フクシマと共に9・17さようなら原発全国集会
  
東海第二原発を動かすな

 9月17日、東京・代々木公園にて、「いのちをつなぎくらしを守れ フクシマと共に9・17さようなら原発全国集会」が開かれ、全国から約8000名が参加した。主催は、「さようなら原発」一千万署名市民の会で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委が協力。
 全国から自治労、日教組など平和フォーラム系、全労協系、また全港湾、全日建など独立中小単産、これらの労働組合が多数参加し、多様な脱原発市民団体と合流した。
 午後1時半から開始されたメイン集会では、主催者あいさつを、署名呼びかけ人の鎌田慧さん(ルポライター)、澤地久枝さん(作家)が行なった。鎌田さんは、「東海第二原発を再稼動させないことが今の大きな課題だが、青森下北・大間原発の新規建設工事、六ヶ所再処理施設の稼動も止めねばならない。電力会社は再稼動を惰性でやっている。政権を変えれば止めることができる」と訴えた。
 フクシマからは、村田弘さん(福島原発訴訟かながわ原告団)、佐藤和良さん(福島原発刑事裁判支援団)が発言。村田さんは、「内堀福島県知事は最近、帰還困難区域からの避難者に対しても、再来年3月までで住宅提供打ち切りと発表した。来年3月には、避難指示区域からの避難者への打ち切りが始まる。2020年の東京五輪までに、フクシマは終ったとしたいのか。」と県知事・安倍政権を糾弾した。
 佐藤さんは、東電裁判について、「すでに決められていた津波対策を、08年7月31日に武藤副社長が変更させた。これを示す証言や調書が、先日の9月5日公判で証拠採用された。これで有罪判決は当然だ。十月には、この武藤らの被告人尋問、おそらく年内求刑、そして年度内判決か。裁判に注目・支援を!」と訴えた。
 焦点の東海第二原発再稼動について、大石光伸さん(東海第二原発訴訟原告団)が発言、「事業者の日本原電は、40年廃炉ルールを無視し、20年延長などについて11・27までに認可を得たいとしている。しかし、この国策民営会社は、資産141億円の内80億が差し押さえられている状態だ。それなのに、東電から1740億円の支援を得て再稼動せんとしている。これは許せない。東海第二を止めるのは、首都圏の住民である我々の責任だ」と訴えた。
 原発ゼロ法案(今年3月国会提出)については、吉原毅さん(原発ゼロ自然エネルギー推進連盟)が報告したが、「原発の耐震強度は実のところ、一般の戸建て住宅の耐震強度よりも、何倍も脆弱である」という発言に注目が集まった。(『世界』10月号掲載の元福井地裁裁判官・樋口英明氏の論評を参照してほしい)。
 目前に迫った沖縄県知事選でのデニ―必勝、辺野古新基地建設反対については、与儀睦美さん(辺野古の海を土砂でうめるな首都圏連絡会)が発言。
 安倍政権打倒、改憲発議阻止については、福山真劫さん(総がかり行動実)が発言。
 最後に、署名呼びかけ人・落合恵子さんの閉会あいさつで集会終了、参加者は2コースでデモ行進に出発した。
 なお、脱原発一千万署名の集計数は8月28日現在で、874万361筆と発表された。(東京W通信員)


事故がなければもっと生きられた
 9月東電刑事裁判―重要調書も証拠採用

 「病院に戻ることができれば、医療品や薬品が使えた」、「原発事故がなければ、入院患者は、もっと生きられた」。
 業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3被告の第26回公判は、双葉病院元看護士の証言により、衝撃的事実を暴露した。
 起訴状によると、原発事故により、双葉病院に隣接する系列の介護老人保健施設ドーヴィル双葉の患者らは、長時間の搬送や避難を余儀なくされ、うち44人が移動中のバス車内や避難先で死亡したとされる。
 証人の元看護師は、事故時に患者らの避難に付き添っている。「患者らが亡くなったのは、事故によって十分な治療が受けられなかったからだ」と証言、東電元幹部らの責任の重さを浮き彫りにした。
 9月の公判(東京地裁・永渕健一裁判長)は、5、7、18、19日(第24回~第27回)の4回にわたって開かれた。
 9月5日の第24回公判では、事故前に津波対策を担っていた新潟県中越沖地震対策センター長の元東電社員が、出廷した。
 元社員は、長期評価を取り込んだ津波の高さが「10mを下回れば対策工事が可能だと思っていた」と発言。2008年3月の常務会にも報告され、02年の文科省地震調査研究推進本部「長期評価」を取り入れることが社の方針だったことを明らかにした。
 08年6月、東電は長期評価に基づき津波試算を行なって、15・7mの計算結果を得ている。
 元社員は、10mを超えれば、09年6月とされた国の安全性再評価作業の最終報告までに、対策工事は到底不可能になるとし、「工事が完了しなければ、地元などからプラント停止を求められる可能性があった」と証言した。
 さらに元社員は、「中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止し、火力発電の燃料費がかさんで東電の収支は悪化。その上に福島第一が停止したら、電力の安定供給はない」として、対策先送りの経緯を明らかにした。東電は、利益追求のために、耐震バックチェックは「長期評価」を取り入れずに、土木学会の「津波評価基準」に基づいて行ない、土木学会に「長期評価」の扱いについて検討を委ねている。つまり、東電は時間稼ぎをしているのである。
 なお24回公判では、同元社員の調書が証拠として採用され、検察官役の指定弁護士が読み上げている。それは、判決へ向け重大な意味を持つ。
 第25回公判は、被告側が申請した地震学者の松澤暢東北大教授が証人。教授は、推本が出した地震予測「長期評価」の改定版(09年)や同第二版に関わっている。
 松澤教授は、長期評価について「乱暴な議論と思う」と述べながらも、「仮置きの数字を置いた判断に賛同した」と発言。そして、過去四百年津波地震が起きていない場所では今後も起きないとする専門家の意見に、「福島県沖では、津波地震が起こる可能性をゼロにすることに躊躇する」と証言した。
 被告側は、「長期評価について、専門家の間で異論があった」として信用性を問題にしている。しかし第10回公判で前田憲二氏は、「はっきりした意見での異論はなく」「大きくもめたこともなかった」と証言し、丁寧・慎重にまとめ上げた経過を説明した。第13回公判の都司准教授も、「異論はあったが議論によって収束していった」と証言。島崎邦彦教授は、「長期評価は科学的だ」と強調している。被告側の見解は、すでに破産している。
 第27回公判は、事故後の避難中に死亡した介護施設入所者の遺族らの調書が証拠採用され、「責任の所在をはっきりさせてほしい」との内容が読み上げられた。この日の法廷には、前回に続いて原発から4・5kmの双葉病院医師とドーヴィル双葉の職員が出廷。「患者の容態は安定し、死に至る症状はなかった」、しかし死亡したのは「長時間・長距離の無理な非難と、避難の遅れで医療ケアが受けられなかったためだ」と証言した。
 医師は、「同病院には、栄養剤や医薬品などおよそ一週間の在庫があり、地震や津波だけなら基本的ケアはできた」と主張。「車両での避難を長時間強いられ、脱水症状や血栓が生じたことが死因である」と指摘し、「原発事故がなければ、死に至ることはなかった」と強調した。東電・国の責任を追及し、絶対に許してはならない。(東京O通信員)

 「社会通念」で伊方異議審忖度判決

 安倍政権は第3期目を迎え、第5次エネルギー基本計画(7月3日閣議決定)での、2020年度電源構成に占める原発比率を20~22%とするという政策を続けている。この政策により、再稼動、20年延長を推進し、また官僚や司法も政権の意向を忖度して、原発推進の片棒を担いでいる。
 9月25日、四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定(昨年12・13)を不服として、四国電力が申し立てていた異議審で、同高裁は異議を認め、再稼動を容認する決定を出した。これを受けて四国電は、10月27日に再稼動させようとしている。
 三木昌之裁判長は、同原発から130km離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクについて、「大規模な破局的噴火が起こる可能性が根拠をもって示されておらず、原発に火砕流が到達する可能性は小さい」と指摘し、立地の適合性は「自然災害の危険をどの程度容認するかという社会通念を基準とせざるを得ない」との判断の枠組みを示した。そして、国が破局的噴火の具体的対策を定めておらず、国民の多くも問題にしていないことを踏まえて、「伊方原発の安全性は欠けていないというのが社会通念だ」などとした。
 しかし、国が対策をとらず、国民が問題にしていなくても、自然災害は起こりうる。差し止め仮処分決定では、「社会通念と科学的知見との間に隔たりがあることをもって、判断基準を変更することは許されない」と断じているのだが、これに全く反論できていない。司法が政権の意向を忖度した最悪の判決である。
 さらに9月26日、茨城県の東海第二原発について原子力規制委員会は、新規制基準に適合したとする審査書案を正式決定した。規制委は、「20年延長」の可否と「工事計画」との2つの審査も続けているが、11月27日までに通過させる構えを見せている。しかし東海第二が過酷事故を起こせば、首都圏に及ぶ大惨事は免れない。
 3期目を迎えた安倍政権と、東電や日本原電など電力資本は、危険回避よりも会社の存続、として暴走を続けている。すでに新基準「適合」は、8原発15基にのぼる(9月26日現在)。
 これを巻き返し、全原発廃止へ流れを変える転換点となるのが、当面、東海第二原発再稼動問題と東電刑事裁判(早ければ来春に判決)、この2つに勝利することである。(A)