7・21参院選
 改憲派「3分の2」は崩壊
  続く改憲策動に、「安倍打倒・政権交代」で完勝せよ!

 7月21日投開票の参議院選挙の結果は、与党自民・公明が参院過半数を継続することを許したものの、改憲発議に必要な改憲勢力(自・公・維新など)の参院「3分の2」以上を崩壊させるものとなった。
 この改憲派「3分の2」崩壊は、このかんの9条改憲反対闘争における土俵際の逆転であった。まだ勝利を収めたわけではないが、憲法闘争の局面変化が勝ちとられた。「3分の2」割れは、議席数的には、32「1人区」において10議席を獲得した国会野党共闘の健闘と、複数区を含めた立憲民主党の議席躍進などによって勝ちとられた。その背景には、「今回3分の2を維持されれば、安倍は必ず改憲発議を強行してくる」とみる民主勢力・左翼勢力による、危機感をもった取り組みがあった。
 これによって、早期の改憲発議は困難になった。今後、安倍9条改憲反対で一致する野党共闘が切り崩されないかぎり、2022年参院選までは改憲発議、とくに9条改憲発議はできない。それ以前に、必ず来る総選挙(衆院任期は21年10月)で、衆院の「3分の2」も崩すことができる。
 しかし、わずか4議席の参院「3分の2」割れである。自公は、過去最低であった1995年の44・5%に次ぐ、今回48・8%の低投票率によって助けられた。今回は、国会野党が一本化できずに「1人区」で2勝しかできなかった6年前、これの改選であった。本来野党に有利であった今回で、自公が余裕で過半数を占めることができたのは、この低投票率であった。
 安倍首相は、「3分の2」を崩されたにもかかわらず、「改憲を論じるか論じないかが、参院選の争点だ」と言って与党過半数を得た、だから改憲発議へ努力を続行するなどとしている。改憲派の参院議員を4人以上増やすために、国民民主党に手を入れるなど工作を強めている。10月初旬からとみられる臨時国会で、自党の改憲国民投票法改定案を持つ国民民主を巻き込んで憲法審査会を再開させ、また、国民民主からの一本釣りや、極右や新自由主義者の雑炊である「NHKから国民を守る党」(今回比例1議席)を取り込んで、4差を詰めようとしている。安倍はいぜん、自民総裁任期中(21年9月まで)に、改憲発議を強行するつもりである。
 参院選のもう一つの最大争点は、辺野古新基地建設の是非、埋立てを止めるのか・続けるのかであった。昨年12月の土砂投入強行後、最初の全国国政選挙だったからである。我々をはじめ多くの左翼的民主的人々は、この争点を重視して闘った。国会野党5党と安保法制廃止・立憲主義回復市民連合との13項目政策合意でも、「新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行なうこと」が合意されている。
 沖縄選挙区では、「オール沖縄」の高良鉄美候補が、自公候補の安里繁信候補に6万票以上の大差をつけて当選した。翁長死去以降、県知事選、県民投票、衆院補選に続く4度目の、辺野古NO!の沖縄民意が示された。
 しかし、消費増税、年金破綻が争点としてクローズアップされる中、辺野古阻止が全国争点としては、どこまで闘えたか疑問である。辺野古阻止は、沖縄一地方の問題ではなく、憲法闘争と一体の全国の問題であり、国民全体と安倍政権の力関係を決する課題である。安倍政権は与党過半数を得たことによって、昨年来の辺野古土砂投入強行も信認を得たものなどと強弁し、沖縄選挙区からの度重なる明白な拒否を無視して、選挙後も埋立てを違法に続けている。
 結局、参院選で我々は、「3分の2」を崩して、憲法闘争の当面の局面を変えることはできたが、与党過半数を崩せず、辺野古工事を止める具体的手立てを得ることはできなかった。
 しかしまた、参院選総括の核心は、辺野古阻止を重視したかどうかなどの、争点の立て方にあるのではない。その核心は、格差拡大など社会的危機下で潜在する民衆の欲求・要求を、選挙闘争に大きく引き出すことができなかった点にある。新党派「れいわ新選組」が、それを部分的に引き出すことに成功した。これに比して、「野党・市民共闘」や我々左翼勢力が、立ち遅れていることは明白である。
 総選挙は遠くない。今秋の消費増税強行による経済混迷、対韓関係など外交破綻によって安倍のレームダック化は進み、解散権乱用の総選挙で、政権維持のバクチを打つしか道はなくなってくる。
 総選挙か安倍退陣か、どちらが先になるにせよ、野党共闘・れいわ・我々左翼が、共通点を形成しつつ、「政権交代」の新ステージを目指すことになる。沖縄では県民の少なからずが、県民投票結果などを理由として、玉城デニー知事が埋立承認の「公益撤回」を行なうことを求めている。この「撤回」断行は、安倍打倒・政権交代への全国的号砲となる。
 安部打倒・政権交代は、一つの通過点である。その新ステージで、日本・沖縄の労働者階級人民の闘争が新展開していく。我々左翼が、広範な共同行動に連係しつつ、しかし独自に労働者民衆じしんの共同政治勢力化を進めていくこと、これが今こそ問われている!


低投票率=見捨てられた人々が起つ前夜
 何を意味する「れいわ」進出

 参院選での各党獲得議席数、比例区相対得票率、また各「1人区」での特徴は以下のようであった。
・自民57議席(9減で新勢力113議席)、35・4%。
・公明14議席(3増で同28議席)、13・1%。
・日本維新10議席(3増で同16議席)、9・8%。
・立憲民主17議席(8増で同32議席)、15・8%。
・国民民主6議席(2減で同21議席)、7・0%。
・共産7議席(1減で同13議席)、9・0%。
・社民1議席(改選前と同数で2議席)、2・1%。
・れいわ2議席(1増)、4・6%であった。
 これによって、自民、公明、日本維新の合計157に無所属の改憲派3を加えて改憲勢力は160となり、参院3分の2の164に4議席足らない結果となった。
 また自民・公明は合計で、改選定数124の過半数63を上回る71を獲得し、参院過半数123を大きく上回る141議席を占めた。
 改憲勢力160は、自民の9減を、低投票率が有利にはたらく公明の3増と、維新の3増がカバーしたことによっている。自民党自身は113で、参院単独過半数を失っている。
 比例得票率でみると、自民党は相対得票率では35・4%で、前回2016年の35・9%から若干減に止まる。しかし絶対得票率では、安倍政権発足以来維持してきた2割を割り込み、18・9%(約1771万票)と低迷した。保守票の動員も不調であったことが示されるとともに、長期化する安倍政権に不満を持つ自民党支持者の存在も予測される。
 公明は自公協力で議席は増やしているが、比例区得票率は前回より0・4%落としている。
 維新は、神奈川、東京、とくに北海道で比例得票率を伸ばした。自民にも、野党共闘にも行けない著名ブルジョア政治家が、維新に便乗する傾向がある。
 立憲と国民(生活が合併)との比例得票率合計は22・8%で、前回の民進党と生活の合計22・9%から微減している。
 共産は、2017年総選挙の比例7・9%を上回ってはいるが、前回参院選の10・7%からはかなり後退した。
 社民は、政党助成金をもらえる政党要件2%以上を、辛うじて確保した。しかし前回2・7%から更に後退し、歯止めがかかっていない。
 比例得票数でみると、安倍改憲反対の諸政党の合計得票数は約1921万票となり、投票率が54・7%であった前回は約2037万票であるから、ほぼ同程度。比例得票率合計としては若干増となる。
 それでも、この現状では改憲勢力にとどめを刺すのはむずかしい。
 野党が前回に続いて、全てで候補者を一本化した32の「1人区」では、野党候補が岩手、秋田、宮城、山形、新潟、滋賀、大分で大接戦を制し、長野、愛媛、沖縄では大差をつけて勝利した。自民党の議席減は、接戦の「1人区」で敗北したことが大きい。前回11勝、今回10勝の結果からして、来る総選挙では、すべての小選挙区で野党が一本化すれば、それだけでも相当な議会変動が起こると推定される。
 秋田では、陸自イージス・アショア配備計画の容認・反対が最大の争点であった。反対候補の勝利は、このかん「本土」では好き放題に進められてきた安部軍拡に対する、最初の大きな反撃である。秋田では、このミサイル基地計画の白紙化の道筋が拓けた。
 宮城では、立憲公認の野党統一候補が、立憲の政策に反する消費税「廃止」をかかげて大接戦に競り勝った。「れいわ」の登場と連動するが、生活支援型の積極財政論という一つの傾向が示された。
 特筆すべきは、この「れいわ新選組」が、公示直前に登場した新顔であるにもかかわらず、比例相対得票率4・55%と躍進し、政党要件を獲得したことである。
 「れいわ」は、野党共闘の立憲・共産・社民が中高年世代の中間層をおもな支持基盤とすることに対して、新自由主義による社会の崩壊が進行する中で、既存の体制が包摂できていない人々をおもな支持基盤として登場したと推定される。
 今回選挙では、重度の身体障がいを持つ候補者2名を特別枠で立てて当選させるなど、当事者主義の構えを鮮明にし、また経済生活問題に重心を置く方法で、低投票率にもかかわらず大きな成果を獲得した。代表の山本太郎参院議員は、東京選挙区から比例にまわって議席を失ったが、全国的政治勢力としての地歩を作ることに成功した。
 また「れいわ」は、野党・市民共闘の政策合意にも歩調を合わせ、選挙区で山本氏が野党候補の応援にも入るなど、政治的に練れた面も見せている。山本氏は参院選前には、野党共闘の消費増税凍結ではなく、5%への減税で野党が統一することを提案していた。これが受け入れられず、参院選では「廃止」を掲げた。これらからすると、来る総選挙での野党共闘と「れいわ」との調整・協力は可能であろう。
 今参院選での最大の問題は、低投票率にある。非正規労働者・失業者をはじめ、ここ数十年の新自由主義的資本主義が見捨ててきた多くの人々を、大衆運動や選挙を通じて、政治的に登場させることが問われている。(編集部O)