高揚する戦争法案阻止!強行採決強いられ安倍政権は転落へ
 「9月最終決戦」は勝利できる

  

 安倍自民公明連立政権は、安保法制法案(戦争法案)に反対する国会周辺・全国各地での闘いの高揚に直面する中で、7月15日に衆院安保法制特別委員会で与党自公のみによって、この法案(自衛隊法改定など10本の一括改定案と、新法の自衛隊派兵恒久法案)を強行採決させた。翌16日の衆院本会議でも事実上与党のみで強行採決を行ない、参院へ送付された。
戦争法案への批判に加え、この安倍独裁政治に対する民主主義的怒りが高まる中、参議院では7月27日審議入りが強行され、28日から参院安保法制特別委員会で実質審議が始まった。
延長されている会期は9月27日まで。安倍政権は自公で過半数を維持する参院での成立をめざしている。しかし参院で戦争法案が立ち往生した場合、参院送付後「60日」(憲法59条)となる9月14日以降、衆院再議決を強行するかまえである。衆院で自民・公明は、再議決・成立に必要な「3分の2」をかろうじて維持している。
戦争法案を廃案にするためには、まず参院で可決できない政治情勢をつくり、さらに衆院で再議決できない政治情勢をかちとる必要がある。こうした議会制度上の日程と課題を念頭に入れつつ、戦争法案阻止・安倍政権打倒の現在的課題を検討してみよう。
このかんの闘いをふりかえると、衆院では与党が3分の2を占め、野党の民主、維新も併せると、日米安保体制堅持派が圧倒的に議席を占めているにも関わらず、闘いの前進が、その議会上の力関係をはねかえしたと言うことができる。戦争法案反対の大衆運動と世論の拡大が、民主党を反対陣営にとどめさせ、また安倍別働隊とも言える維新すら法案に賛成できない政治情勢をかちとった。こうして、安倍政権は与党のみの強行採決という失態を強いられたのである。
今、戦争法案を止めるためには、最も広範な共同の必要、リベラル勢力・保守勢力を含めた共同が絶対に必要である。このことを前提としつつも、共同が広範に発展してきただけに、闘う勢力の独自の課題が切実に問われることとなっている。すなわち、日米安保体制と日本帝国主義の打倒をめざす革命的な諸勢力が、その独自性を保ち、その指導力を強化する必要があるということだ。
というのは、現在の攻防での支配的な対決軸は、いわば「専守防衛・立憲主義」対「集団的自衛権行使・行政権優位」、言い換えれば「戦後民主主義防衛」対「戦後レジーム打破」という構図となっている。

  左翼の課題は

 この構図の前者が勝てば、戦争法案はつぶれる。しかし、その勝利は一時的なものにとどまる。なぜなら、アメリカ帝国主義の衰退・中国の大国化・新自由主義グローバリズムとそれがもたらす荒廃と混乱、こうした世界情勢において、日本の帝国主義的あり方がそのままである限り、海外で武力行使ができるようにしようという戦争法案は、形をかえて復活せざるを得ないからである。
 戦争法案は、米国の要求に応えて世界中で米軍とともに戦争できるようにするという対米従属性と、そうした日米同盟強化を道筋として、自衛権を世界中で行使できる「普通の国」になりたいという日本帝国主義の本性、この両面性をもっている。
 現在の闘いにおいて、日本は戦後、戦争で一人も殺さず殺されなかった、この状態を守るべきだとしばしば語られている。この主張は支持できるが、しかし、その主張が戦後体制全体を防衛せよ、を意味するならばまったくの反動的主張である。戦後日本は、ベトナム戦争をはじめ米国による侵略戦争の共犯者であり続けた。ベトナム戦争に加担しておいて、平和憲法を語ることは、一つの欺まんでしかなかった。今になって、ともに血を流すのはいやだが、血を流さない共犯者ならよいというつもりか。それでは戦争法案に反対していることにはならない。
 安倍首相は、戦後体制を極右的に突破しようとしている。我々は、国境を超えた労働者人民の連帯、憲法9条などを活かした平和外交政策によって、戦後体制を超えて進んでいかなければならない。
 こうした戦後民主主義防衛派と革命派の政治路線の違いは、対国会闘争の運動論においても現われざるを得ない。問われているのは、参院での審議に対応した国会前行動というよりも、国会そのものを圧倒する直接民主主義の大攻勢である。議会主義者による、戦争法案阻止闘争の来年参院選挙への流し込みを許してはならない。

  安倍の8月危機

 さて、安倍は参院を突破できるのか。重要課題が8月に集中し、安倍政権の倒壊が見えてきている。
 一つは、戦争法案じしんの困難である。7月26日の大分市で、礒崎首相補佐官が、「わが国を守るために必要な措置かどうかであって、法的安定性は関係ない」と講演した。この暴言は、安倍らの本音を示すものであるが、致命的な失敗となっている。
焦る安倍は、参院特別委では与党委員との芝居を多くし、あえて中国、朝鮮を名指しして「脅威」を語る戦術に出ている。安倍も当初は、仮想敵国論のきな臭い答弁はしたくなかったのだが、「残念ながら国民の理解が進んでいない」(安倍)ので、情緒的扇動で突破せんとしている。
第二は、辺野古新基地建設の困難である。沖縄県・翁長知事は8月中にも「辺野古埋立て承認」を取り消す。戦争法案阻止の山場での、この意味は大きい。翁長知事は、沖縄を東アジアの平和のための「緩衝地帯」とする県政を執っている。この県政が、安倍政権による「沖縄の対中国前線基地化」という国策とまっこうから対峙し、勝利せんとしているのである。少しでもまともな「本土」国民なら、どちらを支持するのか。
第三は、川内原発の再稼働強行という困難である。8月10日に再稼働スイッチを押すならば、安倍政権支持率はさらに低下する。
第四は、8月の「戦後70年」首相談話という困難である。安倍が、「侵略」「植民地支配」という文言を抹殺した談話を出すならば、世界中から、頼みの米国からも、孤立する。孤立するから戦争しかない、という悲劇なのか。
第五に、TPPという困難である。未合意に終れば、アベノミクスともども政権戦略の破産であり、また8月末に合意できても、重要5品目国会決議の実質的違反として、農業者の安倍打倒が始まる。
 今、安倍政権は決定的な危機に入りつつある。確信をもって、「8~9月最終決戦」に勝利しよう。