オバマ東アジア歴訪と4・24日米首脳会談
    安倍の解釈改憲を尻押し

 安倍首相が集団的自衛権行使容認へ向けて強硬姿勢を続ける中、オバマ米大統領が四月二十三日に来日し、二四日に日米首脳会談、二五日に日米共同声明発表が行なわれた。
その後、オバマ大統領は韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪した。このオバマ東アジア歴訪は、二十一世紀の大国として登場しつつある中国に対して、下り坂の超大国アメリカが対決と協調を模索する中において、その間にある旧来の同盟国などとの関係を再編・強化しようとするものであった。フィリピン政府との間では四月二八日、米軍駐留を比軍基地内に可能とする新軍事協定を結んだ。中国に対峙し、フィリピン国民の抗議を無視し、米軍がフィリピンに舞い戻ろうとしている。
日米関係ではどうだったか。TPP(アジア太平洋経済連携協定)で合意できず、共同声明が首脳会談の後になる異例の展開となった。その共同声明はTPPについては、「前進する道筋を確認」など抽象的文言の羅列に終った。十一月中間選挙をひかえたオバマ政権にとっては痛手であるが、安倍政権は急ぐ必要はなかった。
しかしTPPは、東アジアを分断する日米同盟の経済面であり、安倍の路線が合意達成にあることに変わりはない。日本の農業を壊滅させ、日米の多国籍企業に奉仕するTPP。これとの闘いの時間稼ぎにはなったが、油断はできない。TPP交渉から、日本政府はただちに撤退せよ。
「尖閣」問題ではオバマが、「日本の施政権下にある領土は、尖閣諸島を含めて安保条約5条の適用対象」とし、これまでの態度を再確認した。(報道では「領土」とあるが、米国は領有権問題としては中立の立場であるから「領域」と訳すべきだ)。しかし共同声明では、「米国は、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と一歩踏み込んでいる。

また共同声明で、「米国は、集団的自衛権の行使について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」とし、世界中で自衛隊が米軍と共に武力行使できるようにしたい共通の意図を露骨にした。
これらの文言に、日米同盟基軸論者や中国敵視論者は大喜びしている。が、安倍とオバマの温度差も、小さくはない。オバマは「尖閣」について、「エスカレートし続けるのは正しくない」、「平和的解決をめざすべきだ」と安倍に直言した。安倍は、「中国についても(ウクライナ情勢同様)力による現状変更の動きに明確に反対で一致」と述べたが、オバマは中国に対する名指し批判は避けている。
昨年末の靖国参拝強行などによって、対米関係からさえ浮き上がっていた安倍政権は、今回の日米首脳会談で国際的孤立を脱却できるだろうか。今回、靖国・歴史問題に何も触れていないことは、問題の先送りにすぎない。政治配慮によるTPP合意の先送りは、安倍の国家主義批判を米国で再燃させるかもしれない。
極右首相・安倍の、ジレンマは深い。帝国主義陣営の一人としては米国だのみ、国家主義者としては「日本復活」。この矛盾を真に解決できるのは、安倍右翼反動政権を打倒する、我々日本人民だけである。