被害者抜きで解決無し
 文喜相案での日韓合意に反対しよう

 韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権が11月22日、日韓の間での軍事情報包括保護協定GSOMIAについて、アメリカの内政干渉に屈する形で、その終了を延期した。
 これを機に、その終了延期が日韓関係の修復につながるかという報道が拡げられ、12月16日に東京で、日韓の貿易担当者の局長級会議が行なわれた。そして12月24日には中国で、安倍・文の日韓首脳会談が予定されている。
 その中、12月18日の韓国国会に、元徴用工問題解決についての法案だとして、文喜相(ムン・ヒサン)国会議長ら若干の与野党議員によって、「財団」を作る法案が提出された。
 この法案は報道によると、①韓国・日本の企業や民間から寄付をつのって、韓国側が運営する基金を作り、その基金から元徴用工原告などに慰謝料を支払う、②大法院判決で確定した慰謝料(賠償金)を受け取る権利は、原告の承諾を前提に、原告から財団に移転する、③法前文で、1998年「日韓パートナーシップ宣言」(注)を引用し、日本政府の謝罪があることに触れる等とするものである。
 この文議長案は、謝らない、支払わない、韓国大法院判決は国際法違反、の一点張りである安倍政権にとって、都合のよい案と言わざるをえない。①で、被告日本企業に拠出義務はなく、②で、大法院判決の実行はあいまいとなってしまうからである。
 また③で、その日韓首脳宣言での小渕首相の謝罪を引用しても、安倍首相謝罪の保証にはならない。安倍政権は、93年河野談話に対して、「軍や官憲による強制連行を直接示す証拠はない」(07年3月16日・政府答弁書閣議決定)として「修正」し、また95年村山談話に対しては、「安倍内閣として、そのまま継承しているわけではない」(13年4月22日・参院首相答弁)としている。河野・村山の延長にある小渕を、安倍が継承しているとは言い難い。
 韓国では、文議長案が浮上してきた11月下旬以降、まず当事者の元徴用工原告らが抗議の声を上げ、12月4日には軍隊「慰安婦」支援団体などにより、「文喜相案の即時破棄と、被害者中心主義の原則に則った日本軍性奴隷制問題の解決を求める世界良心宣言」が国際的に発表された。18日には、提出抗議・即時撤回を求める広範な共同声明が出された。
 韓国市民の抗議では、人権問題解決での当事者主義の原則が強調され、また、文喜相案では、文在寅政権が当事者原則に反するとして停止したはずの、「15年日韓合意」(朴クネ政権と安倍政権の「慰安婦」問題合意)が有効化されると批判されている。
 被害当事者抜きの解決案は、解決案に成り得ない。文政権は20日、議長案に否定的態度を出した。安倍政権の対応は今のところ不明であるが、日本でも、「文喜相案による日韓合意」断固反対の声を上げる必要がある。
 韓国での解決案の是非も、重要ではある。しかし日本での問題は、加害国であるにも関わらず、主要な諸野党も安倍の韓国敵視政策を黙認し、建設的な解決案が国会に提案もされない、そういう次元にあることだ。解決する気のない安倍を一日も早く退陣させ、公式謝罪・予算措置・立法化をやれる政権を実現せねばならない。
 日韓首脳会談の日、12月24日に首相官邸前緊急行動が行なわれる。(W・12月21日)
 (注)この日韓首脳宣言(98年10月8日)には次のくだりがある。
 「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し、植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。」


11・8〜11訪韓団、民衆党とも懇談
 韓国労働者大会に合流

 11日8~11日にかけて、日韓民衆連帯委員会の呼びかけに応え、韓国を訪問してきた。
 ソウル金浦空港に到着すると、渡韓団の一人が通関に手間がかかり、ヒヤッとする場面もあったが、ほんの20分程で済むことができた。
 今回の行程は、仁川での韓国GM非正規職労組テント座り込みの現場訪問と懇談、韓国サンケン労組との交流、労働者大会参加、双竜(サンヨン)自動車支部との交流、平澤(ピョンテク)米軍基地を見て回る、民衆党訪問と懇談、それと大統領府(青瓦台)周辺での座り込み闘争を行なっているトールゲイト(高速道料金所)労働者の闘争現場に訪問支援と、三泊四日では大変なハードスケジュールであった。それぞれ闘いの現場であり、韓国労働者の状況と政治関係を象徴しており、大量の情報を詰め込まれたようで、ここに列挙するのは膨大な字数を必要とすることとなるため、二点に絞って報告する。
 労働者大会(全泰壱烈士精神継承全国労働者大会)は、「われわれは、機械ではない」との悲痛な叫びを発して焼身自殺をした全泰壱(チョン・テイル)を記念し、焼身抗議の11月13日の前に例年開催されてきたもので、今年は11月9日、ヨイドの国会前の大通りを開放して特設会場を設けている。
 私たちは、ステージのすぐ近くに陣取ったため、集会の最後尾はまるで分らず、主催者発表の10万人というのも納得できるほどで、各組合のごとの服を着た人々で溢れていた。
 スローガンは、「労働改悪粉砕しよう!労働基本権を闘い取ろう!非正規職を撤廃しよう!」などで、キム・ミョンファン民主労総委員長は、「民主労総は闘う、世界の労働者と連帯して!」「民主労総の総団結で労働解放に向かって進軍しましょう!」と挨拶をした。
 この後、台湾代表がステージに上がったが、ここには香港の代表も混じっていた。また日本からは、渡辺洋・全労協議長が挨拶を行なった。韓国労働者の発言からは、文在寅政権に厳しい評価がなされていることを実感する場でもあった。
 訪韓最終日に行なわれた民衆党との懇談では、政策研究院のチェ・ギヨン副院長から、お話しを聞いた。2017年に1万人で発足したが、現在党員は数倍になっている。韓国では新自由主義政策の影響で、非正規層が成年層で多数を占めている現状に対して、非正規層の組織化をおし進めていると、韓国の現状に対する具体的方針が説明された。
 また、私たち訪韓団からの質問にも丁寧に返答をいただいた。日本の左派が直面している問題の大きな一つとして、左派の連携と統一についてなかなか前進が見られていないが、韓国の進歩陣営では組織と運動の統一はできるのかとの質問にも、違いを乗り越えて、そのように目指しているとの回答があり、進歩陣営最大の政党の奥の深さを実感することができた。
 今回の訪韓はスケジュールが盛りだくさんで、おいしい料理は言うにおよばず、懇談が連日続いたこともあり、たいへんハードであったが、実り多い四日間であった。
(東風徹・韓国良心囚を支援する会全国会議)