【沖縄からお通信】

 自己決定権確立へ第一歩
   翁長「撤回」を共に闘い、11月知事選挙勝利へ全力を!

 7月27日、ついに翁長知事は、辺野古埋立て承認の「撤回」を表明した。撤回を執行する日時は決していないが、防衛局への「聴聞」手続きを経て後、決まってくる。
 8月17日土砂投入開始を直前にした撤回表明は、遅きに失している。しかし、次期知事候補でもある翁長知事が、県民の願いを最大限受け止めて、知事権限を行使することは高く評価しなければならない。
 日本政府は、知事権限を奪い取る(一つは、行使させない。もう一つは、知事の首を代える)ことを至上命題に、あらゆることをやってきた。結局、行使することを阻止できなかった。マスコミは、「なぜ今のタイミング」、「日本政府の対抗措置で――」、「トランプ米政権は無関心」などと報道しがちである。
 しかし、「撤回」行使は一つの壁の突破、ブレイクスルーであり、日本政府がこうむる痛手は、実は計り知れないのである。翁長知事と日本政府との今後の法手続き上の争いは、想定されるコースをたどるかもしれない。しかし核心点は、沖縄人が自分たちの持てる力、政治的権限、今の局面では「知事権限」、これを日本政府に対して、堂々と叩きつけたということである。
 日本政府は内心、この事態を恐れているにちがいない。「撤回」、この知事権限の行使は、沖縄人が日本政府による新基地建設を拒否する「証明」、あるいは「シンボル」を立てたことになる。民意が辺野古NO!で明確であるにもかかわらず、「知事の埋立て承認がある」「最高裁で認められた」などと、安倍政権も司法権力も、沖縄県民を愚弄してきた。
 それが、もう通用しないことになった。2015年の翁長知事による「取り消し」は、前知事の埋立承認に手続き上は問題なしとされて裁判は終ったが、辺野古新基地建設がいいのか悪いのか、司法判断としても何も決着はついていない。今回の「撤回」は、承認手続きの瑕疵を問う次元ではなく、現在の工事の違法性を理由とし、工事そのものを断罪するものである。取り消し裁判当時の愚弄を切り捨て、過去のものとし、新しい次元を拓いて、現在の沖縄県民の「意志」を突きつけるものである。
 知事の撤回表明によって、日本中も世界中も、「沖縄の人々は、日本政府による辺野古での基地建設にYESと言っていない。あらためてNOと言っている」という事実を、難くせを付けることなく、認めざるをえなくなった。
 もし、沖縄人が、国際法上の自己決定権をすでに確立していれば、このNOの意思決定を拒否権として発動することによって、日本政府は工事を進めることができなくなる。これが、沖縄人の基本的人権を発現していくうえで、妥当な姿である。今は残念ながら、そこまで達していないのである。
 仲地博氏(沖縄大学学長)は、今回の翁長「撤回」を、「沖縄の自己決定権の行使」であると言っている。仲地さんのこの言に悪意はないというべきであるが、これでは自己決定権の中身の理解は、ますます人それぞれになってしまう。
 「県民投票も、自己決定権の行使である」(7月30日・琉球新報)と言う江上能義氏(琉球大名誉教授)についても、同様である。(なお、5月から進められていた「辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票」を求める署名運動は、署名数10万979人に達して締め括られた。8月中に翁長知事に請求。県議会が条例案を可決すれば、6ヵ月以内に県民投票となる)。
 今回の「撤回」は、自己決定権の「その確立に向けた第一歩」と言うべきではないのか。自己決定権の意味が共有化されるべきで、筆者にとっての意味は、国際法で認められた民族的マイノリティの自己決定権である。
 さて、27日の翁長「撤回」表明記者会見はある意味、特異であった。
その内容は、①冒頭発言(県民投票の署名数、南北首脳会談・米朝首脳会談など東アジア情勢)、②本論(撤回根拠としての、事業者の義務違反、軟弱地盤などの新事実)、③記者質疑応答、の三つに分けられる。
 ①は、安倍極右政権を意識している。つまり、東アジア情勢の認識抜きには、安倍政権との全面対決は闘えないということである。(2月名護市長選では、ここが欠落していた)。
 ③は、出たとこ勝負であるが、ここにこそ翁長知事の思いと覚悟が読み取れる。全体の7割の時間を占め、現政権の全面否定が、怒りを隠さず表明されている。
 知事は怒りをもって語った。「東アジア情勢がまったく変った今も、20年前と何ら変らず、とんでもない固い決意でですね、やろうとしている」、「アジアの経済は、世界のどの地域よりも発展している。アジアは中国とも米国とも、安保条約を結んでいるところは、ベトナムでもタイでもどこにもありません。それぞれ距離をとりながら国際外交をしている。」「そういう動きは、必ず日本を揺り動かす。今の日本の動きでは、アジアから閉め出されるのではないか。こんなときに、日本政府は、あの美しい辺野古の海を埋め立てるという」。
 沖縄の状況を知らない人が、知事の怒りに満ちた日本政府への罵りを聞けば、逆に反感を抱くかもしれない。しかし沖縄では、沖縄戦の後始末もしていないうちに、また犠牲になれ、という政策で日本政府が襲いかかって来ている今、通常の対応では闘いにならない。名護市長選を見て明らかである。安倍極右政権と沖縄人との闘いである、という一丁目一番地を明確にするべきである。
 翁長知事は当然、知事選を意識して会見していよう。毅然たる言葉を発しなければ、座して負けを待つのみとなる。知事はガン闘病中であり、体力も衰えていようが、心・体を統御して責務に向かっている様は、沖縄人と共に歩むという、この信頼感を県民に高めさせるものがある。
 この7・27翁長知事記者会見は、そっくりそのまま今秋県知事選の「綱領」となりうる。知事選勝利が最大の課題であることは、何人も否定できない。「撤回」を断行し、土砂投入が当面阻止されても、知事選に敗れたら元も子もなくなる。
 「撤回」は、日本政府の対抗措置に行き着くわけで、長期の工事停止は想定できないが、そんなものは問題ではない。日本政府の意図は、一部での土砂投入などを政治的に演出して、民意に無力感を醸成させつつ、知事の首をすげ替えることである。
 翁長知事を強力に支持し、「撤回」を共に闘い、知事選を全力で勝ちきろう!(沖縄T)