森友改ざん、米朝対話で行き詰まる安倍政権
  改ざん政権に憲法語る資格なし

 安倍政権は、3月27日衆参国会における佐川宣寿証人喚問の茶番劇をもって、森友疑惑・森友公文書改ざん事件の幕引きを図ろうとしている。3月12日に安倍首相・麻生財務相が公文書「書き換え」を認めた以降、2週間ほど安倍政権は危機に直面した。安倍は、財務省官僚が勝手にやったことだと居直りつつも、「行政の長として責任を痛感、国民に謝罪する」と言わさざるをえなかった。
 この時点で、麻生の財務相更迭のみならず、安倍政権が総辞職して当然であった。しかし、少数野党の非力と、国会・首相官邸に対する大衆闘争の弱さによって、一時的にとはいえ安倍政権はこの危機を乗り切った。しかし、「森友改ざん」の追及は、与党や官僚に「安倍一強」離れをひろげつつ、安倍政権に責任を取らせるまで続く。「与野党を超えて行政の信頼回復を」、「公文書管理の再構築」などという所に、課題をそらさせてはならない。
 安倍政権の行き詰まりは、この問題のみならず、憲法改正、対朝鮮外交、「働き方改革」など、あらゆる方面で露呈してきた。今年9月の自民党総裁選を待つまでもなく、安倍政権の崩壊が近づいている。課題は、自民党による首のすげ替えではなく、我々労働者民衆の闘いが安倍に引導を渡す主導権を取れるかどうか、これである。
 まず、「森友改ざん」について。森友学園への国有地貸付・売却の決裁文書の改ざんというこの事件は、官僚の「忖度」という次元で論じられる問題ではない。財務省・近畿財務局は、「首相夫人案件」として忖度し(あるいは首相夫妻から直接の要請があって)、格安売却を行なった。しかし、首相などの国会答弁とつじつまを合わせるために、決裁文書を改ざんするというのは、そのレベルの犯罪ではない。前代未聞の国家公務員犯罪であり、行政の信頼性はゼロとなる。改ざんを指示した者が首相など政府メンバーであれば、政権の正当性もゼロ、安倍逮捕である。
 しかも、改ざん後の文書を資料として、昨年の森友・加計問題の国会審議は行なわれ、10月総選挙も行われた。改ざん国会、改ざん総選挙であり、選挙で勝った安倍政権の正当性のみならず、議会民主制度そのものが覆る。国民はもっと激怒すべきである。
 財務省が12日提出した報告書によると、改ざんで以下の諸点が削除された。「安倍昭恵夫人からは『いい土地ですから、前へ進めてください』とのお言葉をいただいた」、「特例的な内容となる」、「売却価格からの控除を検討」、「籠池氏は日本会議、特別顧問・麻生太郎、副会長・安倍晋三」などなど。
 佐川宣寿は改ざん時の理財局長であり、昨年の国会答弁の功労としてその後、安倍から「適材適所」とほめられて国税庁長官になった。3月2日「朝日」が改ざんがスクープするなか、(改ざんの責任ではなく)森友記録隠しの責任を取るとして3月9日に長官を辞任した。
 その佐川は3月27日の証人喚問で、訴追を理由として「答えは差し控えたい」を乱発。安倍や麻生から改ざんの指示があったのかの問いには「ございません」と明言したが、その根拠は何も示していない。
 安倍の昨年2月17日の国会答弁、「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」、ここから改ざん作業(同年2月下旬~3月)が始まったことは否定しようがない。安倍は3月28日、この答弁ついて「役所の人がどのように受け止めたかは答えようがない」などと開き直っている。「安倍一強」の害悪はここに極まった。
 改憲について。森友改ざんと朝鮮情勢の対話局面への変化によって、自民党の改憲策動は失速しつつある。自民党改憲推進本部は3月22日、改憲4項目(9条、緊急事態、教育無償化、合区解消)の条文案を確認したが、9条改正案については細田本部長一任扱いとなり、3月25日の自民党大会でも、安部案(自衛隊加憲案)を大会決定とすることができなかった。党内で安倍一強は衰え、与党公明は改憲発議からより距離をおく雰囲気となった。
 しかし油断はできない。改ざん政権に憲法を語る資格なし。5・3などで大結集を実現し、安倍自民党を追い詰めねばならない。
 対朝鮮外交について。南北対話・米朝対話の流れが、日本政府を外して大きく進展し、安倍政権の対朝鮮・対米外交が完全に破産した。「朝鮮脅威」論と9条改正が、安倍政権の動力であった。東アジアの情勢発展によって、アベ政治が解体しつつある。安倍には、5月予定の米朝首脳会談の様子を見たうえで、日朝首脳会談の実現という策もある。しかし、トランプの後追いにとどまれば、挽回策になるかどうかも疑わしい。
 「働き方改革」について。安倍政権は、18年度予算案のほうは成立(3月29日)させたが、目玉法案の「働き方改革」法案を未だに提出できていない。これも安倍の答弁、「裁量労働制のほうが労働時間が短いというデータもある」が発端であった。厚生労働省のデータを調べたら、統計作業自体がデタラメだった。それで2月28日には、法案から裁量労働制を削除すると安倍は急転した。
 「高度プロ制」導入は維持とする以上、8時間労働制破壊の意図は変らない。従来の労働大臣告示(残業協定の上限規制)を罰則付きで法制化する以外、労働基準法等の改定は必要ない。「働き方改革」法案の4月提出を断念させよう。
 安倍政権は泥舟化しつつある。しかし、労働者民衆の闘いの高揚や、国会野党の支持率向上によってそうなっているとも言えない。安倍政権打倒に全力をあげつつ、ポスト安倍もみすえて、労働者民衆の闘争態勢を強化していこう。