東電刑事公判、被害者遺族が意見陳述
 「想定外、死んでも許さない」

 「これだけの被害を出しておきながら、責任が曖昧なまま。想定外、死んでも許すことはできない」
 事故後の避難に伴なって亡くなった被害者遺族の意見陳述(第34回公判)で、両親を亡くした女性は、こう述べて怒りに震えた。
 東京電力福島第一原発の事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の刑事裁判(東京地裁、永渕健一裁判長)が11月14日開かれ、悲しみと怒りの意見陳述が行なわれたのである。11月の公判はこの一回のみ。
 公判では、原発からおよそ4・5km離れた双葉病院(大熊町)と隣接する系列の介護老人保健施設「ドーヴィル双葉」に入所し、長時間の避難で死亡した44人のその遺族らが出廷、あるいは提出の陳述書(遺族3人分)が読み上げられた。
 施設からの避難中に両親を亡くした女性は、「原発事故がなければ、故郷を追われることも両親を亡くすこともなかった。悔しくて、悲しくて、腹立たしい」と発言。いわき市の臨時霊安室で遺体と対面した時の心情を、「言い表せない怒りで心がいっぱいになり、体が震えた」と証言した。そして、「両親を返してほしい」と訴えた。
 女性の息子(死亡した両親の孫)も出廷。「対策するチャンスはあった。刑事的な責任をとってもらわないと、今後の教訓にならない」と陳述した。
 さらに、双葉病院に入院していた母を亡くした女性の陳述書は、「対面した遺体が、骨と皮だけでミイラのようだった」、「被告人たちに私のこの時の気持ちが分かりますか。この裁判であなたたちは、自分らの知り得ることではないと言い続けている。責任が上層部にあることを認めてください」と訴えている。
 公判は、一時間にも満たない短時間で終了。
 今後の公判は、12月26、27日に指定弁護士による論告求刑。弁護側による最終弁論が来年3月12、13日に行なわれ、結審する予定。

  「再稼働拒否権」を認めよ

 東海第二原発の運転期間延長が認可された11月7日、日本原子力発電・和智信隆副社長は、「拒否権という言葉は新協定の中にはない」と発言。周辺自治体が再稼動を拒否する権利、これを否定する発言を報道陣に行なったのである。
 原発立地の茨城県東海村を含む東海第二周辺6市村は、日本原電との間で3・29新安全協定を締結し、再稼動には地元の同意が必要との確認を行なった。発言は、これを否定するもの。
 11月9日開催の周辺6市村との会合では、原電は首長側の謝罪と撤回の要求に応じず、再稼動時期についても「許認可の内容を、安全性向上対策に具体的に反映させる段階だ」などと誠意のない発言を行なった。対策工事の開始時期についても、「何も決まっていない」との回答に終始している。
 11月15日、6市村の一つ、ひたちなか市の本間源基市長との面会で、謝罪した上で発言を撤回したが、再稼動強行が本音であろう。
 なお、日米両政府は11月13日、原子力を温室効果ガスを排出しない「クリーン」なエネルギーとして位置付け、推進に向け協力する覚書に合意した。安全対策などのコスト高で苦境に立つ原発を、地球温暖化対策に役立つ電源として評価し、巻き返したい思惑がある。
 原発は通常でも放射能を撒き散らし、労働者を被曝させ、ひとたび過酷事故が起これば大惨事は免れない。クリーンとは笑止千万。今や再生エネルギーが、コストを急速に下げているのだ。
 安倍政権の原発推進政策を背景に、東海第二などの再稼動強行が目論まれている。12月・3月公判に結集し、東電に刑事責任をとらせよう。そして東海第二原発の再稼動阻止、これらを突破口に全原発廃炉を実現しよう。(東京O通信員)


東海第二原発廃炉を求め、11・27日本原電本店前行動
  首都圏・東京の原発動かすな

 11月27日、東京神田の日本原電本店前などで、「首都圏・東京の原発=東海第二廃炉!11・27アクション」が行なわれた。主催は、とめよう!東海第二原発・首都圏連絡会。
 行動は、午後3時からの原電本店前での署名提出行動、その後の近くの公園から原電前、御茶ノ水を進むデモ行進、夕刻からの原電包囲行動と、3波にわたって現電本店に抗議した。
 この日は本来なら、運転開始40年の東海第二原発の廃炉が確定する日であった。しかし原子力規制委員会がこの期限に間に合うように、結論ありきの審査で運転延長などを認可してしまったので、超老朽原発が延命し、再稼動する危険が続くこととなった。首都圏連絡会は、「11・27を活動の新たなステップアップさせる日」と位置付け、この日の行動を呼びかけた。
 原電本店前の署名提出集会には、原電が入る住友商事美土代ビル前に約200人が参加。ビル入り口に、再稼動中止を求める署名用紙(4万8千筆)が積み上げられた。
 集会では、最初に司会の仲間が、「署名を事前に提出したが、原電は『経営方針に反する趣旨の署名は受け取れない』などとして突き返してきた。受け取るよう再度、ここに積み上げる」と報告した。
 続いて、脱原発全国弁護団の河合弁護士、首都圏連絡会の木村さんなどが発言し、また立地県茨城からは、つくば市の小山さんが「たとえ一筆の署名でも受け取るべきだ!」と怒りの発言、杉並区のけしば区議も「周辺自治体の同意なしに再稼動はできない!」と強調した。原電が署名を受け取りに出て来ないまま、本店前行動は一時間近く続いた。
 東海第二の再稼動阻止・廃炉実現の闘いは、11・27をもって第二段階に入った。(東京W通信員)