2・19「野党5党合意」は、2015年安保闘争を受け継ぐか
  労働者民衆自身の政治勢力を


 今年7月の参議院選挙において、与党自民・公明および改憲野党の「おおさか維新」を敗北させること、それによって戦争法廃止に目途を付けるとともに、憲法改悪案の発議を阻止すること、これが当面の大きな課題となっている。
 昨年の戦争法(安保法制法)の強行成立以降、労働者・市民は、市民主導による参院選統一候補を求める運動を各地で起こし、「野党は共闘」と掲げて、それを求めてきた。国会野党の選挙協力は遅々として進まなかったが、この有権者の圧力を受け、ようやく2月19日、党首会談による国政での「野党5党合意」が行なわれた。これによって、ほとんどの参院選挙1人区で、野党候補を一本化してたたかえる可能性が出てきた。
 また戦争法廃止法案が、野党による「5党合意」と同日、その5党共同で国会に提出された。この現局面における、我々労働者人民の自立勢力、左翼勢力に問われる課題を検討してみよう。
 2・19「野党5党合意」(民主党・岡田代表、維新の党・松野代表、日本共産党・志位委員長、社民党・吉田党首、生活の党・小沢代表)は、次のとおり。①安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。②安倍政権の打倒を目指す。③国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。④国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行なう、の4項目である。

  参院候補一本化へ転換点

 この「5党合意」は、当面の参院選については「国政選挙の協力」と一般的に合意するのみであり、「オール沖縄」で統一候補が確定している沖縄選挙区の以外の31の1人区において、「統一候補を立てる」などの具体的な合意にはなっていない。
 しかし、各1人区で、各野党地方組織や地域大衆運動による統一候補の合意を、促進することとなることは疑いない。複数区においても、候補者調整の大義名分となる。大衆運動が弱い地域では、市民主導ではなく、政党主導による合意が前面化することともなるだろう。
 参院選前哨戦となる4月24日投票の衆院北海道5区補選では、民主・社民・維新が推す池田真紀氏について、日共道委員会も2月19日、民主北海道と協定を結び支持することとなった。同日の京都3区補選では、自民は不戦敗に追いやられる。
参院1人区の熊本選挙区では、12月20日に市民グループ「9条壊すな!くまもとネット」と野党5党(民主、維新、共産、社民、新社会)とによって、無所属・阿倍広美氏の擁立が合意された。これは、市民主導で統一候補を実現した全国初のケースとなった。
鳥取・島根合区では、すでに民主、社民によって無所属・福嶋浩彦氏(前千葉県我孫子市長、米子出身)が推されている。福嶋氏への共産の支持が問われている。他方、長崎選挙区では、旧民社・同盟系の地元民主党が西岡秀子氏(保守系・西岡武夫の娘)を公認候補とし、他方共産・社民・生活が2月24日に野党一本化で合意した。民主・西岡氏が、戦争法廃止を明確にすることが問われている。
日共はこれまで、「戦争法廃止の国民連合政権」での合意を、選挙協力の前提としてきた。しかし、これを転じ、「政権の問題は、横に置いて選挙協力の協議に入り、今後の協議のなかでわが党の主張をしていきたい」(志位)として、「5党合意」に参加した。志位委員長は、「5党合意」について、「日本共産党の歴史のなかでも、国政選挙で、戦争法廃止と立憲主義の回復という国政の根幹にかかわる課題を共通の目標として、全国的な規模での選挙協力に踏み込む、その合意が得られたということは、文字通り初めてのことであります」として自画自賛した(2月22日の党都道府県委員長・参院選候補者会議)。
参院1人区の野党一本化では、民主や社民が推す候補に、共産が支持できるかどうか、という構図が多い(謀略的な衆参同日選もありうるが、衆院小選挙区でも同様である)。日共にとって、「野党は共闘」の壊し役をやるよりも、その促進者の役割を押し出したほうが、全国比例票の獲得でも有利なことは明らかである。
このかんの過程で、日本共産党の非「革命政党」化は質的に深化した。日共は半世紀前から議会主義革命路線を明確にしてきたが、今回の「野党合意」に到る過程で、日米安保・独占資本の支配・天皇制を擁護する諸党とも国政協力し、そうしたブルジョア政権の与党になりうる姿勢を示したのである。
しかし現局面では、日共の体制内化を左から非難することに、さしたる意味がある訳ではない。日共じしんが促進者となった野党結集に対する、実践的態度のほうが重要である。
2015年安保闘争によって、与党「第一極」勢力に対して、日共と社民を巻き込んだ「第二極」勢力が、密集して対峙する情勢が生まれた。その「第二極」の密集は不確かなものであったが、戦争法廃止を求める大衆運動の持続によって崩壊をまぬがれ、こんにち「野党5党合意」に到った。 我々左翼勢力にとって、「第二極」の密集、すなわち今回の野党合意は、二つの側面をもつ。
「一つはそれが、安倍クーデター政権を打倒し、戦争法廃止・立憲主義回復を達成する上で、前進的な側面を持っていることである。われわれは、この側面については歓迎し、促進的でなければならない。

  問われる「第三極」形成

もう一つはそれが、労働者民衆の闘いを抑制し、労働者民衆自身の政治勢力・「第三極」の形成を妨げる側面をもっていることである。われわれは、この側面については歓迎できない。そもそも労働者民衆の闘いが弱い場合には、『第一極』に対する『第二極』の密集は崩れる。
したがってわれわれは、まずもって労働者民衆の大衆闘争の発展へ、このかんの安保闘争の限界を超える意識性をもって、主要な力を注いでいかねばならない。」(労働者共産党・第6期2中総決議・15年11月)
 安保国会闘争の9月終盤では、実力的大衆闘争のさらなる発展によって国会審議を中止させ、会期末あるいは解散によって、戦争法廃案をかちとることが問われていた。しかし共同行動の少なからぬ部分は、国会前大衆闘争を秩序あるカンパニアに押し止め、「自公は落選」、「野党は共闘」を掲げるなどして、参院選挙へ流し込む動きを一気に強めた。この日和見主義の流れを先導した日共は19日、戦争法成立を見越して事前に用意していたところの、「国民連合政権」提案を発表したのであった。
 選挙で決着、これが全てであるならば、主権者人民は議会制民主主義制度の奴隷となるほかはない。闘いは、我々左翼勢力、自立した労働者民衆勢力の弱さによって、議会主義的に収束させれられたのであった。しかし現在、これを根に持って前を見ない態度も建設的でない。労働者民衆が主導して国会野党を共闘させ、選挙闘争にも断然勝利しなければならないのである。
 しかし、「野党5党合意」は、政策としては戦争法廃止、「7・1閣議決定」撤回、安倍政権打倒、これのみの合意であり、安倍クーデター政治を打倒した後は、まったく白紙という合意である。閣議決定の撤回は、政権交代なくしてできないが、政権合意に進もうとすれば分岐は避けられないものでもある。
 この野党合意の前途は未知数である。それが2015年安保闘争を継承・発展するものになるのか、簒奪・破壊するものになるのか、これはひとえに国会野党を規制しつつ前進すべき、我々労働者人民の闘いの発展に掛かっている。
 民主・維新は9月18日、新法の領域警備法案と、戦争法の中の派兵恒久法および改定PKO法の改正案を共同提出した。これらは、海外での集団的自衛権行使に反対はしても、自衛隊の活動拡大や米軍支援は積極的にやるというものである。とくに領域警備法案は、自衛艦の出動を、安倍政権よりももっと容易にするものである。民主、維新の共同法案は、世界中で米軍とともに血を流すことはやりすぎだが、武力拡大による安全保障は否定していませんよ、とアピールしているのである。
 また野党5党は、朝鮮による1月の核実験と2月のロケット発射に対する、公平性を欠いた国会非難決議を自公とともに一致して行なった。朝鮮半島の非核化には、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に変えることが、まずもって必要である。しかし、この正論は、社民党が弱々しく述べている以外、政府・与党はもちろん諸野党もまったく無視している。
3月から4月にかけて強行されんとしている米韓合同軍事演習は、例年にも増して非常に危険である。戦争法の発動が、朝鮮半島での米軍との共同作戦として開始されるような事態は、絶対に阻止しなければならない。

  伊勢志摩サミット反対へ

 野党5党は、5月26~27日の伊勢志摩サミットにも、まったく反対していない。サミットの中味の一つが、アメリカを始めとする主要国が、日本の安保法制整備を「積極的平和主義」として支持してみせる国際イベントとなることは明らかである。集団的自衛権を行使する帝国主義クラブの新しいメンバーとして、日本が確認されようとしているのである。
 伊勢志摩サミットに反対できないならば、2015年安保闘争とは何だったのかが問われることとなる。世界の人民は、こう見るだろう。日本の民衆は、かれらの議会前を埋め尽くして抗議していたが、それは国内の城内平和を維持したかっただけで、帝国主義の国際的支配は容認しているのか、と。
戦争法廃止!ならば、伊勢志摩サミット反対! これが当然である。(了)