衆院強行採決に延べ20万人の激闘
  急速に広がる戦争法案阻止闘争、「9月最終決戦」へ


  7・14日比谷野音

 クソ暑い中の、マジ熱い闘いとなっている。
安保法制法案(戦争法案)は、自民・公明の与党のみによって7月14日(特別委員会)、15日(本会議)に衆院で強行採決された。しかしその前後から、戦争法案と安部政権に反対する大衆運動と世論はますます拡大してきた。国会周辺で、全国各地で、各界各層で拡大しているのである。
その特徴は、7月に入って、青年層・学生・高校生による、また若い母親たちによる、反対運動への新しい参加が拡大したことである。これらの人々が、戦争法案によって戦争に駆り出される層の、当事者意識をもって登場してきた。「わたしたちは戦わない」、「だれの子どもも殺させない」である。
その東京での例としては、シールズ(自由と民主主義のための学生緊急行動、その前身は、特定秘密保護法に反対する学生有志の会)呼びかけの毎金曜行動に、青年層の参加が飛躍的に増えたことである。7月10日の国会正門前行動では、主催発表で1万5千人が参加した。これには中高年の応援参加も多かったが、毎金曜の首相官邸前は6月まではせいぜい2千人であった。
そして7月26日に、「安保関連法案に反対するママの会」の主催によって、2千人の渋谷デモが行なわれたことである。今の日本の平和運動の主力は中高年女性、という常識が揺らいできた。
衆院強行採決が翌日に予想されて緊迫する7月14日、「戦争法案廃案!強行採決反対!7・14大集会」が東京・日比谷野外音楽堂で開催され、野音内外で2万人を超える労働者・市民が結集した。野音外は、身動きできないような混雑ぶりであった。主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。
集会では、佐高信さん(戦争をさせない1000人委員会)が、「日英同盟では、仮想敵国はロシアだった。日独伊3国同盟ではアメリカ。そして今安倍政権は日米同盟強化で、中国を仮想敵国としている。安部政権を倒さなければ戦争突入だ!」と訴えた。
この日から、民主党の枝野幸男幹事長・衆院議員が登場、「小異を捨てて大同につく。我々は立憲主義を守り、戦争しない国であるために闘っていく」と宣言した。長妻衆院議員らだけでなく枝野氏も出てきた背景には、維新、民主の共同対案という策動の破綻がある。従来どおり社民党、日本共産党、生活の党と山本太郎となかまたち、も挨拶。
落合恵子さん、日弁連の山岸良太さんらの発言の後、高田健さん(解釈で憲法9条を壊すな!実行委)が行動提起、「安倍内閣支持率はとうとう逆転し、戦争法案廃案が多数派となった。」「8月を特別な闘争の月としよう。9月は必ず廃案にする闘争を!」と呼びかけた。(強行採決前の7月11日の朝日新聞世論調査では、安倍内閣を支持しない42%・支持する39%。6月調査では不支持37%・支持39%)。
集会中から、外ではデモ隊が少しづつ国会請願デモに出発。警察が、隊列をコマギレにする不当規制をやっているため、えらく時間がかかる。それで、「戦争法案今すぐ廃案!」「安倍政権今すぐ退陣!」のコールが、深夜まで国会周辺にこだましていた。

 7・15~17国会前

7月15日・昼の0時24分、衆院安保法制特別委員会で自民・公明の賛成多数によって強行採決。維新は退席し、民主、共産の委員たちは、「アベ政治を許さない」(澤地久枝さん呼びかけの7・18提示運動のポスター)を掲げて抗議した。維新を採決に巻き込む策は失敗し、与党のみの露骨な強行採決となった。
この時点では、国会の裏(議員会館前)表(正門前)で強行採決糾弾!の声をあげたのは、併せても数千人しかいなかった。夕方以降、爆発的にこれが増えてくる。
午後3時ごろ、逮捕者が2名出る。誰かが国会突入を図ったのか?ヨシ!と思ったが、周囲歩道でのもみ合い、中核主流派系への不当弾圧であった(24日には釈放)。
どんどん人波が国会へ。予定を早めて6時20分から、総がかり実主催の国会正門前抗議集会が超満員で始まる。この時点で2万5千人。民主党衆院では岡田克也党首、辻元清美が、共産・志位、社民・吉田、また山口二郎さん(法政大学、中央公聴会陳述人)らが発言。私たちの闘いによって安倍首相は強行採決に追い込まれた、これにより反対は一層増え続ける、廃案に追い込もうと訴えた。
暗くなっても人が増えてくる。人々は歩道に押し込められた状態から、7時半ごろには数ヵ所で車道に進出。深夜まで、強行採決糾弾!安倍やめろ!の行動が続いた。この日、延べで6万5千人結集と言われる。
この7・15の夜が、7月安保国会闘争の山場であった。大衆闘争が、警察の規制や議会主義的な自己規制を超えて、大きく踏み出すチャンスがあった。こう総括する活動家は少なくない。
翌日16日の午後2時6分、衆院本会議でも事実上与党のみによる強行採決。民主、共産、社民は退席、維新はその対案なるものを否決されたあと退席、生活は欠席、つまり野党5党はみな反対となった。
この日は台風の影響があったにも関わらず、本会議強行採決に抗議して、国会裏表で延べ2万人。この日、警察はカマボコ車を並べ、機動隊を大量動員。正門前では、前日のような人々の車道進出を押さえるためか、警察は鉄柵バリケードさえ持ち込んできた。これには総がかり実も、さすがに抗議。
つまり、数万の国会闘争が連日押し寄せることによって、それが(昔と違って)全くの平和的形態であってもなお、警察は、このかんのソフト警備では統制が困難となり、しだいに国家暴力装置としての本質を見せてきているのである。一部対応では、機動隊の乱闘服も復活している。今後どう出てくるのか見ものだ。
以上の衆院通過阻止の、総がかり実よびかけの15~17日の連続国会行動には、17日のシールズ金曜行動も併せて、延べ20万人が参加と言われる。

  「アベ政治を許さない」

7月18日には、「アベ政治を許さない」のポスターを掲げる大小の同時行動が、全国各地で行なわれた(事務局に報告があったものだけで5百ヵ所以上)。国会前では、この運動の提唱者の作家・澤地久枝さんや、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんらが参加して、約6千人。
さて、強行採決によって7月18日の朝日世論調査では、安倍内閣不支持46%・支持37%となり、反安倍がさらに増えた。他の各社調査でもすべて、支持率は3割台に落ちている。そして安保法制法案については、反対57%・賛成29%と世論が明確になってきた。

  7・18大阪、京都

強行採決後、全国各地でも無数に怒りの集会・デモが広がっている。ネットを通じた若者の行動体が、各都市で生まれているのも特徴である。
大阪では7月18日、「戦争法案は廃案に!おおさか1万人大集会」が大阪市扇町公園で開かれ、実際1万人超が結集した。弁護士など49氏の呼びかけで、超党派的に結集。集会では、大阪弁護士会の児玉会長などが、「あきらめずに、戦争法案を白紙に」と訴えた。集会後、3コースでパレード。
京都でも18日、円山音楽堂をあふれて、「とめよう!憲法違反の戦争法 声をあげよう7・28大集会」が行なわれ、このかんの京都では最大規模となる約4千人が結集。これは、瀬戸内寂聴さんや物理学者の益川敏英さん(京大)らが呼びかけ人の、「戦争立法NO!京都アクション」の主催。
 7月20日、その益川名誉教授をはじめとする学者150人が、東京・学士会館で記者会見を行なった。そこで、「安保保障関連法案に反対する学者の会」としての強行採決への抗議声明を発するとともに、6月15日アピールの賛同者が、学者・研究者1万1218名に達していることなどを発表した。多くの大学では、これらの教員と、シールズなどの学生が連携を広げている。これも昔の学生運動とは、おおいに異なる点である。

  『ジョン・ラーベ』大盛況

 同じく20日、東京神田では、暑い日照りの中での長い行列が見られた。これは何か。南京事件を扱った劇映画『ジョン・ラーベ』上映会の会場・日本教育会館で、当日券を求める人々の列なのである。びっくりするぐらいの盛況であった。全港湾、全日建など労働組合と市民が、この上映会の大成功によって、戦争法案と安倍「戦後70年談話」NO!を盛り上げたのである。
 総がかり実の毎木曜国会前行動(議員会館前、午後6時半~)も、2千人規模で続けられている。7月23日の木曜行動には、村山富市元首相が登場、「憲法を平然と無視して強行採決、絶対に許してはならん!」と檄を飛ばした。大衆行動で村山さんが発言するのは、久方ぶりの事だろう。

  7・24諸分野の闘いが合流

 7月24日、「民主主義を取り戻せ!安部政権NO!」行動が、首都圏反原発連合などによる実行委の主催で行なわれた。今年の3・22に続いて二回目。戦争法案反対をメインに諸分野の闘いが合流し、日比谷野音集会と首相官邸包囲行動に延べ7万人と主催発表。(「3・11」以降の脱原発国会包囲の頃から、「延べ」という言い方で、多少誇大な参加者数が語られるようになっている。確かに全日行動ならば、人の入れ替わりも多く、数を把握しにくいが)。

  7・26国会包囲
 7月26日、先述の渋谷ママ・デモが挙行されると同時に、対国会では午後2時から総がかり実主催で、「強行採決抗議!とめよう!戦争法、集まろう!国会へ!7・26国会包囲行動」が行なわれた。都心で今年最高気温35・8℃の中、2万5千人が国会包囲、国会前庭園の木陰にもいっぱいに参加者が広がった。
 この行動では、参院安保法制特別委員会の委員である、民主党の蓮舫参院議員などが挨拶した。参院の特別委では、小会派の社民党(福島瑞穂)、生活(山本太郎)からも委員が出されている。包囲行動は、翌日7月27日からの参院審議入りを踏まえた、闘争宣言となった。
 また、上京中の沖縄一坪反戦地主会の会員から、戦争法案反対と辺野古新基地建設反対を結びつけて闘ってください、9・12埋立て反対国会包囲に参加を!と、熱いゲストスピーチが行なわれた。

  7・28日比谷野音

 7月28日、総ががり実の主催で、「強行採決許すな!戦争法案廃案へ!7・28大集会」が日比谷野音で行なわれ、野音内外に1万5千人が参加、国会請願デモを行なった。
 先立つ26日に、礒崎首相補佐官が、「法的安定性は関係ない」と安倍らの本音を語ってしまった。集会では、これを糾弾し、立憲主義・法治国家を守れという発言が、民主党・枝野幹事長の挨拶をはじめ多く出されていた。28日に参院安保特別委の審議入りが強行されたが、礒崎暴言の扱いが焦点となっている。
集会では、鎌田慧さんが「安倍内閣は倒れる寸前、60年安保に匹敵する闘いへ!」、佐高信さんが「戦争は政治が敗北したときに始まる」、その他「ママの会」の池田亮子さん、脚本家・小山内美江子さんなどが発言した。総がかり実の高田健さんが、「8月30日には、10万人国会包囲行動を行なうことを決意しました」と報告、参院で廃案の総決起を呼びかけた。

  8・30大包囲へ

 「10万人」集まると、国会周囲の外側歩道だけではとても収まらない。警察がこれまでのように片側歩道しか使わせないなら、8・30国会包囲への妨害行為である。法的には警察は、主権者国民の公僕であり、憲法16条・請願権、21条・表現の自由を国民に保障するよう務めなければならない。警視庁や麹町署には、内側歩道・車道一車線・正門坂道全車線の開放を求めたい。
 また、本当は国会行動は、国会議員や政府へのお願いではなく、主権者の直接の主権行使の一つであるべきだ。自己規制ではなく、我々が事態を支配する気概をもって行動に臨むべきである。
 さて、5月から国会前座り込みの先鋒を担ってきた「集団的自衛権法制化阻止・安倍たおせ!反戦実行委員会」は、7月にはどうしていたのか。反戦実は、総ががり実の呼びかけに応えて、大きな行動では常にその一翼を担ってきている。
 反戦実は広範な共同行動を支持しつつ、必要な時には断固独自に起つだろう。9月6日には、独自の「新宿デモ」を計画している。「7~8月延長決戦」を闘い抜き、「9月最終決戦」に勝利しよう!(編集部まとめ)