さようなら「もんじゅ」・さようなら核燃サイクル12・8東京集会
  核燃サイクルにとどめを!

 「『もんじゅ』廃炉は闘いの成果、次は六ヶ所」の決意を込めて、12月8日の午後、「さようなら『もんじゅ』・さようなら核燃サイクル東京集会」が開催された。会場の東京・日比谷野外音楽堂には、寒風をものともせず、約900名の労働者・市民が結集し、集会と銀座方面へのデモ行進を闘いぬいた。主催は、さようなら原発1000万人アクション実行委員会。

  狙いは核兵器開発

安倍政権は11月30日、3回目の「高速炉」開発会議を開催。高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃炉に代わる新たな高速炉を建設するため、今後十年程度で必要になる作業の工程表を2018年中に示す方針を固めた。政府は年末にこれを閣議決定し、併せてもんじゅ廃炉も決める。
その骨子案では、核燃サイクルを推進し、高速炉の研究開発に取り組む方針を堅持、世界最高レベルの高速炉開発を実現するとした。
高速炉実用化には、実験炉・原型炉・実証炉・実用炉の4段階がある。政府は、フランス政府が計画する実証炉「アストリッド」に資金を出して共同研究をしたり、茨城県大洗町の実験炉「常陽」を活用したりすれば、実証炉研究に進むためのデーターが得られると判断。原型炉もんじゅの失敗も検証しないまま、実証炉建設の方向で調整している。
「高速炉」は、高速で飛ぶ中性子を使う研究段階の原子炉。使用済み核燃料を再利用して発電するため、放射性廃棄物を減らす効果があるとされる。さらに使用済み核燃料などから出る「燃やせないウラン」を高速炉の炉心周辺に置き、核反応によって再利用できるプルトニウムに変えるのが「高速増殖炉」。冷却材は、両施設ともナトリウムを使用する。したがって基本的技術は、高速炉も増殖炉も同様で、政府は両技術を目指す方針を変えていない。
安倍政権は、プルトニウムに固執し、核兵器製造を狙っている。1958年、日米原子力協力協定が締結され、88年には日米原子力協定に改定され、30年後の延長交渉が決められた。2018年がその年にあたる。
協定は、日本が核兵器開発に踏み出したと米国が見なせば、米国由来のウランやプルトニウム等を引き上げることができる。もんじゅが廃炉に追い込まれ、大量のプルトニウムが使用する当ても無い状態は問題になる。高速増殖炉を含む核燃サイクル、使用済み核燃料の再処理は、NPT条約で言う核兵器国を除けば、日本だけが日米原子力協定によって認められている。
安倍政権は、日米原子力協定の更新に備え、核開発を進めるために、高速炉導入を計画した。しかし、高速炉建設は困難だ。アストリッドは基本技術の段階で、実物さえない。前段階の原型炉スーパーフェニックスは、ナトリウム流出事故で廃炉になった。高速炉は出来なくても、プルトニウムを大量に保持し続ける口実になればよい、これが政府の本音だろう。
核燃サイクルはすでに破綻し、原発政策も破産している。もんじゅ・六ヶ所再処理工場・MOX燃料加工工場など、核燃サイクル全体の解体が求められる。

  やめろ核燃・核開発

10・8東京集会は、一千万人アクションの鎌田慧さんによる主催者挨拶で開始。鎌田さんは、「原発政策はすでに破綻している。『もんじゅ』も六ヶ所村再処理工場も破綻している。その中で再稼動が進んでいる。今日は、このことをはっきりさせて、未来につなぐ闘いだ。必ず安倍政権を追い詰める」と、集会の基調を発言した。
次いで、宮下正一・原子力発電に反対する福井県民会議事務局長は、「12月20日に、もんじゅ廃炉の閣議決定がなされる。これは闘争の成果だ。もんじゅは95年8月に運転を開始、その12月にナトリウム漏洩事故で火災、停止した。そして2010年再稼動という時、装置が炉容器内に落下、ずっと止まっている。信じられない事故が次々に起きている。廃炉にして安全確保こそが大切だ」と述べた。
海渡雄一弁護士は、「もんじゅの危険性は、毒性の高いプルトニウムと冷却材にナトリウムを使うことだ。これ自身間違っている。原子炉で沸騰が起きたら、すぐに暴走し、日本の半分は人が住めなくなる。それでも政府は『常陽』を動かし、実証炉を建設せんとするなど新たな動きをしている。原型炉で失敗していて、実証炉などできるはずがない。もんじゅで失敗し、次に進むのは許されない」と強く指摘した。
浅石紘爾・核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団長は、「核燃サイクルは、もんじゅと六ヶ所村で完結している。もんじゅ廃炉は、再処理の意義を無くしてしまう。再処理工場を残したいのが、政府の本音だ。使用済み核燃料の捨て場を確保し、プルトニウムを握って核爆弾を作りたいからだ。我々の当面の目標は、プルサーマルをつぶすことだ。原発から再処理に続く道を断ち切りたい」と発言した。
最後に、自主避難者の熊本美弥子さんが発言、「私たちは今、崖っぷちに立たされている。福島県は、自主避難した人々への住宅無償提供を来年3月で打ち切ろうとしている。私たちは、放射能の被害を恐れて避難している。打ち切りは、貧困か帰還かを迫っている。お力添えを!」と訴えた。
集会後のデモでは、原発推進の元凶、経産省・文科省前で、「もんじゅ今すぐ廃炉!」「やめろ核燃サイクル!」の怒りのシュプレヒコールを上げた。
安倍政権は12月12日、「駆け付け警護」で戦争法の運用を開始し、沖縄でも高江ヘリパッド建設を暴力と弾圧で強行し、さらにまた、破綻した核燃サイクルの存続を画策し、原発再稼動を強行している。これら、一連の戦争国家づくりを進める安倍政権を打倒しよう。(東京A通信員)


いじめに無力、文科省有識者会議10・24提言
  最優先は新自由主義教育廃止

 東京電力福島第一原発事故により、福島県内から横浜市に自主避難していた中学1年の男子生徒(13)が不登校になった事例で、11月9日、横浜市教育委員会・第三者委員会は、「同級生によるいじめがあった」と認定した。
 少年は2011年8月、小学2年生に転入、直後から名前に「菌」を付けられたり、叩かれたりするいじめを受け、不登校になった。4年生(13年4月)では、跡が残るほどの暴力を受け、鍵盤ハーモニカが隠されるいじめにあった。
 さらに5年生になると、同級生10人前後から「震災の賠償金をもらっているだろう」と言われ、ゲームセンターなどの遊興費を負担。1回あたり5~10万円をおよそ10回支払っている。その後現在まで、不登校が続いている。
 国や東電など電力資本の無責任な政策によって故郷を離れ、地域の人々や友人・親類とも別れて、放射能の危険から子どもを守るために避難を余儀無くされた人々。文部科学省、教育委員会、そして教育現場は、その人々の思い、経済的困窮等を考え、教育にあたる必要がある。日々の実践の中で一人ひとりを大切にし、差別を許さない教育が求められる。放射能の危険性、転入した子どもの思いをとらえた教育実践もある。差別を絶対許さない教育が必要だ。
 深刻ないじめが、子どもたちを苦しめている。しかし文科省の進める教育路線は、別の方向に向かっている。新自由主義教育は、いじめを増加させるばかりで、なくすことは難しい。

  一、 手練手管の提言は無力

 10月24日、文科省の有識者会議は、「自殺予防・いじめへの対応を最優先の事項に位置付ける」提言をまとめた。同会議は、森田洋司・鳴門教育大学特任教授を座長に、いじめ防止対策推進法の施行3年を踏まえ、同法の基本方針見直しなどを議論し、提言としてまとめている。これを受け、文科省は今後、提言にそって具体策をつめることになる。
 提言は、以下を主な内容にしてまとめられている。①いじめの認知件数が少ない都道府県に対し、文科省が個別に指導する。②学校ごとに常設する「いじめ対策組織」に、弁護士や警察官経験者ら外部人材の参画を進める。③いじめの情報共有が、「いじめ防止対策推進法」に基づく義務であることを周知する。④ラインなどによって、いじめの具体例を示し、刑法上の名誉毀損罪や民事上の損害賠償請求の対象になりうることを知らせる取り組みを進める。⑤教職員の日常業務において、自殺予防・いじめ対応を最優先事項に位置付けるよう促がす。⑥自殺や不登校など「重大事態」の調査の進め方について、ガイドラインを作成する。⑦部活動の休養日を設けたりして、教職員の負担軽減を進める等々である。
 たしかに、いじめの早期発見・対応、教職員集団が共通認識することは大切なことだ。しかし、この提言にあるのは、上からの権力的押し付けや法の力による強制、パターン化以外の何物でもない。現場の教育労働者や子どもたち一人ひとりの姿が見えない提言だ。しかも、日々子どもたちとかかわり、苦悩し実践を積み上げた、実践力を持つ現場や地域の教育労働者の参加が感じられない。いじめに手練手管は無力だ。新自由主義教育を廃止し、こどもを中心にすえた教育こそが求められる。
 子どもの命と人権を守り、子どもたちの幸せのためにも。

  二、 小学校で認知件数最多

 文科省は10月27日、2015年度のいじめ認知件数を発表した。
 それによると、いじめの認知件数は小中高の全体で22万4540件、前年度より3万6468件増加し、小学校は、調査開始の1985年度以降、最多の15万1190件に上った。そのうち心身、財産に重大な被害を生じた疑いのある事例は、前年度より37件増加の129件となっている。自殺者は214人、内9名がいじめ問題を抱えていたと言われている。これらいじめを認知したきっかけは、アンケートからが51・4%と最多であった。
 認知件数は、自民、公明、民進など超党派議員立法で成立した「いじめ防止対策推進法」(第16条・いじめを早期発見するため~在籍する児童等に対する定期的調査、その他必要な措置を講ずる)などの影響によって、数的に増加したとの主張もある。
 しかし授業時数の増加、強められる競争(部活・学力等)の影響によって、実際に増加していると考えるのが妥当だろう。ちなみに、小学校の暴力行為認知件数は1万7137件で過去最高。暴力行為を行なった児童数は1万5154人で、前年度より4割増加している。ゆとりのない学園生活、教職員の多忙化が、子どもたちとの係わりを奪い、いじめを増加させている。

  三、現状では、いじめ増加は不可避

 文科省は、国際的な大競争時代に対応できる「たくましい日本人」の育成を目指し、創造力、技術力、統治能力など世界を相手に競争できる一握りのエリート育成をねらっている。そのために、子どもたちを幼いうちから振り分け、差別選別教育を推進、競争原理こそが基本原理の新自由主義教育を推し進めてきた。
 9月24日文科省は、4月実施の全国学力・学習状況調査の結果を公表。「都道府県別平均正答数で上位と下位の差が縮まっており、学習面ではほとんど差が見られなくなった」と評価した。しかし現実には、競争があおられる結果となった。
 学テは、07年度に小学6年生と中学3年生を対象に始まり、今回で10年目になる。文科省は、学テ批判をかわすために「競争目的ではない」と強調、学校別の成績公表を禁じてきた。しかし、一部自治体の動きに押されるように、14年度から実際は目論み通り各自治体による公表を解禁。地域間・学校間の競争が強まっている。
 その結果、3・4月の授業が事前対策となり、県教委等の指示で過去問使用の事前練習が繰り返されている。順位や得点を上げねばという思いがプレッシャーになり、教職員や子どもたちを追いつめている。
 まして、文科省推進の教育制度のもとでは、矛盾は一層激化する。子どもたちを競争のるつぼに投げ込み、互いに競わせて学級集団の機能を解体させ、英語の導入などで授業時数を増加させている。そして小中一貫校等も推進されている。差別選別の新自由主義教育は、子どもたちや教育労働者を耐え難いまでに追い込んでいる。この環境では、いじめの増加は避けられない。

  四、心を結び合う実践を

 有識者提言は、深刻ないじめを無視できずにまとめられた。しかし、いじめに対する根本的な取り組みにはなり得ない。
 いじめる子、いじめられる子、それぞれが様々な生育の経験・生活上の矛盾を抱えている。子どもの思いに寄り添い、教師が子どもから学び変わることで、子どもと深く結び合う実践が問われている。子どもどうしが「しんどいこと」を語り合い、心を結びつける教育、差別を許さず共に生き、成長する教育が求められている。
 教育労働者は、地域の労働運動・市民運動と連携し、共闘の力で、子どもの幸せを願う教育を追求しよう。そして、地域との連帯で職場闘争を再生・発展させ、闘う労働運動を再生しよう。新自由主義教育廃止に向けて。(教育労働者O)