TPP批准案の強行採決を弾劾する!
  日米戦争同盟の経済版

 TPP(環太平洋経済連携協定)の承認(批准)案と関連法案が、11月の第2週にも、強行採決で衆院を通過させられようとしている。安倍政権と与党自民・公明、野党の維新による暴挙である。
10月下旬から国会前では、「TPPを批准させない!全国共同行動」など各地から駆け付けた労働者・農民・市民による座り込み行動が連日続けられ、世論も7割が慎重審議を求めている中、安倍政権・与党は数で押し切ろうとしている。もはや参院での審議はどうでもよく、臨時国会の若干の延長で自然成立(衆院通過後30日)が可能なように、強引に事を進めているのである。
11月8日投票のアメリカ大統領選挙では、現オバマ政権のTPP推進に反対して、民主党クリントン、共和党トランプの両候補もTPP見直しを公約としており、年内の議会承認はほぼ無理とみられている。米系多国籍企業・金融投機資本がTPP推進の中心であるが、一般のアメリカ民衆は、TPPが自分たちの生活を良くするものとはみていないのである。
すべてのTPP調印国が米国の様子見をしている中、なぜ、日本政府だけが前のめりになって、真っ先に批准しようとしているのか。日本が批准しなければ、米国も批准せず再交渉論が高まる。米日の批准が停滞すれば、TPPは頓挫する。安倍政権の強硬路線は、レームダッグ・オバマ政権へのテコ入れであり、米国のTPP推進派への奉仕である。
また、クリミア併合問題で米NATO諸国とロシアが新冷戦状態にある中、安倍政権は、12月プーチン訪日を通じて、日ロ関係を抜本的に「改善」させんとしている。TPPで米政権に忠勤を尽くして、対ロシア関係とバランスを取る必要があるとの見方もある。
さて、安倍政権は、「日本は自由貿易で成長できた。TPPで巨大な自由貿易圏が生まれる」と主張している。しかしTPPの経済的本質は、自由貿易ではなく、他国籍企業・投資家のための管理貿易、ルールの制定である。
関税撤廃は、TPP協定の一部分にすぎず、非関税障壁の撤廃(金融・保険、食の安全、医療制度・薬価、知的所有権、公契約)が大部分であり、多国籍企業などに都合のよいように、参加国の規制緩和を進めることがTPPの本体である。この多国籍企業・投資家の利益保護のために、進出先の国を提訴する仕組み「ISDS条項」が盛り込まれている。
関税においても、国会決議の重要農産物5項目は守られなかった。日本の豚・牛肉生産は危機的となる。輸入米は増やされ、国産米価をさらに押し下げる。農業特産品の輸出などというのは一部であり、大部分の農業経営は持続できなくなる。
そして、TPPの政治的本質は、戦争法を得た日米同盟の経済版である。TPPは、台頭する中国を包囲するアメリカの覇権維持戦略の一環として構想され、東アジアを分断する拡大日米同盟となろうとしている。それは、政治的には戦争の危険を高め、経済・社会的には、巨大投機マネーと多国籍企業の利益を図り、農業などの地場産業の衰退、失業の増大、格差の拡大、自然環境との関係の破壊をもたらす。
 TPPに断固反対しよう。安倍政権を打倒し、TPPを破棄しよう。少なくとも、協定の全容も公表されないままの、拙速な批准などはありえない。(W)

  10・15TPPを批准させない1万人行動

TPP批准案の月内衆院通過が策動される中、10月15日、「TPPを批准させない!10・15SAT1万人行動」が東京で行なわれた。主催は、「TPPを批准させない!全国共同行動」(山田正彦元農水相らのTPP阻止国民会議、平和フォーラム、STOP・TPP!市民アクションを始め、全国270団体が賛同)。
 正午に都心・芝公園23号地で中央集会がひらかれ、全国から8000人(主催者発表)が参加、その後トラクターなどを連ねて銀座方面へデモ行進が行なわれた。
 中央集会では、全国共同行動呼びかけ人から山根香織さん(主婦連参与)が主催あいさつ、「私たちの命や食、暮らし、地域を脅かすだけでなく、参加各国の人権も主権も踏みにじる恐れの強いTPPと関連法案。今国会での強行を止めて、暮らしを守ろう!」と基調を述べた。
 国会野党からは、社民党・福島みずほ、日本共産党・小池晃、自由党(前生活)の山本太郎の各氏があいさつ、民進党の村岡敏英衆院議員からはメッセージが寄せられた。
 リレートークでは、北海道でアンチTPPを訴える若者グループ、日本協同組合学会会長の石田正昭龍谷大教授、アジア太平洋資料センターの内田聖子さん、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委の高田健さん等々が発言した。高田さんは、「安倍は総選挙で公約したTPP反対を反古にし、公約してない戦争法を強行した。安倍政権の暴走だ。戦争法廃止、TPP阻止で安倍を倒そう」と訴えた。
 最後に集会アピールが採択された。アピールは、「協定の内容が多くの国民に知らされず、さらにアメリカをはじめ参加各国の承認手続きも不透明さを増すなかで、いま、日本が批准を急ぐ理由はありません。」「情報開示も十分な審議もないまま、TPP協定の批准を今国会で強行することには絶対に反対です」と訴えている。
 なお、TPPを批准させない!全国共同行動は、衆院議員会館前で10月28日の午前10時から、批准阻止の国会前座り込み行動に入った。(東京W通信員)


証拠の万年筆はニセ物
  狭山事件重大局面で10・28市民集会

 「証拠の万年筆は偽物」、寺尾有罪判決を覆すこの有力な新証拠・下山鑑定の提出で、狭山事件は重大な局面に突入した。
 そしてこの局面で、寺尾判決からほぼ42年目の10月28日、「『証拠ねつ造は明らかだ!東京高裁は鑑定人尋問・再審開始を!』10・28狭山事件の再審を求める市民集会」が開催された。東京・日比谷野外音楽堂には、降りしきる冷たい雨をはねのけ、数千名の労働者市民、部落解放同盟員が結集した。主催は、狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会。

  寺尾判決、根底から崩壊

 1974年10月31日、東京高裁・寺尾正一裁判長は、脅迫状との筆跡の一致を有罪とする主軸としつつ、万年筆・鞄・腕時計の発見を根拠に自白は信用できるとして、無期懲役の判決を言い渡した。寺尾判決は、部落差別を利用した別件逮捕や代用監獄での取調べを正当化し、警察署の密室の取調べで作られた自白に頼って、強引に石川さんを犯人と決めつけた差別判決だ。
 今年8月22日、狭山弁護団は、東京高裁に下山鑑定を提出した。それは、第3次再審で決定的といえる重大な新証拠だ。
 下山鑑定は、発見万年筆のブルーブラックインクと、証拠開示されたインク瓶から判明した被害者の使用していたジェットブルーインクとの違いをもとに、科学警察研究所の荏原鑑定を実証的に精査・検証したものである。
 その結果、当時の荏原鑑定同様のペーパークロマトグラフィー検査をした場合、ジェットブルーインクの万年筆にブルーブラックを補充して検査すると、インク溜まりに微量に残ったジェットブルーの色班が現われることを実証実験で確認した。しかし、荏原鑑定の検証からは、発見万年筆にはジェットブルーは微量も混入せず、ブルーブラックのみであったことが判明した。これによって、自白通り石川さん宅から発見されたとして有罪判決の決め手となった証拠物の万年筆は、被害者所持の万年筆とは別物であることが科学的に実証された。石川さん宅で「発見」された万年筆は、誰かがねつ造した物だ。
 第3次再審請求から11年目、寺尾判決はこの下山鑑定、また取り調べ録音テープ、筆跡鑑定(逮捕当日の石川さん上申書の筆跡は、脅迫状筆跡と全く異なる)など、184点の新証拠によって根底から崩壊した。

  事実を広め再審開始へ

 さて10・28集会はまず、組坂繁之・部落解放同盟中央本部委員長が発言、「1963年5月1日に事件が起き、翌年死刑判決が出た。そして2審で無期懲役・寺尾判決が出た。現在仮釈放での見えない手錠をはずすために、万年筆のインクを調査した下山鑑定は絶対に重要だ。万年筆は偽物。強力な闘いを組んで必ず再審を開始させる」と宣言、闘う決意を示した。
 民進党の元法相・小川敏夫参院議員、社民党の福島みずほ参院議員などの政党挨拶に続いて、石川一雄・石川早智子さんが登壇。
 一男さんは、「狭山事件は最終段階に向かっている。万年筆の新証拠が出た。人は嘘をつくが、万年筆は嘘をつかない。今度こそ司法を動かす。石川を有罪にしようと司法は奔走している。しかし下山鑑定で、この判決を覆す」と発言し、
 「万年筆 闇を切り裂く鑑定で 科学の力で司法を咎める」と詠んだ。
 早智子さんは、「逮捕から53年、狭山の闘いが大きく動こうとしている。多くの新証拠が提出され、寺尾判決はすでに覆されている。それでも裁判は動かなかった。しかし皆さんの闘いで、50年以上も隠し持っていたインク瓶などがやっと出され、下山鑑定が提出された。今こそ勝利する、それは今!」と力強く訴えた。
 中山武敏主任弁護士は、「無期懲役の判決が出た直後に、石川さんに面会した。石川さんは、自分の無実は証拠が出てくれば明らかになる、証拠開示を求めてほしいと訴えた。このかんの証拠開示によって、取り調べ録音テープなどから石川さんが脅迫状を書いていないことが判明し、また万年筆が被害者の物でないことも下山鑑定が証明した。寺尾判決から42年、一度も事実調べがなされていない。国民に事実を知らせ、再審開始にむけて闘おう」と呼びかけた。
 連帯挨拶では、袴田事件の袴田巌さんの姉・秀子さんが、「逮捕から50年、巌は石川さんと同様冤罪事件でがんばっている。50年は本当に長かった。53年はもっと大変、石川さんと共にがんばる」とアピール。布川事件の桜井昌司さんは、「警察がデッチ上げることは分かりきっている。闘って冤罪を晴らす以外にない」、足利事件の菅家利和さんは、「私は25年間苦しんでいる。石川さんはもっと苦しんでいる、一日も早い再審を」と訴えた。
 集会アピールが発せられた。東京高裁・植村裁判長は、証拠開示を勧告し、鑑定人尋問などの事実調べを行なうこと。東京高検は、埼玉県警の証拠物一覧表など証拠物・捜査書類を開示すること。狭山事件・袴田事件の再審開始。取調べ全面可視化の実現。これらの闘争を呼びかけるアピールが、割れんばかりの拍手で確認された。
 鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会)が、まとめ発言。「私たちの役割は二つ。石川さん即時奪還、見えない手錠を外すこと、冤罪をなくす運動だ。もう一つは、差別をなくす闘争だ。狭山闘争を通して差別をなくしていく。一人ひとりが尊重される社会をつくる運動だ。デモで多くの人々に狭山差別事件を訴えよう!」と結んだ。
 集会参加者は、銀座方面へのデモ行進に出発した。情勢は決定的局面だ!地域・職場から狭山の闘いを強め、再審を実現しよう。(東京O通信員)