10・26東京高裁、経産省前テントに不当判決
  仮執行には非暴力徹底抵抗

 10月26日、経済産業省前の脱原発テントに対し国が撤去・損害賠償を求めている裁判で、東京高裁第24部(高野伸裁判長)は、控訴棄却の不当判決を出した。この暴挙を強く弾劾する!
 判決公判は午後3時から。すでに2時からは霞ヶ関の地裁・高裁前に数百名が結集し、傍聴者を送り出し、公正な判決を求めて集会を行なっている。
 102号法廷では午後3時8分頃、現われた高野裁判長が「控訴を棄却する」、「訴訟費用は被告の負担」と述べたのみで、あっと言う間に3名の裁判官はドアを閉めて消えてしまった。判決理由の説明なし、判決理由要約の配布もなし、主文2行の言い渡しで消えてしまった!
 え!何これ? たちまち法廷は騒然となり、控訴棄却の不当判決に抗議するだけでなく、判決理由を何ら示すことなく裁判官が逃亡したことに強く抗議して、被告・傍聴者は法廷内座り込みに入った。高野裁判長は出てきて、判決理由を説明せよ!である。
 その頃、外でも「不当判決!」が掲示されて騒然とするなか、裁判所前歩道を埋めて抗議集会が行なわれた。予想を上回る極悪判決、理由も語らぬ権力的横暴である。怒り収まらぬまま、人々は判決報告集会に向かった。
 午後4時から、衆院第二議員会館において「控訴審判決報告集会」が開かれ、約250名で会場はいっぱいとなった。
 報告集会は、まだ法廷内座り込みが第2テントの女性などによって続けられているなか開始され、最初に鎌田慧さん(経産省前テント応援団)が傍聴報告。鎌田さんは報告の中で、この公有地での英雄的なオキュパイが、全国各地でのテント設営の運動に広がっていったこと、その大きな意義について再確認を促がした。
原発立地点からは、浜岡原発を考える静岡ネットワークからの発言、川内の家、伊方の家からのメッセージがあった。
高裁から戻ってきた河合弁護団長、大口主任弁護士らが、不当判決と今後について説明。高裁の控訴棄却判決によって、再び仮執行(確定前の強制撤去執行)が付いているのと同じ状況となった。高裁の仮執行停止決定での供託金500万円も没収される。弁護団は今日中にも、最高裁への上告と、仮執行停止申し立てなどの手続きを行なう。しかし上告段階で仮執行停止が付くことは、かなり厳しい。損賠についても、実際の損害は何もないにも関わらず、貸そうと思えば貸せるなどと強弁し、一日2万円余で計算して3500万円の請求を認めている。
いつ何どき、経産省が警官を引きつれて、退去通告などから始める強制撤去手続きに入ってくるか分からない現況となった。これに対する闘い方は、我々代理人の語るべきことではないが、皆さんが非暴力で徹底抵抗すれば、日本・世界の世論を大きく動かすこととなるだろう。
4時半頃まで法廷で座り込んでいた人々が、報告集会に合流してきた。その福島の女性たちの報告によると、高野裁判長がやっと現われたが、彼の口から出てきたのは「退去を命令する」であった。「裁判長、詐欺!」と叫んで抗議する中、ごぼう抜きで退廷させられた。
最後に、たんぽぽ舎の柳田さんが発言、高裁判決で「撤去は想定内だが、損賠がそのままというのはひどい」と述べつつ、今後の闘いを決意表明した。
さしあたり強制撤去手続きの開始に対峙できる、テント現場の応援が問われている。経産省前テントへの暴力は、戦争法の暴力、沖縄への暴力と相まって、安倍反動政権の凶悪性をさらけ出し、その倒壊の転換点となるだろう。(東京W通信員)


寺尾差別判決から41年、10・30狭山市民集会
  再審開始で必ず無罪を

 隠された証拠が次々と開示され、それに基づいて弁護団が177点もの新証拠を提出し、狭山第3次再審闘争は、いよいよ山場へ突入した。
 このなか10月30日、「狭山事件の再審を求める市民集会」が同集会実行委の主催で開催され、「全証拠開示、事実調べで再審開始実現」を求める労働者市民、部落解放同盟員が全国から約4千名近く結集、東京・日比谷野外音楽堂を埋めた。
 7月27日、第24回3者協議で植村裁判長は、再審請求に対するこれまでの基本姿勢を引きつぐことを明確にし、検察側に証拠物や客観的証拠を開示してほしい旨、表明した。これはねばり強い闘争の成果である。これまでに開示された証拠は185点にのぼる。しかし、埼玉県警・さいたま地検の証拠物リストや捜査書類を含めた全証拠のリストが、開示されたわけではない。東京高検もリストを示しただけで、証拠物のすべてを開示してはいない。全証拠開示は、狭山闘争勝利にとって重大な意味をもつ。
 これを踏まえ今集会は、部落差別にもとづく冤罪事件を許さず、狭山闘争の勝利をたぐり寄せる闘いだ。冒頭、組坂繁之・解放同盟中央本部委員長が登壇、「明日31日は、無期懲役を言い渡した東京高裁寺尾判決から41年になる。第3次再審を最後の闘いとして勝利しよう。」「植村裁判長に交代したため、年内の判断は難しい。来年こそが大きな前進の年。来年こそ事実調べ・再審開始を実現しよう」と訴えた。
 発言に立った石川一雄さんは、「第3次再審で無罪を勝ち取らない限り、あと50年60年生きたとしても無罪はない。私は、まだまだ青年だ。これからも支援の力を支えに司法に立ち向かう。差別こそが悪の元凶だ。私一人のために汗を流してくれたことに、感謝している。しかし、一層の支援が無ければ勝利は無い。不滅の精神で闘う」と述べ、
「元凶の寺尾判決 世にあかし 司法の再審 総意に迫る」と詠んだ。
これを受けて石川早智子さんは、「石川一雄は勝負のネクタイをしている。彼の思いをひしひしと感じる。見えない手錠をはずすために力を貸してほしい」と訴えた。
中北龍太郎・狭山弁護団事務局長は、「25回に及ぶ3者協議で、185点の証拠開示を勝ち取った。これはまさに無罪を証明する力だ。検察は、石川さんの自白には五つの『秘密の暴露』があり、自白以外に七つの有力証拠があると豪語する。しかし、その根拠が証拠開示でいずれもガラクタになった。今や勝利に向かって進んでいる」と発言した。
片岡明幸・解放同盟中央狭山闘争本部長は、「09年に裁判長が開示勧告をして、6年になる。そのかん大きく前進し、あと一歩の所にある。最初36点が開示され、その後上申書、万年筆、腕時計などが出てきた。録音テープ、上申書、手ぬぐいの三大証拠も手にしている。6年間の闘いで冤罪がはっきりした。全証拠を開示させるまで手をゆるめない」との基調提案を行なった。
最後に、鎌田慧・狭山事件の再審を求める市民の会事務局長が、「今日は美しく晴れた。しかし心は暗い。沖縄では反対の民意を押し切って基地建設が強行され、安保法制も強行成立させられた。国民の生命や願いを顧みない、こんなことが許される社会になった。今、民主主義を取り戻す闘いが問われている。我々は狭山にこだわって闘い、来年こそ再審を勝ちとろう!」と締めくくりのアピールを発し、集会は終了した。
その後参加者は、銀座方面にデモ行進を行ない、賑わう街に「石川さんは無実だ!」「第3次再審を開始せよ!」「東京高裁は、新証拠の事実調べを行なえ!」のコールが響き渡った。憎むべき寺尾差別判決は必ず正す、この10・30闘争をバネに、地域・職場で闘いを発展させ、石川一雄さんの「見えない手錠」を必ずはずそう。(東京O通信員)