第7期第3回中央委員会総会決議(19・11)
  安倍政権の対韓敵視政治
      に抗して、いかに闘うか?

 
   一、 歴史の曲り角

 我々は今、歴史の曲り角に在る。
 当面の緊急課題は、我々がいま眼前にしている韓国敵視政治と排外主義の高まりを打ち砕くことである。この闘いは、戦争国家日本の再現を許さない、歴史の曲り角の闘いではある。だがこの闘いは、数千年の国家と階級制度の時代を終わらせる人類史の大きな曲り角を舞台に闘われる。現代の「ファシズム」に未来はないし、現代の「民主主義」が最後の勝者となることも最早あり得ない。人類の未来は国家と階級差別のない協同社会であり、労働者民衆の手の中にある。勝利への確信を握りしめて、闘いに臨んでいこう。
 土台にあるのは、国家と階級制度をテコに―すなわち人と人、人と自然の関係性の犠牲の上に―物質的豊かさと産業発展を追い求めてきた資本主義という一時代が、産業の成熟と富の格差拡大、地球環境危機によって、いま終わろうとしていることである。
 終わったと言わないのは、資本主義的発展のフロンティアがわずかに残っているからだ。とはいえ既に国家と資本主義は、新たな技術をも駆使してひたすら社会関係・対自然関係を破壊するマシーンと化し、人類社会の存続を危機に陥れている。人類は、国家と資本主義に代わる新たな社会システムの創造へと向かうのか、それとも破局を迎えるのか、重大な岐路に立っているのである。
 だが事態がここに至っても、国家と資本は延命すべくあがいている。
 一つは、投機マネーを肥大化させ、バブル「景気」によって経済崩壊を押し止め、支配の破綻を先延ばしにしようとしていることである。
 産業の成熟は資本にとっては、実体経済における新規投資領域の喪失を意味する。貨幣資本が過剰化し、その投機マネーへの転化は資本の国際的な支配的動向となる。これを異次元金融緩和や機動的財政出動で助長することによりバブル「景気」を維持するやり口は、最近の金融・財政のトレンドになっている。
 しかし投機マネーの膨張は、産業に吸収されることのない過剰人口の増大と表裏である。この人口部分の圧力が、分厚い非正規層の形成と生きていけない賃金を可能にし、格差を拡大し、社会を崩壊させていく。そしてバブル「景気」の崩壊が、社会の崩壊を一気に顕在化させるのである。黄昏のアメリカ(G7)が中国(新興国)の協力を得て乗り切った08年リーマンショックから既に11年、いまや米中が経済的覇権争奪にのめり込み、世界的規模のバブル崩壊が近づいている。
 二つは、全体のパイが増大しない中で、他からの略奪によって資本の「蓄積」運動を維持しようとしていることである。
 産業の成熟は、「市場の飽和」「ゼロ成長」を意味する。それは総資本とって死であり、個別の資本にとっては、労働者・消費者との関係、資本相互の関係、自然環境との関係などにおいて、仁義なき略奪・不法不正・反社会的行為なんでもやらなければ延命できない時代である。国際社会においては、落日の超大国アメリカが「自国ファースト」を唱えて範を示し、見境なしに脅しによる略奪を開始した。差別・排外主義が内外にわたって、人類社会を崩壊させだしている。
 こうした社会の崩壊は、過去への回帰・右へと突破口を求める逆流を伴いつつも、労働者民衆による社会の再建・新しい社会の創造、そして政治革命の課題を浮上させずにはおかない。そうしたことは、これまでも戦争・経済恐慌・自然災害などによって社会が部分的なり一時的に崩壊した際に繰り返し現実となったが、社会(人々)がいまだ産業の発展を希求し資本主義を必要とした時代には、国家と資本主義によって繰り返し解体・包摂されてきた。だが今やそのような時代は終わろうとしている。
   
   二、 戦後体制の崩壊へ向かう東アジア・日本
 
 東アジア的に見るならば、労働者民衆の歴史的覚醒が始まっており、それがアメリカによる戦後体制を揺るがし、全局を規定しだしている。だから我々は戦略的には大いに楽観してよい。
 朝鮮半島に続き、6月以降、香港で民衆が大きく動き出した。その闘いは、政治的に未分化な混迷を含んではいるが、世界資本主義の一つのセンターである大陸中国を揺るがす可能性をもっている。
 しかし日本の場合は、東アジアの反動の砦となるかの如くである。安倍政権が排外主義の大波を引き起こさんとして逆流を開始し、我々はこれを撃ち返す戦術の発見や依拠する社会層との結合の方途などについて模索の渦中にある。この困難を打開する糸口をつかむことが問われている。「敵を知り己を知れば百戦するも危うからず」であり、まずは主客の情勢を正しく掴まねばならない。
 情勢は、次のように整理できるだろう。
 1、 東アジアの情勢を規定している主要な要素は、大国ではない。朝鮮半島・沖縄(さらには香港)の民族・民衆の決起である。
 韓国民衆の反朴「ロウソク革命」と南北朝鮮の共同した民族自主の力が、アメリカ・トランプ政権による2017年の開戦危機を押し止め、日本・安倍政権による南北対立の煽り行為を孤立させ、平和と統一の流れを大きく浮上させた。沖縄の辺野古新基地建設拒否・自己決定権要求の闘いも沖縄の人々の圧倒的多数の民意を結集して、米・日に対して一歩も引かず対峙している。われわれは、大国の圧迫に抗し表出しだしたこの東アジア民衆の自己解放への要求と力、超大国をも規制しだしたこの決起を重視しこれと結合する中で、安倍打倒の展望を見つけ出していかねばならない。
 韓国・沖縄から始まった東アジアの民衆の起ち上がりの意義は、いくら重視しても重視し過ぎるということはない。安倍政権が民族的侮りと差別・排外主義を扇動し、交流と連帯の拡大を妨げ、日本の民衆運動を東アジアから隔絶した形で停滞させ続けようとしている。我々は、日本を東アジアの反動の砦にせんとする米・日支配階級の策謀と対決し、国境を超えた民衆の連帯と闘いを発展させていかねばならない。
 2、 安倍政権は、「ロウソク革命」に敵対し、韓国敵視政治に踏み込んだ。
 安倍政権は、元徴用工の損害賠償請求を認めた韓国大法院判決に対して経済報復で応えた。7月1日の半導体関連3品目の対韓輸出規制宣言、8月2日の「ホワイト国」からの韓国除外決定である。そして侵略・植民地支配への謝罪について、口先謝罪であっても最早やらないとの態度に転換した。韓国に対して敵視政治を開始し、一大キャンペーンを展開しだしたのである。
 そもそも安倍がすがる日韓条約・請求権協定はアメリカが、(戦後の冷戦体制―)朝鮮半島の南北分断に日本を加担させるため、日韓に圧力を加えて締結させたものである。それをよいことに日本政府は、侵略・植民地支配への謝罪も賠償もしない仕方での条約締結に持ち込んだのだった。こうして日本政府は、以降この条約・協定を日韓関係のベースだとする立場をとり、一度も心からの謝罪を行っていないのである。なお韓国大法院の徴用工判決は、日韓請求権協定が個人の損害賠償請求権の存在を否定していない(その点は日本政府も認めている)ことにも依拠している。
 ではこの局面で安倍政権が韓国敵視政治に踏み込んだ背景は何か?
 第一は国力の衰退する超大国アメリカが、東アジアにおける覇権を維持するため、戦略転換をはじめていることである。その要は、日本へのコスト負担の強要である。
 朝鮮半島の南北が平和の確立と統一に向かって大きな政治流動過程に入る中でアメリカは、基本防衛ラインを「アチソン・ライン」に後退させ、日本・沖縄から危機対処的に対韓軍事介入できる態勢を強化し、自衛隊を日本領域外の武力行使に参加させる方向に戦略転換している。それは、対中対処の戦略構想でもあるだろう。既に、日本への司令部機能の集中、日本列島・琉球弧の要塞化、自衛隊に対する指揮・統制・訓練の強化が推進されている。
 アメリカには、朝鮮半島統一に対して、それにあくまで敵対し分断を維持せんとする道と、それに適応し、米韓同盟・米日同盟を再定義しつつ、アメリカに都合のよい統一を容認する道という二つの選択肢があるが、いぜん優勢であるのは前者の道である。
 第二は日本自身が、アメリカの指揮・統制の軛の下で、アメリカの「期待」を忖度しつつ、朝鮮半島統一を自己の脅威とみなしつつ、軍事的な覇権によってでも敵対するという道を選択した。
 軍事覇権の拡張を目指すということは、当の相手を敵視し、見下し、殺戮できなければならない。そのことは、相手が侵略・植民地支配の謝罪対象であること、即ち関係の建て直しを追求する対象であることと両立しない。安倍政権が韓国に対して、謝罪拒否の態度に公然と転換したことの背後にはこれがある。
 第三は韓国民衆が、反朴「ロウソク革命」によって積弊清算をめざす文在寅政権を樹立し、朝鮮戦争終結・南北平和統一の方向へと歩を進め、日本の地域覇権国家としての登場の前に立ちはだかったからである。
 安倍政権は以上のような背景の下に韓国敵視政治へと踏み込んだ。しかし展望をもってのことでは全くない。文在寅政権が日本の経済報復に抗する形で日韓GSOMIAを三か月後に終了させる破棄決定をおこない、米日韓三角軍事同盟に風穴を開け、民族自主のスタンスを少しばかり強めただけで、驚愕してしまった。韓国・文在寅政権を侮っていたということである。そのご韓国政府は、日韓GSOMIA終了日の直前に至って、破棄決定の停止を表明した。アメリカが韓国政府に強烈な圧力をかけて一定の譲歩を余儀なくなくさせた形だが、日本の覇権主義者を勢いづかせることになった。
 実際に日本が軍事的覇権拡張に踏み出せば、かつてとは比較にならない強力な周辺諸国家の壁に阻まれ、何よりも韓国民衆をはじめとして段違いに覚醒した東アジアの民衆に包囲されることになる。とはいえ日本が反動の砦と化して無謀な道に踏み出せば、悲惨な結果を免れない。日本における安倍打倒・民衆決起が問われるところである。
 3、 安倍政権は2019年9月の内閣改造において、韓国敵視政治の推進、新天皇・自衛隊・旭日旗容認オリンピックの本格的な政治利用(排外主義の扇動・野党勢力の分断)、改憲国民投票などを強行せんとする布陣を敷いた。これに対して民衆の側はどうか?
 民衆運動はこれまで、安倍政権の「戦争のできる国」づくり政治に対して、憲法体制を防衛するスタンスにとどまってきた。この運動の主な担い手は、中間層・高齢世代だった。この運動は、野党の共闘を要求し押し上げてきた。
 2019年夏の参院選挙において、その野党共闘勢力は、自民・公明などの改憲勢力が保持していた改憲発議可能な「3分の2」を崩すことに成功した。ただし崩したといっても、わずか4議席差だ。しかも野党共闘勢力は、早くも試練の時を迎えている。即ち、安倍政権が韓国敵視政治を発動し嫌韓・排外主義の大波を起こすや、立民・国民が安倍政権の対韓政策を支持し、野党共闘の中に深刻な亀裂が入り始めているのである。
 これまで日本では、社会の崩壊、格差社会の出現の中にあっても、没落中間層や非正規下層が勢力として、大衆運動的なり政治的に登場することがなかった。しかし2019年夏の参院選挙において、それは国政選挙を介して、左右のポピュリズム政党(消費税問題のれいわ新選組、受信料問題のNHKから国民を守る党)の登場として表出した。一つの事件であった。
 ポピュリズムは、この社会ではやっていけない・生きていけない人々の憤激を、右派の場合は歴史的反動(差別・排外主義)の方向へと導き、左派の場合は急進的改良主義に集約することで政治進出する。しかし国家と資本主義を前提としているため問題の根本的解決に至ることはなく、行詰る運命にある。
 とはいえ、社会を破壊するするシステムへと転落した国家と資本主義を廃絶し、それに置き換える社会システムの創造を目指す潮流は、こうした人々と結合することにおいて全く立ち遅れている。
 
    三、 方 針

 超大国アメリカ・トランプ政権は自己の国力の建て直しを優先し、その為に同盟諸国に過大な負担を負わせ、戦後世界体制を崩すことになろうと構っておれないという態度だ。世界史的激動の幕が開かれようとしている。その中で安倍政権は、アメリカの忠実な番犬としてその世界覇権の衰退を補完する仕方で、地域覇権国家となる道を突進しだした。その道をこじ開ける錐が韓国敵視政治に他ならない。この政治を挫折させ、国境を超えた民衆連帯社会への道を切り拓いていこう。

① 韓国敵視政治を打ち砕く

 韓国敵視政治を打ち砕くには、三つの領域での闘いが求められる。
 一つは、南北の統一を支持し、日米安保体制を廃絶する領域。
 安倍の韓国敵視政治はもちろん、東アジア冷戦体制―南北分断体制を終わらせようとするものではない。この体制を再編・強化しようとする政治なのだ。すなわち安倍は、アメリカの指揮・統制下で南の政権を日本の従属下に置き、朝鮮半島有事に日本が軍事介入できる体制をつくろうと企んでいる。これを粉砕しなければならない。
 二つは、侵略・植民地支配の謝罪と賠償を実現する領域。
 韓国敵視政治は侵略・植民地支配の開き直りであり、したがって逆にその清算問題を前面に押し出した。同時にそれは日本国内においては、朝鮮敵視政治と合わさって、教育無償化からの朝鮮高校の排除をはじめとしたあからさまな民族差別政策への転換となって現れ、対外的な過去清算問題とリンクしだしている。実質性ある「心からの謝罪」と賠償を実現しなければならない。
 三つは、日韓民衆連帯の領域。
 韓国敵視政治と対決し日韓民衆連帯を発展させる闘いは、人と人が信頼し助け合う社会を国境を超えて創り出していく社会革命事業の一環であり、要をなす推進的環である。新しい社会を創造していく活動を土台に据えることが大切である。
  2020年は、安倍政権による侵略・植民地支配の開き直り・韓国敵視政治に圧倒されるか、これを打破するか、正念場の年となるだろう。安倍政権は、韓国敵視・排外主義の高まりを創り出し、改憲発議・改憲国民投票を強行することを狙っている。その為に軍事を弄ぶことも辞さない、治安の危機にも備えた政権布陣を敷いている。表現の自由を圧殺し、労働運動を否定する弾圧に着手している。我々は、安倍政権の策謀を破綻させ、この政権を打倒していかなければならない。

② 政治的推進勢力を創り出す

 安倍政権の韓国敵視政治の発動は、没落中間層や非正規層をも一部巻き込む形で排外主義の高まりを呼び起こし、第二極勢力(野党共闘)の中に動揺を顕在化させた。
 第二極勢力には、韓国敵視政治と排外主義の高まりに立ち向かうことには限界がある。国際主義の旗を鮮明に押し立てる第三極政治勢力を形成しよう。

③ 新たな層と結合する

 韓国敵視政治・排外主義の高まりと対決し、これを解体するためには、韓国民衆との連帯を握りしめ、このブルジョア社会ではやっていけない・生きていけない人々に依拠する必要がある。第二極勢力は、こうした人々と結合しようとすることに及び腰である。この層との結合を求め模索しているのは、いわゆるポピュリズムであるが、新しい社会の創造を目指す我々こそがそうすべきであり、第二極勢力との共同だけでなく左派ポピュリズムと協力する状況も生まれてくるに違いない。
 いまや「貴族・平民・奴隷」的な社会構造がこの日本においても姿を現してきている。現代の「奴隷」層は、失業者、非正規労働者、移住労働者、差別されている人々、没落中間層等々によって構成され、政治的に排除され、放置されてきた。しかしこの層は日増しに増大しており、その政治的動向がこれからの社会の在り方と方向を大きく規定していくことになる。
 我々はこの層の人々と結びつく回路を掴み、広げていかねばならない。そして奴隷の境遇が自己責任ではなく、一握りの支配者と大金持ち(その拠って立つシステム)の責任だということ。階級社会・差別社会という土台の腐った絶望の牢獄を解体し、人と人・人と自然の関係の豊かな協同社会を実現することは可能だということ。仲間は圧倒的多数であり、全世界の仲間と国境を超えてつながれば世界を変えられると、うまずたゆまず訴えていくことである。
  
④ 沖縄と連帯して闘う

 安倍政権は、沖縄の民意を無視し、法を踏みにじり、税金を湯水のごとく投入して辺野古新基地を強行し続けてきた。翻って見れば安倍政権が沖縄に寄り添うポーズを放擲し、沖縄の起ち上がりを敵視し圧殺する態度へと転換したことは、今日の韓国に対する敵視政治への転換の前哨であった。他民族支配・覇権拡張政治のあからさまな展開は、既に国境内において先行的に実行されていたのである。
 これに対して我々もまた、沖縄との連帯を一層強めつつ韓国民衆に連帯し、安倍政権打倒の闘いを前進させていかねばならない。

   終わりに

 今を特徴づけるとするならば、旧体制の崩壊の始まりであるだろう。アメリカの覇権とそれがビルドインされた戦後体制の崩壊の始まりであり、ブルジョア社会そのものの崩壊の始まりである。安倍政権による韓国敵視政治や排外主義の高まりは、そうした崩壊の始まりが生み出した逆流に過ぎない。「崩壊」は、新しい社会を創造する「革命」に行き着く。第三極政治勢力を形成し、安倍政権を倒すことを通して国境を超えた民衆連帯を発展させ、社会革命の時代を大きく開いていこう。(了)