安倍「働き方改革」は、低賃金長時間労働を容認
  8時間働いて生活できる賃金を

 安倍政権がすすめている「働き方改革」が、大詰めを迎えている。3月中に取りまとめ、関係法案を今国会に提出して、成立させようとしている。
 いま、マスコミを賑わせているのは「長時間労働の是正」のうち、繁忙期1ヵ月の残業の上限を何時間にするかである。厚生労働省の事務局案は、1ヵ月100時間、2ヵ月平均80時間である。使用者側は、「納期に間に合わせるため、国際競争に勝つためには、この程度の残業上限は妥当」と賛意を示している。一方、労働側は「過労死ラインまで働かせることを法律で決めることになる」と猛反発、折り合いの見通しが立っていない。
 政府は、3月中に「働き方改革」の実行計画をまとめることにしており、働き方改革実現会議の議長である安倍首相は、「労使が合意しなければ法案は出せない」と労使双方に合意形成を図るよう強く促がした。
 労働基準法では、労働時間は一日8時間、一週40時間を超えてはならないとされている。これら法定労働時間を超えて残業する場合は、労使で協定(36協定)を結ぶことになっている。今回、残業は月45時間以内、年間360時間が望ましいとしている現行労働大臣告示を法律に明記し、強制力を持たせた罰則を定める案が示された。さらに、臨時的な特別の事情がある場合、年間720時間(月平均60時間)を上回ることができない特例を設けることにし、その720時間以内において業務量が増加する場合の上限をどうするかが先の議論である。「例外中の例外」の扱いが先の議論であり、それがマスコミを賑わせているのである。通常の残業常態化の解消こそ、もっと議論されるべきだ。
 そもそも一日8時間、一週40時間を超えて働かせることは、違法であり、犯罪であることを労使双方が忘れている。法定労働時間以上働かせようとすることは、同意の強制であり、パワーハラスメントなのである。残業代を払えば、残業を強いても良いなとどということはない。何のための「長時間労働の是正」なのか。現行の長時間労働を法律で容認する議論でしかない。
 政府は、昨年の通常国会に提出し、継続審議となっている労基法改正案を撤回しようとしていない。一定の収入以上の労働者に新たに高度プロフェッショナル制度(いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション)を設けるとともに、企画業務型裁量労働制度を大幅に拡大するという改正案である。労働側が「労働時間規制の議論をしているのだから、労働時間規制適用除外の法案を撤回すべきである」と主張しても、政府は法案を撤回しようとはしない。逆に「労基法改正案に賛成してくれるなら、繁忙期の上限規制を1ヵ月80時間にしてもよい」という妥協案がうわさされている。政府・財界にとっては、「高プロ」と「残業規制」はセットなのである。
 野党4党は昨年、労基法改正案を共同提出しており、この改正案で過労死防止の切り札として、終業から次の始業までの間隔を11時間以上にする、いわゆる「インターバル規制」を求めているが、一向に審議されていない。
 「働き方改革」のもう一つの柱である「同一労働同一賃金」については、昨年12月、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討委員会」が、ガイドライン案を取りまとめた。職務や能力なども明確にして処遇を労使話し合いで確認できるようにというもので、賃金格差が問題となる例、問題とならない例を例示している。
これは結局、職務や能力による格差を認めることによって賃金格差を容認しようというものである。「合理的」格差論である。男女雇用機会均等法の制定によって、女性に対する賃金差別がなくなり、男女同一賃金が実現するのかと思いきや、コース別人事管理によって賃金格差が固定化された歴史がある。「能力」を判断するのは使用者である。使用者の使いやすいように労働者を区分けし、低賃金長時間労働で働くように求めているのである。労働時間規制が適用されない無限定正社員と、労働時間規制が適用される限定正社員と非正規労働者とが、混在して働く職場が形成されることになるだろう。
 来年4月からは、労働契約法18条にもとづき、同一職場で5年以上働いているパート、契約社員などの有期雇用労働者が無期雇用への転換を求めれば、企業は拒否できなくなる。また、来年9月からは労働者派遣法の改正にもとづき、登録型の派遣労働者は、原則として同一職場で3年以上働くことができなくなった。このような二つの「雇用の2018年問題」に対応するため、正社員化を求める非正規労働者に対して、限定正社員として受け入れることも止むを得ないと考える会社の対応策が問題となっている。
 「働き方改革」は、この「雇用の2018年問題」対策での、非正規労働者処遇ガイドラインとしての役割を果たすであろう。
日経連が1994年に出した「新時代の日本的経営」は、国際競争に勝ち抜くための雇用戦略として有名である。非正規労働者の増加は、この戦略によってもたらされた。「多様な働き方」といって非正規労働者を増やしてきたわけだが、非正規労働者の増大によって様々な問題が生じてきた。一方、少子高齢化、労働人口の減少に直面し、新たな雇用戦略が必要になってきた。
そこで現在、「非正規労働者と正規労働者の格差解消」と銘打って、低賃金長時間労働を法律やガイドラインに裏付けられているから「不合理な格差」ではない、とする「差別のルール」を仕上げようとしている。「不合理な格差」の立証責任は、使用者には無く労働者に押し付けている。その上に「解雇の金銭解決」を制度化すれば、使用者の労働者支配は強固なものになり、労働力の流動化にも役立つというものである。
 官邸主導の働き方改革実現会議で方向を出し、労使の合意を迫る安倍政権の手法は、労働政策を政労使の三者で話し合うとするILOの精神を否定するものであり、現行の労政審議会の否定である。安倍首相にせかされて、仮に連合トップと日本経団連トップの合意が成立し、「働き方改革」の法案が提出された時、果たして民進党は反対できるのだろうか。反対できなければ、「野党共闘」は大きな壁に突き当たる。
 野党共闘は重要政策で揺さぶられることになる。なぜなら、いわゆるアベノミクスの第二ステージは、「一億総活躍プラン」であり、その目玉は「働き方改革」であるからだ。「『働き方改革』には憲法的価値観がない」という批判がある。「働き方改革」は本来、非正規労働者や女性労働者に対する差別待遇の撤廃を目的にしなければならないものである。安倍政権の「働き方改革」には、「基本的人権の尊重」という視点がないから、このような批判が起こる。
いま、労働運動に問われているのは、働く者の人権を取り戻すたたかいである。「すべての労働者に8時間働いて生活できる賃金を」獲得できる社会をどのようにつくるのか、非正規労働者と正規労働者が連帯してたたかうことが求められている。(K)


日米軍事同盟に反対し
韓国民衆の闘いに連帯する2・25集会

  サンケン勝利こそ日韓連帯

 韓国では、朴槿恵政権の居直りともいえる次々に出される姑息な手口にもかかわらず、韓国民衆の圧倒的な朴政権打倒闘争の、最終的な進撃が行なわれている。
 このなか日本・東京では2月25日、文京区民センターにおいて「3・1朝鮮独立運動98周年 日米韓軍事同盟に反対し韓国民衆の闘いに連帯する2・25集会」が開かれ、日韓民衆連帯全国ネットワークなど呼びかけの集会実行委の主催で約150名が参加した。
 集会は最初に、日韓ネットの渡辺健樹共同代表が、安倍の暴走が止まらない、昨年11月23に締結された日韓間のGSOMIA(軍事情報包括保全協定)は、日米韓の軍事同盟を新たな高みに押し上げるものだ、これに対し日米韓の民衆連帯で対決していこう、と冒頭あいさつを行なった。
 続く講演を、東京新聞の半田滋さんが、「GSOMIAと安保法制が引き込む戦争の道」という演題で行なった。半田さんは、GSOMIR、韓国で配備が進められようとしているTHAADミサイル、日本の安保法制、そして米国でのトランプ政権の誕生、これら一連の事態を紐解いて、戦争への道を歩む日米韓軍事協力について時系列的に解説した。
 休憩後、韓国サンケン争議の、キム・ウニョンさんら解雇者復職闘争委員会の仲間たちから、特別アピールが行なわれた。キム・ウニョンさんからは、サンケン電気(本社・新座市)の子会社韓国サンケンにおける整理解雇、日本への派遣団の開始に到る経過報告と、闘争委員会派遣団の揺るぎない決意が述べられ、また当日は日本派遣131日目を迎えたが、復職するまで本社闘争を続けていくことがしっかりと表明された。
 そして、派遣団による舞踊・ユルトンが「連帯闘争歌」に合わせて力強く披露され、万雷の拍手と連帯の声があがった。
 次に登壇したのが韓国ゲスト、インターネットニュース「民プラス」編集局長キム・ジャンホさんで、「韓国のキャンドル革命と平和運動」という題目で、パワーポイントの映像を交えて報告がなされた。
 韓国ゲストの報告
   「キャンドル革命」と今後

 キム・ジャンホさんは、このかんの「キャンドル革命」の現場映像を交えながら、それに到る経過として、朴クネ政権はスタート時から不正な政権であったこと、大統領選の不正な実態を述べ、セウォル号事件での朴クネのでたらめな対応、2015年11月14日の13万人民衆決起デモに対する警察の攻撃による農民パク・ナギムさんの虐殺、民主労総ハン・サンギュ委員長らの逮捕、チェ・スンシルの国政への不正介入とキャンドル革命への導火線、キャンドル革命における労働者の闘いの支持などを報告した。
そして、段階的に発展するキャンドル革命は、3月に憲法裁判所の審判が完了し、朴クネの退陣で勝利するだろう、5月10日ごろには大統領選が前倒し実施されるだろうと報告した。
 そしてまた、「私たちは、必ず政権交代を成し遂げようと思っている。大統領選では、野党候補の支持率が高く有利である。民衆は野党候補に圧力を加え、民主的な政権交代を実現させる。政権交代はスタートにすぎない。このような中、進歩勢力は分裂し、まとまっていない。大統領選で、進歩勢力は闘いを集中させ、サード配備阻止、非正規雇用の撤廃、財閥解体の闘いを進める。政権交代の情勢を捉え、進歩政党の建設、自主・平和・統一に向かって、民衆は道を切り拓いていくだろう。これらの過程を通して、韓日民衆の連帯に一層努力していく」と報告をまとめた。
 集会の最後に各団体からアピール。沖縄辺野古現地の闘いを中心に、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック共同代表の大仲尊さん、釜山日本領事館前の「平和の碑」(いわゆる従軍慰安婦少女像)に対し日本政府が不当な撤去要求をしている問題を中心に、VAWW・RAC共同代表の中原道子さんが、また、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会事務局の森本幸子さんが発言した。
 この集会でのキム・ジャンホさんの報告や、その他の情報でも、今回の韓国民衆の闘争は「キャンドル革命」と呼ばれ、市民革命とも表現されているが、ある意味で全人民の総決起であり、表面に出ず、これを支え指導してきたのは、明らかに民主労総など労働者階級であったと考えるべきであろう。日本でも同様ではあるが、韓国の指導的政党(進歩政党)が分裂していながら、これほどの闘いを実現していることに、日本の我々は多くを学ばねばならない。
 まずは、日韓民衆連帯における、先進的な闘いの前進をかちとることが必要だ。サンケン電気闘争に勝利することから始めよう。(東京Ku通信員)