朝鮮半島危機―米朝は直接対話を
  阻止しよう安倍改憲・大軍拡

 現下の情勢の特徴は、朝鮮半島危機が継続する中で、これを利用して安倍政権と「安倍改憲」勢力が、必死の巻き返しを図っていることにある。
 米国の無謀な攻撃によってのみ始まる恐れのある朝鮮・北東アジア戦争は、絶対に阻止しなければならない。また、緊張をあおって戦争法発動、安倍「9条改憲」を強行せんとする策動を木っ端みじんに粉砕せねばならない。現下の最大の闘いは、この二つの闘いを一つの闘いとして全力で発展させ、安倍政権を打倒することである。
 朝鮮危機の解消のためには、米政権をして、朝鮮による核・ミサイル開発の放棄を前提とすることなく、無条件で朝鮮民主主義人民共和国との公式直接対話を開始させ、朝鮮戦争停戦協定の平和協定への転化と、米朝国交協定の締結へ向けて、具体的行動に踏み切らせることが必要だ。そうすれば、ただちに戦雲は消えていく。朝鮮半島の非核化は、それからテーブルにのぼる。
 朝鮮は、7月28日の「火星14号」発射実験成功によって、米本土に到達するICBM能力を獲得したという強力なメッセージを、米政権に送った。しかしトランプ大統領は8月8日、「世界が見たことがないような炎と怒りに直面する」などと発言し、朝鮮への核先制攻撃を示唆する見当違いの反応を示した。
 これに対し朝鮮は翌9日、中距離ミサイル「火星12号」4発を、米軍事拠点グアム島沖に包囲射撃する実験案を発表して対抗。米側は引き続き、B1B戦略爆撃機・ミサイル原潜・空母などを動員し、8月21日からの米韓合同演習「乙支フリーダムガーディアン」に向け、米朝間の緊張が極度に高まった。
 この米国の朝鮮攻撃態勢は、在日米軍基地が出撃拠点となり、日本の自衛隊機やイージス艦を実戦的に動員するものでもあったが、安倍政権はこれに難色を示すどころか喜び勇んで協力している。
 本来は、日米安保条約第6条とその交換公文で、半島38度線以北への攻撃に在日米軍基地を使う場合は、日米の「事前協議」が必要である。その攻撃が先制攻撃など不法なものであれば、日本側は基地使用を拒否することもできる。この点は、「極東条項」の長年の形骸化によって忘れられがちであるが、今後の政権交代を考えれば重要だ。
 朝鮮のグアム射撃実験案は、乙支演習との相互停止が考慮されていたと思えるが(それは朝鮮の大きな政治的成果となる)、8月14日金正恩委員長が「米国の行動をもう少し見守る」と述べる中、米韓は乙支演習を開始してしまった。
 この演習に対抗して、朝鮮は8月29日、「火星12号」を北海道上空を飛び越えて発射。安倍は、日本上空を超えたことを「かってない重大な脅威」として、さらに戦争モードを掻き立てたが、これで4回目であり、領空侵犯にもならない。そもそも朝鮮半島から太平洋に向けて中長距離ミサイルや人工衛星ロケットを飛ばす場合、日本上空通過を避けることはほぼ不可能である。事前通告がないのは遺憾であるが、これは日米が打ち落とすなどと言っているからで、打ち落としたら交戦権行使、開戦になることを分かっているのか。
 安倍政権は朝鮮危機に便乗して、森友・加計問題や都議選惨敗での大打撃から態勢を立て直そうとし、戦争法の正当化と発動、過去最大の来年度防衛費、「安倍改憲」などの強行をもくろんでいる。
 小野寺防衛相が8月10日、「米の打撃力が欠如することは、日本の存立危機にあたる」と衆院安保委員会で発言した。グアムなどが攻撃されたら、集団的自衛権を行使して戦闘に入るという重大発言である。戦争法を使って日本を飛び越えるミサイルを迎撃し、それで日本も戦争突入という愚かな危険が高まっている。陸上イージスシステム導入(1600億円)など、ミサイル防衛費が概算要求されている。米軍産複合体の求めるままの浪費であり、かつ、日本の平和的な対朝鮮・対中国外交の放棄である。
 「安倍改憲」は、後退したかのように見せつつ、自民党改憲本部は何ら方針を変えていない。改憲発義が不可能な情勢を勝ちとらなければならない。
 民進党代表選で9月1日、改憲派といわれる前原誠司が選出された。しかし、戦争法を前提とした自衛隊加憲は認められない、これは広く常識化しつつある。
 「安倍改憲」阻止は、9・8「安倍9条改憲NO!全国市民集会」(中野ゼロホール・6時半)から本格的に始まる。広範な共同を求めつつ、朝鮮情勢などでのしっかりした政治潮流を拡大していくことが、我々の課題となるだろう。(了)