翁長沖縄県知事の10・13埋立て承認「取り消し」を断固支持する!
  違法の本体工事は即時中止せよ


 10月29日の早朝、日本政府・沖縄防衛局は、違法にも辺野古新基地建設の本体工事着工を強行した。まさに暴政であり、法治国家のやることではない。
違法にも、と言うのは、すでに10月13日、沖縄県・翁長知事が辺野古埋め立て承認「取り消し」を沖縄防衛局に通知しており、埋め立て工事に法的根拠は無くなっているからである。この翁長知事による取り消しは、7月の第三者委員会による「前知事の承認に法的瑕疵あり」とする答申にもとづき、また昨秋沖縄県知事選挙の公約にもとづくものであって、知事の恣意的な行政処分ではなく、沖縄県民の主権者的意志に依るものである。

  不服審査請求と執行停止

本来なら、この取り消し処分を受けて、遅きに失するが日本政府は、普天間基地の辺野古移設は不可能になったと判断し、これまでの日米合意(1996年SACO合意など)の見直しをアメリカに提起すべきである。政府は、そういう立場にある。
が、日米合意を硬直的に不可侵とする一方、沖縄県民の人権を一顧だにしない現日本政府は、そうしようとしない。安倍政権はあろうことか、辺野古工事続行の法的体裁を作るため、2つのルートで知事の取り消しに抵抗してきた。
一つは、行政不服審査法を悪用した方法である。取り消しの翌14日、沖縄防衛局は国土交通省へ行政不服審査請求と、その裁決が出るまでの間、取り消しの効力を停止する(執行停止)申し立てを行なった。早々と27日には国交省は、その請求と効力停止を認めた。翌28日には、沖縄防衛局はボーリング調査を再開するのみならず、29日からの本体工事着手をも、アセス法で必要な事前協議を欠いて、沖縄県に届け出てきた。
国が国に不服審査を求めるという茶番が、3月の翁長知事による行政指導(岩礁破砕停止指示)への対処に続いて、またもや繰り返されている。行政による権利侵害から国民を救済することが目的の行政不服審査法、この主旨がねじ曲げられ、行政権力によって不当に悪用されている。この審査請求と執行停止を許さず、沖縄県は国地方係争委員会に審査を申し出る。
法治国家が揺らいでいる、この危機意識は広がっている。10月23日、行政法研究者93名による、「辺野古埋立承認問題における政府の行政不服審査制度の濫用を憂う」という声明が発せられた。沖縄防衛局が私人になりすましての請求、および執行停止は不適法であると。

  代執行

さて、安倍政権が沖縄県に抵抗するもう一つのルートは、地方自治法245条にもとづく代執行の方法である。安倍政権は27日、代執行手続きに入ることを閣議決定し、国土交通省は28日、翁長知事に是正勧告を行なった。知事は当然応じないので職務執行命令訴訟となり、その訴訟で国が勝てば、国が取り消し是正を代執行することとなる。かって大田知事による米軍用地強制使用の代理署名拒否に対して、この方法で代執行が強行された。
法的手続きとして問題だらけの前者の対抗手段が、あえて取られているのは、一時効力停止(執行停止)が付くからである。後者の正攻法だけでは、職務執行命令訴訟が続いている間は工事はできない。工事を続行したら大問題となる。翁長知事が28日、「国も司法判断を問う姿勢であれば、判決がなされるまでの間は、辺野古での作業は開始すべきではない」と述べているとおりである。
国があの手この手てを使っても工事は進まない。埋立て本体着工と発表しても、陸上部分の整地に着手しただけであり、今後の土砂搬入や河川付け替えなどは難問だらけで進まない。それら手続きでの、沖縄県と名護市の対抗手段は多い。
本体着工は予想よりも若干早く、執行停止や代執行開始と同時に強行されたが、これはまず何よりも米国向けアピールである。9月14日の翁長知事の取り消し着手表明によって、米議会報告も辺野古移設を明言できなくなっていた。安倍政権はともかく、工事は止まっていないと米政府に示す必要に迫られていた。
また、世論とくに「本土」世論に対し、埋立て工事既成事実化を印象づけようとする世論工作である。その世論誘導のために朝日新聞は、「曲折19年、着工押し切る」という見出しを大書きした。
しかし、その朝日の世論調査でも、翁長知事への支持率は全国的にかなり高い。10月17日の全国世論調査では、翁長知事の埋立て承認取り消しを「評価する50%」「しない34%」、4月18日の同調査では、知事の移設作業停止指示を「評価する54%」「しない28%」(沖縄県内では70%、19%)と出ている。この翁長支持率は、安保法制を強行してもなお、安倍政権支持率が30%台を維持していることを考慮すると、かなり高い数値と考えられる。翁長知事の知事権限行使以降、「本土」世論でも、辺野古強行への反対が高まっているのである。この気運に水を差そうというのが、「着工」宣伝であった。
その着工に当っても、安倍政権は理由として、「普天間の固定化は絶対さけなければならない」、「辺野古が唯一の解決策」と繰り返している。よく言えたものだ。日本政府は、19年も普天間基地の危険性を放置し続け、最速でも今後8年は普天間を放置するのである。仲井真前知事の埋立て承認の条件としての、「5年以内の普天間停止」すら無視している。国際法違反の土地強奪で米軍が作った普天間基地に、日本政府が代替を用意する必要は無い。日米合意を見直すことが、唯一・最速の解決法である。普天間はただちに閉鎖されねばならない。
翁長知事の取り消し処分、日本政府の対抗措置によって、沖縄と日本政府は全面対決に入った。これは、安倍反動政権と日本・沖縄民衆との全面対決でもある。沖縄の人々は、自己決定権を実現して、日本政府の暴政を排除するだろう。日本民衆は、主権在民をかけて安倍政権を打倒するだろう。(A)


取り消し支持!効力停止は無効!本体工事着工糾弾!
  沖縄・「本土」で闘い続く
 
 10月29日、早朝、沖縄防衛局が辺野古新基地の本体工事着工を強行したが、同日、東京では夜、連合会館において「辺野古埋め立て取り消しに政府は従え!『取り消し無効―埋め立て着手』を許さない10・29緊急集会」が開かれ、約350人が参加した。主催は、止めよう!辺野古埋立て国会包囲実行委員会。
 このかん東京では、翁長知事が承認取り消しを行なった10月13日に、環境市民団体を中心に約200名が、また翌14日には、辺野古実行委員会など約350名が首相官邸前行動を行ない、翁長知事の「取り消し」支持を表明して、安倍政権に辺野古断念を求めた。
 沖縄では13日14日と、シュワブゲート前で、取り消し熱烈支持の集会が約500名でひらかれた。名護ヘリ基地反対協は10月14日、承認取り消し支持の緊急声明を発し、「沖縄の基本的人権や自己決定権を確保」、「地方自治を市民の手に取り戻す」ことをアピールした。
28日の夜、国交省の執行停止、その日の本体工事着手届に抗議し、首相官邸前では緊急抗議行動が闘われた。現地ゲート前では、夜通しの監視に入り、29日の朝6時頃から約300人が座り込みに入り、大型車両の進入に激しく抵抗して闘った。県警機動隊約170名が動員され、市民1名が不当逮捕された。
その日の夜の、東京での10・29緊急集会では、この早朝の阻止行動を闘ったばかりの、大城悟さん(基地の県内移設に反対する県民会議・事務局長)からの現地報告などが行なわれた。
大城さんは、「半時間の攻防があり、一部資材は入ったが、当面の仮設道路作りでも全然足らない。本体着工を既成事実化し、本土向けにアキラメを誘おうとしているが、闘いはこれから。」「日本政府は、久辺3区に直接カネをばらまいて名護市の地方自治に介入、また9名の容認派市町村長とは充分に協議するなど、分断を謀っている」と報告した。
来年1月の宜野湾市長選で、シムラ予定候補が容認派の現市長に勝利すれば、沖縄分断策は完敗する。
また沖縄では、日本政府との全面対決に対応する新組織が創られようとしている。9月下旬、平和市民連絡会が「全島組織」を提案。10月には、各級議員、経済界も含めた「オール沖縄県民会議」(仮称)の構想がかたまり、早ければ11月中に結成されようとしている。
さて集会では、10・23行政法学者声明の参加者でもある人見剛さん(早稲田大学法学学術院教授)の講演もあった。承認取り消しに国がとった対抗策の問題点、また今後の沖縄県・名護市の対抗手段について、法的な面からの解説があった。
集会は、11・1新宿緊急デモ(辺野古実主催)などが訴えられ、とくに「11・29辺野古に基地は造らせない日比谷野音大集会」を成功させることを確認して終了した。(東京W通信員)