対韓国敵対政策への突進で、政権延命を図る安倍!
 輸出規制を即時撤回せよ

 安倍政権は、7月参院選で与党過半数を占めたことを背景にして、10月に消費税増税(8%から10%へ)を実施する。複雑怪奇な軽減策を伴なっており、混乱は必至であるが、今のところ消費増税実施を止める手立てはない。
 この消費増税は、このかんの社会保険料とくに国民健康保険料の負担増とあいまって、近年のわずかばかりの最低賃金改善を帳消しにする。逆累進の大衆課税で、貧困と格差はさらに拡大する。
 また、その実施によって始まる個人消費の縮小は、景気の減速を引き起こす。しかし、このかんの日銀のゼロ金利政策によって、金融政策でそれ以上の打つ手が無いまま、景気は後退局面を迎える。20年東京五輪が一時的な経済刺激となるが、五輪の後に、デフレから脱却できていない現状が深刻化する危険は高い。
 さらに、参院選後に意図的に先送りした日米貿易交渉が本格化し、米国は、日本向け牛肉等農産品の関税引き下げを迫るなど、トランプ流のやり方で対日諸要求が激化する。
 米国が日本にも参加を要求している「イラン沖有志連合」も、態度を誤れば安倍政権の命取りである。イラン核合意から一方的に脱退した米トランプ政権が、勝手にイランとの緊張関係を作っている。日本はイランの友好国であり、航路を守るのなら、その友好関係を維持することが第一だ。核合意を守るイランをはじめ中ロ英仏独と、米国との溝は大きく、「有志連合」はかんたんに出来そうにはない。リーダー転落の米国を助けるために、自衛隊を動員することは絶対に認められない。
 結局、安倍政権は、今後さらに高まる労働者民衆の不満や怒りを、近隣国に対抗する排外主義・国家主義の方向にそらし、政権維持と「戦争する国家」づくりに利用しようと躍起になっている。
 
  日本側世論を変えよう!

 安倍政権は昨年来、そうしても参院選には不利にならない、むしろナショナリズムを煽って国民を引きつけることができると読んで、徴用工問題への対応に示されるように、対韓国敵視政策に転換している。
 昨年10月30日、韓国の大法院は、新日鉄住金が元徴用工の原告4名に賠償金を払うことを確定する判決を出した。大法院判事の多数意見は、不法な植民地支配と結びついた日本企業の反人道的違法行為に対する慰謝料請求権は、1965年韓日請求権協定の適用対象に含まれてはいないという判断であった。11月には三菱重工業元徴用工にも、同様の確定判決が続いた。
 新日鉄住金判決後、即座に安倍首相は、「国際法に照らして、ありえない判断。政府として毅然と対応する」と息巻き、また「原告は募集工だ」、強制労働ではない!などと日本世論向けに宣伝し、韓国側に是正措置を取るよう要求した。以来安倍政権は、大法院判決に行政権力は介入できないという韓国文在寅(ムン・ジェイン)政権の立憲主義的態度に腹を立て、「韓国政府が日韓の協定を破った」、「国際法違反だ」と今日まで主張し続けている。
 そのうえに7月1日、安倍政権は事実上の対抗措置として、韓国むけの半導体原材料の輸出規制を4日から行なうと発表し、さらに8月2日、輸出管理の手続きを簡略化する優遇措置の対象国(ホワイト国)から韓国を除外する、という政令改正の閣議決定を強行した。
 菅官房長官や外務省・経産省は、半導体原材料輸出規制もホワイト国除外も、「徴用工問題と関係ない」、「あくまで貿易管理の問題」だと説明している。しかし、安倍首相は7月7日、テレビ党首討論で、「徴用工の問題で、国と国の約束を守れない国であれば、(安全保障上の)貿易管理をちゃんと守れないだろうと思うのは当然だ」と述べている。
 外交問題の係争に、貿易政策を闘争手段として使っていることは明らかである。これは、WTO条約違反でもある。安部首相ら右派の本音はどこにあるのか。安倍首相らは本音では、2018年4月27日の南北首脳による「板門店宣言」、これを不快に思い、朝鮮半島統一への道を進めつつある文政権を危険視している。徴用工問題はきっかけに過ぎず、統一コリアの出現を日本の安全保障上の脅威とする極右的立場から、輸出規制が出されてきていると考えることもできる。
 この輸出規制と閣議決定を撤回させる、強力な闘いが今求められている。韓国民衆と連帯し、安倍政権を退陣させなければならない。徴用工問題などについて少なくとも韓国と話し合うことはできるという、もっとまともな政権が必要だ。
 問題は、日本の世論の現状である。日本の世論の過半が、「請求権協定で解決済み」のデマ宣伝で洗脳されている。7月13日の朝日新聞世論調査では、安倍政権の輸出規制方針に「妥当だ」56%、「妥当でない」21%などと出ている。野党第一党の幹事長が、安倍政権の対応は「一定理解できる」などと発言しているようでは、秋の臨時国会での追及も期待できない。

  徴用工問題の解決へ!

 徴用工問題の解決の方向はどこにあるのか。
 ①まず、韓国大法院などで判決が確定したものは、粛々と執行されるべきである。安倍政権の内政干渉はもちろん、文政権も介入すべきではない。確定判決に修正すべき点があるとするならば、それができるのは韓国の主権者である韓国国民のみである。
 ②判決が確定せず係争中のものは、原告・被告法人・関係企業そして日韓両政府によって、和解解決する仕組みを設けることができる。日本側が朝鮮植民地支配と強制動員について公式謝罪し、被害者個人・遺族の権利を回復し、それらの証しとして補償金を払い、史実として記念するなどの事業を行なう仕組みである。文政権は、ドイツ方式(ナチスドイツの戦時強制労働を補償する仕組み)に類するものを提案しているが、安倍政権は検討もせず拒否している。こうした建設的な和解は、日韓請求権協定の下でもまったく可能である。
 大法院判決の直後、我々労働者共産党は11月に開いた2中総の決議の中で、次のように指摘した。「日韓請求権協定は、個人の賠償請求権を放棄したものではない。判決は、個人の被害を救済する国際的な司法判断に沿ったものである。日本政府は、植民地支配の責任を果たし、戦時性奴隷(従軍慰安婦)問題を含め誠意をもって解決すべきである。」
 1991年8月27日の参院予算委員会で、柳井俊二外務省条約局長は次のように答弁した。「(日韓請求権協定の)意味するところでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」。
 この答弁以降、韓国人原告が日本で起こした戦後補償裁判でも、個人請求権の存在は前提となっている。また、以降十数年の間に出された日本での諸判決でも、日中全面戦争開始後の朝鮮人労務動員は、それが「募集、官斡旋、徴用令適用」の如何を問わず、強制動員・強制労働の実態にあったことを事実認定している。柳井答弁の時点から不払い賃金の請求が可能になったとする判決もある。ただし、損害賠償の時効論が不当に適用されることによって、訴えは退けられてきた。
 しかし、山本晴太弁護士によると、「企業や国に対して不利な判断をする裁判例が現われはじめると、日本政府は解釈を突然変更し」はじめた。「日本政府の日韓請求権協定解釈は現在も維持されている。ただ、2000年代に入って『被害者は権利があっても裁判では請求できない』という主張が追加されたのである。今回の原告らはその『消滅していない請求権』を韓国の裁判所で行使し、認められたことになる」と解説している。(『世界』19年1月号「韓国・徴用工判決、『解釈』を変えたのは誰か?」)。
 安倍政権は、個人請求権は消えていなくても、それは韓国政府が補償することだ、と居直っている。それなら、原爆投下やシベリア抑留の被害者・遺族の損害賠償を、米ロに代わって安倍政権がやってくれるのか。
 ③日韓条約・協定の見直しが問われている。
 徴用工問題や朝鮮人軍隊「慰安婦」問題の解決は、被害当事者の多くが死去し、すでに直接の被害補償に遅いものであるが、上記のように現行条約・協定下でも解決は可能なものである。
 しかし、その根本的解決が、個々の被害補償にとどまらず、日韓両国民が過去の歴史の総括を共有し、人権を真に尊重しあう新しい時代を創ることにあるとするならば、両国が合意して、冷戦時代の産物である日韓条約・日韓請求権協定を白紙化すること、日本と韓国が新しい基本条約を結びなおすことが問われるだろう。それは、統一コリアの出現を支持し、統一コリアと日本の新しい関係を展望したものとなるべきである。
 韓国大法院判決は、「不法な日帝強占」と歴史認識にも踏み込んだ。これは、冷静継承の独裁政権をくつがえした「キャンドル革命」の、司法への反映ともいえるだろう。
 今後の日朝正常化においても、朝鮮植民地支配の不法・適法など歴史認識が問われることとなる。今日まで維持されている1995年・村山政権時の「韓国併合条約」認識、これが問い直されるべきである。
 日韓条約は、過去清算・人権回復を打ち捨て、米国が指揮する米日韓結託体制づくりを優先させることによって結ばれたものである。その轍をくり返してはならない。(W)


中央最低賃金審議会が、政府・財界ペースで「目安」出す
 「1500円を!」闘いはこれから

 中央最低賃金審議会が7月31日、今年の地域別最賃引き上げの「目安」額を決め、厚労相に答申した。
 その額は、全国加重平均で時給27円増で、このかんの「年率3%程度」の改善にとどまった。これは、政府・財界の予定ラインに押さえ込まれた結果である。このかんの労働者側の要求、「どこでも今すぐ1000円・めざせ1500円」、「8時間働いて暮らせる社会の実現を!」は、今年もきびしく拒絶された。
 「目安」では、最高で東京1013円、最低で鹿児島787円となる。平均の900円を超えるのは7都府県にすぎない。時給1000円でも所定労働時間では、ワーキングプアのままである。1500円で年収300万となり、やっと抜け出せる。
 また、労働者数を考慮した加重平均方式では、最賃の地域格差が拡大し続ける。自民党内からも、地方の産業振興・求人確保の立場から全国一律最賃制を求める動きが出ている。現行の最賃決定の仕組みでは、一向にらちがあかない。一律1500円を実現するためには、政治を変える必要がある。
 参院選を通じて、「1500円!」の訴えが一定広げられた。この傾向を、8月の各地域審議会への行動をへて、今秋に全国的行動として目に見える形にすべきである。
 そして、この最賃全国行動と自治体非正規運動とを結ぶことが必要だ。自治体の会計年度任用職員制度が来年4月導入であり、その賃金が12月地方議会で条例として決まるからである。
 最賃の共闘は、これからが本番だ!(A)


8・12~15
行こう!釜ヶ崎夏祭り
 「釜歩きツァー」は8・15

 第48回釜ヶ崎夏祭りが、今年も8月12日~15日の日程で、大阪市西成区の三角公園を中心に開催される。
 今回夏祭りは、「老いも若きも安心して働き、暮らせる釜ヶ崎を!」「野宿をさせるな!働いて飯を食わせろ!」「府・市は、センター建て替え中の仲間の居場所を拡充せよ!」「労働者・地域の仲間と団結して、生活と闘いの拠点を守ろう!」等のスローガンを掲げる。
 8月12日夕方6時から、夏祭り実行委員会による「夏祭り前夜祭」集会が、三角公園にてもたれる。日本軍「慰安婦」関西ネット、反原発を担う「若狭の家」、ストップ辺野古新基地大阪アクション、などの仲間たちも駆けつけて闘いを盛り上げる。
 15日の「慰霊祭」と盆踊り、最後まで足を運んで共に連帯の輪を広げられんことを訴える。
 なお、「釜ヶ崎講座」の行動・企画は以下のとおり。
 8月13日(火)、「特掃体験」行動。午前7時45分・釜ヶ崎日雇労働組合事務所集合(当日は労働できる服装。運動靴必携、スリッパ・サンダル等不可。熱中症対策の自己準備)。
 8月15日(木)、釜ヶ崎歩きツアー。昼12時30分・釜日労事務所前に集合。午後1時出発。参加費500円。ツアー案内人・水野阿修羅氏。(大阪I)