翁長沖縄県知事、埋立て工事差し止め訴訟へ
  辺野古違法工事即時中止を

       
 戦争法に続き共謀罪が強行され、安倍政権による戦争準備が強行されている。
 安倍政権は、アメリカによる日本とりわけ南西諸島を戦場化する対中国の地域限定戦争の構想、オフショア・コントロール戦略に追随し、与那国島、石垣島、宮古島、沖縄島、奄美大島で自衛隊強化・ミサイル部隊新設などを推進しつつある。その最前線基地として、米軍と自衛隊の共同使用を視野に入れた辺野古新基地の建設を強行している。
 政府は、4月25日に辺野古沿岸部を埋め立てる護岸工事に着手し、5月中旬から6月6日までの20日間で、キャンプ・シュワブ前の座り込み行動に対し、4名の不当逮捕を行なった。6月2日には機動隊の暴力で道路に倒れた人が頭蓋骨骨折を引き起こすなど、複数の市民を負傷させる大弾圧態勢で臨んでいる。安倍政権は6月15日、共謀罪新設法案を強行成立させ、沖縄をはじめとした大衆運動を圧殺する意図を露骨にした。
 この安倍政権に対峙し、沖縄県・翁長雄志知事は6月7日、辺野古工事の差し止めを求める訴訟を起こすことを表明し、20日には差し止め訴訟を起こすための関連議案を、県議会定例会に提出した。
漁業権が設定された地域で海底の岩石などを壊す作業は、都道府県知事の「岩礁破砕許可」が必要とされる。しかし政府は、地元辺野古漁協が漁業権を放棄したことを理由に従来の漁業権に関する国の見解を変更して、許可を更新せずに護岸工事に入った。沖縄県は「漁業権は消滅せず、許可は必要」と主張し、また護岸が砂浜から海へ延びつつあり、沖縄防衛局が岩礁破砕行為を行なうことは確実な状況だとして、「許可のない岩礁破砕行為が行なわれないよう法的措置を取る」と表明した。
これによって、工事差し止め訴訟議案が7月14日に賛成多数によって可決されれば、工事をすぐに停止させる仮処分の申し立てと共に、準備が整いしだい国を提訴することになる。

   6・10国会包囲

この情勢下、6月10日東京の国会周辺では、「今こそ気持ちを一つに」を合言葉に、「止めよう!辺野古埋立て、共謀罪法案は廃案に!6・10国会大包囲」が開催された。国会周辺の4エリアで集会が行なわれ、1万8千名の労働者市民が結集した。この闘いは、基地の県内移設に反対する県民会議、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委の3団体が主催し、共謀罪NO!実行委が共催して行なわれた。
闘いは、米軍シュワブ基地前での座り込み行動に加え、工事差し止めの法廷闘争の開始、東京での国会包囲行動と、安倍政権を何重にも包囲する局面となっている。
6・10国会包囲は午後2時に始まった。正門前エリアでは、主催3団体から国会包囲実行委の野平晋平さん、総がかり行動実行委の高田健さん、県民会議の大城悟さんが発言。そして沖縄からのアピールとして稲嶺進・名護市長が発言、「安倍政権はアメリカに追随し、東北アジアで戦争を起こそうとしている。沖縄の闘いは、戦争する国反対!の最前線であり、それで安倍政権は共謀罪を先取りして、山城博治さんらを弾圧した。共謀罪が成立すれば、沖縄をはじめ市民運動・労働運動が弾圧される。勝つまで、あきらめない。あきらめないことが民衆の力、工事差し止め訴訟も必ず勝つ」とアピールした。
国会野党からは民進党・近藤昭一衆院議員、日本共産党・笠井亮衆院議員、「沖縄の風」・糸数慶子参院議員が連帯挨拶。
共謀罪NO!実行委の海渡雄一さんが共催者として発言し、各界からは、安全保障関連法に反対する学者の会の西谷修教授、辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会の湯浅一郎さん、日本ペンクラブの篠田博之さん、ジャーナリストの安田浩一さん等々が発言した。
最後に、安次富浩・ヘリ基地反対協共同代表が登壇、「沖縄のように非暴力実力抵抗の闘いを広げ、オール沖縄を発展させて全国につくる。その原動力は、戦争法廃止・脱原発などを闘う人々だ。未来は民衆がつくる。国を変えよう」と呼びかけた。
午後3時26分、国会正門前の横断歩道も参加者が埋め尽くして国会大包囲を実行、この日の行動が終了した。
共謀罪の施行を許さず、廃止させる。辺野古新基地建設阻止・戦争法廃止・脱原発を強めよう。安倍政権は揺らいでいる。しかし「野党4党共闘」だけでは勝てない。労働者民衆自身の大衆闘争と「第三極」政治勢力を前進させて、安倍反動政権を打倒しよう。(東京O通信員)

  沖縄、大阪6・10

なお国会包囲の同日行動として沖縄では、「辺野古新基地建設断固阻止!共謀罪は廃案へ!6・10集会」が、米軍シュワブ基地ゲート前で開かれ約1800人が参加した。主催は、共謀罪NO!沖縄実行委員会。
高良鉄美琉球大教授が主催者挨拶。また辺野古弁護団の三宅俊司弁護士が、辺野古新基地阻止の運動を監視・弾圧の対象とするであろう共謀罪の危険性を訴え、参院会派「沖縄の風」の伊波洋一議員が、緊迫する国会攻防を報告した。
また大阪市でも、6・10同時行動が灘波で取り組まれ、辺野古工事阻止・共謀罪阻止を求めて集会・デモが行なわれた。
沖縄と「本土」各地の民衆は固く連帯して、辺野古埋立てを止めさせ、共謀罪を廃止させる!

  国連で山城スピーチ

6月15日、ジュネーブの国連人権理事会で沖縄の山城博治さんが、自身の不当逮捕・長期拘留、および新しい軍事基地建設の押し付けという人権侵害について報告を行なった。
その一分半のスピーチで山城さんは、日米両政府が沖縄の民意に反して、新たな軍事基地を建設せんとしていること、また市民の抗議活動に対し、日本政府が大規模な警察力を沖縄に派遣していること、自身が微罪で逮捕され、その後2回さかのぼって逮捕され、拘留5ヵ月・接見禁止などの人権侵害を受けたことを述べ、日本政府に人権侵害中止と沖縄の人々の民意尊重を求めた。
沖縄での人権侵害が、当事者のスピーチとして、世界中の外交官・報道機関に明らかにされた。共謀罪についても、国連人権理事会のプライバシー権についての報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏が、日本政府に書簡を送り回答を求めている。安倍政権はこれに返答しないまま、共謀罪法案を強行成立させた。
人権理事会の報道の自由についての報告者であるデビット・ケイ氏も、秘密保護法制定以降の日本の現状を批判している。また人権理事会は、15年末の日韓合意について、元日本軍「慰安婦」当事者から同意を得られていない現状を改善するよう、日本政府に勧告している。
安倍政権の異常な反動性は、今や世界から孤立しているのである。(編集部)


共謀罪強行成立(6・15)に対峙し、参院国会闘争
  採決省略の大暴挙

 共謀罪法案は、与党自民・公明による参院法務委員会での採決省略という大暴挙によって、6月15日朝7時半すぎに参院本会議で強行成立させられた。総がかり行動、各市民団体、そして「戦争法廃止・安倍たおせ!反戦実行委」や「戦争・治安・改憲NO!総行動」などの仲間たちは、最後まで闘ったが共謀罪「永久廃案」を実現できなかった。よく闘った面もあるし、反省すべき点もあるだろう。共謀罪廃止・戦争法廃止へ闘いは続く。
 後半戦を振り返る。参院では5月29日に審議入りし、法務委員会がある火・木曜を中心に、各団体は議員会館前の集会や座り込みなどを再開。しかし闘いは終盤に入ってきたにも関わらず、国会前で通常500~1000名程度では、盛り上がりに欠けることは否めない。一昨年の安保法制国会闘争と比べると、全体の共同行動が低調であるため、相対的に反戦実などの潮流の踏ん張りが目立ったとも言える。
 6月10日、共謀罪阻止と辺野古新基地阻止とをかかげて、国会包囲行動(記事別掲)。
6月12日の午後5時から、参院議員会館前で、戦争・治安・改憲NO総行動が「共謀罪阻止ハンスト」に突入。ハンスト団は、組対法反対共同行動の石橋新一さんら3名。突入集会が百名近くで開かれ、ハンスト者3名が決意表明、また米倉洋子さん(共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会)や、明日の法務委員会で参考人意見陳述を行なう山下幸夫弁護士らが、ハンストに連帯する発言を行なった。
6月13日は、参考人質疑をやったあと法務委員会で強行採決、これが危惧されたが、野党4党(民進、共産、社民、自由)が金田法相問責決議案を出して、繰り延べに。これで大方は、15日委員会・16本会議の最終決戦に備えるという構えとなった。
同日の夕方、「共謀罪を廃案に!安倍改憲NO!6・13市民集会」および銀座デモが行なわれ、日比谷野外音楽堂の内外に5200人が参加。主催は、共謀罪NO!実行委と総がかり行動実行委。主催者挨拶で海渡雄一さんは、国連ケナタッチ報告はじめ国際世論と安倍政権との矛盾激化を強調した。国際NGOのグリンピースやJVCが、日本の共謀罪に反対する国際世論を伝えた。
また野党4党は6月8日党首会談で、「安倍政権下での9条改悪に反対」を合意するとともに、共謀罪廃案のため院内外で共闘すると合意し、この合意を受けて6・13集会にも4野党代表者が参加した。
翌朝、自民党は奇襲に出てきた。自民・民進の参院国対委員長会談で、委員会審議を打ち切る「中間報告」を突然提案。委員会採決を省略するこのやり方は、党議拘束をかけない法案などでは前例があるが、重要対決法案では前代未聞である。与党は国会多数を握るにも関わらず、みずから国会を破壊するという異常さである。
6月14日午後8時、法務委員会は「中間報告」動議を強行採決。自公与党は、内容抜きに衆院30時間・参院20時間を審議時間の目安としていたが、参院ではまだ17時間半しか審議していない中での、審議打ち切りであった。
野党4党は、この大暴挙にも抗議して安倍内閣不信任案を提出するなどして抵抗したが、夜通しの参院本会議で翌朝、投票による採決が強行されてしまった。
安倍政権が不評覚悟で、共謀罪法案の成立を急いだ理由は何だろうか。一つは、加計問題での文科省再調査によって、この集中審議を参院終盤で入れざるを得なくなったこと(参院予算委員会で6月16日実施)がある。会期延長なしを前提とすれば、その前に共謀罪を強行成立させなければ、18日会期末で危なくなる日程であった。
この14日の急転に、対国会闘争は充分対応できず、議員会館前では総がかりなどが、正門前では「未来のための公共」などが、数千人程度で抗議行動を続けるにとどまった。法案成立後の15日夕の正門前では、5500人(主催者発表)が怒りの結集、共謀罪廃止・安倍改憲政権打倒を確認した。
また、参院議員会館前で12日突入の共謀罪阻止ハンストは、夜は防衛要員とともに車中泊しながら連日・連夜続けられ、15日朝まで貫徹された。
共謀罪国会闘争(4~6月)は、2015年の安保法制国会闘争(5~9月)に比べると、国会前では終始5分の1以下の規模であり、全国的にも低調であった。これが、安倍政権による審議打ち切り、強行採決、また9条改憲暴走を許している。それは同時に、安倍の独裁を際立たせ、政権不支持の急速な拡大をもたらしている。安倍打倒の決戦に備えよう。(編集部W)