編集部だより

★反知性主義が公然と頭をもたげている。それは、通説に対して、客観的科学的な論証もなく独りよがりの「物語」を対置する。ひどい場合は、その「物語」を他者に押し付ける。★反知性主義は、歴史の分野でも顕著である。この間の都知事選で、田母神候補は、恥知らずにも「侵略戦争、南京事件、従軍慰安婦―全部ウソだ」と演説した。これを聞いた20代のある男性は、「歴史の真実はわからないが、田母神氏のように考えれば誇りがもてる」と感想をもらしたそうである。★真実はともかくと言って、裁判長が自己の情緒的好悪を客観的な証拠に優先させたとすれば、その裁判は大混乱となろう。史実をないがしろにし、正義に基づかない独りよがりの「誇り」では、砂上の楼閣をつくるだけである。それは日本帝国主義やナチスの蛮行で明らかである。★幕末の尊王攘夷論者たちの多くは、『日本書記』がいう神功皇后の「三韓征伐」なる歴史偽造を論拠に、朝鮮人民などを差別した。この差別は、やがて朝鮮・「満州」などの植民地支配に行き着く。その結末は、一九四五年八月の敗戦である。★日本社会の一部にはあまりにも、歴史と「物語」を混同させ、歴史に対する厳格な態度が欠ける傾向がある。このことが戦前の道を復活させようという安倍政権の企みを支える一因ともなっている。(竹中)