戦争を許さない1000人委員会3・20出発集会
    労働組合こそ安倍打倒へ

 三月八日に発足した「戦争をさせない1000人委員会」の「出発集会」が三月二十日、小雨交じりの東京・日比谷野外音楽堂で開催され、「憲法を破壊する集団的自衛権の行使反対」のスローガンの下、約4000人が参加。自治労や日教組などの組合旗が目立って多かった。
 集会は、元国立市長・上原公子さんの司会で始まり、開会あいさつを「1000人委員会」発起人の鎌田慧さんが、「この三年間、さよなら原発の運動をやってきた。今度は、さよなら戦争です。今安倍政権は、集団的自衛権を解釈改憲で逃げ切ろうとしている。安倍の靖国参拝も、自衛隊員の戦死者のための露払いで、なんとしても集団的自衛権行使をやりたい表れだ。私たちの闘いは、なんとしても戦争をさせないという運動となっていく。」「すでに日本は、原子力基本法を『安全保障に資する』と変え、着々と核武装に向かっている。そのように世界に向かって挑戦している。これは憲法違反である。安倍政権打倒を皆さんと共に」とアピールした。
 各政党からの挨拶は、民主党の近藤昭一、社民党の照屋寛徳、生活の党の鈴木克昌、日本共産党の笠井亮、各衆院議員からなされた。
 「1000人委員会」結成の経過報告を、事務局長の内田雅敏弁護士が行なった。大江健三郎さんをはじめ16名の発起人と、百名の呼びかけ人で発足した。同会は、全国各地に「1000人委員会」を作り、署名活動(憲法を破壊する「集団的自衛権の行使」容認に反対・戦争をさせない全国署名)を展開し、各地で集会などを予定している。
 各発言では、大江健三郎さんが、自身の体験と作品に沿って、平和憲法をないがしろにさせてはならない、持ちこたえて戦争をさせず、若い人の明日の生き方を作り出そうと訴えた。
 憲法学者の山内敏弘さん(一橋大学名誉教授)は、安倍内閣が進めようとしている集団的自衛権行使容認とは、憲法の基本原理である立憲主義と平和主義を破壊するもの。他国の防衛に武力行使で加担するのを認めないことは、日本国憲法によって日本の基本的形を成して来たもの。内閣の憲法解釈によって行使容認を行なうことは、立憲主義の破壊。国連憲章を根拠とする行使容認は、国際法と国内法の関係の無理解。集団的自衛権の行使は、現実は侵略戦争の意味合いをもってきた。日本が再び、侵略国家になる。日本国憲法を守り抜こう、と発言した。
 元イラク派兵航空自衛隊員の池田頼将さんが、登壇。米軍車両に轢かれ、治療もまともに受けられず、帰国も許されなかったため後遺症に苦しみ、裁判に立ち上がった。集団的自衛権の行使が行なわれたら、私のような犠牲者も必ず出てくる。二度と事故隠しを許さず、いじめや自殺が無いよう闘っていくと訴え、万雷の拍手であった。
 脚本家の小山内美江子さんは、難民キャンプのボランティアもやっているが、ユーモアたっぷりに安倍首相を批判。落合恵子さんは、幼い頃の戦争の傷あと、福島放射能被害の実態などに触れながら、戦争をしようとする支配者には従わない、名誉ある非国民として生きようと檄を飛ばした。評論家の佐高信さんは、遠藤誠弁護士と山口組組長との、他人の縄張りに踏み込むのは侵略だとのやり取りを引き合いに、安倍は暴力団以下と看破した。
 最後に行動提起を、平和フォーラム共同代表の福山真劫さん。まず「1000人委員会」の参加を広げ、一万人を超える参加・賛同をめざす。全国で署名運動を広げ、五月中に一千万を超える署名をめざす。地域・職場でさまざまな活動を。自治体や議会、国会に対して、集団的自衛権行使を認めない要請を、と提起した。
 司会の上原さんが、安倍政権をチェルノブイリ原発と同様、「石棺」に閉じ込めなければと結んで集会は終了した。
 この「1000人委員会」は、今のところ自治労など平和フォーラム参加団体を主力としているが、市民運動に支持を広げるとともに、労働組合が安倍政権の暴走に正面から立ち向かう機会になるのではないか期待も持てる動きとなっている。(東京Ku通信員)


「地方教育行政法」改悪案を廃案に追い込み
  公選制教委制度の実現へ

 三月十二日、自民・公明両党は、教育行政への自治体首長の権限を強め、愛国心強要・軍国主義教育強化、また格差拡大・差別選別教育推進のための「教育委員会制度抜本改革案」で合意した。
 この与党合意で安倍反動政権は、「地方教育行政法(地教行法)改正案」を四月四日に閣議決定し、今国会に提出した。
「地教行法改正案」は、反動政党公明党との合意によって、今国会で成立する公算が大きくなり、教育委員会制度の実質的終焉の危機が高まっている。
 今こそ、地教行法改悪阻止・公選制教育委員会制度実現の闘いが求められている。後者の、公選制教委の復活というスローガンを掲げるべきであると言うのは、この地教行法改悪阻止の闘いが、現行の任命制教委制度を守ればよいというものではないからである。現在の攻撃は、教育行政の一般行政からの独立性を制度的に解体する攻撃である。この攻撃に対しては、守勢ではなく、あるべき教育行政の姿を明確に対置して闘う必要がある。

 与党合意では、現行の教育委員長と教育長とを一体化し、「新教育長」を新設する、この任命・罷免の権限を首長に与えるとする。そして、首長主導で、教育に関する大綱的な方針を決定する「統合教育会議」を設置するとしている。
 この統合教育会議は、「首長と教委の意思疎通をスムーズにする」との理由で新設。新教育長、教育委員、有識者らで構成され、自治体の常設機関として設置される。
 また同会議は、予算執行に関わる事務を協議するほか、いじめ等緊急事態にも対応すると規定されている。
 一方、教職員の人事や教科書採択、教育内容を決める役割などは、執行機関である教委が担う専権事項として残されている。それは、表面上は公明党に配慮して決められたが、大まかな方針は「大綱」で定められ、教科書採択なども規制されるのは間違いない。さらに、いじめや自殺などの再発防止策を教委が講じるよう、文部科学相が指示できる等、国の関与強化が盛り込まれている。
 創価学会は、司法・立法・行政に教育を加えた「四権分立」を唱えている。そのため公明党は、首長を執行機関とするのは「政治的中立性が保てない」などと主張。教科書採択・教職員人事などを執行機関としての教委が、引き続き担うべきとした。そして、両党からなる作業チームの副座長・公明党宮田茂之衆院議員は、「教委を執行機関として残してもらうなど、政治介入ができるだけされない制度は担保できた」などと発言した。しかし、それは前述の説明からも明らかなように、まやかしであり、自民党案に合流するための詭弁にすぎない。
 自公合意は、二月十九日に正式決定した自民党文教部会の「教委制度改革案」と、ほぼ同一である。主要な内容で大きく異なるのは、新教育長の任期を三年としたことである。しかし二年を三年にしても、首長が在任中、確実に人事権を行使し、教育行政に介入できる仕組みであることにかわりはない。自公合意は、教委制度の終焉をねらった反動的教育改革以外の何物でもない。

 育鵬社版中学公民教科書の採択を拒否した沖縄県竹富町教委は三月二四日、文部科学省の是正要求に応じない方針を確認した。そして、第三者機関の国地方係争委員会に審査を申し立てるか否かを今後検討し、四月十一日までに結論を出すとしている。総務省によると、是正要求を受けて三十日以内に係争委員会に申し立てをしなかった場合、文科省は地方自治法にもとづき、違法確認訴訟を起こすことができる。
 周知のように育鵬社版は、愛国心を強要し、子どもたちを戦争へ駆り立てる反動教科書であり、教育現場の使用に値しない教科書である。まして育鵬社版は、推薦リストに一切なく、非民主的なやり口で採択された教科書でもある。竹富町教育委員会の「拒否」再確認は、子どもたちを大切にした正当な行為であり、断固支持されるべきことである。国家が教科書採択に強権的に介入し、是正要求をするなどは言語道断である。
 教科書採択にあたって、同一採択地区・八重山地区内の石垣市や与那国町の教委は、育鵬社版を採択している。それは、保守色の強い首長の就任が影響していると言われている。与那国町長は自衛隊を島内に誘致し、石垣市長は、「尖閣」の「実効支配」強化を政府に要求した超反動首長である。地教行法改悪は、八重山地区教科書問題をもとらえて仕掛けられいてる。反動派首長の擁立は、反動教科書の採択を可能にするための攻撃である。

 教委制度抜本転換の「地教行法改正」は、教育への統制を強め、教育労働者の闘いを圧殺して、愛国心強要、軍国主義教育の推進、格差拡大の差別選別教育強化をねらっている。それは、子どもたちの幸せとは無縁の代物である。
 教育労働者は、地域の労働運動・市民運動と連携し、保護者と固く結合して、地教行法改悪阻止・公選制教委制度実現の道をまい進しよう。わが党は、教育委員会制度廃止をねらった地教行法改悪に、公選制教委実現の旗を掲げて闘う。(教育労働者 本田道雄)


釜ヶ崎講座3・22学習会―もやい稲葉氏を迎え
  
「改正」生保法・生活困窮者法を問う

 三月二十二日、市民と釜ヶ崎をむすぶ市民団体・釜ヶ崎講座の、第7回学習会が「『改正』生活保護法と生活困窮者自立支援法の問題点は?」と題して、大阪市・西成市民館にて開催された。
 講師に東京より、NPO法人自立生活サポートセンターもやい理事長の稲葉剛さんを招き、「改正生活保護法」の全体像と問題点を主要に押さえる形で語ってもらった。また、2015年実施に向け、すでに各種支援モデル事業も全国の限定地域で行なわれつつある「生活困窮者自立支援法」について、それが本来、生活できない人々のために役に立つ法なのかどうか、この二点についての講演となった。
 講演後は、生活保護基準の切り下げの問題や、釜ヶ崎当該から見た今日の貧困問題等、貴重な助言も出され、有意義な学習会となった。参加者は約60名。
 稲葉さんの講演要旨は、以下のとおり。
 ①貧困を食べられないこと、つまり「餓死」と考えると、バブル崩壊後、その件数は激増した。それは、失業し路上に野宿者があふれ出す1995年から2003年にかけての頃と時期が一致している。その後、ホームレス支援法の成立、日弁連の支援強化の動きを受ける中で、失業者は増大していく中でも、「餓死者」件数は減少していった。支援・ネットワーク活動の強まりの成果である。
 ②この十年の貧困の形態は老若男女を問わず、すべての貧困者がしだいに職と住居を失う危険が増大してきた十数年であった。相談者に若者と女性が増え、三割をこす規模となった。関連して、ネットカフェ利用や脱法ハウスの問題。
 ③生活保護は、日本の社会の中では「最後のセーフティネット」という感が強い。そして、生活保護を受ける人は脱落者とか、社会に適合しない人とかの社会的烙印を押されかねない日本の風潮がある。これにより、家族や親族に迷惑がかかるとかの誤まった考えに陥り、近年のマスコミによるバッシングを受けて、生保を取得しにくくする体制が作られている。実は現政権は、この点を今回の「改正」で狙っているのであり、1950年の生活保護全面改正の以前に引き戻そうとしている。
 ④「改正生活保護法」の主な問題点として、上述の社会的偏見の上に、「本人による申請手続き、添付書類の記述・提出の義務化」と「家族・親類の扶養義務履行・指導の強化」、この二点を特に挙げたい。本来、権利としての生活保護は、口頭申請だけで十分であるが、申請書も手に取れるところに、窓口に置かれておらず、一人で申請に行けば、たいがいは窓口でウソの説明をされ追い返されるパターンが横行している。この中、さらに「水際作戦」の強化が想定される。北九州市や大阪の実状。今後、第三者委員会の設置など、監視行動の強化が必要だ。
 ⑤「生活困窮者自立支援法」は、「生活保護の手前のセーフティネット」として成立したが、今日の社会で良質な職と住居の提供という概念が無い中では限界がある。その、本人への生活保障の制度の中味が、「貸付」や「家賃補助」も限定的・有期であったりで、安心して生活を立て直していくためにはほど遠い。また法施行にあたり、新たな窓口が開設されるわけだが、移動層を生活保護に行かせないという締め付けの可能性もある。
 以上、二法について稲葉さんの発言であった。ともかく、この社会で新たな貧困の拡大を止めていく、運動体の連携を図りながら、「もやい」としてできることは貫いていくという決意の発言であった。
 討論では、まず反貧困ネットワーク大阪の徳武さんが発言。徳武さんは、大阪の昨年八月の生活保護切り下げ反対を先頭でやってきた立場で、大阪の生保問題を説明した。窓口での「追い返し」、生保世帯の下げ止まりに得心している行政の姿勢を批判し、改正保護法省令案へのパブリックコメントに意思表示を広げるなど、声を共に上げようと訴えた。
 釜ヶ崎からは、NPO釜ヶ崎支援機構の松本さんが発言。松本さんは、若者の就労・生活保障にも携わってきているが、今回の生活困窮者法のモデル支援事業では、西成区での相談者が現在のところ皆無であることを指摘。多くのサポート窓口のある釜ヶ崎では、ある意味当然と受け止めるが、一人ひとりの生活にマッチした支援形態が重要。そして生活保護の問題では、孤独な生活の待つ生活保護へ上げるよりは、自分で働いて日々を送ることを願う人々も多く、シェルターや路上で寝泊りしながらも何とか頑張っている人も少なくない。改めて、働くことを基本とした生活保障の重要性を語った。
 最後に、釜ヶ崎日雇労組の三浦さんが、現行制度の積極的部分を活用しながら就労を切り拓いていこう、生保改悪には明確に反対の声を組織しようとアピールし、学習会を終っていった。
 今回は、生活保護を利用しずらくしている差別・偏見、人権意識の低下をどうしていくのか、など認識を深める学習会となった。より良き制度の実現のため、さらに共同した取り組みを進めていくべきである。(大阪I通信員)