反戦実行委員会の沖縄・高江派遣団(9・7~10)報告
  工事遅らせる実力抵抗

 9月7日~10日、私は、反戦実(戦争法廃止・安倍たおせ!反戦実行委員会)の第7次派遣団の一員として、沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設阻止闘争に参加してきた。高江は初めてである。
 安倍政権は、参院選・沖縄選挙区でオール沖縄候補の伊波洋一さんが現職大臣に大勝した翌日7月11日未明に、高江の工事再開を強行、全国から機動隊を動員し沖縄の民意を踏みにじる態度を露わにした。沖縄の人々はこれに、工事阻止の闘いの強化で応えた。全国へ支援要請が発せられた。われわれも、遅ればせながらこれに応えたのだった。
 現地では、建設予定地に通じる表(県道側)と裏(村道側)のゲートから作業員・作業車両や防衛局職員を入れない、辺野古でのように作業を少しづつでも遅らせて建設計画を破綻に追い込む、という方針で闘われていた。集中行動日も水・土に設定され、効果をあげ出していた。
 第一日目の8日は、早朝テントに集合後、直ちに村道側で配置についた。G地区・H地区に通じるゲート前を超え、展望台下の急坂の途中に車四台をいつでも封鎖できるように配置し、下から上がってくる機動隊・作業車両などに備えた。そこからは、G地区・Hゲートを挟んだ反対側の仲間の阻止線(新川ダム入り口)は、2~3キロも離れている。またさらに、先の県道に面したゲートの側の状況はわからない。その日は、一時大雨にも見舞われる中で、蝶や鳥や蛇など自然を楽しんで終わった。
テントに帰っての集会では、山城博治さんからハブ対策の講義があった。帰りがけ、派遣団の仲間がヤンバルクイナを発見!残念ながら私は見逃す。
 第二日目は、午前中に県道側で「牛歩」(ノロノロ運転で資材等の搬入を遅らせる)に参加した後、前日と同じ地点の阻止線に合流した。雨もゆるく、重機を工事現場に運ぶヘリが飛ぶということもあったのだろう、その日は前日と打って変わって防衛局職員(基本的には所属を明かさない)や機動隊の車両が登場し、対応に大忙しだった。
 第三日目は、派遣団としては夕方までに那覇空港に着かねばならないが、土曜日で集中日だ。全体で300名位が集まっていると聞いた。その日我々は、数か所の配置の中での、県道に面したゲートの北側阻止線に合流することになっていた。県道上では、ゲートの南に位置するメインの阻止線に、180名位が多くの車両と共にごった返していた。我々は、その中を縫うように超え、更にゲート前を超えて、北側へかなり行く。そこには既に仲間40名・車両20台ほどが集結していた。
 地元の農家のトラックや旅行者の通行に支障がないようにしながら待機していると、作業員若干名が乗った車を護衛して、機動隊の大車列が現れた。最初は、県道を車両20台ほどで封鎖した阻止線への対処方法が決まっていなかった様子で、かれらは一旦引き返す。かなりの時間が経ってから(ミニレッカーを持ってこさせるのに時間を要したのだろう)の二度目は、機動隊がこちらの車両を一台づつ道路脇に排除していった。これに対して我々は、機動隊の車列が停止したままの隙をついて、一旦排除された車を百メートル位ゲート方向に移動させ、再び阻止線を張ってしまった。このため機動隊は士気喪失に陥り、再度引き返す。三度目は、こちらの車を一台づつ排除するたびに機動隊の車列を前進させる作戦に出てきた。
これで突破されたが、すでに正午近くになっていた。反戦実派遣団としては、その後機動隊の車列を追いつつゲート方面に向かったが渋滞で進まないため、反対方向へと抜けて帰路についた。
 
  北部訓練場内へ闘いはひろがる

 ツイッターなどを見ていると、闘い方は日々変化しているようであるが、工事を着実に遅らせることができているようである。我々のわずか三日間であるが、これに貢献できたように思う。
 その直後の9月13日には安倍政権は、陸自中央即応団に所属する大型輸送ヘリCH47二機を建設工事に投入した。政権が工事の遅延で焦りを募らせていることの現れであるが、法を無視しての自衛隊の投入は、異常である。琉球併合や沖縄戦の記憶を甦らせ、戦後の沖縄差別を開き直って見せたに等しい。
 こうした中で、司法も安倍政権を掩護する9・16高裁政治判決を演じ、辺野古の工事再開に向けて道を開いた。再び辺野古が焦点化してくる。辺野古新基地建設を要に、与那国、宮古などでの自衛隊基地建設の問題、普天間の改修も浮上。
 高江の闘いは、北部訓練場周辺(ゲート前・県道・村道)だけでなく、訓練場内のヘリパッド建設予定地での座り込みへと広がってきている。機動隊は9月28日、座り込む人々をロープで縛って排除するなど、米軍の黙認の下で法無視の弾圧をエスカレートさせた。沖縄は日本国家の全体重をかけた攻撃に立ち向かっている。どう連帯し闘うか、ヤマトの民衆運動も問われている。(M)


「学習指導指導要領」全面改訂すすめる文科省

  子どもの「生きる力」とは無縁

 文部科学省の諮問機関・中央教育審議会は8月1日、次期学習指導要領改訂のための「審議のまとめ案」を公表した。
 その案のポイントは、①小学5年から英語を教科化、外国語活動は3年に前倒し。②小学3~6年の授業時間数は、週一こま増。③高校は主要教科の科目を大幅に再編。地理歴史では、日本と世界の近現代史を中心に学ぶ「歴史総合」と、世界の文化・防災対策を扱う「地理総合」を新設、必修とする。④児童生徒が主体的・能動的に授業に参加する「アクティブ・ラーニング」を全教科で導入、である。
 英語での週一こま分の増加は、子どもに大幅な負担をもたらす。毎日ほぼ6時間の5・6年では、いったいどこに一こま分増やすのか。さらにゆとりのない生活が予測される。また、英語の導入は「本当に小学生に必要か」など、以前から論議がある。
 アクティブ・ラーニングとは、教師が話し、子どもはそれを聞く伝達型ではなく、体験・実験、学習、討論・ディベートなど、子ども自らが取り組む参加型の学習方法を言う。一見、良さそうに見える。が、時間を与え豊富な知識を得なければ、ただ形を追うばかりの誤まった学習さえ成立する。
 そのうえ今案は、資質・能力だけでなく、指導方法や評価方法までも規定している。これは従来の指導要領には、なかったことだ。中教審は、今求められている資質・能力とは、①何を知っているのか・何ができるか(知識・技能)、②知っていること・できることをどう使うか(思考力・表現力・判断力)、③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(態度)の3本柱から成ると主張する。
 しかし、どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るかは、それぞれが長い時間を掛けて決めることだ。各自の個性によって異なる。全ての教育活動で、これら三つの柱で実行、評価と簡単にはいかない。この安易さはどこからくるのか。
 中教審は、教えた内容がどう定着したかを重視し、指導要領に学習方法・評価まで入れ込んだ。そして、「よりよい人生を送る力」を「学びに向かう力・人間性」なる言葉に置き換えた。「人間性」の内容たるや道徳教育の規範と同じなのだ。つまり審議案は、道徳を含め教えたことをどう定着させるかに力点があり、「子どもの生き方、生きる力」とは無縁の薄っぺらな内容だ。
 指導要領の改訂は、2020年度小学、21年度中学、22年度高校で実施を目標に、改訂作業が進んでいる。今回公表の案は、8月19日に「まとめ」となり、来年1月頃までに「指導要領案」が出される予定である。

  グローバル競争の生き残り策

 この改訂の真のねらいは、国家・大企業が求める人材を育成するために、教育課程のみでなく、学校教育そのものをどう変えるかにある。現政権は、グローバルな競争に打ち勝ち、東アジアの覇権国家として日本を登場させんとしている。それに主体的に協力する市民の育成をめざし、従順で自己責任を引き受け、主張しない人間を小学1年から育成せんとする。
 OECD経済開発協力機構は、世界でのカリキュラムの標準化(PISAテスト=現学力テスト)と、学校教育への教育産業の進出を意図して、各国と連携している。
 文科省は、次期指導要領が、OECDとタイアップして世界をリードするとまで言い切っている。次期指導要領は、覇権国家実現のために仕掛けられているのだ。子どもの幸せとは無縁の代物だ。
 しかも次期指導要領には、長年先人が築いてきた教育内容・実践が欠如している。平和と民主主義をめざす教育、一人ひとりの違いを認め合い、教育労働者と子どもが共に成長する教育、人権を尊重し共生をめざす教育実践、これら脈々と流れてきた本質が欠如している。
 中教審は、社会の将来像について、「生産人口の減少、グローバル化、絶え間ない技術革新によって、今ある職業もなくなるかもしれない。新たな仕事、収入源を見つけなければならない時代がやってくる。次期指導要領は、この新時代に必要な資質・能力を育むことを目標とする。主体的に取り組む意欲、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーション能力が求められる」と描く。
 何と無味乾燥な認識か。資本主義が社会を成り立たせ得なくなった時代の、生き残り競争論である。一人ひとりを大切にし、未来を築く創造力に満ちた子どもを育てる教育ではない。
 教育を、教育労働者と市民の手に取り戻そう。教育労働者は、地域に出て、戦争法廃止・脱原発などの市民運動と連携し、闘いの陣形を再構築する必要がある。地域のたくさんの仲間と出会い、職場闘争を組織しよう。
 小さくても一歩、それが今求められている、できることから始めよう。(教育労働者O)