〔沖縄からの通信〕

 まっとうな県批判は必要
    「オール沖縄」強化し、違法な辺野古新基地建設を阻止しよう!


 師走になると、あれはいい、これはダメと愚痴りたくなる。

 「一ヵ月停止」

 今年最大の印象は、「一ヵ月停止」である。8月4日、日本政府の菅官房長官が発表した、8月10日から9月9日までの辺野古工事停止および沖縄県との集中協議、あれである。
 翌朝の沖縄紙は、横全・白抜き大見出しの1面トップで報じ、県民の度肝を抜いた。沖縄では、一刻も早く、埋め立て「承認取り消し」を知事が宣言してくれ、という雰囲気が地に満ちている時であった。
 紙面をいくら読んでも、納得がいかない。「取り消し」は、県を通じ、知事を通じて宣言されるのは自明であるが、県や知事の私物ではない。これは「公約」であり、知事が公約を県民に提案したのではなく、県民の民意を公約にするから知事にさせてほしいということで、生まれた翁長知事なのである。知事の最重要な遵守命題なのである。たとえ一ヵ月と言えども、日本政府と取り引きをして、取り消し処分を出さないというのはやっていけないことであった。
 とはいえ、翁長知事による辺野古NO!の発信力は優れている。県民の琴線に響いてくる。だから圧倒的な信任を得ている。
 それで傾向として、翁長さんには県民はだんだんモノが言えなくなり、翁長批判はタブー化してくる。とくに県政与党には、知事に物言いすれば、あるのは損だけだという気がある。他方、超党派的運動の必要を感じてこなかったヤマト左翼たちが、翁長さんついて、「安保条約も支持している」など多くの項目を並べて批判したりもする。沖縄人は、こういう物言いには怒りさえ抱くが、結局、今の出来たての「オール沖縄」では、言っていいものと言ってはいけないものが、まだ判然としていないのである。
 こういう雰囲気の中で、「一ヵ月停止」が突然出てきた。誰もがビックリしたが、誰もケチをつけない。苦し紛れの好意的「評価」説さえ出てきた。この「一ヵ月停止」は、今でも議論にのぼらない。
 
 「岩礁破砕許可」

 翁長県政評価での、もう一つの重要点は、「岩礁破砕許可取り消し」の問題である。
 11月27日の琉球新報は、「破砕許可取り消しを、ヘリ基地反対協が県に要請」と報じている。まっとうな県批判が出てきたことが重要なのではないか。
 「岩礁破砕許可」は、「埋め立て承認」をした仲井真が翁長に14年11月知事選で敗れた後、沖縄防衛局のたっての頼みに応じて退任直前、食い逃げ同様にやってのけた「許可」である。
 海上阻止行動のカヌー隊にとっては、真っ先にやってもらいたい知事権限行使にちがいない。「埋め立て承認取り消し」が大で、「岩礁破砕許可取り消し」は小さな問題という認識は誤まっている。
 「埋め立て承認取り消し」のほうは、国が不当にも知事を訴えた代執行裁判(福岡高裁那覇支部)の、12月2日の第1回口頭弁論として、法廷での論争が始まった。知事は堂々の冒頭意見陳述を行ない、包括的な陳述書を提出した。しかし法廷論争は、県・県民と国とが全面対決に入ったというシンボル的な入り口であって、国との闘いの本質ではない。宣伝戦としては重要ではあるが、法廷論争は裁判所が結論を下す。先が見えているともいえる。
 すでに少なからぬ人々が、この代執行裁判の闘いに重きがおかれることに、警鐘を鳴らしている。
 法廷論争が続くなかでも、不当に続行されている工事そのものを、重大視しなければならない。このかん工事は、おもに海上・海中で行なわれている。調査ボーリングもその後も、「岩礁破砕許可」無くしてはできない。仲井真が食い逃げした訳はここにある。
 防衛局は現在の汚濁防止膜工事で、許可規定外の巨大ブロックを許可区域外にも投入し続けている。県は、「埋め立て承認」自体に「瑕疵あり」の立場に立つのだから、知事権限を行使して無条件・即刻(県が調査してからではなく)、これを止めさせることができる。
 今春以降、サンゴ破壊を自然保護グループが訴え、県は調査を行なおうとした。米軍と日本政府は認めなかった。また県は3月に、調査工事一時停止を行政指導で命じた(防衛局と国は、ペテン的不服審査請求と効力停止で対応)が、「岩礁破砕許可」取り消しの行政処分には踏み込まなかった。
 サンゴの損傷が、自然修復した数ヵ月後になって、県の調査が許された。そう、あの「一ヵ月停止」の合意事項の一つとして、「県による岩礁破砕立ち入り調査の実施」がある。サンゴの傷はすでに修復している。八月の県による調査は、これを確認させられているのであって、調査ではない。「調査させられた」のである。この項目は、県の要求であるかのように装っているが、これは国の要求なのである。これによって、傷が無いことを理由に、国は県を(あるいは県自らが)、「岩礁破砕許可取り消し」の知事権限行使は「無い」に導いてしまった。
 裁判所にゲタをあずける知事権限行使ではなく、工事阻止を非暴力で闘っている人々のために、工事に具体的に対処して知事権限を行使するのが、最重要課題である。

 県の官僚問題

 知事権限の行使の数々の具体的案件について、翁長知事が全面的に把握できるものではない。各部局の県官僚の関与が介在する。
かって、鳩山首相は自分の部下、官僚(おもに防衛、外務)に打倒された。沖縄の場合も、官僚問題を注視すべきである。
 沖縄県庁は20年間、辺野古移設派が占拠していた。仲井真の影響力も残っていよう。仲井真の退任後、その片腕(又吉進知事公室長)が異例の官邸入りをしている。
 第3者委員会が7月に「瑕疵あり」を出すまで、翁長知事就任から半年、「一ヵ月停止」を含んで10月の「承認取り消し」までには、10ヵ月もかかっている。工事が進んでいる現状にてらして、あまりにもモタモタしている。
 「承認取り消し」は、公約中の公約であるから、第3者委とは関係なく、直ちに出されるべきであった。10ヵ月も延ばすことじたい利敵行為である。
 「一ヵ月停止」は、第一に、この遅延をひどくしただけである。第二に、安保法制反対での国会包囲、国民的決起の最中に、「取り消し」を出すという絶好のタイミングを逃している。そして第三に、「岩礁破砕許可取り消し」を雲散霧消させてしまっている。県と県民が、「一ヵ月停止」で得たものは何一つなかった。
 県は、政治戦、情報戦で菅にやられている。国が話し合いをと来れば、県もムゲに断れない。こうなると、国は圧倒的に使えるツールがある。
そのツールの一つ。「一ヵ月停止」の前段の7月に、USJが、国営海洋博公園を含んだヤンバル全域でのテーマパーク建設に乗り出した、県にインフラ支援などを求めた、と報道された。海洋博公園を使うのなら政府の了解を得ているようでもあり、マジか餌か分らない夢のような話が世に舞った。翁長知事は、「沖縄観光のブランドにつながる」、「誘致に取り組みたい」と述べた。この時期から安慶田副知事と菅との会談が繰り返され、「一ヵ月停止」に到っている。県はフンワリとした雲の上に乗せられ、足が地に着かない状態だったのではないか。あれから4ヵ月、今USJのことは世の中から忘れられている。
 しかし、菅が手練手管の名手であっても、沖縄人を差別し、だまし続けることは不可能である。
 10月の安倍第3次改造内閣での、島尻安伊子の閣僚入り(沖縄・北方相)は、沖縄にとって絶好の標的を、政府自ら作っていただいたようなものだ。参院選は一対一になるから、沖縄対日本政府という構造になる。オール沖縄、島ぐるみを言うなら、それがこの構図で始まった糸数参院選を覚えていよう。
 島尻に対する伊波洋一、そっくりそのままの構図である。島尻が閣内にあるので、より沖縄対日本政府の構図が象徴的となり、より倒しがいがある。
 「島ぐるみ」と言われるものは、沖縄対ヤマトという構図が、辺野古という内容を得て、鳩山政権という「政権交代」、その「県外移設」などと重なりながら発展してきたもので、翁長知事選で具体化したものである。建白書実現の「島ぐるみ会議」も個人結集で創られ、各地域に波及した。とはいえ、「島ぐるみ」は、選挙に勝つために自然発生的に生まれたものである。組織的に持続し、政治的、長期的に目標を進めるためには弱点を抱えている。
 それで、12月14日には、各「島ぐるみ会議」も含め各界総結集で、「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が結成された。この結成は、日米両政府に沖縄の民意を、より強力に再確認させることになるだろう。
 日本政府は、違法な辺野古工事を即時中止せよ!
 翁長知事を支え、「オール沖縄」を強化しよう!
                      (12月15日、T)