没落へ向かう安倍改造内閣
  粉砕せよ反動的ナショナリズム

 第二次安倍自民・公明連立政権は、その2012年12月の発足以来二十一ヵ月が経った九月三日、その延命のため、初めての内閣改造を行なった。がしかし、これは、このかん猛威を振るってきた安倍反動政権の、倒壊への折り返し点となるだろう。安倍政権の強弱を振り返りつつ、当面の安倍政権打倒の方向性を検討してみよう。
 内閣改造は、政権浮揚の選挙対策・世論工作でもあり、与党内の矛盾・権力抗争の反映でもある。安倍改造内閣の顔ぶれは新鮮味がないが、山谷えり子、高市早苗ら女性極右閣僚の登用が目立っている。同時に変えられた自民党役員では、極右の稲田朋美を閣僚から党政調会長に転進させた。本来の自民党主流といえる谷垣元首相が党幹事長となり、安倍自民党が相対化された。なお、谷垣は、来秋・消費税10%実施の積極論者である。
 もっとも話題となった石破茂の処遇では、党幹事長を辞め、来春統一地方選対策として新設された「地方創生」大臣ということになった。石破が入閣したからといって、権力抗争が収まる訳ではない。
 石破は、十一月沖縄県知事選で仲井真現職が破れれば、俺が憎まれ役の「琉球処分」を断行したのに、安倍や谷垣執行部が台無しにした、と責任転嫁するつもりである。安倍との安全保障政策の違いと言われるもの(安全保障基本法が先か、閣議決定が先か)も、戦争国家作りの段取りの違いにすぎないが、今後の権力抗争のネタにはなる。
 さて、安倍政権の各世論調査での支持率は、今春の消費税8%化、集団的自衛権行使容認の7・1閣議決定強行などによって低下しつつあるが、いぜん40%台を維持している。このかんの自民党支持率は、民主党支持から若干の戻りはあったが、30%程度に過ぎず、まともな野党が弱すぎる現況である。
 安倍政権が延命を続けている最大の要因は、依然、その経済政策への幻想(と言うより、期待はしないが何も対策が無いよりはマシという評価)である。しかし、「アベノミクス」も「成長戦略」も、その賞味期限は過ぎつつある。安倍の経済対策が株価対策にすぎないこと。大企業で賃金が2%上がっても、消費増税・物価増で実質賃金は下がり続けていること。結局、東京オリンピックの公共事業頼み、旧来の利益誘導政治にすぎないこと(これによって東北被災地の復興が遅れていること)、これらが全面的にバクロされつつある。
 資本はその本性として不断に「成長」を求めるが、国民的価値観はすでに脱成長であり、「人間らしさ」を求めている。日本での新しい貧困問題は、「成長」が課題なのではなく、分配政策の問題であり、また社会関係の貧困という問題である。
 したがって原子力発電の再稼動の是非も、エネルギー政策の選択の問題にとどまらず、社会・政治体制の全体を問うものとなっている。安倍政権が成果を示せない中で、原発再稼動のみを強行するならば、政権への消極的支持は全面的に崩壊するだろう。
 安倍政権の延命のもう一つの要因は、日本におけるナショナリズムの台頭である。これは、東日本大震災での「がんばろう日本」キャンペーンに端緒があったが、支配層が意図的に鼓吹し、政権内外の反動的ナショナリズムに発展させていった。安倍政権は、大国として登場した中国に対する外交政策の欠如を棚に上げたうえで、「我が国の安全保障環境は一層きびしさを増している」と呪文のように繰り返している。
日本における反動的ナショナリズムは、中国・韓国への敵意と、日本軍国主義の歴史の書き換えを特徴とする。最近は、日本軍「慰安婦」問題での朝日新聞による記事訂正を契機に、「河野談話」を全面否定せんとする極右の策動が高まっている。九月五日の記者会見で、菅官房長官も、「強制連行していない」と強弁し、国連人権委員会勧告を排斥する意思を示した。
歴史の無反省は、安倍政権の最も危険な部分であるが、同時に世界に通用しない最大の弱点でもある。反動的ナショナリズムとの闘争を強めよう。


9・4戦争させない9条壊すな!総がかり行動
  
総がかりで安倍政権打倒へ

 九月四日の東京・日比谷野外音楽堂で、「戦争させない9条壊すな・総がかり行動」の集会・デモが行なわれ、野音に入りきれない約5500名の労働者・市民が参加した。
 「総がかり」ということの意味は、この行動が「戦争させない1000人委員会」(平和フォーラムなど)と、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」(市民団体や日共系など)との共同主催で開催されたという意味もあるが、今秋以降の安倍政権打倒・集団的自衛権行使関連法案阻止、これらの闘いへ向けて国民総がかりの決起を作り出そうという決意の表明でもあると言える。
 集会では最初に、山口二郎さん(法政大学教授)が開会あいさつ。「7・1閣議決定は強行されたが、まだその実質はない。安倍政権の退陣へ向け、沖縄知事選や来春統一地方選など、まずは地方政治から安倍政権にストップをかけていこう」と訴え、また「安倍政権の支持率は時が経つほど下がっていく。来年の自民総裁選の前に安倍首相は解散をしかけるのではないか」とも語った。
発言では、小室等さん(フォークシンガー)、雨宮処凛さん(作家・活動家)、落合恵子さん(作家)が登壇した。雨宮さんは、奨学金返還の滞納者に自衛隊勧誘が行なわれているが、米国にも見られる貧困者の軍隊入りという事態であると警鐘を鳴らした。落合さんは、沖縄辺野古の事態について、「海上保安庁の船の機関砲が、国民に向けられている」と喝破・糾弾し、これら安倍政権の反動政治に「賢い不服従を!」と訴えた。
政党あいさつは、民主党、共産党(志井委員長)、社民党(吉田党首)が登壇し、生活の党は小沢代表がメッセージを寄せた。志井氏や吉田氏は、集会前日に行なわれた内閣改造という安倍の延命策、その右派登用を批判し、求められているのは改造ではなく退陣だと主張した。
連帯あいさつは、山岸良太さん(日本弁護士連合会憲法問題対策本部長代行)、法学者などによる「立憲デモクラシーの会」。日弁連の山岸さんは、全国すべての弁護士会が7・1閣議決定撤回を求めている、日弁連として10・8野音集会を開催すると報告した。
各地からの報告は、沖縄から高良鉄美さん(琉球大学法科大学院教授)および彫刻家の金城実さん、「戦争をさせない北海道委員会」の小山内さん、調布・憲法ひろばの石川康子さんが登壇した。
高良さんは、「ほくが那覇高校を卒業した年に、日本に復帰した。平和憲法があるから復帰した。今の辺野古の事態、日本は恥ずかしくないのか。9条改憲も辺野古新基地も、絶対に止めよう!」と訴えた。また小山内さんは、山口二郎さんを始めとする七月十二日の北海道委員会の結成、このかん最大5500人の札幌集会などを報告した。
また、パレスチナ・ガザ地区の現状を、このかん現地入りしていた志葉玲さん(ジャーナリスト)が報告した。「今回のイスラエル侵攻で、少なくとも2143人の民間人が殺され、その半分は子ども。誰が悪いのか、最も悪いのは虐殺を許し続ける国際社会である!」と指摘した。
最後に、高田健さん(解釈で9条壊すな実行委)が閉会挨拶とデモ指示。高田さんは、「安倍退陣へ総がかりの、画期的集会となった。今秋の闘いが重要。臨時国会開会日には、国会包囲が予定されている。11・16沖縄知事選挙の前の11・11には、再度総がかりの野音集会を行なう」と提起した。
参加者はシュプレヒコールを轟かせて集会を締めくくり、銀座方面へのデモ行進に出発した。
この日のシュプレでの、「戦争関連法案成立を阻止しよう!」「日米ガイドライン改定絶対反対!」「憲法破壊の安倍政権を退陣させよう!」の3本は、当面の行動の指針となるものである。闘いは、安倍政権の打倒へ向けて大きく動き出した。(東京W通信員)