2019年天皇代替わり「メーデー問題」が浮上
  労働者に天皇制はいらない

 安倍内閣は12月8日、天皇退位特例法の施行日を定める政令を閣議決定し、これによって2019年4月30日に天皇明仁が退位し、翌5月1日に皇太子が新天皇に即位すると決定された。新元号(天皇年号)も、この即位日に施行する方針で、この日をこの年限りの休日とするか、毎年の祝日とするかはこれから検討するとしている。
 5・1は、万国労働者の団結と要求を示威するメーデーである。それは1886年5月1日、アメリカ・シカゴの労働者が8時間労働制を求めて決起したことに始まり、全世界の労働者が闘い続けて定着させてきた。日本では休日となっていない。
 この日に、日本でしか通用しない天皇制が、突然ぶつけられてきた。それで2019年の5・1は、万国労働者の祭典なのか、新天皇賛美の祭典なのか、これが日本の六千万労働者に問われることとなる。労働者はインターナショナルなのか、ナショナルなのかが問われるとも言えるだろう。祝日化されれば、毎年毎年これが問われることとなる。
 安倍内閣は、当初3月31日・退位、4月1日・即位という日程を検討していたが、4月統一地方選挙の直前を避けるという理由で、5月1日に持ってきた。天皇元首化などの反動的改憲をねらい、官製春闘で労働貴族を統制してきた「アベ政治」ならば、メーデーに意図的にぶつけてきたと見るほうが妥当である。安倍が肯定する労働運動は、陛下にひざまづく臣民の労働運動である。連合指導部は、天皇をいただくナショナリスト労働運動の役回りを喜んで引き受けるのか。
 5・1新天皇即位の閣議決定はしかし、メーデーの「天皇制メーデー」化の攻撃であるとともに、その対立物を生まざるをえない。5・1は天皇の日なのか、我々労働者の日なのか。その問いかけは、君主制から自立し、さらに天皇制の廃止をめざしていく労働者の意識と運動が、大衆的に解放されるきっかけになりうる。
 天皇代替わりの問題はこのかん、市民運動的な課題であり、労働組合の課題とはなりにくかったが、ここが変わる可能性がある。労使は対等であり、市民はすべて平等であり、その上に立つ超越者はいらない。メーデー行動を組織する組合活動家の、その資質が問われることになるだろう。

  2018年
  「働き方改革」法案は山場

 さて、2019年のこのメーデー問題とともに、2018年は、安倍政権の「働き方改革」との対決が山場となる。安倍政権は新年の通常国会に、不充分ながら残業労働時間を規制する改定案と、「高プロ制」導入で8時間労働制を破壊していく改定案とを抱き合わせた形で、「働き方改革」一括法案を提出せんとしている。2018年メーデーは、メーデーの原点に帰って、この法案阻止の山場となる。
 「高プロ制」や裁量労働拡大に対しては、「残業代ゼロ法案」という批判が行なわれてきた。しかし、残業代が出るのなら良いのか。残業割増が法定どおり出るなら残業は容認、という考え方は高度経済成長時代の感覚であり、もう時代に合わない。過労死ラインの36協定を容認してきた古い考え方である。
 近年の闘いでは、「8時間働いて、まともに生活できる賃金を!」という言わば当たり前のスローガンが強調されている。1日8時間を超えて働くこと自体を、原則的にあってはならないこととする態度である。これは工場・事務所労働であれ、外回りであれ、テレワークなど「多様な働き方」であれ、同じことである。
 12月7日に東京・日比谷野音で、「働き方改革」を問う労働弁護団主催の集会・デモが行なわれた。この行動でも、「8時間働けば誰でも暮せる社会を!」と銘打たれた。
また2018年4月からは、労働契約法18条によって、5年以上働く有期雇用労働者が無期雇用への転換を求めれば会社は拒否できなくなり、また9月からは、登録型派遣労働者を同一職場で3年以上雇用できなくなる。2つの「2018年問題」である。
 政府・資本は、非正規処遇ガイドライン、「限定正社員」導入などで対応に追われている。労働側には、一斉の無期転換申し入れ行動、違法なインターバルや派遣切りを許さない闘いが問われている。
 郵政非正規労働者による労契法20条裁判で、2017年9月14日・東京地裁判決は、年末年始手当など一定の範囲で正規労働者との格差を不合理と認定し、損害賠償を命じた。すべての非正規労働者にとって、闘いの突破口が開かれた判決であった。
 安倍政権の「働き方改革」は、非正規処遇や長時間労働是正について、ごまかしの対応を取りつつ、正規・非正規を問わず全労働者の8時間労働制と権利を破壊せんとしている。「非正規という言葉を一掃する」(安倍の17年施政方針演説)とは、そういう意味である。
 官製「働き方改革」は、「天皇万歳メーデー」に行き着く。2018~19年、正規・非正規が連帯した労働者の力による「働き方改革」を実現しよう。(W)


12・2釜ヶ崎講座第23回「講演のつどい」
  貧困・孤立に地域の力で

 12月2日大阪市で、第23回釜ヶ崎講座「講演のつどい」が、エルおおさか(府立労働センター)にてもたれた。
 今回は、白波瀬達也さんを講師に、同氏の著書『貧困と地域』(あいりん地区から見る高齢化と孤立死)と同じタイトルを演題に、お話しをうかがった。釜ヶ崎の歴史をふまえ、今日の都市における貧困と孤立に焦点を当てる講演であった。
 白波瀬(しらはせ)さんは現在、関西学院大学社会学部准教授で社会調査士・社会福祉士などの肩書きをもつが、実際お話しを聞くと、日本を中心とする宗教分野が専門という。
 講演は同著作に沿ったレジュメで行なわれたが、後日、参加者の談に多くみられたように、分かりやすい釜ヶ崎・あいりん地区の説明、そして踏み込みがあり、共感と認識の共有ができるものであった。白波瀬さんの展開は、概要以下のものであった。
①戦前は農地が広がっていた釜ヶ崎であったが、大阪空襲の焼け野原の跡地に「旅館街」として復興しつつ、しだいに貧困層が集住して町の形成につながっていく。1959年の時点で、ひとり親家庭や単身者の比率が著しく増大。
②1961年8月の釜ヶ崎第一次暴動以降、警察・行政が「釜ヶ崎対策」に本腰を入れるようになる。こどもの就学対策、住宅斡旋など諸施策の結果、「単身男性」の比率がしだいに高まり、これは60年代後半の「万博工事」をピークとして、単身日雇労働者の暮す街へと形成されていく。
③66年第5次釜ヶ崎暴動が引き金となって、行政が「あいりん地区」の名称で指定。スラムからドヤへ移行し、安定した日雇労働の供給機能をもつ街として、労働力不足解消のための国の政策の発動として、推進されていくようになる。
④景気の変動を、もろに受けてきた。バブル前後の労働者の暮しの格段の変貌。バブル崩壊後は、失業・野宿者があふれ返り、炊き出しに長蛇の列。失業保険等が機能不全となり、労働者の高齢化と重なり、90~2000年代に大量の野宿を生み出していく。
⑤1992年第23次暴動以降、ふたたび行き場のない「定住空間」としての「あいりん」の特色が濃厚となっていく。セーフティネットとしての支援・運動が以降、しだいに形成され、今日の状態を生成していく。
以上のように概括しつつ白波瀬さんは、2012年当時の橋下大阪市長が就任直後にぶちあげた「西成特区構想」の問題を出し、街の再開発と弱者のセーフティネットの形成とは共存できるのか、と問いかけた。
白波瀬さん曰く。地域固有のセーフティネットに力を込めなければダメ。全国の他の自治体でも言えるが、その地域で弱者救済につながる先駆的事例を形成することが必要。釜は労働者の街ではあるけれど、若者や外国人の就労・生活支援も作っていく。高齢者の孤立には、「ひと花プロジェクト」の事例にみるまでもなく、ヨガ、カラオケなど多様な手を打つ。ふわっとした認識ではダメで、ポジティブ・リアリティーの欠如が対策を停滞させてしまう。地域で生起した貧困は、地域で解決する、その地域の能力を高めていく必要がある。
 このあたりの提起は、白波瀬さんの特徴あるオピニオンであった。
さて、会場は3分の1程度(全体参加47名)が若者で、今回のつどいの一つの特徴であった。
その若者に向けた形で、釜ヶ崎日雇労組の佐々木さんが、第48回釜ヶ崎越冬闘争への参加を呼びかけた。
最後に、NPO釜ヶ崎支援機構の山田理事長が挨拶。社会の重荷を捨てる場所として釜ヶ崎は機能させられてきたが、住み暮すという面では住居のみでは問題解決にはならず、働ける、仕事につくという面が最重要。これが社会生活を営むうえでの根本で、今後もそうした対処を私たちは進めていきたい、と語って集いは終了した。(関西I通信員)

  大阪・釜ヶ崎越冬闘争に参加を!
  
 第48回釜ヶ崎越冬闘争が、12月28日~1月4日に闘われる。その行動スケジュールの概略は以下のとおり。
◆越冬突入集会 12月28日・午後6時~7時40分 三角公園
◆布団しきと警備(集団野営) 12月28日~1月4日・朝5時まで
◆炊き出し 12月30日~1月3日 午後6時配食 (1月2日の朝、もちつき大会)
◆人民パトロール 12月30日~1月3日 午後8時から10時
◆臨時宿泊所 受付相談と監視行動 12月29日・午前中 旧市更生相談所前
◆医療パトロール 12月28日~1月3日 午後9時45分~11時30分 医療センター前集合
◆資材管理 12月~1月初旬 越冬必需品の調達・管理。ステージ設営
◆越冬まつり 12月30日・午後4時~1月3日・午後7時40分 三角公園ステージ
◆「われらの声を聞け!センター建て替え問題討論会」 1月2日・午前11時~午後1時 ふるさとの家
◆ お礼まいり行動(対府市要望書提出) 1月4日 朝7時にセンター前集合。

 また「釜ヶ崎講座」としては、①12・30釜ヶ崎講座越冬闘争連帯行動デー(午後6時、釜日労事務所前集合)、②1・3新春「釜ヶ崎歩きツアー」(午後1時に釜日労前から出発)が行なわれる。地区外の市民・労働者の参加が呼びかけられている。(連絡先090-2063-7704)