ブルジョア改革派「細川・小泉」連合の登場
     「第三極」形成し安倍政権打倒へ

① 細川・小泉連合とは?

「脱原発」を掲げる元首相・細川護煕が、元首相・小泉純一郎の強力な後押しを得て都知事選に立候補し、安倍政権を震撼させている。われわれは、支配階級内部のこの対立の政治的意味を正しく捉え、自己のとるべき態度を過たないようにしなければならない。
安倍と小泉・細川連合の対立は、原発問題を介した戦後統治形態からの脱皮をめぐる支配階級内部の路線闘争に他ならない。
 戦後の統治形態は、アメリカの世界覇権(一定の対日支配・統制)の安定の下で、産業発展を促進・前提とする利益誘導型統治だった。その限界が露呈して久しい。産業発展の時代が終焉し、社会関係を破壊する投機マネーの膨張運動がグローバルな規模で重きをなす時代をむかえると共に、先行するアメリカの圧力に促される仕方で、統治形態の転換を目指す「改革」が試みられてきた。それは、次の相対立する二つの路線として現出した。
一つは小泉が推進した「第一極」路線であった。それは、アメリカ一辺倒・市場原理主義でマネーゲーム資本主義に道を開き、社会が崩壊しても構わないとする路線であり、公然と利益誘導型統治のぶち壊しを目指すものだった。
もう一つは鳩山・小沢が掲げた「第二極」路線だった。それは、一方で市場原理主義路線を承認しながら、他方でそれがもたらす社会の崩壊を押し止めるべく民衆を包摂せんとするマッチポンプ路線だった。対外的には、アメリカから一定距離を置き東アジア共同体を目指した。細川は、この路線に近い。
これらの路線は、この間、小泉政権および鳩山政権によって体現されした。しかしそれらは、官僚を軸とする利益誘導型統治勢力の巻き返しにあい、挫折した。その帰結が第二次安倍政権の登場である。すなわち安倍政権は、すでに生命力を失って久しい利益誘導型統治路線を財政出動と金融緩和の「異次元的」なカンフル注射によって一時的に見かけ上「復活」させ、また市場原理主義路線を分断し取り込むことで成立した。しかも侵略・植民地支配の歴史を開き直る戦前回帰的覇権拡張政治と結合してである。
脱原発を旗印とした小泉・細川連合の登場は、この安倍政権に対する改革派の連合した反撃に他ならない。
 
② 安倍政権打倒の闘い

 現在の情勢が要求している中心課題は、極右方向に暴走する安倍政権の打倒である。その意味で、安倍政権が押し立てる都知事候補に対抗して細川が立ち、改革派が連合して反撃に起ったことは、労働者民衆にとって大いに歓迎すべきことである。
 安倍政権は、新産業の勃興による景気回復とそれに照応した覇権拡張というかつての発展パターン(富国強兵路線)への「幻想」を創出することによって成立し、それを維持し続けるために突進せざるを得ない政権である。それ故この政権には戦前回帰的方向を強める。この政権は、労働者民衆の生存と社会の存立を脅かす極右政権という本性をますます露わにしている。
 しかし安倍政権は、その政治基盤が極めて脆弱な政権である。
 第一に、民衆の支持を繋ぎ止めている景気回復(=新産業の勃興)の約束が、産業の成熟時代に到達してしまっているため、全くの「幻想」でしかないからである。したがって法人税減税は、投機マネーを膨らますだけ、雇用の流動化も失業人口を増やすだけ。消費増税への怒りとバブル崩壊の危機に追い立てられて、成熟産業のためにトップセールスへ突進しても、せいぜい工場の稼働率を少しばかり高める程度でしかなく、早晩アベノミクスの破たんは明らかとならざるを得ない。
 第二に、安倍政権は中国との地域覇権争奪を激化させつつ戦前回帰潮流と手を組むことで、アメリカを主柱とする戦後世界支配秩序とは相容れない道にはまり込んだからである。この道は、アメリカにとって代わる意志も力もない以上、全くの袋小路である。国際的孤立が深まる。
 しかし、安倍政権の政治基盤がこのように脆弱であっても、ブルジョア階級の改革派が主導していてこれを倒せる状況にはない。「第一極」勢力は、リーマンショックの打撃から回復基調に入りつつも、安倍政権に大きく取り込まれ、分裂状態にある。「第二極」勢力は、鳩山政権の挫折・民主党への失望がいまだ大きく、どん底から抜け出ていない。またたとえ小泉・細川連合が都知事選で勝利しても、国政での巻き返しへの足掛かりを得るにすぎない。それに国政選挙は、まだ先の話である。
 したがって、反安倍勢力は全て、主として大衆運動の力に頼る以外ない。情勢の要求は、安倍打倒の大衆的爆発である。

③ 「第三極」の形成へ

安倍打倒の大衆的爆発は、いままで通りのやり方でやっていては、実現できない。
第一に必要なことは、人民大衆の怒りの表出形態を見つけ出すことである。
闘いの大義は、安倍政権自身が創出してくれるので事欠かない。問題は、人々が個に分断され、諦めが先に立ち、怒りが内向してしまっていることにある。これを反転させる闘争形態が問われている。
第二に必要なことは、「第三極」の形成である。
大衆運動も、支配体制の擁護を基調とした潮流がいつまでも主導していては、安倍打倒の大衆的爆発はおぼつかない。この社会では生きていけない層の怒りを大胆に解放し方向づけることの出来る潮流の主導が求められている。「第三極」は、その展開を基礎に形成されるに違いない。
第三に必要なことは、革命党の創建である。
資本主義に牽引された産業発展の時代の共産主義運動を総決算し、新たな時代の基盤の上に立った革命組織を創造していかねばならない。後退戦の時代の負の遺産を総括・清算し、戦列を整えねばならない。革命諸潮流の再編成は、不可欠である。
 安倍打倒の大衆運動の高揚は、こうした三条件の相互連関的進展によって切り開かれるだろう。
なお安倍打倒は、大きくは支配階級の反安倍・改革派連合との合成力の結果になる。したがって安倍打倒は、新たな時代の階級闘争への移行を意味する。それは、資本主義が社会を崩壊させていく時代の階級闘争に他ならない。支配階級は、安倍的傾向の残骸を副次的化する仕方で回収しつつ「第一極」「第二極」に分裂する。そして革命運動は、長期にわたった後退戦に終止符を打ち、反転・進撃の時代に入るのである。後退戦に慣れてしまった自己の意識と実践を変革すること、これが問われている…。(M)