福島原発事故から5年
3・2被害者を切り捨てるな!全国集会
  
帰還強要やめ支援継続を

 2011年3・11の東日本大震災・福島原発事故の発生から、5年間が経とうとする3月2日、東京・日比谷野外音楽堂において、「福島原発事故から5年 被害者を切り捨てるな!全国集会」およびデモ行進が行なわれた。主催は、原発事故被害者団体連絡会「ひだんれん」(現在21団体)で、福島からの参加をはじめ約1千人が参加した。
 野音集会に先立ち午前中には、「ひだんれん」による対政府交渉が行なわれた。「3・11」後の民主党政権時代に、「子ども・被災者支援法」が被災者・国民の要求によって制定されたが、安倍政権が昨年決定した施策方針は、その法を骨抜きにするものでしかなかった。これらについての交渉であったが、政府の態度に改善はみられなかった。
 午後の集会では、主催者挨拶が、「ひだんれん」共同代表の長谷川さん(飯舘村)から行なわれ、続いて「ひだんれん統一要求」が、福島原発かながわ訴訟原告団の村田さんから読み上げられた。
 また、共同代表の武藤類子さん(福島原発告訴団)は、2月29日に行なわれた東電元会長らへの強制起訴を報告し、この刑事裁判への注目を訴えた。
 集会宣言が採択された後、都心デモ行進が、東電本社前での抗議を含めて行なわれた。
「ひだんれん」統一要求は、国と東京電力に対する『基本要求』として、「責任の明確化と謝罪」、「賠償」、「保障」の諸要求をまとめ、「謝れ!」「償え!」「保障せよ!」と迫るものである。
 また、集会宣言は、「加害者の立場にある日本政府は、原子力発電に依拠する政策を再び推進し、再稼働と輸出を進めながら、2017年3月末を目途に被災地の避難指示を解除し、東京電力は賠償を打ち切り、福島県は避難者への住宅無償提供を打ち切るとしています。これらは福島原発事故による原子力災害に蓋をして無かったものとし、被害者を見捨てる『棄民政策』です」と訴えている。避難指示解除と支援打ち切りはセットで、強制帰還策となる。
このため、「ひだんれん」は国と福島県に対し、以下の『緊急要求』を掲げている。

  ひだんれん緊急要求

日本政府と福島県の政策提示によって生じている当面の問題について、以下の点を要求する。
1、 住宅
①福島県が2015年6月15日に発表した「避難指示区域外避難者に対する住宅無償提供2017年3月打ち切り」の方針を撤回し、被害者への完全賠償が完了するか、または新たな法的保障措置が発効するまで従来通り無償提供を継続すること。②仮設住宅からみなし仮設住宅への転居、生活条件の変化に応じた転居など、住み替えを柔軟に認めること。③放射能汚染地域からの新たな避難者への無償提供を再開すること。
2、 避難指示・賠償
 ①政府が2015年6月12日に閣議決定した「福島復興加速化指針・改訂版」で示した、居住制限区域と避難指示解除準備区域の「2017年3月までの避難指示解除及び1年後の賠償打ち切り」の方針を撤回すること。②年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを下回ったことが科学的に実証され、原発サイトにおける事故再発の危険性が完全に除去されるまでは現行の避難指示を維持し、帰還を強要しないこと。
3、 子ども・被災者支援法
 ①政府が2015年8月25日に閣議決定した「子ども・被災者支援法・基本方針改定」を撤回すること。②「支援法」に定める避難・帰還・居住の選択の自由を認め、「被ばくを避けて生きる権利」を保障する施策を早急に確立すること。
(東京A通信員)


東電元幹部ら2・29強制起訴
  責任追及し全原発廃炉へ

   盤石5人体制で責任追及

 2月29日、東京電力福島第一原発事故について、検察官役の指定弁護士が、勝俣恒久東電元会長、武藤栄・武黒一郎元副社長ら3名を、在宅のまま業務上過失致死傷罪で強制起訴した。
 昨年7月17日の東京第5検察審査会(検審)が決断した「起訴議決」を受け、業務上過失致死傷罪の公訴時効を迎える3月11日を前に、強制起訴が実行されたのだ。
 福島原発告訴団と弁護団は、刑事責任を追及する検察官役の指定弁護士に、強制起訴事件最多の5人を選任、必勝体制で臨んでいる。石田省三郎・神山啓史両弁護士は、冤罪の東電女性社員殺害事件で再審無罪を実現。山内久光弁護士は、第5検審で11人の審査員へのアドバイザー役をつとめる等、経験豊かなメンバーが選任された。さらに昨年9月には、渋村晴子・久保内浩嗣弁護士を加え、盤石の5人体制が作りあげられている。
 法廷闘争は、5人体制のもと、公判前整理手続きで争点整理や証拠調べの方針を決定、集中審理によって、事故の責任を追及することになる。強制起訴で、東電や地検が隠し持つ東電内部資料や政府事故調の調書を見ることが可能になり、過失の立証におおいに役立つものと考えられる。

  法廷闘争でも勝利を

 起訴状は、「海抜10mを超える津波が襲来し、重大事故を予測できたのに、原発の運転停止を含めた津波対策をすべき注意義務を怠り、重大事故を引き起こし、44人を死なせ、13人にけがを負わせた」とされる。
 東電は2008年3月、シュミレーションの結果、福島第一原発に高さ15・7mの津波が襲う可能性があると知り、東電土木調査グループは6月、武藤栄原子力・立地本部長(当時)らに説明している。しかし7月、武藤立地本部長は、同土木調査グループに、資金・人事とも電力業界に偏った学術団体・土木学会の手法(数値を低く見積もる)で、津波の高さを想定するよう言い渡した。
 つまり、一度やると決めた方針を転換し、経済的理由などで対策を先送りしてサボタージュしたのだ。従って「何ら法的に難しい点はなく」、明らかに業務上過失事件である。ところが、東電、保安院と「原子力ムラ」に取り込まれた検察庁は、執拗に事実を隠蔽し、不起訴処分を連発してきた。「津波の予測は不可能」として。
 2012年6月、福島告訴団は告訴・告発を開始。13年9月東京地検は、勝俣元会長や政府関係者ら42人全員を不起訴処分とした。それに対し告訴団は、同10月検審に審査申し立てを実施、14年7月経営陣3名に起訴相当を勝ち取っている。しかし東京地検は、再捜査を開始し15年1月、不誠実にも再び不起訴処分を下した。「原子力ムラ」とつるんだ司法の壁は厚い。しかし検審は15年7月、再議決を行ない強制起訴が確定した。
 強制起訴は今回で9件目、しかし有罪は2件のみである。法廷闘争に勝利せねばならない。そして、野口哲男保安院安全審査課長ら5名の責任を問う、津波第2次告訴にも勝つ必要がある。全原発廃炉のために。

  大衆闘争こそ主流

 原子力規制委員会は、40年超の関西電力高浜原発1・2号機(福井県)について、原子炉建屋の放射線対策などを進めれば、新規制基準に適合するとの審査書案を了承し、実質60年廃炉の可能性に言及した。しかし圧力容器内側は、中性子の照射により40年で脆化し、壊れやすくなる。また新しい部品の継ぎ目からの問題が生じ、再び大事故を引き起こす可能性も高い。
 安倍政権が昨春示した2030年での電源構成案は、総発電量に占める原子力発電の割合を20~22%と見込む。40年廃炉では達成できない数字だ。
 関西電力は、この安倍政権・規制委員会に支援され、2月26日高浜原発4号機の再稼働を強行した。高浜3号機を1月29日に再稼働させたばかりであるが、それに続く暴挙である。高浜町現地では2月20日に、大阪市の関電本店前では2月25日に、再び阻止行動が闘われた。4号機の再稼働スイッチは26日に入れられたが、発送電を開始しようとした29日に異常が発生、原子炉が緊急停止するというデタラメな再稼働強行であった。
 また安倍政権は、未だ約11万人の被災者が避難生活を強いられる中、小児甲状腺がんが福島県で166名(疑いを含む、16年2月15日現在)などフクシマの現状を無視し、原発の新増設さえ画策している。
 原発事故の刑事責任を問う闘いは、再稼働阻止・全原発廃炉の実現に重大な意味を持つ、告訴団を先頭に断固たたかい、脱原発の様々な闘いをも発展せよう。
大衆闘争こそ時代の主流になった。3・26代々木公園に総結集し、安倍の暴走を止めよう!(東京O通信員)