函館市が東京地裁に4・3提訴、大間原発建設阻止へ
  自治体初の原発建設差し止め提訴

 北海道函館市・工藤寿樹市長は、函館市三月議会に「大間原発差し止め議案」を提出し、関連議案は市議会最終日の三月二六日、全会一致で可決された。
 そして四月三日には、東京地方裁判所に市長自ら訴状を携えて出向き、自治体として全国初めての原子力発電所建設差し止め訴訟として提訴することになる。これは、函館市民のみならず原発を周辺に抱えるが現状では何ら中止・廃炉への手立てを持たない自治体への、力強いアクションである。
 弁護団が作成した訴状案が、事前に公けにされた。その内容を若干紹介しつつ、その意義を確認し、裁判勝利に向けた全国的支援を北海道の地から訴えたい。

  国と電源開発㈱に求める

 訴状は、国に対しては、「設置許可申請時に使用した安全設計審査指針は、福島事故の発生を防げなかった」として許可処分の無効を求め、また「新規制基準の安全指針にも不備がある」ことを指摘し、建設停止を命ずる「主体的請求」を求めている。また、UPZ(緊急防護準備区域)の30キロ圏内に原子力防災計画策定を義務付けながら、「同意手続きを立地自治体に限定することは、立地自治体と周辺自治体を不公平に扱う」ものとして、市が同意するまで建設停止を命ずる「予備的請求」を盛り込んでいる。
 電源開発㈱に対しては、福島事故のような苛酷事故が起きた場合、「地方公共団体の存立が危険にさらされ自治が根本的に破壊」されるとして、憲法で保障された自治体の存立権を主張し、公けの財産の損害予防を図る「妨害予備請求権」を訴状の柱としている。その他同原発の危険性をあげ、「市有地・市庁舎等をはじめてする不動産等の使用を禁止される蓋然性がある」として、所有権の侵害に基づく建設差し止めをも求めている。
 全国的には原発建設差し止め訴訟は、住民が起こしたものとしては数多くある。その中の一つとして、函館市民が中心となった大間原発建設差し止め訴訟はすでに3年が経過し、去る二月二五日には第4次訴訟として123名が提訴し、総勢800名の裁判に拡大している。そして、四月十一日には第12回公判を迎える。
 しかし、苛酷事故が発生した場合に自治体が被る被害は甚大であり、避難することさえ叶わぬことである。まさしく函館市長の弁として「市民の生命・財産を守るため」、さらには「福島の事故後も、原発建設に対する同意手続きのあり方が見直されない国のいいかげんさを明らかにしたい」と、訴訟の意義が訴えられている。函館市議会も二回に及ぶ建設凍結意見書を採択し、そして、今回の議案提案に際しても全会派の賛同を取り付けていることでも、市としての提訴は市民の意思を体現していると言える。
 その意味では市の提訴は、電源開発㈱による一昨年十月の一方的な「報告」としての建設再開の伝え方、また市内での説明会開催を求めても、「周辺自治体であり立地自治体ではない」とする一顧だにしない傲慢な官僚的対応と発言に対する怒りであり、また現政府が進捗率わずか40%に満たない大間原発を「新規建設ではない」として建設容認していること、これらへの苛立ちと怒りが下地となった行動であることは明瞭である。

  恐怖の大間原発事故

 大間原発炉心よりわずか23キロ、海峡を隔てて遮蔽物のない函館市。世界で初めてのMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を全炉心で使い、実験炉を経ないで商業炉として稼動させようとしている危険極まりない原子炉である。
 小出裕章氏(京大原子炉実験所)の事故の想定では、大間原発から函館市の方向へ風速2メートルの風が吹き、約4時間後に放射能の雲が函館市に到達した場合、函館市民の8000人が急性死に至り、100%の人間が何らかの癌によって死亡するとされ、これらは訴状の中でも訴えられているものである。
 また最近、民間シンクタンクの環境総合研究所(東京)が、大間原発で福島第一レベルの事故を想定したシュミレーションでは、風速2メートル南南西の風で毎時20~50マイクロシーベルトと予想し、福島県浪江町や飯館村並みの避難生活が余儀なくされることを伝えている。
 さらには、函館市の特性である水産業、観光業、函館市の台所と言われる道南地域の農業も壊滅的打撃を被ることは明らかである。この事態を想定せずして、行政の首長の責任を果たすことにはならない。
 原発建設に伴う「原子炉立地審査指針」は、①原子炉からある距離の範囲内は非居住区域、②非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること、③原子炉敷地からは、人口密集地帯がある距離だけ離れていること、これらが条件である。これから言えば、27万人を超える人口を要する函館市が近隣に存在していることは、指針の趣旨から言っても立地条件に反するものであることは明らかだ。だからと言って、人口の少ない地域の人々の生命と財産が脅かされていいはずもないが。

  全道に広がる支援

 だからこそ原発の建設は直ちに中止し、再稼動も止め、再生可能なエネルギーの導入・拡大に向けて努力していくべきである。ちなみに北海道は、「省エネ・新エネルギー促進条例」を持ち、「脱原発の視点に立って」と宣言しているのである。まさしく函館市の差し止め訴訟は、道の条例から言っても理にかなった行動であることが明らかである。
 このかん函館市には激励・応援のメール・メッセージが多数寄せられており、市長が提訴を決めた2012年9月からは500件に上っているようだ。また、提訴が決定された翌日から訴訟費用に当てる寄付の受付を始めたようだが、早速、一日で14件70万円が集約されたと報じられている。
 そして、建設差し止め訴訟はあえて、電力の最大消費地東京の、東京地裁に起こす。
 安倍政権が進めるエネルギー政策は、原発重視が明らかである。その基本計画案においても、原発を「重要なベースロード電源」として位置付け、放射能汚染水漏れが続く福島第一の事故の検証・反省もなく、原発を推進しようとしている。他方、福島県の県外避難者が未だ4・8万人、そして福島県では震災関連死(その多くは原発事故関連死)が、震災・津波を直接因とする死者数を上回る1660人(3月10日現在)になっている現実がある。放射能除染を含めた震災復興も遅々とし進まない実態を頬かむりした、安倍政権の原子力政策に断固として反対していかねばならない。
 そのためにも、自治体としての初の建設差し止め訴訟を支持し、市民運動としても側面からの支援をしていきたい。その多くの支援の声は、後退と曖昧さを許さない壁として強固に立ち上げていく必要がある。(北海道M通信員)


3・9東京
  「原発ゼロ★大統一行動」に3万2千
    エネ基本計画撤回を

 福島第一原発事故から三年、3・11を前にした三月九日、国会周辺を埋め尽くす「3・9原発ゼロ★大統一行動」が、約32000人の結集で打ち抜かれた。この統一行動は、「福島を忘れるな!再稼動を許すな!」のスローガンのもと、首都圏反原発連合、さようなら原発一千万人アクション、原発をなくす全国連絡会の呼びかけで闘われた。
 統一行動は、午後一時の日比谷野外音楽堂集会から始まった。
 「福島県内の全原発の廃炉を求める会」呼びかけ人の名木昭さんは、「三年前の3・11から時計は止まったまま。ふるさとを追われた人々が自宅に戻れる保証はない。家族もばらばらのまま」と発言。三年を経ても今だに、およそ14万人が故郷に戻れない現実を訴えた。
 さらに「福島原発避難訴訟原告団」団長の早川篤雄住職は、600年続いた寺を閉じねばならない無念をも含め、「原発は、住民の人生を奪い、生きるすべまで奪い尽くした」と表現、こみ上げる怒りを語った。
 集会は、「原発ゼロの声と行動を強めるのは今、『福島を忘れるな!再稼動を許すな!』の思いを共有した今日、大統一行動とその願いを、もっと大きく、強く広げよう」との集会決議を割れんばかりの拍手で確認、閉会した。
 その後、野音内外の参加者は、各歩道で国会へ向かうか、大請願デモに続くかして、国会包囲行動に移っていった。
 そして3時4分「国会大包囲完成」、3時30分国会正門前大集会の開催が宣言された。国会周辺には大請願デモ、官邸前大抗議、東電前抗議を闘いぬいた労働者・市民がつめかけ、たくさんの人々で溢れた。夕刻5時、終始熱気に包まれた集会は終了した。
 自民党と安倍政権は、民主党政権が打ち出した「30年代に原発稼動ゼロ」すら全面否定し、原子力規制委員会が安全性を確認すれば原発再稼動、新設の可能性さえあり、また核燃サイクル続行、原発輸出推進、これらの内容の「エネルギー基本計画」案を閣議決定せんとしている。
また規制委員会はその安全審査において、審査中の全国10原発17機の中でも、九州電力の川内(せんだい)原発1、2号機を最優先させる方針を取っており、突破口としての川内原発再稼動の危険が高まっている。
 この逆流を許さず、再稼動を許すな!の闘いをもっと大きくと呼びかけた3・9大統一行動に呼応して、全国津々浦々まで脱原発の闘いを拡大しよう。(東京O通信員)


3・9大阪
 さよなら原発関西行動は7千
   全勢力が統一

 三月九日、全国的な原発震災三周年行動の一環として大阪でも、扇町公園にて「さよなら原発3・9関西行動」が同実行委員会の主催で行なわれ、全関西から約7000名が結集した。
 その特徴の第一は、大阪の反原発闘争では初めて日本共産党を含めた実行委員会の下、統一した集会・デモが闘い取られたことである。
 第二の特徴は、大きな組合・団体の発言や組織動員というスタイルから転じ、「1分間アピール」に見られるように、より広範な層が主体的に参加できる構造が作り出されたことである。
 釜ヶ崎からの参加者は、関電本店前・金曜行動を闘う仲間と同じ梯団で、三つあるデモコースの内の大阪市役所までのデモ行進をやり抜いた。デモ後は直ちに関電前に移動し、関電包囲をやり抜いた。
こうして3・9行動は、安倍政権による原発推進、とりわけ今夏の再稼動を阻止する闘いへ向けて、敵の分裂を促がし、闘う陣営の広範な団結を広げる、その大きな一歩となったのである。
なお、この日の特別企画として、扇町公園隣りの区民センターにて、小出裕章さん(京大原子炉実験所助教)の講演、また地脇美和さん(福島原発告訴団事務局)、水上賢市さん(原発反対福井県民会議事務局長)の報告がなされた。(釜ヶ崎S)


フクシマを忘れない!さようなら原発3・15脱原発集会
  川内原発再稼働阻止

 また続いて東京では三月十五日、日比谷野音にて「フクシマを忘れない!さようなら原発3・15脱原発集会」および銀座デモが行なわれ、さようなら原発一千万署名市民の会の主催で約5500名が参加した。
 集会では、福島からの報告を武藤類子さん(ハイロアクション福島)が行ない、呼びかけ人アピールを内橋克人さん、大江健三郎さん、澤地久枝さんが行なった。また、福島からの避難農業者でもある秋山豊寛(元宇宙飛行士)もアピールした。発言者の多くが、安倍政権のエネルギー基本計画や、川内原発再稼動の策動を糾弾した。
 また、被ばく労働を考えるネットワークのなすび氏が、前日十四日に行なわれた除染労働者の春闘行動、つまり元請け前田建設工業・東電・経産省等に対する要求行動を報告した。原発反対福井県民会議の松下照幸さんは、美浜町での廃炉後を問う課題を提起した。
 そして会場に、「フクシマ連帯キャラバン」の青年労働者たちが登場し、大きな拍手。このキャラバンは、全日建連帯、全港湾、全労協全国一般の3単産青年労働者などによって、八日から南北2コースで行なわれたもの。当日、終点の第五福竜丸展示館(夢の島公園)から、キャラバン隊と都内の労組部隊がデモ行進して、野音に合流した。
 閉会挨拶を鎌田慧さんが行ない、「避難道路も造れない中で、再稼動しようとしている。今の事故対策は、役に立たない防空演習で、戦争に突入するのと同じ」と訴え、川内原発、伊方原発などの再稼動を批判した。
 なお翌日の、鹿児島市での「3・16さよなら原発!かごしまパレード」には約6000人が参加し、川内原発の再稼動を許さない大号砲が挙げられた。六月県議会が注目されるが、政府・規制委員会まかせの、伊藤鹿児島県知事の再稼動容認などは決して許されないことである。(東京W通信員)