衆院強行採決糾弾!連日の国会前座り込み行動
 参院で廃案に!共謀罪法案

 共謀罪法案は5月23日、衆議院を強行通過させられたが、3月提出時の政府・自公の想定からは大幅に遅れている。6月18日会期末の延長を阻止し、この「現代の治安維持法」を参議院で廃案に追い込むことは、まだ可能だ。安倍政権は与党両院多数にあぐらをかいているが、「加計」問題で政権の信用は失墜した。我々は参院国会闘争を最後まで闘いぬき、勝機をたぐり寄せなければならない。

  座り込み突入

 連休明けの5月8日、衆院議員会館前では、「戦争法廃止・安倍たおせ!反戦実行委員会」が、5月12日までの第一次座り込み行動に突入した。正午過ぎ、「改憲阻止の会」など反戦実に参加する仲間たち十数人が、国会沿いの歩道に布陣を開始。午後1時、坂本俊さんが、2015年安保国会での反戦実による議員会館前・国会正門前での座り込みを振り返りつつ、再度の座り込み行動による共謀罪阻止決戦への突入を宣言した。
 もともと、「国会前座り込み」という闘争形態は、第一次安倍政権の時期にその改憲国民投票法案に反対して、60年・70年安保世代の人々が「改憲阻止の会」を旗上げし、国会前に座り込んだことから一般化していったと言うことができる。これが、「3・11」以降の反原発などによって、国会前の歩道に展開する形態として急速に広がった。それ以前は、PKO法案反対の時期のように、衆参の議員面会所に集結するという形態がメインであった。
 さて、5月8日の昼には、反原発6団体(さようなら原発一千万人アクション、原子力資料情報室など)も、「共謀罪の廃案を求める団体共同声明」を発して議員会館前で集会を行なった。原発再稼動阻止のアピール決議や現地行動の準備が、また「使用済燃料やプルトニウムの輸送に反対して、輸送経路を調査したりすること」が、組織的威力業務妨害罪や往来危険罪で処罰されかねないと、共同声明は指摘している。
 衆院法務委員会は火、水、金曜に開かれる、5月9日(火)からは、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」も議員会館前座り込みに突入した。「共謀罪NO!実行委員会」など市民団体や、全労連、全労協、一部連合(平和フォーラム系)など労働組合が参加し、連日5~600名規模で集会・座り込みが続けられた。
 5月12日(金)の国会前では、反戦実や「破防法・組対法に反対する共同行動」などで構成する「戦争・治安・改憲NO!総行動」、この決起集会が約百名の参加で行なわれた。組対法共同行動の石橋新一さんが「本気でやるんだ!」と訴え、また足立昌勝教授も「共謀罪の創設に反対する百人委員会は、6百人になりました!」とアピールした。
 次週17日の委員会強行採決、これが懸念された。反戦実も、総がかり実も、二週目の座り込み行動に突入。

  5・16集会

 5月16日の夕、日比谷野外音楽堂で「共謀罪廃案・安倍政権の改憲暴走を止めよう!5・16大集会」が総がかり実の主催で行なわれ、会場内外を4200人が埋め尽くした。
福山真劫さん(戦争をさせない千人委員会)が、主催者挨拶で「ファシズムがすぐそこまで来ている」と指摘。国会野党からは民進・枝野幸男衆院議員、自由・山本太郎参院議員、共産・山下芳夫参院議員、社民・吉川元衆院議員、沖縄の風・糸数慶子参院議員が挨拶した。
 続いて、「安保法制廃止と立憲主義回復を求める市民連合」の中野晃一さん(上智大教授)、海渡雄一弁護士(共謀罪NO!実行委)、評論家・佐高信さん、共謀罪に反対する宗教者連絡会議が発言。この日の参考人質疑に民進推薦で立った海渡さんは、「国会はほんとにおかしくなっている、私たちの陳述を全然聞こうともしない。維新推薦の指宿教授の陳述も、GPS捜査・最高裁判決を踏まえて共謀罪法案を批判するものであったのに。」と指摘した。
 高田健さん(解釈で9条こわすな!実行委)が、委員会強行採決を許さない圧倒的国会前結集を!と行動提起し、銀座方面へデモ行進を貫徹した。
 衆院の山場で、どれだけ人々が国会前へ集まるか。安倍政権が「東京五輪成功のためにテロ防止」とするウソは、いぜん一般世間ではかなり通用している。この状況を、どこまで一掃することができるのかが問われている。(5月13日実施・朝日世論調査では、「今国会で成立させる必要なし」が64%であるが、法案への賛・否は同じく38%で拮抗。衆院強行採決後の5月24日調査では、反対35%賛成30%となったが、いぜん賛否不明な人が多い)。
 17日、民進党など野党4党が、答弁能力なしの金田法相に対する不信任決議案を提出、これは18日衆院本会議で否決され、19日法務委員会が山場となった。

  衆院法務委5・19

 5月19日、午前中から国会前は緊迫、正午から総がかり実の集会が始まる。海渡さんが、「国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が昨日18日、共謀罪法案ではプライバシー人権保障の仕組みが想定されていないと懸念する書簡を、安倍首相宛てに提出した。これに答えることなくして、審議は進められない」と重要発言を行なった。
 午後1時現在で、1300人(総がかり実の発表)ほどが国会に対峙。この日は、反核ピースサイクルの出発日。その自転車隊も国会ピースサイクルとして、国会前行動にしばし合流した。
 1時8分頃、自民・公明と、形式的な一部修正を提案した野党「日本維新の会」とによって強行採決。維新が審議打ち切りを求めるなど、積極的に与党に協力したことが特徴である。(一昨年の安保法制国会では、維新は一応、戦争法案に反対票を投じている)。
 夕方からは国会正門前で、委員会強行採決に抗議して9000人(主催者発表)が集まり、本会議採決阻止を訴えた。総がかり実、共謀罪NO!実行委、「安保法制に反対する学者の会」の三者が主催し、「未来のための公共」(元シールズ)の集会に連続した。
 この日、野党4党(民進、共産、社民、自由)は、衆院の大島議長に、①本会議で法案を受け取らず法務委員会に差し戻すこと、②「加計学園」問題の衆院予算委員会での集中審議、これを一致して要求した。
 (この加計学園の獣医学部新設問題は、まっ先に国会審議すべき大問題となっている。内閣府が「総理のご意向」と回答している文科省内部文書が5月17日に公けになり、さらに、認可当時の責任者である官僚トップ前川文科省事務次官(当時)が25日の記者会見で、この文書の存在を認め、「行政がゆがめられた」と表明した。森友問題に続き、安倍徒党による国家私物化が決定的にバクロされたのである)。

  衆院本会議5・23

 5月23日、衆院本会議。開会前の正午には、総がかり実や反戦実など1千名ほどで議員会館側は埋まっている。しかし戦争法案反対の時のように、強行採決で怒りが広がり、急速に人波が国会へ寄せてくるというようにはなっていない。
 この日も、国連ケナタッチ報告が波紋をひろげた。5月18日ケナタッチ書簡は、共謀罪法案について理路整然と懸念を述べ、日本政府に回答を求めた穏当なものであるが、安倍政権はこれに対し18日、また菅官房長官談話として22日、回答するのではなく抗議声明を出すという異常な対応に出た。22日、ケナタッチ氏は、日本政府の抗議は「怒りの言葉だけで、内容なし」との反論コメントを示した
 午後3時から始まった本会議でも、民進・逢坂衆院議員が反対討論で、「ケナタッチ報告への、昨日の政府の抗議はナンセンス。立法作業を中断し、審議をやりなおすべきだ!」と強調した。他方自、公、維新の賛成討論は、同日朝起きたマンチェスター・テロ事件を、これ幸いとして利用するものであった。
 午後4時過ぎ、投票採決が強行され、共謀罪法案が衆院を通過した(民進、共産が反対。社民、自由は本会議採決に抗議して欠席)。
 国会前では怒り爆発。抗議のシュプレが続く中、4時半から「戦争・治安・改憲NO!総行動」の集会が開始された。石橋さんが、「共謀罪強行はもうテロ対策がどうこうというより、安倍の9条明文改憲のため、ということがはっきりして来た。必ず参院で廃案へ!」と訴え、反戦実など各団体が今後へ檄を飛ばした。歩道が混雑する200名ほどの結集であった。
 韓国サンケン労組の日本遠征団3名も、5・11に続いて、この5・23国会前行動に参加。キム・ウニョンさんが、「韓国の中央労働委員会が4月28日、解雇不当と判定した。会社は5月11日、この判定に従うかのようにして『復職命令』を出してきた。しかし工場は機械が撤去され、がらんどうで働くことはできない。本当の復職を勝ちとるまで闘う」と現況を報告した。また、「韓国には、似たような法律で国家保安法というのがあり、多くの人びとが弾圧・殺害された。日本の皆さんの共謀罪反対の闘いに共鳴し、連帯します」と表明した。
 また、同日・日比谷野音での「5・23狭山集会」に大阪・釜ヶ崎から参加していた釜ヶ崎日雇労組など数十名も、狭山のデモ行進後、この国会前行動に合流した。
 こうして、反戦実や戦争・治安・改憲NO!総行動による衆院段階での闘いは、勢いをもって締めくくられ、参院での廃案闘争へ移った。
 この日の夜は、百人委員会主催の「5・23院内集会」と、正門前での未来公共などによる抗議集会が同時に行なわれた。
 5月24日、日比谷野音で、「労働法制の改悪と共謀罪の創設に反対する5・24連帯集会」が2500名(主催者発表)で開かれた。主催は、労働弁護団などが呼びかけの、労働運動と市民運動の連帯を目指す1日実行委。
 5月28日、百人委員会呼びかけで、4・23に続く二回めの「1億3千万人共謀の日」が行なわれ、東京各所・全国各地で共謀罪反対の行動が展開された。

  5・31集会

 5月31日、日比谷野音の内外で、「5・31共謀罪法案の廃案を求める市民の集い」が4700名の結集で開かれた。主催は、ピースボートやアムネスティ日本など市民団体を主とする集い実行委であるが、この集会・銀座デモは、参院段階における全体の共同行動の総決起集会となった。集会では、海渡弁護士がケナタッチ書簡を紹介しつつ、「共謀罪法案の審議をストップし、政府は国連の問いに答えよ!」と特別アピールを行なった。
 参院では、国会前の抗議が再開する中、5月29日・本会議で審議入りし、30日、6月1日と法務委員会。法務委はあと数回やって終わりなどと、暴論が出始めた。
 30日の参院法務委員会では、会派「沖縄の風」の糸数慶子委員が、シュワブ前の座り込みなどは共謀罪の適用対象となるかと問い、これに対し安倍は、「負担軽減や環境保全が目的で、一定の重大犯罪等の実行を目的に構成員が結合しているとは考えがたいので共謀罪は成立しない」と、無難な答弁を行なった。対象となると言ったら大変だ。大衆運動弾圧法ですと言うに等しく、もう法案撤回しかない。もっとも安倍は、反基地・反安保を目的とする団体に適用しないとは言っていない。シュワブ前では5月26日と29日、統一連の瀬長氏に対し、県警が異常な拘束を繰り返している。
 反戦実行委などは、「6・3共謀罪阻止!新宿デモ」(記事1面)を参院段階での決起行動とした後、6月5日から参院議員会館前座り込み行動に突入する。(編集部W)