国会の数合わせだけでは、選挙にも勝てない
 反安倍の投票行動を、どう拡げるか

 5月29日の国会野党5党(立憲民主、国民民主、共産、社会保障を立て直す国民会議、社民)党首会談において、参院選「1人区」32の内、30選挙区で候補者一本化が合意され、安倍政権反対の陣営では選挙モードが加速されている。
 もちろん今夏参院選では、改憲勢力「3分の2」を突き崩し、安倍改憲を終らせることが最大課題である。しかし、4月北海道知事選で端的に示されたように、国会野党の数合わせだけでは選挙にも勝てないこと、勝つためには投票率が上がらなければ、ということを皆が知っている。ふだん投票に行かない人々が、政権批判票として投票に向うような政治情勢の勢いが必要である。(戦争勃発などの非常時には、ふだん棄権の人々が、政権支持票として刈り取られるという逆作用が予想される)。

  「大衆闘争」

 政治情勢の勢いを作るためには、「大衆闘争」が必要である。政権批判の高まりを目に見える形に表現し、メディアやSNSで潮流化し、政治情勢を動かすことが必要である。これは選挙活動そのものではできない。
 我々労働者共産党は、昨秋の2中総で、「遅くとも7月参院選で、安倍を終らせる。その前に、全国民的対決点を明瞭化して、大衆闘争で安倍を打倒することを全力で追求し、その地平を参院選に反映させるという方針をとる」と決議した。
 我々は、総がかり行動や左派共同行動の一端を担ってきたが、この決議を実現できないまま、参院選目前となってしまった。大衆闘争に上げ潮・引き潮があることは当然であるが、2011年に始まり、2015年安保法制闘争に引き継がれた「街頭政治」の波は、その後引いたまま、なかなか復調過程に入れない。
 先日の5・25辺野古国会包囲は、きわめて低調に終った。これは、日共系が7月4日参院選公示を前提に選挙活動のほうに全力を上げているという要因もあるが、我々を含めた全体の責任である。これでは、参院選で勝つこともおぼつか無い。今、我々にできることは、辺野古新基地阻止などの諸行動を堅持しつつ、安倍打倒の投票行動へ、多くの人々を動かすことである。
 今回参院選は、6年前に自民党が勝ちすぎた時の改選であり、本来野党に有利である。そして、改憲派の「3分の2」占拠は参院ではぎりぎりであり、自民がある程度落とすと、公明や維新などの当落にもよるが、「3分の2」は崩れる。3年前の1人区11勝程度でも、崩せる可能性は高い。
 参院「3分の2」崩壊を確かにするためには、このかんの投票率(17年10月総選挙53・7%、16年7月参院選54・7%、14年12月総選挙52・7%)を60%程度に上げる必要がある。そうすれば、自公過半数割れも見えてくる。
 安倍も必死である。「3分の2」が崩れる前に、自暴自棄になって国会議員だけで安倍改憲案を提出することもありうるが、参院選を小負けで乗り切り、改憲日程の立て直しを計ろうとするだろう。
 安倍は、5月25~28日の米大統領トランプの来日を、参院選へ向け有利な政治劇としようとした。しかしそれは、日本の安保法制(戦争法)を前提とした日米軍事一体化を異常に突出させたこと以外、何の合意内容もなく、むしろ安倍とトランプの齟齬を露呈したものであった。
 日米貿易交渉については、トランプは「8月によい結果が発表できるだろう」、「私はTPPとは関係ない。何も縛られていない」と述べた。安倍は、農産物関税水準について何も言わなかった。すでに密約があり、7月参院選が終るまで伏せている可能性がある。
 朝鮮情勢については、4月の朝鮮による短距離ミサイル発射実験について、トランプは「私は安保理違反だとは思っていない」と述べた。安倍は「弾道ミサイル発射は、安保理決議違反で極めて遺憾だ」と述べ、完全にくいちがった。米朝正常化という東アジアの平和のための緊要事を、安倍が邪魔しているのである。
 「日米の絆」とは、米製兵器に依っているのか。トランプは、「F35を105機購入し、同盟国の中で日本が最も保有することになる」と、安倍政権の米兵器爆買いを念押しした。安倍は、「安保法制により、日米は互いに助け合うことのできる同盟になった」、「揺るぎない絆」などと応えた。米軍と一体化して、自衛隊の海外武力行使が可能になっている憲法違反の危険な事態を、助け合いなどとキレイごと化している。5月28日横須賀で、安倍とトランプは、空母改造予定の護衛艦「かが」に乗船した。安倍政権が昨年末に追加購入を決めた105機中、42機がSTOVL機のF35Bで、この改造空母などに搭載されようとしている。
 日米同盟を支持する人々にとっても、現在の安倍・トランプ関係は異常である。
 しかし、「日米安保強化反対のために、参院選では反安倍に投票を」と言っても、現状では反応はかんばしくない。

  「消費税5%」

 反安倍の投票行動を促がすためには、一つは、「あなたの一票で、辺野古の埋立てを止めよう!」であり、もう一つは、「あなたの一票で、消費税増税を止めよう!」という方法が適切であろう。
 「あなたの一票で、9条改憲を止めよう!」ではないのか。それも勿論必要である。しかし、そのように主張しても、「3分の2」が焦点となった過去2回の国政選挙では、投票率を上げることが結局できなかったのである。
 このかんの世論調査では、辺野古土砂投入反対、消費増税反対のほうが、9条自衛隊明記案反対を常に上回っている。国民一般の関心は、憲法がどうこうだけではないのである。
 山本太郎は反原発を掲げ、6年前に5人区の参院東京選挙区で4位当選した。現在、ふたたび無所属にもどって、東京選挙区で再選を勝ちとろうとしている。その「れいわ新選組」の名称は、我々左翼からは当然不評であるが、彼はかねてから「消費税5%化」をメインに掲げている。
 安倍政権は、幼児教育無償化を消費増税を前提として進めるなど、策略的な包摂策をすすめている。また、一般消費税は廃止することが筋であるにせよ、所得税を払う現役世代が減ることによって、消費税そのものは容認する傾向が一般に強くなっている。
 しかし、消費税10%化に対する反発は根強く、広範である。山本太郎の「5%」は、意外と大受けする可能性がある。「昔・年貢半滅」、「今・消費税半滅」である。
 最後になるが、安倍9条改憲打倒の後の政治方針を、左翼は考えておく必要がある。反安倍を共通項とした「野党・市民共闘」は、安倍打倒後には分解・再編過程に入いらざるを得ない。たとえば「戦争法廃止」と言っても、その中味は各野党でばらばらなのである。
 つまりは、新しいビジョンをもった、新しい左翼の出番が来るのである。(A)


5・25釜ヶ崎講座
 ユニバーサル就労ですすめる
   地域(釜ヶ崎)の仕事づくり


 5月25日、大阪市のエル大阪(大阪府労働センター)において、第24回釜ヶ崎講座講演のつどいが、NPO法人釜ヶ崎支援機構との共催で、「ユニバーサル就労ですすめる地域(釜ヶ崎)の仕事づくり」をテーマi開かれた。
 講師は、冨田一幸さん(大阪知的障碍者雇用促進建物サービス事業協同組合代表理事)。会場には、釜講座会員、釜支援機構など釜ヶ崎で働く労働者、関心を抱く市民・学生など約45名が集まった。
 冒頭、司会の渡邉充春さん(釜講座代表)が挨拶。一昨年来、3回にわたり支援機構との共催で「仕事づくり」をテーマとする学習会を、釜現地でもった。講師を出してもらったセンター事業団や、フリーヘルプとは、これらとの提携で、釜ヶ崎内での仕事おこしがすでに動いている。今回も第4回として、「ユニバーサル就労」という課題を知る中で、その釜ヶ崎での具体化に向け、課題を掘り下げていきたいと提起された。
 まず、共催の釜支援機構・松本事務局長より問題提起。松本さんは、自作のパワーポイントを映示しつつ、釜ヶ崎が近年、橋下市長(当時)が打ち上げた「西成特区構想」で、西成総合センター建て替えをはじめ、街の急速な変化の波をかぶったこと。それによって、誰のための釜ヶ崎の街なのか、あるいは誰のための総合センターなのか、という課題がいやおうなしに浮上したこと。そして、その課題にマッチする就労、あるいは居場所など日常生活問題の解決のために、施策の提起と活動エリアをマップで説明した。
 その中で、とくに釜地域内での諸運動にも触れ、「野宿する自由」の誤った主張では、労働者・住民の根底的生活基盤の獲得・前進を遅らせることになること、我々は、地域の労働者・住民が何を強く求めているのか、それを受け止め、具体化していくことこそが今求められていると述べた。それが、センター閉鎖後の、仮移転に伴なう就労待機場所や居場所の問題の解決であったことを補足説明した。
 また当面は、清掃事業に主体を置いた検討をすすめ、労働者の生活をバックアップしていきたいと述べ、「ユニバーサル就労」の動きと合わせて、釜ヶ崎地域での仕事づくりを前進させていきたいと抱負を語った。
 次に冨田さんが、今回のメインテーマ、「ユニバーサル就労」について約1時間の講演。

  「ユニバーサル就労」とは?

 「ユニバーサル就労」とは、就労困難にある人が、社会的協働の仕組みの中で、仕事に就き働けるという法制化を含む制度概念である。
 冨田さんはまず、この4月に大阪府で改正・制定されたハートフル条例(大阪府障碍者等の雇用促進と就労の支援に関する条例)、この主たる改正点を説明した。改正により、大阪府と契約する・補助金を受ける・府施設の指定管理者となる事業者に、障碍者の法定雇用率達成と維持に向けての計画作成や報告が義務付けられた。また障碍者でなくとも、就職が困難な者について、府と関係のある事業者が雇用の促進を図っていくこととなった。
 冨田さんは、今回の改正は、就労当事者の明確化(障碍をもつ人々のほか、就労困難者等として支援対象者を拡大)と、行政が発注する契約での総合評価入札とを明確に規定しており、また履行義務を行政と事業者等の相互に義務付けており、進歩的な動きであるとし、この改正を文言で終らせてはならないと説明した。
 さらに改正ハートフル条例を、2000年・野宿者自立支援法の成立とあいまって、大阪での反失業と社会的起業の前進に使っていく決意が、活動家に必要であること。また、大阪でのこれらの取り組みが、全国で拡大しつつある「ユニバーサル就労」の充実につながることになるだろうと語った。
 質疑応答では、「釜ヶ崎での取り組みは面白いと感じているが、社会的起業の持続可能な方向、プランはあるのか」との問いも出た。冨田さんは、「入札評価等、仕事をする側の力の有無が大事だ。とくに釜の地域などでは、持続可能にとらわれず、現場の必要性の中から起業すべきだ。採算性第一を問われるわけではない。だが事業体である以上、採算も大事は押さえるべき」と応答した。
 今回の冨田さんのお話しは、社会的就労が仕事を生み出す「成長産業」であること、条例を一つの武器にしつつ、困窮者共生を実現できるということ、こうした強いメッセージを発するものであった。「ユニバーサル就労」の可能性を念頭に入れた、釜ヶ崎内外での今後の取り組みに期待したい。(関西I通信員)