共謀罪永久廃棄・辺野古埋立阻止・安倍打倒

 1月20日に米国ではトランプ反動政権が発足し、翌日にはワシントンで50万人、全米百万人以上のトランプ打倒行動が闘われた。韓国に続き、帝国主義の本拠・米国で大衆闘争が激化していく。
 トランプはその「米国第一」主義を、大統領就任後むしろ露骨化している。しかし日本では1月20日、安倍首相は施政方針演説で、「これまでも、今も、そしてこれからも日米同盟こそが基軸。これは不変の原則」などと述べている。これは、米国第一への永遠属国化宣言なのか。「日本をとりもどす」はずだったアベ政治は、支離滅裂に破産した。
 新年筆頭の課題は、この日米同盟の混迷をついて、辺野古新基地の埋立て工事を断固阻止することである。最高裁が12月20日、高裁判決を追認し、是正指示について翁長知事の行政不作為が確定した。しかし知事は、前提に帰って埋立て承認を撤回することもできる。知事が公約を堅持し、オール沖縄と「本土」民衆が闘争を堅持すれば、シュワブ基地内・生コン工場などは阻止できる。山城博治さんら3名を、ただちに釈放せよ!
 共謀罪の阻止でも、安倍政権は倒れる。共謀罪阻止は、戦争法廃止と一体となって、一大運動になる可能性をもってきた。今春の運動拡大が重要だ。(編集部)


  共謀罪=治安維持法の国会提出阻止

 安倍首相は1月20日の施政方針演説で、「共謀罪」の趣旨をもりこんだ組織犯罪処罰法改定案を、今国会に提出することを表明した。
 小泉政権の時代に過去三度も廃案になりながら、今回四度目は、「共謀罪」の名称を「テロ等準備罪」に変えて提出し、犯罪が既遂・未遂の以前に、また準備される以前に、犯罪計画を話し合うだけで罪に問うことができる「共謀罪」の成立をねらっている。
 安倍政権と与党自民・公明は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて「テロなど組織犯罪への対策を強化する」と法案の目的を強調し、労働者・市民を欺くために、「テロ対策」を前面に押し出しているのである。
 第一に、共謀罪は組織犯罪集団に関わることで、一般の労働者・市民には関係ないというのは大ウソである。共謀罪は、戦後憲法下の刑法原則をくつがえし、基本的人権を破壊する。
 政府・与党は、四度目の法案に、①対象になる団体を「組織犯罪集団」に限定、②処罰の条件に、現場の下見など「準備行為」等を追加する、それで廃案となった旧法案とは全く違うと言っている。しかしこれも、人を欺く手法に過ぎない。2人以上で相談すれば、「組織犯罪」とみなされることに変化はない。
法案は、4年以上の懲役・禁固刑がある676の犯罪を対象にする。今後、与党内の調整で対象刑を減らしても、威力業務妨害罪など労働運動・市民運動への弾圧にしばしば適用されてきた諸法は除かれないだろう。
 かって旧治安維持法の下で、言論や思想までもが弾圧された戦前・戦中の反省をふまえ、戦後日本の刑法は、犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。罪刑法定主義の原則である。(重大犯罪においては「未遂」「予備」も罰する場合がある)。
 しかし「共謀罪」では、実行行為がなくても、犯罪を行なう合意が二人以上で成立するだけで処罰が可能になってしまう。日本国憲法下の刑法体系に根本的に反する法案である。
 第二に共謀罪は、犯罪が行なわれる以前から捜査が開始されるのであるから、警察の捜査手法に変化をもたらし、監視社会・治安警察国家化をもたらす。
共謀が密室などの誰も知らないところで行なわれることを考えれば、合意成立の認定は困難であり、結局捜査機関の恣意的運用が可能となる。捜査当局の勝手な解釈によって、市民運動や労働運動への弾圧が実行されることになる。
 また、昨年強行された盗聴法改定によって、警察による合法的盗聴が飛躍的に拡大された。盗聴法と共謀罪は、ワンセットである。盗聴記録が、「共謀」の証拠としてデッチ上げられる。
 第三に、共謀罪の新設が、越境組織犯罪防止条約の批准のために必要だというのは大ウソである。
 安倍は、「国内担保法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結しなければ、東京五輪を開けない」(1月23日・衆院)などと、ウソ八百の恫喝を繰り返している。国際(正しくは越境)組織犯罪防止条約は187ヵ国が批准しているが、批准のために国内法を変更したのは実は2ヵ国しかない。参加各国の刑法体系は、何ら否定されないのである。
 同条約は2000年に国連総会で採択されたが、資金洗浄など越境経済犯罪を主眼としたものである。ところが01年の「9・11」事件後は、対テロのように宣伝される傾向となった。日本はすでに対テロの諸条約をたくさん批准しており、また国内法で組織犯罪処罰法、暴力団対策法、共謀罪付きの爆発物取締罰則、凶器準備集合罪など治安弾圧法を備えている。これらの諸条約・国内法は人権上ほめられたものではないが、同条約批准に共謀罪新設が不要であることを示している。
 安倍政権の本音は違うところにある。「共謀罪」導入の本音は、憲法改悪と一体の、治安維持法の復活である。国民的大運動を起こし、共謀罪を阻止しよう。(O)


  トランプ登場の史的背景
   終わる資本主義世界  

1、 産業の成熟は、一方において資本の産業からの遊離-投機マネー化をもたらし、他方において資本にとり絶対的に過剰な人口部分を増大させる。いまや、わずか8人の大富豪の資産が、世界人口の約半分に当たる36億人の総資産と同じだという。資本主義が社会を成り立たせ得なくなっており、社会を破壊するマシーンに転化している。その中で、下層のますます大きな部分が生存限界以下に押し下げられようとしているのだが、中間層の没落と絶望も深刻となり、重大な政治問題として浮上してきている。これがトランプ現象の土台にあるものである。
2、 トランプ現象を「ポピュリズム」として批判する傾向が広くある。大衆迎合主義と訳されるこの表現は、支配階級からの批判言辞である。それは支配階級が、民衆を政治的にも統合できなくなったことの告白でもある。
しかし、そうだからと言って、トランプ現象を支持するということにはならない。なぜならそれは、没落し絶望の淵に沈む白人中間層が、差別が何で悪い、排外主義が何で悪いとやり場のない苛立ちの矛先を被差別層に向け、現状打破を求めて展開しだした極反動の政治運動だからである。この運動は、フランス国民戦線、ドイツのためのもう一つの選択、など欧州諸国における独自の政党を立てた右翼運動と、政治性格は同じものである。日本場合は、リーマンショックの震源でなかったこと、産業発展期の中国との経済的つながりが強く欧米ほど失業率が悪くないことなどを背景に、官僚が右にはみだす民衆運動を安倍政治の枠内に制御してきている(今のところだが)。
トランプ現象についての左の側からの批判を見ると、トランプ個人の資質を批判することに重点を置く傾向、トランプの主張の自己矛盾やウソの連発を批判する傾向、結局は金融資本の独裁というところに還元する傾向などがある。トランプ現象が民衆の絶望を根拠とした現状打破運動だということに幻惑されて好意的に評価する傾向、トランプが『雇用』を重視している態度に賛同してしまう傾向なども見られる。大混迷と言ってもよいだろう。しかしそれらも含めて、トランプ現象は既視感ある現象なのである。
3、 そう、かつて似たことがあった。ドイツにおけるヒトラーに率いられたナチズム運動(国家社会主義ドイツ労働者党)の台頭である。どの点で似ており、どの点で異なるか、考えてみよう。
似ている点は、没落中間層の憤りが高まり、既成支配層の統合から決別し、排外主義の旗を公然と掲げて台頭・進出したこと。下層労働者もこれに合流。権力掌握の過程で、既成支配層・とりわけ軍部と妥協しながら、排他的・攻撃的な国家体制を築いたことである。
異なる点は、三点あるだろう。
第一は、かつての場合、資本主義発展期における帝国主義世界大戦の敗戦国への犠牲のしわ寄せ、29年恐慌などを背景としていたが、今回の場合、資本主義終焉の時代・08年リーマンショックを背景としていること。第二は、かつての場合、革命の敗北によって危機打開の方向が見えなくなり、左翼への失望が広がる中でヒトラーの台頭があったが、今回の場合、20世紀の共産主義運動が敗北して権威を失い、初の黒人大統領の誕生(人種差別を超える期待)が失望へ転化し、資本主義終焉時代の革命の方向・主体がまだ政治的に浮上していない中でトランプ現象となったこと。第三は、かつての場合、まだ産業発展期にあり資本主義の発展時代であったから、ナチズム的反動は資本の富国強兵・市場再分割戦争路線と融合する形になり、最終的にはブルジョア的未来を代表していた戦勝・最強国に敗北する。だが今回の場合、産業の成熟・資本主義終焉の時代であるため、中間層を推進翼とした歴史的反動を打ち砕くのは資本主義の先進国ではなく、共生・協同社会(私有財産制と国家の廃絶)を目指す民衆運動に委ねられることになる。
4、 トランプ現象を前にしてわれわれに問われていることは、何か?
問題の根源は、資本主義が社会を成り立たせることができなくなり、社会を破壊するシステムに転化し、国家が社会を統合できなくなる中で、革命主体を政治的に登場させえていないことである。現状の打破を求めるエネルギーは、未来の方向への選択肢がない時、過去の方向への選択へと向かうのは必然であるだろう。
トランプ政権を登場させたのが民衆運動だとしても、その民衆運動の推進主体は白人中間層であり、ヒトラーのナチス運動のように下層労働者にまで、まだ及んでいない。中間層も分裂している。ヒスパニック、黒人、イスラム教徒、女性、性的少数者などの反トランプ行動が広く展開されていることに端的である。サンダース現象もそうだ。資本主義の下で生存が保障されなくなっている層の人々が起ち、問題の根源を一掃する展望を政治的に切り拓くとき、時代の流れは変わる。日本の我々も、問われている課題は同じである。
但し、アメリカは超大国である。その覇権をフルに活用して自国の矛盾を他国にしわ寄せすることができる。そのしわ寄せを被る日本も帝国主義大国であり、より弱い国へと矛盾をしわ寄せすることになる。自国第一主義というあからさまないじめの連鎖だ。「アメリカ第一」でアメリカが延命できるかというと、そうはならない。世界秩序の崩壊が内外の周辺から広がり、自己に帰ってくるからだ。
5、 さて日本である。
いま安倍政権は、「アメリカ第一」のしわ寄せがどんなものとなるのか、不安に駆られている。いずれにせよ、ただでは済まない。米軍支援、軍拡、参戦、治安強化と安倍政権が望む方向のものであっても、政治的限度を超えた勇み足、泥沼への道を強要される可能性が高い。財政破綻、産業空洞化の問題は、それらに劣らず深刻かもしれない。人々は生きていけなくなる現状の変更を、一段と希求するようになるだろう。
そんな中では、戦後体制を擁護する態度、「立憲主義、平和主義、民主主義」の旗印は、「じり貧」路線でしかない。
「日本の自立」を強調する傾向もあるが、中身を見れば「立憲主義、平和主義、民主主義」と結合されている。そもそも「日本の自立」自身、グローバリズムと国民国家という資本主義が抱える矛盾、支配階級の内部対立の枠内にとどまった発想に他ならない。
もちろん我々は、安倍政権に対して「日本の自立」「立憲主義、平和主義、民主主義」を掲げて対抗する勢力を支持しなければならない。しかしそれに止まっていては、敗北するということである。いま問われているのは、非正規労働者・下層民衆の怒りと結合し、沖縄・韓国民衆の闘いと連帯し、新しい社会の創造をめざす潮流を、「第三極」として立てることである。(M)