【沖縄からの通信】

  シュワブゲート前「8・23県民大行動」が大成功
  知事選勝利・埋め立て絶対阻止へ

 九月三日、来る沖縄県知事選の予定候補である翁長雄志さんが、辺野古の米軍シュワーブ基地でのゲート闘争現場にやって来た。
 その足で、名護十字路において、稲嶺進・名護市長と共同で演説会を開いた。名護市は、九月七日投開票の市議選の最中である。
 これは、申し分のない優れた演出と言うべきだ。十一月十六日投開票の知事選の最大争点は、辺野古新基地建設NO!か容認かである。ゲート前の建設阻止闘争と知事選との、これまでにない強い一体性が表現された。
 これに先立つ八月二十三日、シュワーブゲート前に約3600人が集まって「8・23県民大行動」が行なわれ、巨大な成果を打ち立てた。辺野古現地での過去最大規模である。主催は、国会議員・県議員・島ぐるみ会議などなどによる「止めよう新基地建設!みんなで行こう!辺野古へ」実行委員会。これは、七月二七日の「島ぐるみ会議」結成後の、初の大集会でもあった。
 シュワーブゲートは、僻地の中のまた僻地に在る。太平洋に面して半島があり、それがそのまま巨大な軍事基地であるが、その基地を縦貫して一本の道路があり、その道路の東面が鉄条網、西側がジャングルで、そのジャングルも対ゲリラ戦用の広大な基地である。道路を挟む両基地は、地下道で結ばれており、その中は人目にはまったく見えない。人家はなく、畑もなく、もちろんトイレや水もなく(集会をやるには非常にまずい)、人の生活の様子がまったくない、アスファルトだけなのである。
 ここで、県民大会規模を開くのだから、その成否はやってみなければ分からない。しかし、このゲートで闘いは起こっており、そこで開くのもごく当然である。(これ以前は、大集会は辺野古村落の浜で開かれていた。ボーリング調査への動きが、辺野古や瀬嵩の漁港を拠点として行なわれていたからである)。
 すでに、現地「名護ヘリ基地反対協」や、「さらばんじの会」「平和市民連絡会」などによって、ダンプカーなどの基地内への資材搬入に対する阻止行動が行なわれ、一ヵ月を越していた。基地内でやっているから、手が出にくい。それでも、「何とかしなければ」、「あきらめてはダメ」として、県民の心配、関心、注視を集めての、苦難のたたかいが創出されていたのである。
 今では、「8・23のダイセイコウ」は共通認識の合言葉となっている。この「大成功」をしいて説明すれば、①僻地に集まった、②動かなかった人々が来た、③皆、明るい笑顔――である。この三つを同時に簡単に表現できないから、「8・23のダイセイコウ」と言って、そこに来た人々の間では通用するのである。
 その圧倒的多数は、中部圏やナハ圏、南からやって来るが、私は北部ヤンバル側から来た。私が到着前の道路沿い、森への進入路、草刈場、ちょっとした空間でも駐車でいっぱいになっている。これらは南側から来た人たちが、現場を通りこして、車を置ける所まで来て、そこから数キロも歩いて現場へ引き返しているのだ。
 ナハや沖縄市からは、大型バスも特別仕立てで出ている。が、たくさんの市民を積み残している。私のナハの友人も、五名で県民広場まで来たが、乗れなかったようだ。
 ゲート前は、両歩道に参加者がひしめき合っている。一つの団子になれないから、二列のムカデのような集会である。子連れの若い家族、男女カップルから議員後援会や自民党除名グループまで、様相が異なる色々な層が来ている。そして、不安を抱えながら、しかし応援したいという気持ちで来てみたが、「同類がいっぱいいるではないか」、そういう「笑顔」に満ちている。
 新聞の取材記事に、ある大学院生が「日米の協議は行なわれねばならないが、あんな所に、あれだけ集まるようでは、もうダメでしょう」と言っている。人々は集まってきて、同じ気持ちを語るまでもなく、確認し合って、また去っていく。しかし、よくもまあ、二時間も三時間もかけて、トイレもない所にやって来た。人々の感情は強まり、動き出し、何かを作り出そうとしている。
 人々を動かしているものは何か。昨年末の、石破自民幹事長や安倍首相らによる沖縄への処断、沖縄侮蔑の権力乱用によって、全沖縄人の心が深く傷つけられた。それは月日が経ってもなかなか消えない、この心情が沖縄人を駆り立てているものだと思う。
 また、脱法的で暴力的な調査強行を見せられるにつけ、日本政府の沖縄差別に今まで動かなかった人々も、自分たち沖縄人がヤマト政府の戦争の材料にされていくという、自分自身に迫る問題として認識し出したという情勢がある。
 反対協の安次富浩さんは、8・23の場で「この闘いは勝てる」と言った。集会の内容を喜んで言ったものでもあろうが、そればかりでもない、現状認識でもあろう。
 日本政府は、人々が手を出せない米軍基地の中から工事を始めた。地位協定にも根拠のない立ち入り禁止区域拡大をやり、刑事特別法による逮捕をちらつかせながら、抗議のカヌーに対し、海上保安庁の大艦隊を差し向けた。アリ一匹に巨象で対するような、幼稚きわまる大威張りで、沖縄人を一喝し、萎縮させ、あきらめさせ、反対運動を大衆から切り離そうとした。安次富さんの言は、その日本政府の目論見を打ち破ったという認識であろう。
 つまり、緒戦に勝ったという認識であろう。工事は、いずれは米軍基地の外へ出なければ一歩も進まない。すでに、辺野古漁港周辺の仮置き場使用の計画は、崩れている。市長の許可が得られないからだ。防衛局が市長面会を望んで来庁したが、突っ返されている。政府・防衛局は、計画の大変更を迫られている。
 そして、県民に辺野古アセスの全体が示されなかったことも、かれらの計画の弱さとなっている。これまでは、事象が進行する(オスプレイ配備など)につれて、新事実を後出しにするというやり口であった。これが、予想される今後の新県政、翁長知事に通用するだろうか。知事権限として、アセス不備を理由とする工事中断指示も可能である。
 ゲート前は、人々がどんどん増えていく。それを支える全県の反仲井真も、どんどん増えている。八月二三・二四日の「琉球新報」世論調査では、辺野古について「中止すべき」が80%(自民支持層でも70%、公明支持層では91%)で、これまでの70%台から更に増えている。「仲井真知事は作業に協力すべきではなく、少なくとも中断を求めるべきだ」の選択は、74%に上っている。
 九月三日、県議会は、辺野古中止の決議を上げた。決議は、辺野古基地建設のための今の調査は、民主主義を蹂躙し、県民の尊厳を踏みにじるものであり、到底容認できないと述べ、①ボーリング調査などの工事を直ちに中止すること、②正当な抗議活動への弾圧、過剰警備を直ちにやめること、③ゲート前の歩道に敷かれた山形鉄板と、海上の浮標灯(ブイ)、浮具(フロート)を撤去すること、などを断固要求している。
 このように、「オール沖縄」はより強くなっている。仲井真知事の「埋め立て承認」は、どんどん正当性を失っていく。仲井真さんは辞任すべきだ。石破も、どんな面して沖縄に対処できるのか。十一月十六日には大恥をかく。だから、石破は幹事長を辞めた。しかし彼が辞めても、日本政府の大恥は避けられそうにもない。
 沖縄は自己決定権を作ろう! 知事選の勝利は、その第一歩である。(九月四日、沖縄T)
【辺野古への行き方】
① チャーターバス
 那覇市・県庁前の県民広場から、毎月曜に「島ぐるみ会議」のバスが出ている。また平和市民連絡会のバスも(毎月末に運行発表で)出ている(事前連絡要、090・2712・6486長嶺)。いずれも往復一千円。
② 高速バスなど
那覇から名護まで高速バスで行き、現地までタクシー利用。
③ 現地ガイド
時間が取れれば、平和センターや、名護ヘリ基地反対協(090・2392・9161安次富)が、現地ガイドをやってくれる。