するペルシャ湾とホルムズ海峡を今のところ外した。
 しかし今回の中東派兵は、アメリカの要請に応えての派兵であることにかわりはなく、バーレーンの米海軍司令部に自衛隊将校を配置し、現地米軍などと連携して行動するものである。トランプ政権の対イラン圧迫政策に武力組織をもって加担するものであり、日米同盟の世界化・共同戦争化である。
 中東派兵の第二の問題は、国会の審議を経ず、行政権の独走として強行され、また派兵の法的根拠がデタラメなことである。
 防衛省設置法の「調査・研究」を濫用した派兵は、01年のアラビア海給油艦派遣の直前に2回あるが、今回のように1年単位の長期間に渡る想定の派兵では初めてである。給油艦派遣の時には、「対テロ特措法」案を国会で審議し、自民・公明が強行採決して法的根拠とした。小泉政権時のイラク派兵は、「イラク復興支援特措法」による。その後、戦争法の一つとして、特措法を不要とする「国際平和支援法」(派兵恒久法)が新設されたが、これを発動するには、関係する国連安保理決議などが必要と考えられる。法的根拠があればよいというものではないが、今回は、安倍の反立憲主義が目立っている。
 第三の問題として、今回の派兵は、「日本関係船舶の安全確保」を目的として前面に掲げており、この国益を第一とする点も、これまでの派兵と異なる重大点である。
 過去の諸派兵は、「国際貢献」や、関係する安保理決議を挙げての「国際平和協力」を目的として掲げることによって、米軍補完の実態をごまかし、憲法違反の自衛隊海外派兵を正当化するものであった。09年麻生政権時のジブチ派兵は、ハナから自衛隊法82条によって開始され、今回同様、日本船舶の安全を掲げたが、ほどなく「海賊対処法」を作って国際海洋法上の国際協力だとして正当化された。
 その直後、民主党が政権交代を実現したが、海賊対処法を廃止せず、初の海外基地・ジブチ自衛隊基地を維持し続けた。民主党政権はその後、無意味化した給油艦を撤退させることができただけであった。
 現在、立憲民主など国会野党の多くは中東派兵に対して、法的根拠がずさんだ、これでは日本関係船舶も守れない、現場の自衛隊が困るだけだ、という批判をもっぱらにしている。しかし、国益防衛に実力組織を投ずること自体には、賛成しているのである。これで、憲法9条を守れるのか。航路の安全は沿岸諸国の責任であり、そうした諸国への憲法9条を活かした日頃の平和外交が問われるはずなのだが。
 国会野党ばかりでなく、国内世論・運動も、かってのイラク戦争・イラク派兵反対の時ような勢いは無い。その後の小規模な諸派兵に、世論は馴らされてきたのか。韓国敵視政策があおる偏狭なナショナリズムや自国第一主義の拡散、この現状に対決し、国際的な反戦反派兵の運動をつくり直すことが問われている。

   1・11防衛省デモ
   など派兵反対続く


 東京でのこのかんの動きは、12月27日午前の中東派兵閣議決定抗議・官邸前緊急行動に、総がかり行動実行委主催で300人集まることから始まった。
 運動は、1月3日にアメリカがイラク領内で、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官などを無人攻撃機で殺害したことによって、米のイラン攻撃反対!イラン戦争反対!の緊急性を帯びた。
 まず1月6日夕、武器取引反対ネットワークなど約40人が、アメリカ大使館前で「米国は戦争するな!イランに平和を!」と訴えた。
 続いて1月8日夕、総がかり実など200人が、新宿駅西口緊急街頭宣伝で「戦争反対!アメリカはイランへの軍事攻撃をやめろ!」と横断幕を張った。
 1月11日午後・阿佐ヶ谷地域区民館で、「大軍拡と基地強化にNO!総行動」など市民・労働者が、「海上自衛隊オマーン湾派兵反対緊急集会」を行なった。トランプ政権のイランへの圧力強化に呼応した派兵に反対し、約90人が参加。現下の中東情勢について、田原牧さん(東京新聞特報部)が講演した。集会後、外堀公園に移動し、「自衛隊を中東に派兵するな!」の横断幕を掲げて、約80人が防衛省へデモ行進した。
 アメリカのソレイマ二司令官殺害が、国際法違反かつイラク主権侵害の違法行為であることは明白である。トランプは、自衛権行使の根拠を示すよう米議会からも求められたが、「どうでもよい」などと答えた。米国がテロリストと見なせば、世界中どこででも殺してよい、それに法的根拠はいらない、という国家テロである。
 安倍はこの殺害に対し、「双方の自制を」と言うだけで容認を続け、あげく1月29日の答弁で、「法的判断を下す立場にはない」などとして殺害を擁護した。
 イランは1月8日、報復としてイラクの米軍基地を弾道ミサイルで攻撃し、命中させた。この攻撃は画時代的な意味も持ったが、米・イラン双方に戦争拡大回避の意図があって、危機は小康状態に入った。同日イランは、米軍の反撃と誤認しての、ウクライナ旅客機撃墜という大失態を犯した。戦争の最大の犠牲者は、いつも一般市民だ。
 1月26日、横須賀市では非核市民宣言運動ヨコスカなど地元市民らが、海自基地隣接地で「中東派遣反対!むりやり行かすな自衛隊」と、海自自衛官に訴えた。
 2月1日、横須賀市ヴェルニー公園では、神奈川平和運動センター主催で反対集会、2日も海上行動を合わせて、自衛艦出港に反対した。
 総がかり実は、1・28官邸前行動を荒天で中止したが、翌日に再度新宿西口行動。2月20日には「自衛隊中東派兵に反対し、閣議決定の撤回を求める集会」を、改憲問題対策法律家6団体との共催でひらく。半田滋さん(東京新聞論説兼編集委員)らが講演。(文京区民センター、午後6時半)
 韓国でも、国防部が1月21日、ホルムズ海峡派兵を「独自」派兵として行なうと発表し、反対運動になっている。翌22日、進歩連帯、参与連帯などが、青瓦台前で「中東と朝鮮半島の平和を威嚇する」派兵を撤回せよ!と行動した。
 イラン・中東情勢の混迷は続き、北東アジア情勢に連動する。日韓民衆・世界民衆の連帯を!(A)
 

政府・国交省、成田空港「基本計画」を改定
 第3滑走路建設反対

 国交省は昨年11月5日、およそ半世紀ぶりに、成田空港の基本計画を改定した。「第3滑走路の新設」、「B滑走路の北側延伸」である。これを受けて成田国際空港会社は同月7日、空港変更許可を国交省に申請。国交省は1月31日、土地取得の見通しは立っているなどとして、申請を許可した。この空港機能拡大反対が、現在の闘いである。
 昨年12月1日、東京で、一般社団法人三里塚共有運動の会の「第2回総会記念集会」が56名の参加で行われた。会は、66年からの三里塚一坪共有運動、83年からの再共有化運動を受け継いで、18年10月に設立された。用地内の木の根ペンション、横堀鉄塔と案山子亭の拠点化と併せ、一坪共有地の強化のため、全国の共有者に法人への登記変更を呼びかけ、着手し、設立一年を迎えた。
 記念集会では、代表理事の山口幸夫さんが主催者挨拶、「気候変動、環境破壊が深刻だ。若い世代から積極的な行動が突きつけられている。自然現象を軽視し、科学技術を優先してきた社会の欠陥の現れだ。三里塚共有運動は、大地を守り抜き気候変動などと格闘し、前に進んでいくための重要な取り組みだ」と訴えた。
 加瀬勉さんが、国と空港会社が一体の基本計画を糾弾し、柳川秀夫さん(空港反対同盟)は、「資本主義の大量生産・大量消費・大量廃棄システム、貧富の格差拡大システムそのものが問題だ。もう一つの社会のあり方を作り出していかねばならない。三里塚闘争は、その観点から闘われてきた」とアピール。現地報告は、横堀現地の山崎宏さん。「羽田空港を監視する会」の大道寺毅さんが、「首都圏空港機能拡張は何を突きつけているのか」との講演を行なった。
 1月12日、横堀農業研修センターで、三里塚芝山連合空港反対同盟(代表世話人・柳川秀夫)主催の「2020反対同盟旗開き」が行なわれ、50名が参加した。石井紀子さん(上川地区)、平野靖識さん(らっきょう工場)が現地状況を報告。
 終了後、「1・12東峰現地行動」が、三里塚空港に反対する連絡会の主催で闘われた。旧東峰共同出荷場で集会を持ち、開拓道路に向けてデモ行進。
 1月26日には、尼崎にて、関西三里塚闘争に連帯する会・関西三里塚相談会の主催で、「共有運動の会報告会」が30名の参加で行なわれ、その後「関西旗開き」と続いた。
 第三滑走路建設を軸とする基本計画の基での空港機能拡大強化に対決し、断固として闘っていこう。
(渡邊・元東峰団結小屋維持会)