安倍政権・文科省が指導要領改定案
  「戦争する国」のため
 に「道徳」を教科化



  道徳教科化画策の改定

文部科学省は2月4日、小・中学校の教科外活動「道徳」の教科化実施にむけ、指導要領改定案を公表した。3月5日までに意見公募を行ない、2018年度小学校、2019年度中学校での実施を目論む。そのため文科省は、今年夏ごろまでに、愛国心強制・軍国主義教育推進の要となる事実上の「国定教科書」検定基準の作成を画策している。
 改定の内容は、いじめ問題への対応として「公正、公平、社会正義」を小学1年生から導入。一方で、現行指導要領低学年の「郷土の文化や生活に親しみ、愛着をもつ」の冒頭に「わが国」を追加し、1年生から愛国心を植え付けようとしている。
 しかし道徳教育を強化し、上から徳目を教え込めば、いじめがなくなるほど簡単なものではない。改定がいじめに無力なのは、現場から見れば一目瞭然だ。指導要領改定は、道徳の教科書使用を義務づけ、指導内容と指導方法を規制し、道徳授業の実施を強化して「愛国心」を要とする国家主義的教育等の徹底化をねらっている。

  いじめには無力

 道徳の教科化は、2011年の大津市中2いじめ自殺事件の教訓をすり替え、教育再生実行会議が2013年2月に提言。2014年10月、中央教育審議会が、下村文科相にそれを答申した。今改定案は、それを受けて提案されている。
 前述のように改定案は、現行では高学年以降で扱う「公正、公平、社会正義」を、小学1・2年で「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」として扱い、指導学年を引き下げている。そして小学3・4年では、「誰に対しても分け隔てをせず、公正、公平な態度で接すること」と記述する。さらに指導方法についても「児童生徒が問題の解決策を考えたり、体験したりする学習を取り入れる」よう求めている。
しかし、子どもたちが考え合う学習形態を装っても、上から教え込む教育であることにかわりはない。悪いと分かっていても、いじめてしまう現実こそが問題なのだ。
 競争を煽り、学力などで幼いうちからフルイに掛け、一握りのエリートを育てる新自由主義教育こそが、いじめを生み出している。それを改め、一人ひとりを大切にした民主教育の実現が求められている。
 「しんどい事」を話しても受け止められるクラスを作り、いじめの苦しみ悲しみをクラスに投げ掛け、話し合える学級集団作りが必要だ。それには、子どもと寄りそい、教師自身が変わる実践を通じて子どもの心とていねいに向き合い、本音が言えるクラス作りが求められる。一人ひとりを大切にした、きめ細かな日常的な努力で互いに心を開くことなしに、対処することは難しい。上辺だけの学習には意味がない。まして、いじめる子どもにも様々な学習課題があるにちがいないのだ。
 改定は、つじつま合わせ以外の何物でもない。いじめには無力であり、真剣な姿勢さえ感じられない。

  真のねらいは愛国心強要

 改定案は、低学年のみならず小学中学年で、「わが国や郷土の伝統と文化を大切にし、国や郷土を愛する心を持つ」と書き換えている。「郷土愛」を中心とする現行指導要領を「愛国心」強要の指導に置き換えている。そして高学年でも愛国心を押し付け、「国家および社会の形成者としてその発展に努める」と記述する。つまり改定案は、幼いうちから愛国心を刷り込み、戦争する国を支える子どもたちの育成等をねらって公表された。
 安倍政権は、利益誘導型統治路線を復活させ、一方で市場原理主義路線を取り込む政策を推進する。そして政治・軍事面では、日米同盟を通じた軍事大国化を推進する一方、戦前回帰の覇権拡張政治復権を画策する政権として登場している。つまり、改定案の真のねらいは、戦争する国を支える労働者・市民を育成し、グローバル競争に勝ち抜く「企業戦士」を育て、国家や大企業に従順に従う子どもたちの育成である。
 さらに改定案は、評価を5段階評価ではなく記述式とする方向で、専門家会議を持ち、詳細を詰めるとしている。道徳の評価が記述であろうと、政府が定めた生き方と価値観を強引に押し付け、多様な人格の形成を否定するのは明確である。

  義務付けられる検定教科書の使用

 現行では、道徳に教科書はない。文科省配布の『私たちの道徳』は副教材として扱われ、使用する義務はない。民間の教材や教員自身が作成した教材使用も可能だ。
しかし教科化によって、文科省検定済教科書の使用が義務付けられ、教科書検定が実施される。指導要領の徳目が確実に盛り込まれているかがチェックされる。2013年11月文科省は、「教科書改革実行プラン」を発表、改悪教育基本法による伝統と文化の尊重・愛国心強要等にもとづく教科書検定制度の改悪を強行した。それによって、侵略戦争美化、アジア民衆蔑視、差別拡大の社会科教科書作成が押し付けられた。実教出版高校日本史の採択妨害・排除が、右翼勢力によって仕掛けられている。
道徳科教科書でも同様の攻撃をねらって、改定案は公表された。文科省は、右翼反動の日本再生機構が編纂・発行した『13歳からの道徳教科書』(育鵬社)を参考に編集された『私たちの道徳』、これをモデルとした教科書の採択をねらっている。

  今こそ地域へ

 安倍政権は、集団的自衛権行使容認を画策し、戦争する国に向けしゃにむに突進している。改定案は、安倍政権の戦争策動にそって提案されたものだ。教育労働者は今こそ地域に出て、労働運動・市民運動と合流、反撃を開始しよう。職場闘争を組織し、改定案反対・反動教科書採択反対の闘争を高揚させ、安倍打倒の闘いに連帯しよう。
地教行政法改悪によって、首長権限は大幅に強化された。しかし教科書採択権は、自治体の教育委員会に残されている。「子どもを再び戦場に送るな」のスローガンは今も輝き続けている!
                                            (教育労働者O)


戦後70年「戦争する国」を許さない!2・28日韓連帯集会
  今が一番きな臭い

 日本帝国主義による併合支配下、朝鮮民族の大規模な独立運動として闘われた3・1独立運動から96周年を迎えた本年も、東京・文京区民センターで二月二八日、韓国から四名の代表を招いて、「戦後70年『戦争をする国』を許さない!2・28日韓連帯集会」が開かれた。主催は2015・3・1独立運動96周年集会実行委員会で、約170名が参加した。
 集会は、主催者を代表して日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表の渡辺健樹さんが挨拶し、「朝鮮半島の人々、アジアの人々といかに平和な関係を築くか。そのことをもう一度捉えなおす日として、この集会を勝ち取っていきたい」と問題意識を明らかにした。
 講演は、東京新聞の半田滋さんから、「日本は戦争をするのか――集団的自衛権と自衛隊」という演題で、レジュメと首相安倍が国会で示した絵図などに基づき行なわれた。彼は、安倍政権の暴走ばかりではなく、94年の朝鮮半島危機などの事例を交えながら、防衛の軍隊であるはずの自衛隊が、侵略軍隊へと変容を着々と深めていることを、軍装備の現状からも分かりやすく説明した。その上に立って「戦後70年で、今が一番きな臭くなっています」と分析し、平和運動・市民運動の重要性を指摘した。
 ノレの会による力強い韓国民衆歌謡を挟んで、韓国からのゲスト、6・15南北共同宣言実践南側委員会常任代表議長で元国会議員のイ・チャンポクさんから、「世界大戦終結70年、分断70年を迎えた韓日平和陣営の課題」という演題で講演が行なわれた。
 イ・チャンポクさんは前置きで、「半田さんの話から、日本が朝鮮半島を攻撃する力があるとのことを聞いてゾッとしました。朝鮮半島を日本が侵略するのではないか、という恐れがある」と述べた。そして、2015年を、歴史的な曲がり角に立つアジア、分断70年を迎えた韓国社会の努力、東アジアの平和のための提案という三つの角度から分析と提言を行なった。「ともに連帯し、東アジアの冷戦の歴史を終らせ、新たな和解、平和の歴史を切り開いていきましょう」と結んだ。
 参加各団体からのアピールを受けて、闘いの決意を共にしながら集会を終えた。日韓民衆連帯の力で、安倍政権、パク・クネ政権の打倒を勝ちとろう。(東京ku通信員)