人権侵害を拡大する改定出入国管理法
 外国人労働者と共に権利確立を

 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法(入管法)の改定案が12月8日、参院本会議で可決され、成立した。これは本年4月1日から施行される。
 外国人労働者に新たな在留資格「特定技能1号」「2号」を付与することが、改定の柱になっている。政府が今まで否定してきた、単純労働への外国人労働者の受け入れを本格的に開始するものだ。
 「特定技能1号」は、在留資格は最大5年。原則1年毎に資格を更新し、家族の同伴は認めないというもので、大半は現行の技能実習生からの移行を見込んだものと言われている。「特定技能2号」は、熟練した技能の所有者で在留期間の上限なし、家族の同伴を認めるというものだが、資格の取得が厳しく、形の上では制度として作られているが、実現性が薄いものと言われている。
 政府は、今まで外国人労働者の単純労働への就業を否定してきた。しかし現実は、多くの外国人労働者が単純労働に従事している。本来、母国への技能移転が目的とされている技能実習生が約26万人。留学生として在留し、アルバイトなどで働いている人が約30万人。日系人や日本人の配偶者として在留資格を持ち働いている人が約46万人。これらのほとんどの人たちが、外国人労働者として単純労働に従事している。日本社会は、外国人労働者の存在を抜きにしては成り立たない状況になっている。
 改定入管法で、政府は今後5年間で34・5万人を受け入れると言っているが、その大半は技能実習生からの移行を見込んでいる。技能実習生身分で最長5年間働いて、その後「特定技能1号」で5年間、合計10年間働いてもらうというものだ。単身で来日し、10年間家族も持たずに働いて、一定の年齢になったら帰国せよ、というものだ。
 「労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった。」という言葉がある。労働力を担っているのは生きた人間だ。20代の若い人たちが10年間、恋愛もせずにただ黙々と働くだけの生活ができるだろうか。明らかに、この制度は人権無視の上に成り立っている。
 現行の技能実習生が人権侵害にさらされている例は、数多く報道されている。まず彼・彼女らは送り出す国で、送り出し機関に多額の金額を納入する。貧しい生活の中では、これのカネは借金して用意する以外にない。送り出し機関は日本の受け入れ機関に実習生を送り出すが、実習生はその際に、日本でトラブルを起こしたら納入した金額が没収されるなどの誓約書にサインさせられる。恋愛をしないなどの誓約をさせることもある。技能実習生は、日本での低賃金、長時間労働、パワハラ、セクハラに対しても抵抗し、反撃する手段を奪われてしまう。現状でも多くの実習生が不当にも働かされても、声を上げられない状況に置かれている。
 今回のような法改定ではなく、技能実習制度は直ちに廃止して、外国人労働者に労働基本権を実際に保障し、社会の一員として暮らすことができる制度づくり・法改正を進めること、多民族多文化共生社会を創りあげることが問われている。それが、日本の最低賃金の抜本的改善や、日本人非正規労働者の権利確立にも連動していく。

  雇用の調整弁

 東海地方で最近、外国人労働者に対する悲惨な事件が発生した。三重県のシャープ亀山工場は数年前から、米アップル社のスマートフォン液晶パネルを生産してきた。ところがアップルは、新製品アイフォンXからは液晶パネルではなくて、有機ELパネルを採用することになり、シャープ亀山工場では生産の大幅な縮小が始まった。
 シャープの三次下請けにあたる派遣会社は、外国人労働者を3000人以上亀山工場に送り込んでいた。シャープは18年の冬から夏にかけて、外国人労働者を大量に雇い止め解雇してきた。派遣会社は外国人労働者を短期雇用の繰り返しにし、いつでも雇い止めできるような制度を作っていた。派遣会社は半年間に、2900人の外国人労働者を雇い止め解雇にしてきた。多くの外国人労働者が今、路頭に迷っている。この場合の外国人労働者は、日系人や日本人の配偶者として在留資格のある人たちであるが、外国人労働者が雇用の調整弁として扱われている典型的な事件である。
 外国人労働者を使い勝手のよい労働力として扱うやり方は、いずれ大きなしっぺ返しを受けることになる。日本社会の根底に定着した外国人労働者は、今後の日本労働運動の重要な担い手として、その存在をますます大きなものにしていく。(東海S通信員)


改憲発議、臨時国会で阻止して越年
 通常国会が決戦

 安倍政権に臨時国会での改憲発議を断念させてから最初の「19の日」行動が、12月19日衆参議員会館前で開催され、約2800名の労働者市民が結集した。主催は、安倍9条改憲NO!全国市民アクションと、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委。
 12月5日、森英介衆院憲法審査会会長と与党幹事は、6日の審査会開催を見送り、これで、今国会での自民党改憲案(9条改憲をはじめとする4項目文案)の提示と改憲案提出が無理となった。安倍政権は、全国各地で展開される改憲阻止闘争と、国会内での入管難民法改定案、水道民営化法案などをめぐる攻防で追いつめられ、臨時国会での発議を断念したのである。
 しかし安倍政権は、あきらめてはいない。安倍首相は10日、「2020年に新しい憲法を施行させたいとの気持ちは変わらない」と発言。萩生田光一自民党幹事長も、「来年の通常国会の中で、憲法審査会の定例日を有効に使って提案したい」との方針を示している。国会閉会後の20日には、加藤勝信自民党総務会長が、「憲法審査会は国会にあるわけだから、そこでしっかり議論していただく」と発言している。
 改憲発議をめぐる攻防は、通常国会に移った。安倍政権は、入管難民法改定案の強行採決を実行し、会期を延長せず、臨時国会を10日に閉じたうえで、辺野古土砂投入を14日に強行した。国会で追及されないようにした上で、新基地阻止闘争に大弾圧を加え、違法行為をやる、これを狙っていた。油断大敵である。(国会野党は、今回の辺野古土砂搬出と投入の違法性について、閉会中審査を要求すべきだ。)
 新年1月下旬からの通常国会では、安倍の謀略攻撃を許さない大闘争が求められる。
 さて、12月「19の日」行動は、憲法共同センターの小田川義和さんの主催者挨拶で開始、「この一年間の闘いで、自民党改憲案を国会で論議させなかった。安倍政権は辺野古の海に土砂投入を強行したが、新基地工事阻止も皆の力を合わせれば必ず勝てる」と呼びかけた。
 国会野党挨拶では、社民党・福島瑞穂参院議員が、「来年は3千万署名をさらに推進して、国民投票をやれば改憲勢力が必ず負ける情勢をつくる。軍備増強のための、武器の爆買いも許さない」と表明した。立憲民主党の山川百合子衆院議員は、「安倍総理は積極的平和主義を掲げるが、武力による平和、つまり偽りの平和主義だ。貧困と格差をなくし、戦争の原因を除去するのが、真の積極的平和主義だ」と指摘した。日本共産党・山下芳生参院議員、国民民主党・小宮山泰子衆院議員も発言。
 沖縄一坪反戦地主会関東ブロックの木村辰彦さんが、連帯アピール。「沖縄では政府が、憲法も法律も県条例も守らず、土砂を投入した。しかし追い詰められているのは、日本政府だ。工事は13年かかる。しかも、今の技術では工事は不可能。沖縄と全国各地の人々が手をつないで頑張れば、新基地建設はできない」と訴えた。
 最後に、総がかり行動実行委の高田健共同代表が、「秋の闘いで、改憲案提示を阻止した。沖縄の闘いこそが、自民党案の提示を止めた。来年を勝利の年とする!」と発言しつつ、以下を行動提起した。
・1月19日、「19の日」行動(2時・議員会館前)
・1月28日頃、通常国会冒頭集会(正午・議員会館前)
・2月19日、普天間返還要求集会(6時半・国会正門前)
・3月19日、4月19日、「19の日」行動
・5月3日、憲法集会(有明防災公園、過去最大規模を予定)
 新年は、憲法闘争勝利・辺野古埋立て中止・安倍打倒の年となる!(東京O通信員)