7・31東京都知事選、鳥越さん及ばず
  小池、自公批判票掠めとる
     7・10鹿児島県知事選では、脱原発知事が

 7月31日の東京都知事選挙は、野党4党および生活者ネットなどが推薦する統一候補・鳥越俊太郎さんが敗北し、政党推薦なしで戦った自民党員の小池百合子候補(前衆院議員、元安倍政権閣僚)が勝利する残念な結果となった。
 各候補の得票数は、小池291・3万票、自民・公明推薦の増田寛也179・3万票、鳥越134・6万票。投票率はかなり高めの59・7%。
 保守分裂となり、参院選「野党共闘」を引きついだ鳥越候補に期待がかかったが、結果はむしろ、自公批判票の分裂となった。
 小池候補は、自民推薦要請を取り下げて、非自民・非既成勢力であるかのようなイメージ作りに成功し、国政での保守反動政治家としての本質を隠蔽した。投票率が伸びた分、無党派票が多く小池に流れている。民進は支持票を奪われている。
7月参院選比例区の東京での各党得票率は、自公の計45・8%(自民34・4%、公明11・4%)、野党4党計40・0%(民進19・8%、共産14・2%、社民2・8%、生活3・2%)である。東京選挙区の野党当選者3名の合計得票数は、約230万票。
今回の都知事選は、「野党共闘」が形として成立していても、それだけでは無党派を動かせず、自公批判票をまとめることも覚束ないことを示した。
 
参院選と同日となった7・10鹿児島県知事選挙では、九電・川内原発の稼動停止を公約に入れた三反園(みたぞの)訓さんが、現職の伊藤祐一郎知事に大差をつけて当選した。
三反園氏は保守系であり、地元自民が伊藤の4選阻止で担いだ候補である。しかし参院鹿児島選挙区の野党一本化と並行しつつ、反原発派の平良行雄陣営(鹿児島全労連)との一本化が実現された。
三反園氏と平良氏との6・17合意書には、「伊藤知事の『川内原発の再稼働受け入れ』表明は、県民が多くの不安を抱えたままの状況で行なわれたもので、拙速で問題があった」、また、「『熊本地震の影響を考慮し、安全確認のために川内原発を停止し、再調査、再検証を行なう』ことを、九電に強く申し入れる」等の5項目が記された。
同日選で投票率も高くなり、反原発票、多選批判票によって三反園42・6万票、伊藤34・2万票の大差となった。選挙戦の過程で、「川内原発停止申入れ」が公約として入り、おもわぬ保守系脱原発知事の誕生となった。
公約は実行してもらわないといけない。三反園知事は7月28日の就任記者会見で、8月下旬以降に川内停止を申し入れると表明した。定期検査で川内1号機は10月に、2号機は12月に停止することになっている。その前に、知事権限で停止させるべきだ。(W)


7・10参院選  結果と展望

  来たる総選挙に野党・市民共闘を継続し、衆院「3分の2」を突き崩せ
   野党共闘だけでは勝てない

 7月参院選は、二つの特徴があった。当選者一人の選挙区の全てで、野党4党(民進、共産、社民、生活)の選挙協力が初めて行なわれた国政選挙であったこと、また、衆院に続き参院でも、与党自民・公明および野党おおさか維新など、改憲勢力が「3分の2」を占めるかどうかが注目されたことであった。
 結果は、野党選挙協力は一定の成果を上げたが、改憲勢力も「3分の2」余を獲得。改憲国民投票法は2010年に施行されており、国会は戦後初めて、制度的には改憲発議ができる状態となった。
 これによって、憲法改悪反対の運動と世論をこれまで以上に強大にし、「3分の2」国会を圧倒して、改憲発議が実際にはできない政治情勢をかちとることが問われることとなった。その闘いは議会制度上では、次の国政選挙すなわち、どんなに遅くとも2018年12月までには実施される衆院選(総選挙)において、衆院「3分の2」を崩すことが課題となる。これを念頭に入れつつ、今参院選結果を見てみよう。
 参院選(3年ごとに半分が改選される)での、各党の獲得議席と比例区相対得票率は次のとおり。自民56議席(6増で新勢力121議席)35・9%、公明14(5増で25議席)13・5%、おおさか維新7(5増で12議席)9・2%、民進32(9減で49議席)21・0%、共産6(3増で14議席)10・7%、社民1(1減で2議席)2・7%、生活1(1減で2議席)1・9%となった。
自民・公明、おおさか維新の計158に、非改選の「日本のこころ」3を加えて計161、その後の自民会派入り2を合わせると163議席となり、参院3分の2以上(162)を超えた。これ以外にも、無所属クラブの5が改憲容認派である。
 結局、自民は123議席となり、参院でも単独過半数となった。また無所属で闘った野党統一の当選者4名からは、民進に1名、社民・生活共同会派に1名が加わった。沖縄選出の伊波洋一さんは、非改選の糸数慶子さんと共に、新会派「沖縄の風」を結成した。
 今回の参院選と、このかんの総選挙(安倍の謀略により2回も行なわれたが)、前回参院選によって、民主党に非常に高い支持が寄せられた一時期(09年総選挙、07年および10年参院選)の国会への反映、これが一掃された。各党は振り出しに戻ったとも言える。
 民進党(前民主党)は今回敗北であるが、支持率がまだ高かった6年前の書き換えとしては悪くなく、惨敗であった前回からは当選者を2倍近く増やした。その比例得票率も回復しつつある(13年参院選13・4%、14年総選挙18・3%)。
共産、社民は、比例得票率を前回より若干増やしてはいるが、伸び悩みである。共産が14年総選挙で比例11・4%を取り、一時「自共対決」時代と唱えたが、その勢いは今回削がれた。
「1人区」の総括は、今後の総選挙小選挙区を野党・市民共闘で勝ちぬくうえで、きわめて重要である。
「1人区」の32選挙区の内、野党・市民統一候補が11選挙区で勝利した。前回で野党が勝ったのは2選挙区(岩手、沖縄)に過ぎなかったが、今回は岩手、青森、山形、宮城、福島、新潟、山梨、長野、三重、大分、沖縄で与党候補を打ち破った。
この各「1人区」では、野党共闘の実態や市民運動の支えの強弱、地方政治の経過など各選挙区で違いが大きいが、既成の与野党対決を超えて、「アベ政治」対「県民・市民」の対決構図に発展し、さらに投票率も上がったところでは、勝利ないし接戦となっている。
いわゆる共闘効果指数(4野党の合計比例得票数に対する候補者得票数の比率)は、28選挙区で百%を超え、下回ったのは4選挙区にすぎない。典型は、指数171%の山形・舟山康江の勝利、166%の愛媛・永江孝子の接戦、129%の新潟・森裕子の勝利などである。140%の沖縄・伊波さんも、「オール沖縄」の圧倒的強さを見せつけた。
民進公認の統一候補は15名いたが、内7名が勝利した。野党共闘でもっとも得をしたのは、民進であった。他方、唯一の共産公認統一候補であった香川では、指数85%に留まり惨敗。日共香川県委は、異様な政治協定(日共の路線の棚上げ)を民進県連と結んでいた。しかしその効果はなく、中道リベラル票は棄権あるいは与党候補に回った。
合区となった徳島・高知、鳥取・島根では、どちらも効果指数は出ているものの、合区への不満から投票率が大きく下がってしまった。徳島出身の大西聡は、土佐の反中央権力票を掘り起こせなかった。鳥取出身の福嶋浩彦は、山陰の保守地盤に勝てなかったが、鳥取の無党派層では優勢であった。
比例得票率の全国平均は、自公の計で49・4%、野党4党計で36・3%である。衆院小選挙区で4野党共闘候補が多く勝つには、「プラスα」が必要であることが明白である。野党共闘それ自体で自公に勝とうとすることは幻想的であるが、野党共闘を切っ掛けにして、有権者大衆が大きく動き出すと現実的となる。単純に小選挙区に当てはめた場合、共闘効果指数が140%に達すると、得票率は50%を超えて必勝である。
地域差としては今回、野党は東高西低、複数区では東京・北海道で健闘した。来る総選挙では、小選挙区での4野党選挙協力の継続を前提として、市民運動的な盛り上がり、投票率の向上が問われる。市民連合の山口二郎氏は、「投票率が60%を超えれば、私たちが勝てる!」と言っていた。今回、投票率は戦後四番目に低い54・7%、それで自公に負けたといえる。
安倍自民党の勝利をどうみるか。参院選の結果は一見、自民の大勝利であるが、前回からは当選者を9名も減らしている。目立っているのは、得票数2千万を超えた比例での自民の堅調ぶりである。
自公は今回も憲法争点を隠し、アベノミクスを唱え続けた。それで国政選挙4連勝である。その国民生活への恩恵が何ら感じられなくても、野党に説得力のある経済対案がある訳でもない(野党の多くは成長主義というアベノミクスと同じ土俵にある)ので、政権党に消極的支持を与える人が少なくない。08年リーマンショック時のような大破綻が来ない限り、なかなか与党支持は崩れない。中国・朝鮮対抗のナショナリズムも、援軍となっている。
しかし、自民党に投票する人というのは大体決まっていて、さほど大きな変化はない。比例の得票数でこれを見ると、小泉政権発足後の01年参院選が2103万票で、これが最高。「政権交代」・自民惨敗の09年総選挙でも、1881万票は取っている。安倍政権を復活させた12年総選挙では、1662万票と案外少ない(小選挙区制によって安倍は復活できたのである)。前回参院選は1846万、14年総選挙は1766万、今回参院選2011万票である。
ここ十余年、選挙結果を大きく変動させている最大の要因は、投票率が上がって、普段選挙に行かない人がどこに入れたかである。次の要因は、自公以外の、諸野党の間での変動である。09年総選挙では、投票率69・3%、民主党は比例で2984万票(得票率42・4%)という大変動が生じた。
自公を崩すというよりも、普段動かざる山をどう動かすか、これで選挙は決まるのである。(A)


7・19戦争法廃止「19の日」国会前行動
  今秋の闘争態勢を確認

 7月19日、参院選後初めての「19の日」行動が衆参議員会館前で行なわれ、4500名(主催者発表)の労働者市民が結集した。主催は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委」。
 7月10日投開票の参院選では、自民・公明・おおさか維新が77議席を獲得、非改選の「日本のこころ」3名と改憲派無所属を加えて、改憲派が戦後初の両院「3分の2」を超える議席を占めた。
 全1人区で野党共闘が実現し、健闘はしたが、明文改憲に向けた攻撃が激化するのは必至の情勢となった。7・19の国会前行動は、改憲策動粉砕の決意を示す闘いとして、また野党・市民共闘で7・31東京都知事選の勝利をかちとる闘いとして取り組まれた。
 最初に、民進党・枝野幸男幹事長がアピール、「安倍政権の暴走を止めるの一点で力を合わせ、全国各地で一定の成果をあげた。3分の2を占められたが、一方では野党共闘を実現し、民主主義をかちとる一歩を市民の力で実現することができた。その歩みを進めていきたい」と発言し、野党共闘継続の姿勢を示した。
 また日本共産党・小池晃書記局長も、「安倍政権に痛打を与えるのは、都知事選だ。憲法を守るために都知事選を、野党と市民の共闘で勝ち抜こう」と呼びかけ、野党共闘の継続を訴えた。
 上空を暗雲がおおい、雨が降りしきる中、都知事選での野党統一候補である鳥越俊太郎さんが到着した。鳥越候補は、「国会に暗雲が立ち込めている。それを我々の力で打ち払おう。東京から日本を変える。住んでよし・働いてよし・環境によし、の三つの『よし』を掲げて選挙に取り組んでいる。最賃などを闘いながら格差をなくし、平和・『改憲』反対・脱原発を掲げて闘う」と力強くアピールした。
 鳥越さんの訴えで熱気が高まる中、高田健さん(解釈で憲法9条を壊すな!実行委)が主催者挨拶。「参院選では、市民連合と野党が結束して、安倍政権を寒からしめた。3分の2を取らせない闘いだったが、取られても次の闘いの橋頭堡を作り上げた。それを引きついだのが都知事選だ。鳥越を押し立てて、安倍の暴走に立ち塞がっていく」と決意を表明した。
 続いて、大仲尊さん(沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)が発言、「参院沖縄選挙区では、伊波洋一さんが、島尻安伊子沖縄・北方大臣に10万6千票の大差をつけて勝利した。しかし参院選直後の7月11日早朝5時、安倍政権・沖縄防衛局は、警察機動隊で高江のゲート前を封鎖し、ヘリパッド建設に向けた資材搬入を強行した。闘いは続いている。首都圏などから500~1000人の機動隊を動員し、沖縄への大弾圧を行なっている。安倍政権が沖縄でやろうとしているのは、明確に示された民意を無視し、権力に異を唱える者を徹底的に弾圧することのみだ。皆さん、ぜひヤンバル高江に行き、また一方で、多くの人々に沖縄の現状を伝えてほしい」と訴えた。(その後22日に沖縄防衛局は、人々の車両バリケード・座り込みを機動隊の暴力で排除し、「工事再開」を表明した。)
 国会前行動の最後は、主催者から行動提起。「改憲の準備が秋の臨時国会で始まり、また今秋、南スーダンでの駆け付け警護が強行されようとしている。これを許さず臨時国会の開会日に、総がかり行動で闘う。また8・19国会前、そして9・19は屋内集会を検討。」「鳥越勝利のために、第3木曜7・21は新橋SL広場、7・26新宿で鳥越支援の行動を行なう」と提起し確認された。臨時国会を圧倒する秋の闘争態勢が整えられた。
 野党共闘は、反安保の棚上げなど日共の右傾化を伴いつつ、都知事選に継続し、今後の総選挙にも続いていく見込みである。この保守リベラル的・中道左派的な「第2極」勢力の形成は、他方では、労働者民衆の根本的利益を代表する「第3極」政治勢力の必要性を押し出す。労働者民衆自身の闘いが前進しなければ、野党共闘は動揺的となる。
今こそ、民衆の「第3極」の旗を掲げて前進しよう。(東京O通信員)