3・10東電刑事裁判厳正判決を求める全国集会
 たじろがず有罪判決へ

 東電刑事裁判の結審を2日後に控えた3月10日、福島原発刑事訴訟支援団は、「東京電力福島第一原発事故刑事裁判・厳正判決を求める全国集会」を東京・専修大学神田校舎で開催し、200名超が結集した。
 東電の旧経営陣を被告とするこの裁判は、福島県民そして全国からの1万4千余の人々による告訴、検察庁による東電と経産省についての2度の不起訴、東電については市民の運動による検察審査会での強制起訴という経過で実現され、2017年6月に初公判、以来今日、裁判は被告人側最終弁論・結審にまで持ち込まれた。
 集会では最初に、佐藤和良支援団団長が開会挨拶。冒頭、「事故から8年、被害の甚大さが心と身体を蝕み、3・11が近づくと心が穏やかでなく、憂うつな日が続いている」と発言。「3月12日には、37回公判が開催され結審する。我々は、厳正な判決を求め、禁固五年の有罪判決を勝ち取りたい。法の支配をこの国に取り戻す。原発事故で誰一人裁かれないことはあってはならない。たじろがず有罪判決を勝ち取る」と決意を述べた。
 次いで海渡雄一弁護士は、裁判で明らかになった事実を経過に則して説明。「被告人らは、福島第一原発が想定される津波に対して安全性を有していないことを十分認識していた。しかし、地元自治体や市民から原発の停止を求められるのを恐れ、柏崎刈羽原発停止により収支が悪化する中、福島第一の多額の工事費が経営に与える悪影響を避けるために、津波対策を先送りし、何の対策もせずに放置した。それが事故を引き起こした真相」と述べ、東電の過失責任を鮮明にした。
 河合弘之弁護士は、「社会は甘くない。予見可能性があったかは、裁判官の判断。だからこそ怒りを裁判官に伝え、世論に訴えるべきだ。どちらが勝っても必ず控訴審になる。気を長くもって闘うべきだ。」「もう一つの軸は、原発の廃棄だ。この裁判は、惨害賠償を求める闘い、脱原発の闘いなどの中核にある。闘いを発展させることを考え、原発を破棄させるべきだ」と述べ、闘いのあり方を示した。
 弁護団スピーチでは、大河陽子、甫守一樹の両弁護士も発言した。
 原発事故8年の思い・リレースピーチに入り、いわき市の斉藤さんは、「被害者は、量りに掛けられ差別を受けてきた。東電は破壊者だ。しかし、それを見逃してきた。国と県も同罪だ。告訴団の一人として、東京地検に何度も駆け付けた。東電に必ず責任を取らせる」と怒りを吐露した。
 富岡町から非難した吉川さんは、「何度も傍聴に来た。我々の思いに無関心な裁判長が判断している。彼らに分からせなければ意味がない。有罪を勝ちとっても、自分には何も返るものがない。しかし勝ちたい」と発言した。このほか南相馬から神奈川県に避難の山田さんら、総勢8名がアピールした。
 最後に事務局から、
 「厳正な判決を求める署名」4万5千筆を達成した。さらに締め切り日を4月20日まで延長し、より多くの署名を事務局に送ってほしい。
 被告人最終弁論結審は、3月12日第37回公判のみに変更。3・12東京地裁前に大結集を。
の二つが呼びかけられて終了した。(東京A通信員)

東電9・19判決へ世論攻勢を
  3月結審―福島原発事故・東電過失責任は明確になった!

 福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長ら東京電力旧経営陣3人の刑事裁判が、3月12日東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。
 この第37回公判は、弁護側(東電側)が最終弁論を行ない、旧経営陣は、「大津波の予見可能性は認められず、過失のないことは明らか」などと無罪を主張し、この日の内に結審した。
 永渕裁判長は判決期日を9月19日に指定。裁判の勝利は、その日までの闘争の拡大に委ねられた。
 被告3人の弁護側最終弁論の要旨は次の通り。
 ①事故の予見可能性が認められないのは明らかで、3人は無罪。3・11以前にマグニチュード9クラスの地震が東北の太平洋沖で起きると考える予見はなかった。
 ②仮に事前の試算に基づいて防潮堤などを設けていても、津波による浸水を防ぐことはできず、事故を回避することはできなかった。
 ③重要施設の水密化についても、3・11の津波より小さな津波の想定では、有効な対策はできなかった。
 ④(対策工事完了まで原発を停止すべきとの件については)電力を安定的に供給する義務がある。原発を止めれば割高な火力発電への比重が高まり、料金の上昇につながる。具体的かつ根拠に基づく説明ができなければ、運転停止はできない。
 ⑤2002年推本(文科省地震調査研究推進本部)の長期評価は、積極的具体的な根拠があったわけではない。学者にも異論があった。土木学会に検討を依頼したのは合理的選択であり、対策先送りではない。等々。
 しかし弁護側最終弁論は、すでに明確になった事実を無視し、責任逃れのために主張されたものだ。
 東電は、08年には推本の長期評価に基づいて対策を進め、主要施設の敷地の高さ10mを超える15・7mの津波を算出していた。しかも、10mの敷地上に10mの防潮堤を、南側だけでなく東側や北側にも設置すべきことが提言されている(東電設計の08年4月18日報告)。東電が速やかに対策を実行していれば、事故は未然に防ぐことができた。
 また、裁判の最終段階で、過失責任を裏付ける山下和彦氏(当時東電原子力設備管理部ナンバー2)の供述調書が明らかになった。これを見れば、東電の犯罪は一目瞭然である。
その内容は、①長期評価は最新知見であり、長期評価を考慮するのは当然。②原発を止めることになりかねないから、原子力設備管理部内では長期評価を取り入れる方針になった。③この方針を武黒・武藤元副社長(現在の被告人)に伝え、08年2月16日の「御前会議」でも報告し、方針は了承された。④08年3月11日の常務会でも、その方針は了承された。⑤当時10m盤を超える津波とは考えておらず、4m盤を超える津波での機能維持のみを考え、4m盤上のポンプの水密化や建屋を囲む程度なら、バックチェックの最終報告に間に合うと考えていた。⑥08年5月から6月頃、東電土木調査グループの高尾誠氏らから、長期評価を取り入れると津波水位が最大15・7mになると説明され驚いた。⑦10m盤を超えない水位であれば長期評価を取り込み、対策をとる方針が維持された。⑧津波対策をしないと決めた理由は、バックチェック最終報告時までに津波対策工事を完了する見込みがなく、原発を止められる恐れがあったこと。当時、柏崎刈羽原発の停止により収支が悪化、福島第一まで停止するとさらに悪化するため、運転停止は何とか阻止したかったことが挙げられる。⑨耐震バックチェックは、最新の知見を取り込むことが前提、後日取り込むでは、審査委員や保安院が納得しない可能性があったため、武藤元副社長が有力な学者に根回しを指示した――とされている。
 これらは、裁判での証言や交換されたメール等の内容とも一致している。もはや東電の過失責任は明確である。

 2・26地震予測

 2月26日、政府の地震調査委員会(委員長・平田直東大教授)は、日本海溝沿いの海域で、今後30年間にM(マグニチュード)7~8の大地震が起きる可能性が高いとする予測を公表した。青森県東方沖および岩手県沖北部は、M7~7・5程度の地震発生確率が90%以上、宮城県沖は90%程度と予測されている。
 しかし、2011年にM9の超巨大地震が発生した岩手―茨城沖では、3・11の震源域に隣接する海域での発生は否定できないとしたものの、30年以内のM9の発生確率は0%と公表した。予測の根拠は、現時点でのデータ不足と、超巨大地震が550~600年の間において繰り返すと仮定したことが挙げられている。今回の予測は、3・11を受けて11年11月にまとめた改定長期評価に基づいて公表されたもの。
 東電刑事公判に証人として出廷した島崎邦彦東大名誉教授(地震学)は、0%予測について、詳細不能を理由に最悪の事態に目を背けてはいけないと指摘し、「3・11震源域の北と南で、別の超巨大地震が発生しうることを前面に出して伝えるべき」と発言した。
 電力各社は、再稼動に向けた手続きの遅れや、対策費の膨張を警戒する。東北電力女川原発は、23・1mの津波を想定するが、追加対策で遅れることを恐れる。東海第二原発も、「新知見が出れば真剣に対応する」構えだが、防潮堤建設等で見込まれる対策費が3000億円にも達している。
 地震調査委の公表内容は、政府のエネルギー政策と「原子力ムラ」の意向が働いている
2月28日、東海第二を運営する日本原子力発電の村松衛社長は、6市村(再稼動の際、同意を必要とする協定を結んでいる)の首長と水戸市内で面会し、再稼動方針を伝えた。面会後、東海村山田村長は、「原電が一方的に前へ進むイメージが強い。協定に基づいて協議がされていくのか危機感を持った」と語った。
 強引な再稼動への動きを抑止するためにも、東電刑事裁判での厳正判決が問われている。再稼動反対の運動と、厳正判決を求める署名の拡大などで、労働者・市民の怒りを裁判官に伝えねばならない。決定的瞬間には、国会前などに大結集して、安倍政権打倒・全原発廃炉へ立ち上がる必要がある。たじろがずに、9月には有罪判決を勝ちとろう。(O)


3・21さようなら原発全国集会1万人
  渕上さん継いで脱原発へ

 3月21日、「3・11」福島原発事故発生から8年目となり、東京・代々木公園では「3・21さようなら原発全国集会」およびデモ行進が行なわれ、主催者発表で1万人が参加した。平和フォーラムや全労協などの労働組合員が多数参加した。主催は、さようなら原発一千万署名市民の会で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委が協力。
 集会は、原発ライブに続き午後1時半から発言開始。総がかり実の菱山南帆子さんの司会で、最初に鎌田慧さん(署名呼びかけ人・ルポライター)が主催者挨拶。
 鎌田さんは冒頭、渕上太郎さん(経産省前脱原発テントひろば共同代表)が昨日の朝、病気で死去したことを報告した。追悼の言葉とともに、遺志を継いで闘い、「とにかく安倍政権を倒そう!」、原発・辺野古にみられる無責任でモラル欠如のアベ政治の一掃、これを訴えた。落合恵子さん(作家)も、呼びかけ人発言で渕上さんを悼んだ。
 フクシマからの発言では、人見やよいさん(福島原発告訴団・フリーライター)が、「事故から8年と言うが、8年経っても事故が続いていると言うべき。放射能は出続けているのに、県内3千ヵ所のモニタリングポストを撤去などとしている。東電刑事裁判、9月には必ず有罪判決を!」と訴えた。
 また、熊本美彌子さん(避難の協同センター世話人)は、「東京へ避難して8年、日本は民主主義の国なのか、疑問が大きくなった。避難者は、この3月末で公務員住宅を追い出される。福島県も住宅補助を停止する。(避難区域外の)避難者への見せしめだ」と批判した。
 東海第二原発再稼動について、阿部功志さん(東海村村議)が報告した。「今日は風が強いですね。東京は東海第二から110キロ、放射能はすぐ来ます」と指摘し、「老朽原発を更に20年延長とするが、23年から再稼動しても、後13年間しか運転できない。そんな原発の安全対策に3千億、内東電からの支援が1900億円のムダ。原発1キロワットに1万円補助する(東海第二は110万キロワットだから、毎年110億円入る)新しい仕組みを、来年導入しようとしている。ぜんぶ電気料金に上乗せです」と暴露した。
 原発ゼロ法案について、山崎誠衆院議員(立憲民主)が、「昨年3月に提出された法案が、自公の妨害で吊るされたまま。何としても審議入りを!」と報告した。原水爆禁止の高校生平和大使による発言が続いた。
 沖縄については、外間三枝子さん(一坪反戦地主会関東ブロック)が発言。外間さんは、「さよなら原発の集会ですが、さよなら日本と私は言いたい。応援してくれる人も大勢いるので、ほんとはそう言いたくないが。沖縄は自己決定権の実現をめざしたい」と述べつつ、新たな土砂投入阻止のための3・24東池袋公園、3・25官邸前を訴えた。
 総がかり実の福山真劫さんが、安倍政権打倒の当面情勢について報告。また、14日から行なわれてきたフクシマ連帯キャラバンを、若い労働組合員らが報告した。
 最後に集会アピールを採択、2手に分かれてデモ行進に出発した。反原発の他、情勢的に統一地方選・参院選勝利、辺野古埋立て許すな、の発言が多かった。(東京W通信員)