12・26東電刑事公判、旧経営陣に禁固5年を求刑
  裁判長は、求刑通りの判決を

 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の論告求刑公判が、12月26日東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた(第35回公判)。
 「津波対策を取るのは容易だったのに漫然と運転を続け、多くの人々を死に到らしめた」。「何ら津波対策を取らなかった責任は極めて重い」。検察官役の指定弁護士は、東電の無責任な対応を批判し、この日午後5時過ぎ、同罪では極めて厳しいと言われる禁固5年を求刑した。
 被告三人は、勝俣恒久元会長と、原発の安全対策の実質的責任者である武藤栄元副社長、その直属の上司だった武黒一郎元副社長。
 公判は、海抜10mの原発敷地を超える高さの津波を予測し対策を取れたか否か、が争点。三人はいずれも、「大津波は予見できなかった」と無罪を主張している。
 東電側は、「自分は知らなかったから責任がない」と逃げの常套手段を使用。部下から報告がなかったとして、他人に責任を転嫁する悪辣な手法を用いている。指定弁護士は、情報収集義務を掲げてそれに対抗、三人の責任を明確にして前述の求刑に持ち込んだ。
 論告要旨は次の通り。
 「三人は被告人質問でお詫びし頭を下げたが、事故の責任を否定し、他者に責任を転嫁する供述ばかりだった。三人の立場は、東電の最高経営者として福島第一の安全を確保すべき最終的な義務と責任を負っている。取締役就任中は、東電の業務執行の最終意志決定」に関与していた」。従って三人は、「原発の運転、安全保全業務に関する具体的な情報を収集し、万が一にも事故が起きないよう万全の対策を講じる義務があった。」「三人はそれぞれの立場で誠実に情報を収集し、的確な判断をしていれば10m超の津波を予見でき、しかるべき措置を講じることができた。武藤元副社長は2008年6月、勝俣元会長は09年2月、武黒元副社長は09年4~5月ごろには大津波の危険性を予見できた。」「10m超の津波の襲来を予見できたのだから、防潮堤の設置といった適切な措置を講じ」、「安全性を第一に考えて、対策工事の完了まで原発の運転を停止する結果回避義務があった。」「三人の犯情は業務上過失致死傷罪の中でも極めて重い」、しかも「三人はいずれも反省を示していない。三人に有利に考慮すべき事情は何一つない」と。
 翌12月27日には第36回公判。
 公判には、原発からおよそ4・5km離れた双葉病院と隣接する系列の介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」に入所し、長時間の避難で死亡した44人の遺族のうち、一人の男性遺族が被害者として参加している。代理人の海渡雄一弁護士は、亡くなった被害者が約10時間に及ぶ過酷なバス移動の末、水分や栄養を摂取できずに衰弱死した事実を指摘。「原発に不安を抱えていた被害者にとって、原発事故で死に至ったことがいかに無念だったか」と発言。「求刑通り処罰してほしい」と裁判長に求めた。
 裁判は、3月12、13日に弁護側(東電側)が最終弁論を行なって結審する。
 二日間に渡る公判について、その報告集会で発言した佐藤和義・福島原発刑事訴訟支援団会長は、「万が一にも起こしてはならない事故であった。しかし三人は、誰一人として反省してはいない。最大の刑を要求した。全国の力でここまできた。これを判決として勝ち取るには、支援団は死力をつくして闘う必要がある。多くの人々にも闘いに参加してほしい」と訴えた。
 結審前の3月10日、「福島原発刑事訴訟・厳正判決を求める全国集会」が都内で開かれる。(神田の専修大学7号館3F、午後2時)(東京O通信員)

  うごめく「国際原子力ムラ」

 1月17日、日立製作所は、英国で進めてきた原発の新設計画を凍結すると発表した。日立は、英政府とアングルシー島での原発2基の建設を計画、2020年代前半の運転開始を目指していた。
 福島第一原発事故後、事業費が安全対策の強化で想定を1兆円超上回る3兆円規模になる見通しなった。しかし、資金の出し手が集まらず、日立は一社では負担できないと判断、凍結を決めた。
 これによって日本政府の原発輸出政策は、英国の他、トルコやベトナム、リトアニアでも撤回や凍結に追い込まれ、原発の海外輸出を掲げた安倍成長戦略の柱の一つが、事実上崩れた。
 国内でも既存原発の再稼動が進まず、新しい規制基準で稼動したのは9基。一方、大震災前に54基あった原発は、34基に減少した。今後も減り続け、政府が掲げる「2030年度に必要な電力の20~22%を原発でまかなう」という目標の達成は難しい。
 この現状を前に日本経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は、1月15日の記者会見で、原発事故後に停止している原発について「再稼動はどんどんやるべきだ」と発言。原発事業を展開する日立会長としての立場から、再稼動推進を改めて表明した。そして、「地域の反対がある中、一般公開の討論を真剣にするべき」とも述べた。原発の経済合理性が世界的に失われる中で原発を推進するには、国民の同意が必要との姿勢を示した。
 これは、コスト論ではもはや原発を正当化できなくなり、別な理由付けで国民を説得しようという意図である。日本政府も「日本には資源がない」などとして、維持推進を掲げている。「原子力ムラ」は、追い詰められても巻き返しを図っている。
 経済産業省は昨年11月14日、地球温暖化対策を名目に新たな小型原発の開発を進め、2040年頃までの実用化をめざす方針を表明した。導入の理由として経産省は、再生可能エネルギーの不安定な出力をならす必要があり、出力を調整しやすい小型原発が欠かせないとの見解を示した。小型原発は、従来型原発出力(100万Kw前後)の3分の1未満の出力となり、主要機器を工場で製造して現地で据え付けるため、建設コストが安いとされる。
 しかし原発は、「核廃棄物」を出し、一度事故を起こせば深刻な被害を及ぼす。クリーンエネルギー論は欺瞞である。低コストの再生エネルギーに押される原発産業と推進官庁が、地球温暖化対策を名目に巻き返しに出て、何が何でも東海第二原発を再稼動しようなどと原発産業の維持を画策している。
 この策動は国際的でもあり、11月13、14日には22ヵ国からエネルギー官庁高官や研究者、原発メーカー幹部が経産省に集まり、「原子力がエネルギー転換期において直面する課題と機会」なる会議を開催している。主催は、米・日・加などが参加する「クリーンエネルギーの未来のための原子力革新」。まさに「蠢きだした国際原子力ムラ」だ。
 悔い改めない者たちに一撃を加え、脱原発を推進するためにも、東電に責任を取らせねばならない。昨年12月26日時点で3万8千筆超の「東京電力福島原発刑事訴訟・厳正な判決を求める署名」の推進を含めて、運動を拡大発展させ、裁判勝利、全原発廃炉へ奮闘しよう。(O)


通常国会でも改憲発議阻止へ
  今年最初の「19の日」行動、国会前に2800人

 改憲発議を断念させる最大の山場、通常国会の開会を前にした1月19日、「安倍9条改憲NO!辺野古土砂投入即時中止!安倍政権退陣!国会議員会館前行動」が闘われた。今年最初のこの「19の日」行動には、寒気膚を刺す中、2800名の労働者・市民が結集。主催は、安倍9条改憲NO!全国市民アクションと、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。
 行動は「改憲発議絶対反対」、「辺野古に基地はつくらせない」のシュプレヒコールで始まり、まず国会野党が発言。立憲民主党・菅直人衆院議員は、「今年は何としても安倍政権による改憲を断念させ、また原発ゼロを実現する」、「野党と市民が一緒になって安倍政権を倒す。衆参同時選挙もあり得る。警戒を緩めず闘い抜く」と決意表明した。日本共産党・吉良よし子参院議員も発言。
 主催者挨拶は、戦争をさせない千人委員会の内田雅敏さんが発言、「喫緊の課題は、改憲発議と辺野古新基地建設を阻止し、東アジアの平和のために韓国人徴用工などの問題を正しく解決して、東アジアの人々に連帯することだ。我々の生き様が問われている」と呼びかけた。
 続いて、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委の野平晋作さんが発言。
 昨年、行政不服審査請求を私人ではない防衛省沖縄防衛局が用い、沖縄県による辺野古埋立承認取り消しに対し、その執行停止を国土交通省・石井大臣に求めた。これは国内部の自作自演の違法行為であり、沖縄県は執行停止決定は違法として、総務省管轄の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ている。
 野平さんは、これら国の違法行為を糾弾しつつ、「2月24日に沖縄県民投票が実施されるが、5自治体は参加しないとしている。これらの反動首長に我々が県民投票実施を求めるのは難しいが、今できることをやって連帯しよう。」「地方自治を否定する国は、民主国家ではない。安倍政権に、まず当たり前の法律を守らせるよう行動しよう」と述べ、1月30日の「総務省ヒューマンチェーン」への参加を訴えた。国地方係争処理委員会が公平・中立な審査を行なうよう申し入れる行動である。
 次いで、改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江京子弁護士が発言、「臨時国会では改憲発議を許さなかった。大きな前進だ。しかし、安倍首相は諦めてはいない。強行突破しようとしている。官邸を包囲し、目論みを阻止しよう」と訴えた。
 清水雅彦・日体大教授は発言で、「1928年、戦争違法化の端緒となった不戦条約が結ばれ、1945年には、紛争の平和的解決を原則とし加盟国間の武力行使を禁止する国連憲章が採択された。安倍政権は、世界の平和への取り組みの歴史に逆行し、戦争法を強行採決して戦争への道を進んでいる」と指摘した。
 最後に、憲法共同センターの宮沢さんが以下を行動提起。
・ 1・28通常国会冒頭集会
・ 1・30総務省「人間の鎖」
・ 2・19普天間返還要求集会(午後6時半、国会正門前)
 臨時国会に続いて通常国会でも改憲発議を阻止し、7月参院選挙前に、大衆闘争で安倍政権を退陣に追い込もう。(東京O通信員)

1・28国会開会日行動
  土砂投入追及こそを

 通常国会が始まった1月28日の正午に、「1・28国会開会日行動」が衆参議員会館前で行なわれた。「安倍9条改憲NO!辺野古土砂投入即時中止を!共謀罪法廃止!安倍政権退陣!」を掲げ、約450人が参加。主催は、総がかり行動実、安倍9条改憲NO!全国アクション、および共謀罪NO!実行委員会。
 総がかり実の高田健さんの主催者発言の後、国会野党から社民党・福島瑞穂、日共・小池晃、国民民主・大島九州男(参院比例)、立憲民主・江崎孝(参院比例)が決意表明し、また参院会派「沖縄の風」の伊波洋一さん(秘書代理)が発言した。
 発言では、統計不正の追及が多く語られた。年明け後発覚した毎月勤労統計などの統計偽装は、森友・公文書改ざんに続く、政府・官僚の大犯罪である。安部首相は、ウソの統計で賃金上昇率などを答弁してきたのである。
 江崎議員は、「昨春の通常国会では、改ざん追及が途中で終ってしまった。我々の闘い方がおろそかだった」と述べた。現在の統計不正でも、この問題で、どのように安倍政権を追い詰めるのか、今のところ不明確である。
 辺野古土砂投入やめろ!も多く語られた。土砂投入の是非を問う2・24沖縄県民投票が、「三択」化することによって、全県実施となることが1月下旬に確定した。これについて伊波議員からは、「県民投票は三択となったが、これは5市の各市民の反撃によるものとして、ご理解を」との説明があった。
 国会野党は、辺野古問題追及を通常国会の筆頭課題とすべきである。安倍政権の土砂投入強行は、知事選結果も、県の行政指導も、国地方係争委員会の審理も、来る県民投票の判断も、すべて無視する暴政そのものである。国政の基本姿勢が問われる問題である。それで「本土」世論も、6割が投入反対を維持している。
 野党は何のために、辺野古問題で「野党合同ヒアリング」を行なったり、辺野古・普天間現地視察を行なったりしているのか。参院選挙の結果待ちで、それまで形だけの土砂投入反対ならば、海の破壊は少しずつ拡がり、日本の民主主義も埋め殺されてしまう。
 国会野党も動かざるを得なくなるような、安倍打倒の大衆闘争が必要だ。(東京W通信員)