「働き方改革」一括法案を廃案に
 強行採決糾弾!全労働団体が揃って参院で阻止へ

 8時間労働制破壊の突破口となる「働き方改革」一括法案が、5月25日に衆院厚生労働委員会で与党自民・公明と維新によって強行採決され、同31日の衆院本会議で与党、維新、希望によって強行採決されて、参院へ送られた。強く抗議するとともに、会期延長を許さず、6月20日会期末の参院で廃案とする闘いを強化しよう。
 「働き方改革」法案をめぐる昨年来の情勢では、連合・神津指導部を安倍政権が取り込む動きが続いていた。昨年7月に連合は、「年104日かつ4週4日の休日」を入れることを条件として「高度プロフェッショナル制度」を容認し、一旦は政府と手打ちを行なったが、連合内外からの抗議に直面して、これが破産した経緯がある。この修正は、現在の政府案にも入っている。
 しかし、今春の森友・公文書改ざんの発覚に続いて、厚労省の労働時間調査でたらめ問題が発覚した。これにより政府は、法案の裁量労働制拡大の部分を今回は削除し、その上で4月に国会に提出した。しかし、政府は厚労省データ(2割がデタラメと言われる)を撤回しないままであり、法案を審議する前提が壊れてしまった。連合や国民民主党(旧民進党、5月結成)も、安倍政権と取り引きできる雰囲気ではなくなった。
 それで、現在の法案反対闘争は、国会の全野党(維新・希望という与党補完勢力を除いて)と、連合・全労連・全労協など労働組合がこぞって政府案の阻止を叫ぶという、それ自体は有利な情勢にある。「働き方改革」法案の強行は、議席があれば政府は何でもできる、それでよいのか!これを問いかける典型になっている。
 5月22日、東京・日比谷野外音楽堂で「高プロ・裁量労働制拡大はいらない!働く人が大切にされる社会を!5・22野音集会」が開催された。この集会では、連合本部の内田副事務局長を含め、全労連、全労協の労働3団体がそろって法案阻止を訴えた。主催は日本労働弁護団で、全国から労働者・市民、過労死遺族など約1800人が参加。
 集会ではまず、徳住堅治労弁会長が、強行採決が迫っている情勢だが、これを許さず、「高プロを廃案に!」と情勢報告。続いて野党5党(立憲民主党・尾辻かな子衆院議員、国民民主、共産、自由、社民)が挨拶。

  5・22集会と全国キャラバン

 この集会は、4月20日に北海道と沖縄から開始された「働き方改革法案を廃案に!全国キャラバン」、その集約集会でもあった。全国キャラバンは、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークや全労協に参加する労組、全港湾や全日建連帯などなどが参加し、全国9ブロックごとに展開された。5・22野音では、この全国キャラバンの報告が、全統一の坂本さんから行なわれた。
 そして、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が登壇し、発言した。寺西さんは、「5月16日に安倍首相宛てに、私たち過労死遺族と面談するよう要請文を送りましたが、未だに返答がありません。今日午前中は国会で参考人陳述を行いましたが、午後から首相に面談を求めて、首相官邸前座り込みに入りました。」「働く人の命を守る法律ではなく、命を奪う法律など絶対に許せません!」と訴えた。
 「かえせ☆生活時間プロジェクト」から、浅倉むつ子さん(早稲田大学)が発言。浅倉さんらは、「生活時間」という観点から、「1日単位の労働時間規制こそが重要」という立場・政策を強調している。これに対し政府案や対案は、年単位・月単位で時間規制を論じている。政府案は、勤務間インターバルの法的義務化を拒否し、「1日単位」の人間生活を認めようとしていない。
 安倍は、電通で自殺に追い込まれた高橋まつりさんの遺族とは会ったが、寺西さんには合おうとしない。昨年の電通過労死事件への安倍の対応は、安倍「働き方改革」は「長時間労働の是正」である、という見せかけを作るためだったのか。
 安倍「働き方改革」の意図は、資本のための「生産性革命」である。「時間や空間にしばられない働き方」(厚労省「働き方の未来2035」)と称し、新しい技術基盤において、8時間労働制破壊といっそうの雇用流動化を進めようとするものである。一括法案の中の雇用対策法改正に、「労働生産性の向上」が新しく明記されるのは、そのためである。
 当面は参院で廃案!の行動であるが、中長期的には社会構造の変化をふまえつつ、「8時間働けば暮せる社会」実現のために、労働者側の運動論・政策論を深めていく必要があるだろう。(A)


狭山事件・不当逮捕から55年、5・23市民集会
 再審必至の「下山鑑定」「福江鑑定」

 「第三次再審以外、冤罪を晴らすチャンスはない」、石川一雄さんの叫びに応え、不当逮捕から55年目の5月23日、東京・日比谷野外音楽堂で「5・23狭山事件の再審を求める市民集会」が開催された。主催は、狭山事件の再審を求める市民集会実行委。降りしきる雨をものともせず、部落解放同盟をはじめ各地の狭山住民の会、労働団体など約2500名が会場を埋めた。
 裁判は、下山・福江鑑定など、およそ200の新証拠が提出され、「今ほど有利な状況はない」との局面を迎えている。「最期の決戦時期」を迎え、この集会は開催された。
 74年の寺尾判決は、被害者の物とされる万年筆が、自白通り石川さん宅から発見されたことを有罪判決の決め手とした。
 しかし「下山鑑定」は、発見万年筆が被害者の物とは全くの別物であることを証明した。発見万年筆のインクはブルーブラック、被害者使用のインクはジェットブルーだ。さらに鑑定は、成分からインクの色の違いを実証している。ジェットブルーからはクロム、旧来のブルーブラックからは鉄分が検出される。しかし、発見万年筆からは鉄分が検出され、クロムは検出されなかった。被害者使用のインクからはクロムが検出され、発見万年筆が偽物であることが判明した。
 また、今年1月15日提出の「福江鑑定」は、脅迫状の筆者と石川さんとが、99・9%別人と判定。脅迫状との筆跡の一致を根拠とする寺尾判決は、完全に覆された。
 この「福江鑑定」(福江潔也・東海大教授)は、コンピュータを使って文字を読み取り、字形の情報を重ね合わせた時のズレ量から、同一人か別人かの判定をする。「い、た、て、と」の4文字を検査対象にした場合、同一か別人かを判定する識別境界のズレ量(相違度)は、多数の筆跡サンプルから明らかになっている。この数値よりズレ量が大きければ、99・9%の識別精度で別人と判定される。この科学的調査で、脅迫状と石川さん上申書との筆跡の相違度を計測すると、相違度は、識別境界を大きく上回った。
 さて集会は、組坂繁之・部落解放同盟中央本部委員長の発言で開始された。組坂さんは、「55年前、狭山の貧しい被差別部落に生まれた石川さんは、権力の餌食となり、嘘の自白に追い込まれた。しかし今、下山・福江鑑定など様々な新証拠が積み上げられている。再審の開始のためにがんばろう」と、集会の意義を明らかにした。
 立憲民主党・小川敏夫、社民党・福島みずほ両参院議員など各党挨拶に続いて、石川一雄さん・早智子さんが登壇。
 一雄さんは、「狭山事件は大詰めを迎えている。今から二十数年前の5・23、その時の服を今日着てきた。私が死んだ時は、棺桶の中に入れてほしい」と発言、今年に掛ける決意を示した。そして、
 「陥穽にはまって今日で55年 科学の進歩も司法は無視」
の短歌に続けて、「再審開始以外に冤罪を晴らすチャンスはない。再審で裁判を終結させるために、さらなるご支援を!」と呼びかけた。
 早智子さんは、「1963年5月23日、狭山事件は始まった。55年はとても長い。狭山事件は差別事件であり、権力犯罪だ。だからこそ厳しい闘いを強いられた。しかし石川一雄は、真実は一つ、事実調べで冤罪は明らかになると言い続けてきた。今、光が当たってきた。皆様の力を!」と訴えた。
 中山武敏・狭山弁護団主任弁護士は、「第三次再審では、部落問題が背景にあることを裁判官が認め、根本的に差別問題にメスを入れてほしい。狭山事件は、単なる冤罪事件ではなく差別事件である。この石川さんの闘いが、私の弁護士としての原点になった」とのメッセージを寄せた。
 片山明幸・狭山闘争本部長が基調提案を行ない、「裁判の現況が今ほど有利な時はない。この中で慎重に運動を進めている。その理由は、一つは下山鑑定への反証に反論すること。二つは、コンピュータによる筆跡鑑定だ。検察は、反証したいと言ってきた。5ヵ月かかって反証する人間を見つけたようだ。これに反論して事実調べを迫ることになる。最期の決戦時期を迎えている」と、闘争方針を提起した。
 連帯アピールでは、袴田事件・袴田巌さんの姉、秀子さんが挨拶、「本人は、壁に『幸せの花』と書いた。今まで幸せなど口にしたことがない。巌は闘いの中で、幸せを感じるようになったのか。巌を、いつまでも幸せにしてあげてほしい」、姉の願いが心を打った。
 そして、「袴田さんを救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹さんは、「6月11日、東京高裁が再審の結論を出す。再審開始は確実だと思う。しかし検察は、裁判の長期化をねらって、最高歳に特別抗告をする可能性がある。これを許さず、再審を開始させ冤罪を晴らす」と決意を示した。
 最後に、鎌田慧・市民の会事務局長が、「我々はあきらめず、近い将来石川さんを解放する。我々の運動は、民主主義を守り、差別を許さない闘いだ」と発言し、集会を締め括った。
 デモは「石川無罪・再審開始」を訴えて、銀座方面を行進した。今こそ地域・職場で狭山闘争を組織し、石川さんの解放を闘いとろう。(東京O通信員)