7・26第21回釜ヶ崎講座のつどい
  フランスの社会的包摂政策を検討

 七月二六日、釜ヶ崎と市民をむすぶ「釜ヶ崎講座」の第21回講座のつどいが、大阪市のエル大阪において22名の参加で開催された。今回は、「フランスの社会的包摂政策―生活困窮者支援と社会連帯経済―」の題目で、大阪市立大学大学院経済学研究科の福原宏幸さんに語ってもらった。
 冒頭、釜講座代表の渡邉充春さんが挨拶し、「西成特区構想」で移転の話が出ている医療センターの状況、ドヤ(簡易宿泊所)の内70軒以上がマンションに移行し、釜ヶ崎労働者の三人に一人が生活保護受給であること等々の基本的な話題を提供し、野宿労働者総数が減少している釜ヶ崎での新たな課題は何なのか、という提起がなされた。
 講師の福原さんは、1995年以降ひんぱんに、フランスの都市・農村部での生活困窮・ワーキングプア問題の取り組みを視察・支援してきた方である。
 福原さんは、概容以下のように語った。
①フランスでの、「排除」から「包摂」へという考え方は、1980年頃から語られてきたものだが、歴史的に形成されてきたもの。社会連帯主義という概念も、長い歴史の中から生まれてきた。
②人を救うという概念は、「社会参入」という言葉と一対のものとして定着し、この政策理念が、日本と比較すると非常に強固である。
③失業給付金付与の条件や生活保護給付の資格手続きも、日本と比べると簡明である。貯蓄の有無などをしつこく聞かれる日本とは違う。基本的に国籍による差別もない。
④失業率は80年代中頃より8~10%を推移し(とんでもない高率だが)、失業給付は前職給料の80%と高く、失業中の職業訓練制度は整っている。職安の職員に、失業者への保護義務がある。
⑤ホームレスの実数は約50万人(人口は約6200万人)とされるが、日本での路上生活者という定義とは異なり、「十分な生活を営める居住環境にない人」と定義されている。EUでは各国に、貧困と社会的排除についての報告義務があり、行政・当事者に貧困脱却の義務感が強い。比してアメリカでは、貧困は自己責任という考え方が根強い。
⑥しかしフランスにおいても、移民の居住隔離の政策や、いまだ根強い就職差別があり、日本と比べると若者での非行とホームレス化が大きい問題になっている。
以上のお話しを受け、最後に、フランス農村部の協同企業での生活困窮者支援についての動画を観ながら、釜夏祭り・釜講座ツアーの案内を受けて、終了した。
福原さんのお話からは、フランスでの社会的企業の設立・運営、関係法律の後押しがある社会連帯経済活動など、日本の運動が学ぶべき点は大きいのではと感じられた。

  釜夏祭りへ!

なお、釜ヶ崎夏祭り(8・13~15)については、釜ヶ崎日雇労働組合・反失業連絡会の佐々木さんからも報告があった。
佐々木・釜日労書記長は、「第43回釜ヶ崎夏祭り」は、川内原発再稼動の動き、安倍政権による集団的自衛権行使の閣議決定という情勢下、「止めよう原発、戦争発動への道」を掲げ、「安心してはたらき生活できる釜ヶ崎をつくろう」の合言葉のもとに行なわれると報告した。
また、西成特区構想の現況について、よく聞かれるのだが、かけ声だけで行政が何を実施しようとしているのか不明確な状態が続いており、また西成の労働者にとっては、特区構想どうこうよりも、やはり仕事が増え月13~14日の就労が確保できること、社会的就労の仕組みの実現が先決問題と考えている。今後も、この就労の解決に力を注いでいくと報告した。(大阪I通信員)