安倍政権の派遣法・労基法改悪案を廃案へ
  死活かけ労働ルール破壊阻止

 五月十四日の夕刻、東京・日比谷野外音楽堂は、安倍政権による度重なる労働法制改悪策動に反対する、約2500名の働く仲間の怒りの渦に包まれた。林立するノボリ旗からは首都圏だけでなく、愛知県や三重県などからも仲間たちが結集していること、また連合や全労協、全労連など系列を超えた多くの仲間たちが参加していることが分かった。
 集会は「取り戻そう★生活時間と安定雇用 許すな!雇用破壊5・14ACTION」として、日本労働弁護団、過労死弁護団全国連絡会議、派遣労働ネットワークなどを中心として結成された「日比谷野音5・14アクション実行委員会」が主催して開かれた。
 参加者は、野音に隣接する厚生労働省に向けて、「雇用破壊を許すな!」「派遣労働の自由化反対!」「残業代0法案反対!」などのシュプレヒコールを叩きつけた。棗一郎弁護士(労働法制改悪阻止闘争本部長)が情勢を報告し、各団体が発言、集会アピールを採択し、全員で「取り戻そう★生活時間と安定雇用」のプラカード・アピールを行なった。
 集会後は国会までデモ行進し、議員面会所前では、民主党、社民党、日本共産党など多くの国会議員が迎える中で、激励のエールを交換した。
 なお、この日は午後に、安保法制法案の閣議決定が強行された日でもあった。5・14集会は連合や旧同盟系を含めた労働法制改悪阻止の共同行動であり、戦争法案阻止については触れていないが、参加者の多くは、この二つの課題を安倍政権による一体の攻撃として意識している。参加者は、首相官邸前で行なわれていた戦争法案閣議決定抗議行動にもエールを送った。
 さて今国会では、衆院厚生労働委員会で労働者派遣法の改悪案と、労働基準法の改悪案(残業代0法案)の審議が進められている。
 労働者派遣法については、少なくとも現行法では派遣労働は一時的・臨時的労働として認識され、専門26業種以外では同一業種では原則1年・継続しても3年以内の労働に限られてきた。改悪案では、専門26業種の規定をなくして、同一業種でも労働者個人を変更すれば永久に派遣労働を利用できるようにするものだ。均等待遇原則も導入されない。
 企業にとって派遣労働を使いやすくしようというのが、目的だ。派遣労働は現在でも年収300万円以下の人が8割を占めているように、低賃金で解雇しやすい、いわば苛酷な労働条件におかれている。派遣法改悪は派遣労働を常態化しようというもので、格差社会を一層おしすすめる。
 2012年の派遣法の改定で、3年以上になったときは派遣先企業に直接雇用を義務付ける規定(直接雇用申し入れが行なわれたとみなす規定)が入った。今年十月一日のその施行を前に大量の派遣労働者の解雇が起きる可能性があり、その前に派遣法の改定を果たすべきという使用者側の本音が漏れた文書が出回ったことにより、国会での審議に遅れが出ているが、そのまま廃案に追い込むことが求められている。
 「残業代0法案」は、労基法の労働時間規制(1日8時間、週40時間)の適用除外を求めるものだ。
 かって安倍第一次政権が提案し、廃案になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」と同質の法案だ。使用者が残業代などの割増賃金を支払うことなく、労働者を長時間働かせることができる法案で、現在深刻になっている過労死・過労うつなどの問題を一層深刻なものにしてしまう働かせ方で、とても容認できるものではない。
 安倍政権はこれだけでなく、解雇の金銭解決法や、「限定正社員」制のなどの導入も目論んでいる。今でも苛酷になってきている労働者の労働と生活を、一層深刻なものにする目論見がすすめられている。あきらめずに闘い続けることが現状を打開する道だ、ということを胸に抱えて取り組んでいこう。
 なお、五月十五日には連合が、「5・15労働者保護ルール改悪阻止を求める国会前座り込み行動」を、議員会館前一帯で終日行なった。昨年十月の臨時国会時に連合としては六年ぶりの国会座り込みが行なわれたが、それと同規模の約800人。今回は派遣法改悪反対をメインに、六月には労基法改悪反対をメインに再度、連合「国会前座り込み」が行なわれる。
また五月二七日には、全労協、全労連、独立単産などでつくる「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」が約300人で、国会前行動を行なった。派遣法改悪案を廃案にせよ!が、強く訴えられた。
広範な共同行動で労働法制改悪を阻止すること、それは安倍政権の終わりの始まりとなるだろう。(S)


中学校教科書、今夏に採択
  許すな!育鵬社・自由社版

 安部政権は、国会を8月まで延長し戦争法案を成立させようと画策しているが、この7~8月は、今年の四年ぶりの中学校教科書採択の時期と重なっている。
 全国580の採択区で教科書の展示等を実施し、各教育委員会で採択が行なわれる。今回実施される中学校教科書採択は、08年3月に改定告示された学習指導要領にもとづく、2回めの教科書検定・採択になる。
 4月6日、文部科学省は、今年採択される中学教科書の検定結果を公開した。それによると、地理、歴史、公民で合格した18点全てが、「竹島」「尖閣諸島」は「日本固有の領土」と記述し、「北方領土」はロシアが、「竹島」は韓国が「不法に占拠」と記して政府見解を丸写しするだけ。また、国旗・国歌などの記述が目立つ一方、「慰安婦」の用語がすべて削除されるなど、旧日本軍の残虐行為や、中国・韓国から見た侵略戦争の記述が抑制される傾向が見られる。それは、今回の検定が14年1月の改悪検定基準によって実施され、出版社側の自主規制が大きく働いたことを示している。
 しかし全体としては、育鵬社版・自由社版の反動教科書に大きく近づく顕著な変化は、押しとどめられた。
 改悪検定基準の下で今年、育鵬社版歴史・公民と自由社版歴史教科書が検定に合格した。そして、検定に提出もされてもいない自由社版公民が、旧版のまま採択に参入する。文科省は、これら戦争賛美の反動教科書を、規定をねじ曲げてでも採択させようと画策している。
 安部政権と日本会議などは、教育の全国的な右翼政治支配を貫徹するため、育鵬社版・自由社版の採択拡大を当面の最大目標に据えている。二つのうち一つは必ずという二重戦略で、「採択率10%をめざす」との声も聞こえる。
 育鵬社版・自由社版は、アジア太平洋戦争について、日本軍を解放軍として記述し、アジア人民の独立闘争を奮い立たせたとして侵略戦争を美化する。そして、国民が積極的に戦争に協力したと強調する。また、韓国植民地支配についても自由社版は、鉄道・灌漑施設などの開発や、「学校も開設し、日本語教育とともにハングル文字導入の教育を行なった」などと記して、侵略の事実を隠し、善政と描く。そして南京大虐殺事件の記述を一切無くし、事件はデッチ上げと露骨に表現する。これらは、検定の近隣諸国条項に違反し、アジア人民への差別・排外主義を煽り立てる以外の何物でもない。
 また、両社版とも、実在しない神武天皇が初代天皇であるかのごとく記し、史実を歪めて、天皇を支配者として敬うよう子どもに押し付けている。主権在民の現憲法を根本的に歪めるものである。さらに、「国防という自衛隊本来の役割を充分果たすためには、現在の法律では対応がむずかしい」と記し、今の安保法制法案に肩入れする偏向ぶりである。
 天皇主権を容認し、差別・排外主義を扇動し、子どもたちを戦争に動員する育鵬社・自由社の教科書採択を決して許してはならない。
 育鵬社・自由社版教科書採択阻止の闘いは、安部政権の戦争法案阻止の闘いと一体だ。今こそ教育労働者は地域に出て、労働者・市民・保護者と手をつないで闘おう。(教育労働者O)


狭山事件の再審を求める5・21市民集会
  今年こそが勝負!

 「今年こそ最大の山場、何としても今年中に事実調べ・再審開始を」との石川一雄さんの思い、これを実現するために五月二十一日、「狭山事件の再審を求める5・21市民集会」が東京・日比谷野外音楽堂において集会実行委の主催で開かれ、部落解放同盟をはじめ、日教組など労働組合、市民団体の約3千人が会場を埋めた。
 集会は、1963年5月23日不当逮捕から52年、部落差別を許さず、石川さんの冤罪を晴らす闘いとして打ち抜かれた。
 最初に、組坂繁之・解放同盟中央本部委員長が登壇。「取り調べ官らは、無実を叫ぶ石川さんに、兄を逮捕するなどと脅してウソの自白に追い込んだ。部落への差別意識・差別報道がこの冤罪の背景にある。石川さんの無実は明白だ。大きな世論を背景にして、東京高裁に事実調べ・再審を要求してきた。志し半ばで亡くなられた先人の努力を引き継ぎ、冤罪を晴らすために全力で闘う」と決意を表明した。
 各政党あいさつの後、石川一雄さんが発言。「今年こそ最大級の山場を迎えているのは紛れもない事実だ。何としても今年中に結論を。犯行現場とされる場所のそばで農作業をしていた0さんを証人として、裁判官が調べてほしい。そうすれば、事件は捏造されたことが明らかになる。見えない手錠をはずすために全力で闘い、大きな風を吹かせたい」と、この一年にかける熱い思いを表明。
 そして、「新証拠で ほころび掛けた 司法とて 油断厳禁 再審開始まで」との短歌を詠んだ。また石川早智子さんは、「冤罪で苦しみ傷つけられた中、いまだに権力は反省していない。吹いている風を確かにするため今年こそ勝負」と語った。
 続いて、西島藤彦・解放同盟書記長が基調報告。「証拠リストによって、東京高検のもつ279点全ての証拠物が分かり、これにより44点が開示されていないことが分かった。しかし全証拠ではない。埼玉県警、浦和地裁にも証拠物件があるはずだ。開示に向け、さらに闘いを。」
また「2010年5月13日開示の取り調べ録音テープによって、死体の様子、また鞄がどう捨てられたかについても、石川さん自身まったく知らないことが明らかになった。にもかかわらず寺尾判決から四十年以上たった今も、一度も事実調べがなされていない。それを東京高裁が行なうよう求める。」「さらなる証拠開示と、事実調べ、このために一層の世論の広がりを。」と闘いの方向を指し示した。
集会は、足利事件の菅谷利和さん、布川事件の桜井昌司さん・杉山卓男さん、袴田事件の袴田巌さん・秀子さんらのメッセージを受け、鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)が閉会挨拶。鎌田さんは、「52年間、石川さんは苦しみ抜いてきた。しかし、高浜原発の再稼働を認めない判決を出した福井地裁・樋口裁判長のように、誠実な判決を下す裁判長も出てきた。その意味で、もう一歩がんばって無罪判決をかちとろう」と発言した。
集会後、参加者は手に手に「狭山事件の再審開始を」、「石川さんは無実です」とのプラカードを掲げて、銀座方面へのデモ行進を貫徹した。
安倍政権は、差別・排外主義をあおり、集団的自衛権行使の道をひた走っている。内外での差別は戦争体制と一体だ。安倍政権の野望を粉砕し、あらゆる差別を許さず、狭山闘争の勝利のために闘おう。その勝利は目前にある!(東京O通信員)