幾万の「安保国会」闘争、延長戦へ
  違憲立法と暴走政権に国民合意は無し

6月「安保国会」闘争は、1万5千人を集めた辺野古新基地建設反対5・24国会包囲を頂点にした5月から、6月の決戦的局面に入った。
 6月4日、衆院憲法審査会の参考人発言で、自民党推薦の長谷部恭男教授も含め3人の学者全員が、安保法制案は憲法違反と明言した。長谷部氏は、『憲法守って国滅ぶ』という著書もある改憲論者であるが、この日、「集団的自衛権の行使が許されるという点は、憲法違反」、「説明がつかず、法的な安定性を大きく揺るがす」と安保法制案を批判した。
 安部政権は人選をミスったと悲鳴を上げたが、これは人選ミスというより、保守勢力の分裂である。「7・1閣議決定」以降の強引な安倍政治が、立憲主義を破壊し、また従来の戦後保守政治・「専守防衛」を転換せんとしているからである。6月12日には、亀井静香衆院議員など保守長老の4名が、「不戦国家から軍事力行使国家への大転換を意味する」として法案反対を声明した。
 6月3日には、法案廃案をもとめる「憲法研究者の声明」が、青井未帆、清水雅彦など171名で出され、今も拡大している。今や学者や法曹界では、安保法制案は違憲、これが常識化しており、弁護士会が中心となった各地の法案反対集会(6月では、さいたま市、横浜市、名古屋市、神戸市、札幌市など)が大盛況となっている。
 この6・4で潮目は変わり、マスコミ社説でも、前提が問われる事態となった以上、成立のための会期延長は行なわず、論議の仕切り直しをやるべきだと言い始めた。国会前の運動でも、違憲立法は会期末で廃案とせよ、が日増しに大きくなってきた。

  6・14国会包囲

 6月5日からは、学生らによるシールズ(自由と民主主義のための学生緊急行動、元サスプル)が、毎金曜の国会前行動を開始した。
 6月11日からは、「反戦実」が24日までの第2波国会正門前座り込みに突入。
 6月14日、「総がかり行動実」による国会包囲行動が行なわれ、全国から2万5千人(主催者発表)が参加。沖縄からは玉城愛さん(名桜大)が発言し、辺野古新基地反対・戦争法案反対を訴えた。
翌日15日から、ようやく総ががり実も、国会前座り込み行動(議員会館前、24日まで)に突入した。総ががり実は、市民団体などによる「解釈で憲法9条を壊すな!実行委」、平和フォーラムなどによる「戦争をさせない1000人委」、日共系による「憲法を守り・いかす共同センター」の三者の構成であり、座り込みも自治労や全労連が主力となっている。
 6・14国会包囲は、このかんの最大参加であった。しかし数万程度の決起では、情勢を激動させ、与党を動揺・分解させることはできない。安部政権は当初お盆までの延長を想定していたが、戦争法案反対の世論・運動の高まりによって、成立の日程を遅らせざるを得なくなった。それでも安部は、6月22日に戦後最長となる会期95日間延長を強行採決し、24日会期末を乗り切ることができた。
 6月20日、全国各地で、戦争法案にレッドカードを突きつける「女の平和」行動(元中大教授・横湯園子さんら呼びかけ)が行なわれ、東京では1万5千人が国会を包囲した。この闘いでの女性の動きには、目覚しいものがある。
 6月21日、このかん総ががり実とも呼応して国会闘争を続けてきた反戦実は、この日、原宿で独自に全国総決起集会・デモを行なった(記事1~2面)。1月結成来、進撃してきた反戦実も頭打ちか?とも見えるが、シールズや民青に違和感をもつ青年・学生らが、反戦実に結集してくる傾向もみられるようだ。
 6月23日、東京1000人委員会による日比谷野音集会。以前から設定されていた集会であったが、2500人と低調。都内の労働組合活動家の再起に期待したい。

  6・24国会包囲

 6月24日、総ががり実よびかけの二回目の国会包囲行動が行なわれ、全国から3万人が参加。会期延長抗議!の声をあげたが、その採決がこの日にもつれ込んでいたら、そうとう緊迫した闘いとなっただろう。
6・24国会包囲の人数は、6・14国会包囲を上回っているが、6・14では民青などが渋谷で独自行動(約3千)をしており、実質的には僅かに増えた程度か。また日共の場合、前日23日に江東区で独自集会をやっており、力点はそちらの方にあった。なお総ががり実は、6月7日商業紙に「6・14、6・24」の全面広告を打っていたが、劇的な効果があったとは言えない。
 それでも、個々人・小グループの参加は広がりつつある。歴史的な激闘であった1992年のPKO法案反対闘争でも、国会には最大時で1万人程度であった。市民が主権者の自覚をもって、国会に直接行動で押し寄せるという政治文化は(反原発を媒介にして)前進している。
 会期末以降、総ががり実、反戦実の連日国会前座り込みは休止しているが、総ががり実による毎木曜午後6時半の国会議員会館前行動は続けられており、国会情勢に対応しつつ、緊急行動・大行動を準備する場となっている。
 毎木曜行動は6・4が1400人、6・11が1700人、6・18が2000人(瀬戸内寂聴さんが感動的アピール)としだいに増え続け、国会包囲翌日の6・25は1000人に留まったが、7・2は1800人と活況であった。
 6月25日、自民党本部における安部提灯持ちたちの自民勉強会で、「沖縄2紙をつぶせ」(百田尚樹)等の報道威圧事件が発生した。戦争法案と一体の、この言論弾圧に批判は高まり、ついに7月3日、安部は衆院安保法制特別委員会で、「私の責任」と認めざるを得なくなった。
 この延長戦は、闘えば勝てる。追い詰められているのは安部である。7月衆院突破の目論見を粉砕せよ。7・14日比谷野音、7・26国会包囲、7・28日比谷野音に全力で結集しよう。(W)


6・27釜ヶ崎講座学習会
  今、生活保護は

 6月27日、第9回釜ヶ崎講座学習会が大阪市・西成市民館にて、「今生活保護に何が起きているのか―改めて生活保護の役割を考える」をテーマに開かれ、約30名が参加した。
 講師は、徳武聡子さん(司法書士・生活保護問題対策全国会議)で、昨年三月の学習会でも生活保護施行規則改定などについて、お話をうかがった方。
 08年以降、生活保護に移行できた釜ヶ崎労働者の数は一挙に増大した。しかし、このかん生活保護基準が段階的に引き下げられ、今年7月にも住宅扶助基準がひきさげられようとしている。こうした情勢下、今回の学習会では、生活保護をめぐる基本問題を改めて学習するとともに、反失業・就労要求と生活保護要求との関係などをめぐり、有意義な学習の場となった。
 徳武さんの「○×クイズ」、「若くて働ける人や現在働いている人は、生活保護を受けられない。○か×か?」「持ち家があったら生活保護は受けられない。○か×か?」。
 と、彼女は基本を解説しつつ、現在の生保申請切り捨て、受給できても2013年以降3回にわたる生活扶助基準引き下げという現況を批判し、しかし今日、生活扶助引き下げ取り消しを求める裁判闘争(全国22都道府県、原告767名)が取り組まれている、等を報告した。
 討論では、釜ヶ崎日雇労組の佐々木さんが、「釜は日雇い労働の街であり、闘いの基本も就労を求める運動。生活保護はそういう意味では、働くことを補う役割だと思う。しかし圧倒的に生活保護の街という側面もあり、その課題でも認識を深めていきたい」と語った。
 釜講座の渡邉代表は、「生活保護は当事者にとっては、日々の死活の問題だ。この生存権の対価を得る闘いと、釜で社会的就労を求める闘いとは矛盾するものではなく、同質の問題だ」と語った。
 安心して働き生活できる街を!を掲げる釜ヶ崎の運動は、8月釜夏祭りの準備に入っている。(関西I通信員)